祭/吉田航大
祭
交流公演の朝は早い。
どんなに朝が早くても、メンバーの顔はもちろん寝起きではない、とてもスッキリしている。
定員も荷物もいっぱいの車に乗り込み、ジャージ姿のまま学校に向かう。
学校に着くと、勢いよく搬入から楽器のセット、場ミリまで行う。
各々が任された仕事を黙々と進めていく。
サウンドチェックやリハーサルも必要最低限で済ませ、ホッとひと息つく暇もなく、すぐ着替えをすることがほとんどだ。
さぁ子ども達を迎える時間だ。
この時間がたまらなく楽しみ。
今日はどんな子がいるのかな?
元気でやんちゃな子、恥ずかしそうに笑ってる子、眠そうに寝癖がついてる子、様々だ。
先生の挨拶を終え演奏スタート。
太鼓を間近で見るのが初めてな子もいる中、真剣に演奏をしていく僕ら。呆気にとられポカンとしてる子ども達。
演奏者それぞれが自己紹介をすると、子ども達の顔はいつもの顔に戻った。
そしてまた演奏をじっと見る。
真剣な曲は真剣に見入り、楽しい曲は皆んなで笑顔になって皆んなで楽しむ。
そんな場の空気には袖幕や照明はいらない。
楽器と人、ただそれだけ。
祭りのような光景にも見える。
人と人。人と太鼓。
不必要なものは付け足さない。
その分、嘘がつけない。
その人の音、表情、動き、感情。
全てにおいて子ども達は見抜いている。
少し手を抜こうものならば、子ども達の集中力がなくなる。
子どもだからといって手加減するのではなく、大人の本気を見せる。
そのベクトルは後ろで見ている先生方、保護者の方にも向いている。
大の大人が汗水垂らして雄叫びをあげながら太鼓を打ち鳴らす。
世の中にはこんな大人もいるのだと。
演奏が終わり子ども達をお見送り。
最初は恥ずかしそうにしてた子も、この時は元気よくハイタッチ。
子ども達がいなくなったら、急いで着替えて、片付け、楽器を再びトラックへ積む。
元どおりになった体育館は、朝入って来た体育館とは違い、暖かく笑っていた。
さぁまた車に乗り込んで次に行こう。
次なる祭りへ。。。
小木港祭り/三浦友恵
8月24日(土)、25日(日)に拠点の佐渡・小木地区で「小木港祭り」が開催されました。
毎年、鼓童は小木の皆さんにアース・セレブレーションのお礼の気持ちを込め、祭りに参加させていただいています。
山車を引き、太鼓を打ちながら小木の町をまわり最後に木崎神社に奉納演奏します。木崎神社に入る前は、祭りを終わらせたくない人と早く木崎神社に入りたい人との攻防戦。戦いは長期戦でした・・・。
今年は山車のロープ、キャスター、花飾り用の竹を新調し、小木祭り太鼓の会としても新鮮な気持ちで参加しました。
小木町の皆さんから声をいただくと、鼓童は本当にたくさんの方に支えられているんだなと再確認するとともに、気持ちを新たに9月からのツアーも頑張ろう!という気持ちになりました。
「春風」配信から1ヶ月!/住吉佑太
少しずつ、朝夕が涼しく感じられるようになってきました。アツい夏も、もうすぐ終わりですね。鼓童はすでに、新たな作品や舞台に向かって進み始めています。
鼓童提供楽曲の第一弾「春風」が配信されてから、約1ヶ月が経ちました。
予想以上の反響に、私たちも驚いています。本当にありがとうございます。
今日は、この「春風」という曲について、私たちが大切にしていることを、音楽的な解説も踏まえながら、少しお伝えできればと思っています。
まず、この曲を作るときに心がけたのは、「誰もがやりたい!そして、できそう!」と思えるキャッチーなものでありながら、尚且つやってみると意外と難しくて、やりがいを感じられる曲にすることです。
この曲を難しいと思うかどうか、それがアンサンブルの質を左右する、大きなターニングポイントになるかと思います。リズムやメロディーを追って演奏できるようになる、そこがスタート地点です。
この曲の基本のノリは、三つ打ち、ドンドコと呼ばれるもので、いかにも和太鼓らしいリズムでもあります。
ドンドコとドンツンだけで聴かせられるようになって一人前
by 今海一樹(元プレイヤー 現舞台監督) ※ドンツンというのは、この曲の韻パートがやっているような、4分音符の強拍を打ちながら、8分音符の裏間に弱打を入れるフレーズのこと。
という言葉があるように 笑
ドンドコのノリには、とても奥深いものがあります。
地域によっても、いろいろなニュアンスがありますし、世界中の民族音楽の中にも、ドンドコに似たリズムがたくさんあります。
では「春風」の場合、どういうドンドコを打つべきなのか。
それは打ち手のセンスに任せられているわけですが 笑
まず、担ぎ桶以外のリズムをよく聴いてみましょう。
韻パートのドンツン、それから締太鼓のツクテケ、そこに大間のキメが入ってきます。
音像としては、ドンツンの方が前にあって、ツクテケが軽やかにバックに流れている中で、低音のキメが入ってくる感じですね。
それを包括したドンドコのニュアンスにしていく必要があります。
意外と大切なのが、ドンドコの間に入ってくるドンドンという8分音符です。
ドンドコ ドンドコ ドンドコ ドンドン
というフレーズが続きますね。
このドンドンの裏拍のニュアンスが軽くなりすぎると、曲としても滑っていってしまうし、キメのリズムとも馴染みが悪くなってしまいます。
この裏拍を、しっかり重めに入れていくことが、この曲の推進力に繋がります。
私たちはよく「重めに入れる」という言い方をします。それは「遅めに入れる」のとは違います。太鼓というのは、『ドン』の組み合わせでしかありません。
その一音にどれだけの情報を詰められるか、ということが演奏の充実に繋がっていくわけですが、『ドン』の情報というのは、意外にもその音が出てくる以前のプロセスや、音と音の間にあったりします。
表拍にくる『ドン』と、裏拍にくる『ドン』をしっかり打ち分けるためには、どうすればいいか。
口唱歌で書くならば
『ドン』と『スットン』となりますね。
ここで大切になってくるのが、「重心」と「踏み」です。
自分の重心が、重力方向に対して下がっていく途中にアタックのタイミングがあるのか、上がっていく途中にあるのか、それによって「音の向き」が決まってきます。
表拍に『ドン』とくるときは、重心が下がっていく途中にアタックがあると言えます。(厳密には違うんですけど、文字だとそこまでお伝えできないので、そういう書き方をさせて頂きます。詳しくは実際にお会いできるときに!笑)
裏拍に『スットン』とくるときは、逆に重心が上がっていく途中にアタックがあることになります。
この『スッ』の部分は「踏み」になるわけです。この「踏み」をしっかりとることで、音を「重めに入れる」ことができます。キメのリズムは、まさにそのことが大切になってきます。
ドン ウン ウン スットン スットン ウン ウン スト ドン
と続いていくわけですが、この休符の部分にこそ、音を充実させていく秘密が隠れています。
この一音一音の「音の向き」と質感について考えてみると、また新しい価値観が見えてくるかもしれません。
アンサンブルを揃えるというのは、音が出ている部分だけを揃えることではありません。そうすれば自ずと、それぞれのリズムのニュアンスが見えてきます。
例えば、[A2]の担ぎ桶の4拍目の裏、
ドンドコ ドンドコ ドンドコ ドンドンと
キメのリズムの4拍目の裏
ドン ウン ウン スットンは
同じタイミングで鳴っています。
よっぽどの事情がない限り、そこの「音の向き」は揃えたいですね。そういうふうにして、アンサンブルの質を高めていきます。それに加えて、どういった表現をするか、ということも大切になってきます。
目線は?意識のベクトルは?
今このシーンは誰を見せたいのか?
体の中心の開き具合や、胸の角度を少し変えるだけでも、見えてくる印象が大きく変わります。
前に出てくるときに、体の中心(眉間や胸)を開きながら出てくると、実際の距離以上に前に出てきた感を出せます。逆にバッキングにいるときは、いい意味で背景としてそこに存在できれば、見た目の奥行きにも繋がります。
そうすると、フォーカスがはっきりしてきますね。
全体的にぼやっと伝えるのではなく、シーンの切り替わりをはっきりさせることで、メリハリのある演奏になっていきます。
他にも、私たちが大切にしていることはたくさんあるのですが、文字でお伝えするのも難しいので、今日はこのへんで…
引き続き「春風」を、楽しみながら深めて頂けると嬉しいです。
私たちも、毎日深めていく稽古ばかりです。
「これでできた!」ということはありません。
だから、いつまでもやり続けられるのかもしれませんね!
今日お伝えしたのは、あくまで私の価値観です。
絶対にこの通りやった方がいい!というわけではありません。
正解や不正解という話ではなく、太鼓を通じて、お互いの価値観や感覚をすり合わせていくことが大切だと思っています。
そのとき、皆が共有できる話題やきっかけに「春風」が為り変われたなら…
それ以上に嬉しいことはありません!!
また皆さんと、太鼓の話ができる日を心待ちにしています!
プレイリスト|春風
<メイン動画>
春風 Shunpuu(正面)https://youtu.be/ojhbnndvkBI
春風 Shunpuu(アングル色々 ver.)https://youtu.be/JnuYwpJUY7w
↓ぜひ演奏の仕方など研究してください🎵
春風 全パートMIX: https://youtu.be/RDZsrXYmA78
春風 平胴太鼓・締太鼓 https://youtu.be/gyFiQIuZdwA
春風 篠笛 https://youtu.be/AfKe7fZJi_U
春風 長胴太鼓 https://youtu.be/RNIPtl6rsWE
春風 担ぎ桶・ジャンガラ https://youtu.be/SsAgjwaF8BY
鼓童提供楽曲とは
ケンタタクユウタタク2019/住吉佑太
ケンタタクユウタタク2019
「タタク」という行為
ただそれだけをむき出しにしたようなパフォーマンス
何を「タタク」か、という外的要因に捉われず、
「タタク」行為そのものにおける内的要因
自分たちの魂の震えを表現することだけを目的とした
完全即興演奏
自分たちが何を「タタク」か分からない
そして、それをただ面白がる
無邪気で粗暴でありながらも
家族への愛を忘れない、2人のパパたちによる音楽…笑
ケンタタクユウタタク2019
遊びに来てください!!
踊っていいよ!!