モノクローム、モノプリズム 50年ものがたり|第4回(10)〜(12)[終]

鼓童の代表曲の一つ「モノクローム」と、オーケストラ版の「モノプリズム」。
この2つの楽曲の2026年の初演50周年を記念して、鼓童のインスタグラムで連載投稿を行っています。
本ブログでもその内容に新たに写真を追加して再掲載。
楽曲にまつわる各時代のエピソードを通じて鼓童の45周年の足跡をご紹介します。


(10)締太鼓のすべてのポジションを経験したメンバーがいる。~1990年代

「昔は『モノクロームができなきゃ鼓童のメンバーじゃない』って言われたものです。」と話すのは見留知弘、締太鼓の7つのパートを舞台ですべて経験した唯一のメンバーです。長い間演奏しつづけてきた「心技体」の蓄積と、打ち手同士の密な関係性に支えられた「モノクローム」は、見留が入団した頃(1990年代初め)には「鼓童のアイデンティティ」として意識されるようになっていました。

「当時、曲を覚えるのには、今のようにビデオもありませんでしたし、そもそも楽譜は前半が決まっているだけなので、ひたすら先輩の演奏を観て覚えました。最初は段取りから、そして徐々に全体の空気感を頭に入れる。そのあと先輩から「ここはこういう風に」って細かく教わりました。
私は今、研修所でも教えていますが、私が指導する以上は、なるべく昔の形を稽古して欲しいと思っています。拍に合せた新しいバージョンをやるのは簡単ですから、実際に締太鼓と銅鑼の2つの音だけで不思議な音空間を作っていくことを経験してもらいたいと考えています。
鼓童じゃなきゃできない『モノクローム』を、他の誰にも追いつけないようなこの曲のこの質感で打ちつづけていくこと、音だけでこれだけ色々なイメージを膨らませて聴いてもらえる演奏を、これからも目指したいと思います。」(見留知弘)

 

「モノクローム」演奏者のポジション

【写真】
1.2009年10月9日、西新井文化ホール(1番)

2.2009年10月11日、飯能市民会館(1番)
32008年12月2日、アミューズメント佐渡(2番)
4.2010年10月9日、大田区民ホール(3番)
5.2017年3月18日、福生市民会館、撮影:宮川舞子(4番)
61993年12月、シアターアプル、撮影:迫水正一(5番)
7.1992年12月、シアターアプル、撮影:岡部好(6番)
8.2004年6月4日、伊勢原市民文化会館(7番)
9.2005年12月2日、アミューズメント佐渡


(11)女性の演者の登場~2010年代

初演以来の長い間、「モノクローム」、「モノプリズム」の打ち手はすべて男性でしたが、2010年代に締太鼓を担当する女性メンバーが登場、今ではその数も増えました。そして「モノクローム」の主要なセンターポジション「一番」を初めて演奏した女性メンバーが、新山 萌(「鼓童ワン・アース・ツアー2024」)です。

「『やってみない?』といわれて、率直に正直に言うと『自分には早いな』と思いました。『一番』というのはキャリアを重ねていろんなところをやって初めて辿り着くものという印象があったので。だから自分でいいのかなっていうのは正直ありました。でも、モノクロームがないツアーにもバチを持ち歩くくらいモノクロームを演奏するのが好きだったので、思い切って挑戦しました。
『一番』は、曲をリードするというよりも、空間を作る方が大きいなと思っていて。『間』とか、『空気感』とか、一番の人の裁量で演目の世界観を作るみたいなところが多いと思います。」(新山 萌)

 

【写真】
1.新山萌、2026年2月8日、サル・プレイエル(パリ)写真:greghphotographer
2.新山萌、2021年10月30日、ミューザ川崎、写真:岡本隆史
3.蓑輪麻弥、2015年3月19日、アミューズメント佐渡、写真:岡本隆史
4.米山水木、2021年10月30日、ミューザ川崎、写真:岡本隆史
5.本間友恵、米山水木、2016年7月1日、浅草公会堂、写真:岡本隆史
6.山脇千栄、2020年11月20日、両津文化会館、写真:岡本隆史
7.小川蓮菜、新山萌、2026年2月18日、ガルスホール(スロベニア)写真:Nada Zgank_Cankarjev dom.
8.勝部しずく、新山萌、サル・プレイエル(パリ)写真:greghphotographer

 


(12・終)佐渡の風土と「モノクローム」~2026年

50年前「佐渡の國 鬼太鼓座」に出逢うため佐渡に渡った作曲家の石井眞木さんは、色彩を失った真冬の佐渡の印象を「モノクローム(白黒の世界)」として描きました。以来、代々の鼓童の打ち手は高みを目指してこの曲を打ち継ぎ、そして今「モノクローム」は、昔からの和太鼓の概念を越えた唯一無二の楽曲として世界の観客を湧かせています。

「僕は、現在舞台に出るだけではなくて、組織全体や研修所のことにも関わっています。創立45年を迎えた今、鼓童は社会に対して舞台からだけではない価値観を提示できると思っています。
地域との関係、国際交流、人材育成、理念や技術の継承や世代交代など、鼓童全体として今まで積み重ねてきたものを、次代の価値観として発信していく。そしてそれを舞台で昇華できると、単に一つの演目をお見せするということに留まらず、鼓童の《くらす、まなぶ、つくる》という生き方の提示になっていく。そこは自分でも楽しみにしているところです。
『佐渡』という風土や場所があったから『モノクローム』という曲を守ってこられたと思っています。これから鼓童の表現がどんどん先に進んでも、この場所や土台をしっかり守って、より面白い場所にしていくことで、一番先端にある舞台表現に結実すると思っています。」(船橋裕一郎)

 

【写真】
1.1982年頃の宣伝用写真/2017年の宣材写真(写真:岡本隆史)
4.作曲家・石井眞木さん 1983年 入間市民会館 バレエ作品「輝夜姫」稽古
6.2026年 佐渡・鼓童村 指揮の下野竜也さんをお迎えしての「モノプリズム」稽古
7.2008年 すみだトリフォニーホール 「鼓童十二月公演」スペシャル 鼓童+新日本フィル

 


(外伝)踊る「モノクローム」伝説

初演以来50年「モノクローム」と「モノプリズム」は、そのほとんどの舞台で、セットや道具に頼らないミニマルな演出で上演されてきましたが、中には踊り手が加わった作品もありました。

鼓童十二月公演「越境」(2007年)演出:秋元淳、写真:岡本隆史

鼓童ワン・アース・ツアー「伝説」(2012年) 演出:坂東玉三郎、写真:岡本隆史

 

鼓童×東京フィルハーモニー交響楽団 「モノプリズム」(東京都文京区)

「モノクローム」は「鼓童十二月公演2026」で演奏いたします。
・12月6日(日) 佐渡市[9月発売]
・12月12日(土)、13日(日) 新潟市[販売中]
・12月17日(木)〜20日(日) 東京都文京区[9月発売]