東日本大震災より15年/船橋裕一郎

東日本大震災から15年の月日が経ちました。震災により犠牲となられたすべての方々に、心より哀悼の意を表します。そして、深い悲しみと困難の中を歩み続けてこられた皆様に、あらためて敬意を表します。15年という時間が流れても、あの日の記憶と、その後の歩みは、私たちの中に静かに在り続けています。自然の脅威の前で、人は決して無力ではなく、支え合いながら生きていく存在であることを、あらためて教えられました。その後も日本各地で自然災害が起こり、また世界に目を向ければ、理不尽な争いが続いています。その現実に心を痛めながらも、私たちは、芸能が人の心に寄り添い、明日へ向かう力となり得ることを信じています。鼓童は、これからも佐渡という土地に根ざし、音を通して人と出会い、繋がり、各地へと歩みを続けてまいります。その一つひとつの場に、祈りと願いを込めて。

2026年3月11日
午後2時46分

謹んで黙祷を捧げます。鼓童代表 船橋裕一郎

鼓童 演目図鑑/《モノプリズムー日本太鼓群とオーケストラのための(1976)作品29》

「モノプリズム」指揮:下野竜也、管弦楽:東京交響楽団/ミューザ川崎、2021年(写真:岡本隆史)

■楽曲データ

  • 作曲者:石井眞木(1936〜2003)
  • 初演:1976年7月25日/バークシャー音楽祭(マサチューセッツ州タングルウッド)/指揮:小澤征爾/演奏:佐渡の國 鬼太鼓座、ボストン交響楽団
  • 構成:第1部「序」はオーケストラのみの演奏。第2部「モノプリズム」は、オーケストラと共に、7人の太鼓奏者が7台の締太鼓、1台の大太鼓、3台の中太鼓を演奏する。
  • 受賞歴:「尾高賞」(作曲賞)を受賞(1977年)。
  • 演奏歴:国内・海外において20回上演。うち国内では東京9回。大阪3回、札幌、佐渡、仙台、横浜、川崎各1回、海外ではアメリカ、ドイツ、イタリアで各1回上演。(2026年3月時点)
  • 収録アルバム:CD「Mono-Prism」(1991年)SRCL2175

 

誕生の経緯
日本のクラシック界に邦楽器を取り入れた作品が発表されだした1970年代に、鼓童の前身である「佐渡の國 鬼太鼓座」の代表、田 耕氏は数名の作曲家に作品を委嘱を打診していた。
石井眞木氏との出会いは1975年。アメリカ、ボストンで鬼太鼓座の演奏をご覧になった指揮者・小澤征爾氏が「これなら石井眞木さんだ」と紹介してくださった。佐渡の稽古場を訪れた石井氏は、「はじめて太鼓を聴かせてもらってもうビックリしてさ。僕が今まで出会ってきた音楽とは違う、音楽における全く新しい要素があると思った訳よ。」と、まず和太鼓のみの『モノクローム』の譜面が完成。その楽譜において石井氏から要求された音のために、打楽器奏者の山口泰範氏のアドヴァイスを受けながら締太鼓の様々な奏法・音色を生み出し、結果的に太鼓の表現力を大きく広げた画期的な作品となった。

ボストン・シンフォニーホールで「佐渡の國 鬼太鼓座」の公演を観る小澤征爾氏(右はアイザック・スターン氏)1975年。

翌1976年、その新たな和太鼓の表現とオーケストラの響きを融合させて『モノプリズム』が作曲される。タイトルは、日本太鼓の単色=モノクロームと、オーケストラのプリズムの合成語で、それぞれの音楽の特徴を象徴している。

西洋音楽は1950年代以来、頭だけで主知的に何かを理解して音楽するという方向に進み、公衆を逃し始めていて、その時僕も西洋以外の民族の音楽に大きな関心がでてきた。日本の太鼓は昔からただ打つだけ。打ち続けることによって、そこに一種の忘我の世界が形成される。別な言葉で言えば、西洋音楽は、外へ外へという遠心性。それに対して日本の太鼓は求心性を持ち、人間の全身に作用するような種類の音楽。この曲で東洋の考え方と、西欧的オーケストラの多様な世界を対決させると同時に融合させて、新しい世界を切り拓きたかった。そして21世紀に向けて、音楽とはいったい何か?と問いたかった。(石井眞木)

佐渡・大小の旧稽古場での「モノプリズム」稽古。右奥が石井氏。1980年代後半。

 

「天籟」を聴く境地

当時の石井氏の作曲のコンセプトに、『世の中の音は「人籟(じんらい)」と「地籟(ちらい)」の二つがあり、それを超えたところに「天籟(てんらい)」というものがある』という中国の荘子の言葉があった。「人籟」とは人間が出す音。「地籟」とは自然の生み出す音。「天籟」は、この二つを成立させるような根源的な力、大自然の響きをいう。和太鼓も人間の出す音ではあるが、打ち込んで打ち込んで極限まで叩き続けた時、それはいつしか人間の行為から出た音ではないというところまで、自然の響きへと変換する。石井氏は和太鼓を「地籟」、オーケストラを「人籟」と位置づけ、その二つを融合させることによって、「天籟」を聴く境地を創造した。

「モノプリズム」指揮:下野竜也、管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団/すみだトリフォニー、2008年

 

曲の構成
第1部「序」の冒頭弱音は、全体のオーケストラ音響を象徴し、アジアに伝わる響き、リズムを誘導する。響きの層の起伏は、連続と非連続の内に、日本太鼓の登場を意味する。
第2部「モノプリズム」の日本太鼓の最弱音は、東洋の太鼓伝統への挑戦を象徴している。可聴限界(ピアニシシシモ)の静寂から始まり、やがて雷鳴のような響きへと変化する太鼓群。最強音の連打に時は静止し、新しい響きが生じる。太鼓の凝固する時、堆積する響き、それをオーケストラ音塊が断ち切ろうとする。(CD「モノプリズム」石井眞木氏の解説より)

オペラハウス、リハーサル室(西ベルリン)(1984年5月)

鼓童メンバーより
稽古の時、太鼓独特の肉体を通しての表現についてはむろんのこと、日本人ならではの感性というものを非常に重要視され、その指示は細部に渡りました。ある時などは「そのトレモロは松籟(しょうらい)のように」と言われ、要領を得ない僕たちを庭の松の木の下まで引き連れ「これが松籟だよ」と、松の葉が風に揺らぐ音にみんなで耳を傾けたのを思い出します。(山口幹文)

 

石井眞木(1936〜2003)
日本のモダン・ダンス、舞踏の草分けである舞踏家、故・石井漠の三男として東京で生まれる。東京で作曲を学んだ後、1958年に渡独し、ベルリン音楽大学作曲家に在籍、1962年に帰国。1969年、西ベルリン市の「芸術家プログラム」の招きで再渡独。以来、ベルリン・東京の二都を本拠に、作曲家・指揮者として精力的に活動を展開する。
1960年代後半に日本の伝統音楽に着目して以来、西欧的技法と日本の伝統音楽の要素による「二つの音世界からの創造」を命題に、感性豊かな独自の作品を内外で数多く発表してきた。鼓童はこれまでに「モノクローム」、「モノプリズム」、「入破(1981年初演)」、「輝夜姫(1984年初演)」を演奏している。
主な受賞歴:「尾高賞」、「中島健蔵音楽賞・大賞」、「ドイツ批評家賞」、「京都音楽賞大賞」、「日本伝統文化振興賞」など多数。1999年秋には「紫綬褒章」を受章。2003年逝去。

(月刊「鼓童」2008年11月号の記事に一部加筆しました)

2026年9月5日(土)鼓童創立45周年記念公演 鼓童×東京フィルハーモニー交響楽団「モノプリズム」(東京都文京区)

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「寄付月間・研修生育成支援」キャンペーンご協力への御礼

このたびは、「研修生育成支援」ご協力のお願いに際し、目標額を大きく上回るご支援をお寄せいただき、心より御礼申し上げます。多くの皆さまからの温かな想いと信頼に触れ、研修所が担ってきた役割、そしてこれから果たすべき使命の重さを実感しております。

太鼓の技術のみにとどまらず、「くらし、まなび、つくる」ことを通して人を育むこの場が、今も必要とされていることを、皆さまのご支援を通じて改めて実感することができました。

お寄せいただいたご寄付は、研修生が自然と向き合いながら心身を育む農作業を支える農機具や野菜や米などの保管庫などの購入のために大切に活用させていただきます。

研修制度をスタートし40年を迎えるこの節目の年に、心強い後押しをいただけたことに深い感謝を込めて、鼓童はこれからも、佐渡の地に根ざし、太鼓芸能の可能性を探りながら、皆さまの想いに応える歩みを続けてまいります。改めまして、心より御礼申し上げます。

鼓童 代表、鼓童文化財団研修所 所長 船橋裕一郎

 

鼓童文化財団事務局より

2025年11月10日〜2026年1月12日の間に行いました「寄付月間」キャンペーンでは、目標額としておりました50万円を大きく超え、80万円余りのご支援を皆様からお寄せいただきました。深く御礼申し上げます。

事務局では、研修所からのお礼状と、1万円以上のご寄付をくださった皆様への研修所米(3合・約450g)を2月中に発送するべく、準備を進めております。

 

鼓童は、寄付文化を日本中で広めるための「寄付月間」という全国キャンペーンに、賛同パートナーとして参加しています。

「寄付月間2025」公式サイト https://giving12.jp/

2.3月の商品と特典のお知らせ/鼓童オンラインストア

2/12(木)より鼓童オンラインストアにて

「早春 鼓童オンラインストア福袋」EC “SHIMAござ”が好評発売中です!

早春 鼓童オンラインストア福袋/価格:¥10,000(税込)※数量限定

コドウさんグッズと佐渡のアイテムをたっぷり詰め込んだ特別セットに、福袋限定特典付き!

コドウさんTシャツは各サイズS、M、L、XLでご用意しておりますので                          お好きなサイズをお選びください。
数量限定のため、ぜひお早めにお求めくださいませ!

EC “SHIMAござ”/価格:¥3,000(税込)

昨年のアース・セレブレーション2025 で好評だった「SHIMAござ」が
ついに 鼓童オンラインストアでも発売となりました!

EC “SHIMAござ”は、佐渡・両津の「ヤマダ畳センター
東京と佐渡・相川を拠点とする衣料品製造会社「ulcloworks
そして「Earth Celebration」の三者協業により誕生した特別な一枚です。

鼓童の半纏でもおなじみの“鱗(うろこ)柄”の畳縁。
裏面には、防水・透湿性を備えたタイベックシート。

一つひとつ、手作業で丁寧に仕立てています。

お部屋のアクセント、お茶時間に、野外や屋内での一人用敷物にも。

いぐさの香りとともに、室内でも外でもお楽しみください。

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44期生2年次スタート!

佐渡に寒波が訪れる中、44期生7名での2年次がスタートしました。水道からポタポタと垂れた雫が逆氷柱になるほど、研修所は屋内でも冷え込んでいます。そんな厳しい環境の中でも、44期生は毎日「込む!」をテーマに稽古に励んでいます。

三宅の基礎稽古風景

鬼剣舞の一番庭を毎日3回踊り「込む!」、三宅を打ち「込む!」、千里馬を体に入れ「込む!」——

フォームに注意して、しっかりと打ち込む!

スタートダッシュを思いきり切ろうと、何事にも全力で“込”んでいる姿がとても頼もしいです。
寒さに負けず、自分自身に挑み続けるその姿に、これからどんな変化が生まれていくのか、ますます楽しみになっています。

腰をしっかり下げて、しっかりと打ち込みます!

自然から受け取る様々なエネルギーを味方にしながら、体にも気持ちにも力を蓄え、さらに大きく成長していってくれることを願っています。

元気いっぱい、2年次スタートです!!

深化する鼓童 “入破”を期待して 原田敬子(作曲家)

鼓童の代表的演目《モノクローム》、《モノプリズム》(石井眞木作曲)は、2026年に初演50周年を迎えます。そして鼓童は創立45周年。この節目となる機会に作曲家の原田敬子さんからメッセージをいただきました。

photo: 岡本隆史

個々の才能が煌めくエネルギッシュな舞台、さわやかな汗、満面の笑顔、客席への語りかけ、喜びと興奮、そして喝采。ああ、これが長年愛され、世界中のファンを魅了してきた鼓童さん(以下敬称略)の魅力なのだろうと、近年の国内ツアーを見て感じる。それは、私が新曲《鬼》を書き下ろして鼓童と初めて協働した、 NOISM × 鼓童《鬼》(2020-22年 (公財)新潟市芸術文化振興財団委嘱、金森穣氏による振付演出)の舞台とは全く違う、鼓童本来の楽しい舞台なのだが、実は気づいた事がある。《鬼》の直後に制作された新作以来、何か、新鮮かつ異なる深化もしているようなのだ。それは響きや音楽の“間”など、ディテールに聴きとれる。鼓童ファンの皆さんも感じているだろうか。

Noism × Kodo 《Oni》(2024年)
Photo by Yuichi Kayano

本稿では、2026年の国内ツアーで再演される、石井眞木(1936-2003)作曲《モノクローム》(1976年作曲、世界初演 ベルリン)の魅力、同じく再演される筆者の作品《鬼》、そして鼓童への期待などについてお伝えしたい。

さて、鼓童の前身である「佐渡の國 鬼太鼓座」が《モノクローム》(1976)を初演して50年。今の鼓童にとって、この曲はどのように映るのだろう。筆者は作曲者の石井氏に思いを巡らせる。1970年代の半ば、日本の作曲界は高度成長期と共に活発だった。石井氏はドイツと日本を行き来し、欧州で流行した「前衛」を日本に伝える重要な一人だったが、石井氏自身は、いわゆる西洋の前衛とは異なる、原始的な素直さのような何か、そう、“自然現象に近いような作風”を持つ、豪快で異色の作曲家。7名で演奏する《モノクローム》には、その石井氏が50年以上前に鼓童の前身である「鬼太鼓座」に出会って感じた事が、凝縮されているように思えてならない野心作にして快作。ところで当時、「鬼太鼓座」のために作曲されたオリジナル音楽は無かった。それもそのはず、和太鼓をメインとする、地元の民俗芸能継承としてではない新たな方向を目指した団体なのだから。その頃、大雑把に言えば、日に20キロを走り身体を鍛え、とにかく大きな音で太鼓を連打する集団だったそうだ。

《輝夜姫》のリハーサル、奥が石井眞木氏(1983年)

それが、この作品では、殆ど聴こえないような音を、独奏で、締め太鼓の速打ちにより開始、その後、残りの6名が徐々に、全く同じリズム(ユニゾン)の速打ちで重なっていく。そして7名が揃った後に30秒弱かけてフォルテッシシモfffまで徐々に強くなる。ここに石井氏の美学と挑戦を感じる。石井氏のHPによると「石井は、彼らにとって全く新しい打法を考案し、その新打法が、彼らの<血となり肉となる>までの訓練を要求し実践した。当初の訓練は、いわゆるスパルタ的な厳しいものだった。(中略)まるで仏教の求道者の<行>に近いものであった。この成果は、(中略)信じられないような、演奏の異常な<正確さと力動感>を獲得することになる。(中略)」

《Oni》の稽古風景、右奥が原田氏(2021年)

ここで、筆者が鼓童に作曲した《鬼》の制作プロセスを思い出した。作曲家 石井氏は、鼓童に特別な訓練を要求したが、その約45年後、筆者の新曲《鬼》の練習に際して、鼓童の演奏メンバー自らが、《鬼》のために“エチュード”なるものを考案し、毎回のリハーサル前に行っていたのだ。理由を尋ねると「こういう曲は初めてなので。音を出す直前の集中を高めるために」旨、初演時のリーダーが冷静に答えた。筆者は感銘を受けた。なぜなら、筆者の音楽の最大の特徴の一つは「予兆」だから、その音を発する直前までの、身体内部のエネルギーのコントロールが極めて大切。鼓童は、初めて協働する作曲家(筆者)の音楽の特徴を、真摯さ、繊細さ、そして直観力で、既につかんでいたのだ。実は筆者が、《鬼》の作曲以前に佐渡の鼓童村を訪ね、目の前で演奏を聴いた時に「これは凄い可能性を持った団体。でもポテンシャルの2割くらいしか使っていないのでは」と感じていた。そして、振付演出の金森氏が「これまでの鼓童さんとは違う何かを聴きたい」と言った。筆者は、’90年代半ばから「何か新しい挑戦をするには、先ず音楽の媒体(演奏家自身)の内部が変わることが必要だ。そうでなければ表面的な音の面白さや技術の披露になりがちで、真の新鮮さが聴き手に届くことは無い」という考えで作曲してきた。それで《鬼》では、鼓童の身体の内部を変えてしまうような、そんな音楽を作りたいと思った。完成の数ヶ月後には、筆者の期待をはるかに上回る演奏に仕上がってきており、《鬼》は作曲者の手を離れ、鼓童の内部に彼らなりの方法で宿った、という感じがしたのだ。こんな嬉しいことは、作曲家の人生でそう頻繁に起こることではない。

《入破》初演時のリハーサル、右端が石井眞木氏(1981年ケルン)
Photo: 富田和明

あっという間に本稿のむすびになるが、前述の石井氏は1981年、鼓童結成時の祝いに作品《入破》を贈り、HPの楽曲解説に次のように書いている

入破は<新しい領域>に入ることを意味し、また「雅楽」では一種の<変化の形式>を表している。(中略)新生「鼓童」を祝い、新たな飛翔を希って、それまでに書いた「モノクローム」、「モノプリズム」とは異なる<太鼓の世界>を現出させようと意図した。

《モノクローム》photo:岡本隆史

筆者は、あの日《鬼》“エチュード”の誕生を目撃し、石井氏の思いが、現在の鼓童に継承されていると感じた。いま現在、鼓童の演奏技術は高度に洗練され、例えばヤニス・クセナキスの打楽器曲だって暗譜で演奏できるだろう。しかし筆者は、輝かしい演奏技術を披露するだけの音楽ではなく、今の鼓童の音楽的な身体が、更に深化するような音楽を作ってみたいと思う。歴代の作曲家たちは、同時代を生きる素晴らしい演奏家との出会いによって刺激を受け、良質の音楽を創造するモチベーションを得てきた。目下、AIの時代に入って音楽も随分と変化した。それでも、自らの身体の内部―それは有限で常に変化する―を繊細に感じとり、自らと他者を同時に聴きとることのできる、生身の人間の心によって打ちだされる響きは、AIには真似できないと思う。そして願わくば100年後にも新鮮に響くような音楽を作ってみたいと思う。今後も続く鼓童の深化と“入破”を期待しつつ。

2025年11月16日 東京にて

 

原田敬子
作曲家。「演奏家の演奏に際する内的状況」に着目し、独自の作曲語法を探求している。
2012年に研究活動をベースとした創作を開始、日本の地域で育まれた楽器や声のフィールドワークをベースに地域独特の音文化を、新たな響きと身体表現により発信するプロジェクト「伝統の身体・ 創造の呼吸」で、鹿児島伝統の薩摩琵琶にとって約130年ぶりとなる新曲を継承者と共作し初演した。
異分野との創作活動も多く、第9回シアター・オリンピックス委嘱作曲家として、舞踊振付家の金森穣氏と新作を発表。2022年には金森氏が芸術総監督を務める舞踊団Noismと鼓童の共演作品《鬼》を作曲。
これまでに日本音楽コンクール第1位、芥川作曲賞、中島健蔵音楽賞、尾高賞、輝く女性賞ほか受賞。現在、東京音楽大学(作曲芸術)教授、鹿児島大学客員教授、同大学国際島嶼教育研究センター客員研究員。
公式サイト: https://www.tokyo-concerts.co.jp/artists/keiko-harada/

 

2026年、新年あけましておめでとうございます。

新年を迎え、謹んでご挨拶申し上げます。
昨年も国内外の多くの皆様に鼓童グループの活動をご支援いただき、心より感謝申し上げます。2025年はワン・アース・ツアーをはじめ、交流学校公演、アース・セレブレーションなど、多彩な舞台をお届けすることができました。各地で皆様と鼓童の“今”を共有できたことは、私たちにとって大きな励みとなりました。

一方で、世界では気候変動や紛争、災害など不安定な状況が続き、日本の地域社会でも少子高齢化や産業の担い手不足、地域行事の継承など、課題が深刻化しています。私たちの暮らす佐渡も同様に、多くの課題に直面する地域です。こうした環境の中で、「太鼓打ちとしてどうあるべきか」「鼓童は社会とどのように寄り添い、関わっていけるのか」を、改めて深く見つめ直した一年でもありました。

鼓童の原点とも言える鼓童研修所では、太鼓の技術のみならず、暮らしや自然、人とのつながりを通して学ぶことを大切にしています。掃除や炊事、農作業、集落の共同作業──一見すると太鼓から離れた営みの中にこそ、確かな響きの源が宿っています。鼓童創立以来の歩みが教えてくれたこの学びを、次の世代へ丁寧に手渡していきたいと考えています。

また、太鼓打ちの身体性──しなやかさ、ぶれない軸、相手の気配を感じとる感性──を、舞台づくりだけでなく組織づくりにも生かし、地域・世代・文化の境界を越えて開かれた鼓童でありたいと願っています。高いと思われがちな敷居を少しずつ取り払い、より多くの方々とつながれる存在を目指してまいります。

2026年、鼓童は45周年を迎えました。この節目を「次の45年」への新たな出発点と捉え、記念公演、国内外ツアー、佐渡での企画やワークショップ、研修所のさらなる充実に向けて歩みを続けます。

太鼓の響きが皆様の日々にそっと力を添えられますよう、引き続き一同精進してまいります。私自身も様々な挑戦を楽しみながら、皆と共に歩んでまいります。

本年も変わらぬご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

2026年元旦
太鼓芸能集団 鼓童
代表 船橋裕一郎

「新潟日報」で研修所をご紹介いただきました。

「夢舞台への原点」として、本年9月に3回にわたってご紹介いただきました。

佐渡市を拠点に世界的に活躍する太鼓芸能集団「鼓童」の演奏者やスタッフを養成し、組織の土台を支えてきた研修制度が丸40年の節目を迎えた。近年は応募者減少で変化も迫られている。制度の歩みとこれからを見つめた。(取材:新潟日報佐渡総局・長尾胡春さん)

<上>

携帯電話は禁止、箸は利き手と逆の手で…「生活即舞台」の理念とは?稽古に励む研修生の1日に密着

<中>

舞台メンバーは狭き門…ただ門戸広げ目指す道の選択肢拡大!社会に必要とされる人材育成

<下>

地域と仲間、「体温が伝わる距離」で絆培った研修生の”その後”は…佐渡で新たな道歩む人も!

 

※全文をお読みいただくには、新潟日報パスポート等の会員登録が必要です。

 

鼓童文化財団研修所について

こちらのページもぜひご覧ください。

鼓童文化財団研修所について

鼓童研修生育成支援について

12月は「寄付月間」。研修所より皆様へ、感謝を込めて。

 

2025年秋の新商品のお知らせ/鼓童オンラインストア

鼓童オンラインストアより秋の新商品のお知らせです。

11月13日よりご注文いただけます!


【鼓童グッズ】

鼓童ミニアルバム「鼓童撰集Ⅳ」/価格:¥2,000(税込)

11月24日(月・振休)発売/予約受付中※発送は11月24日以降となります。

鼓童撰集シリーズの第4弾!

三宅島芸能同志会の皆様をゲストに迎え、 近年「祭音」公演で披露してきた「海流」を待望の音源化!

今年1年を彩る、旬な楽曲たちを中心に選曲した、全5曲入りのミニアルバムです。

お得なセット販売もございます。

▶︎CD 鼓童撰集Ⅳ & 鼓童カレンダー2026 セット/価格:¥3,000(税込)

通常価格より500円お得なセット販売となっております!

 

鼓童パーカー(UROKO)/価格:¥6,500(税込)

11月24日(月・振休)発売/予約受付中※発送は11月24日以降となります。

日常でも、さりげなく鼓童を楽しめるアイテムです。

 春・秋・冬と、長い季節で心地よく着ていただけます。

 


鼓童×岡本太郎NEWグッズ

メッシュバッグ/価格:¥2,500(税込)

通気性の良いメッシュ素材。A4サイズの荷物もすっぽり入ります。

普段の移動やお出かけにも活躍する、頼れる巾着バッグです。

 

木製キーホルダー/価格:¥1,500(税込)

木の温もりを感じられるキーホルダー。

木製ならではの経年変化をお楽しみいただけます。

 


【鼓童創立45周年記念グッズ】

鼓童カレンダー2026/価格:¥1,500(税込)

躍動感あふれる演奏や、メンバーの逞しさ、美しさなど、ありとあらゆる鼓童の表情が楽しめる2026年版カレンダー。

鼓童とともに歩む一年をお届けします。

 

「鼓童×岡本太郎」45周年手ぬぐい/価格:¥2,000(税込)

人気色の赤を基調とした手ぬぐい。

45周年にふさわしい、力強い世界観を感じられる一枚です。

 

「鼓童×岡本太郎」45周年ステッカー/価格:¥500(税込)

45周年Ver.の「鼓童×岡本太郎」ステッカーが登場しました。

ミラーシルバー素材で耐水仕様。バッグや小物にも安心して貼れます。

 


 

詳細は、鼓童オンラインストアをご覧下さいませ。

鼓童オンラインストア
Tel. 0259-86-3630
http://store.kodo.or.jp/