鼓童若手連中⑩『KAIGARABUSHI』/山脇千栄

Photo: Takuro Susaki太陽劇団に来て、早一週間。

Photo: Takuro Susaki

太陽劇団はどこか鼓童村と似ていて、

アリアンヌさんはいつも母のように
私たち鼓童を見守ってくれています。

気づけばすっかりこの温かさに安心していて、
劇団全体を包んでいる柔らかい愛を全身で受けながら、日々豊かに過ごしています。

私は、舞台で「貝殻節」という唄のソロを歌っています。

貝殻節は、鳥取県の賀露地方の漁港に伝わる民謡で、手漕ぎ船で重労働の帆立貝漁に出る男たちとその家族の心情が歌われている労働歌です。

Photo: Takuro Susaki


この唄に出会ったのは研修生の時。

初めて聞いた時、歌詞の意味はすぐには
わかりませんでしたが、
旋律で心が震えたのを覚えています。

それ以来、好きで歌い続けています。

去年のECの若手連中発足の際、
「貝殻節 歌える?」と遼太郎さんから
鼓童の舞台で唄を歌うきっかけを頂きました。

今回、貝殻節の持つ日本の情景が
パリの皆さんにはどう伝わるんだろうと
佐渡で稽古している期間から
ずっと考えていました。

 Photo: Erika Ueda

パリにきて3日目に一人の太陽劇団のスタッフが

「悲しいメロディだけどこの唄が好き。
唄を教えてくれないか。」

と話しかけて来てくれました。

一緒に歌っていると
だんだん周りが口ずさんでくれるようになり、
今では鼓童と劇団の方達で
終演後の乾杯で合唱するようになりました。

不思議ですが、確実に唄が言葉の壁を超えてみんなを繋げています。

「この唄を聴くと、毎回泣きそうになるんだ」と言ってくれる劇団スタッフの方もいました。

昔の漁師がぽろっと口ずさんだ旋律には
きっと寂しさや厳しさ、愛、生きたい、家族を守りたいという想いと願いが
自然に込められていたんだろうと感じます。

情景は違えども、日本人にもフランス人にも、どこかリンクする部分があるのでは、と思います。

スタッフの一人が貝殻節と同じような
「woman of fisherman」
という唄を教えてくれました。

女性がフランスの漁師に向けて歌う唄だそうです。
この唄もどこか悲しいですが
とても素敵な唄でした。

この唄がフランスにあり続けてきたように、
日本で大切にされてきた貝殻節を
精一杯心を込めて歌い、

その想いがフランスの人々の心のどこか奥底で共鳴できるといいなと思います。

 

2018年7月17日(火)〜22日(日)Kodo Next Generation(フランス・パリ)

Photo: Takashi Okamoto

鼓童若手連中⑨ 「Passion & Energy!」/地代純

私が寝泊まりをさせて頂いている宿舎の隣にはですね、なんと、馬小屋があるんです。

Photo: Koji Miyagi

朝、彼らの高らかなる鳴き声が1日の始まりを告げると、私は寝床から起き上がり、顔を洗い、歯を磨き、無造作についた寝癖を直し、外に出て太陽の光を浴びます。そして軽く朝食を食べ、みんなより少しだけ早く楽器たちが待つ舞台上に向かいました。

昨夜、初日を迎えた、「Kodo Next Generation」。緊張と興奮が織り混ざった私たちの音は一体どんな風に届いたのだろう。

Photo: Mio Takashiro

本日は午前中に太陽劇団の皆さんに向けて太鼓のワークショップが予定されていました。時間は2時間。同じ芸術家、表現者の皆さんと太鼓を叩けることにワクワクしていました。

Photo: Takuro Susaki

私はフランス語を話すことができません。英語もあまり話せません。言葉の壁はもちろんあります。ですが太鼓という楽器は不思議なもので、いざみんなで叩けばそんなこと全く問題にはならないんですね。

Photo: Takuro Susaki

“Passion & Energy”

太鼓を通じてその空間にいるみんなが一つになったように感じた感覚。それは言葉で説明しようとするととても難しいのですが、その空間にいた人達は確かに感じることができた、素敵な感覚でした。

Photo: Takuro Susaki

Photo: Takuro Susaki

昔々、太鼓の音が聞こえる範囲が一つの村であり、一つの共同体であったと言われています。

今、私たちは太鼓と一緒に世界を周り、私たちの太鼓の音を聞いてくださった人々が、ある意味一つの共同体のようになれたら、それは素敵なことだなと思います。

そんな夢のように思えることを目指せるのが「太鼓」という楽器であり「鼓童」という集団なんだなと私は信じていますし、より背中を押してくれるようなそんな時間でした。

Photo: Takuro Susaki

ちょっとワイン飲んできます。

2018年7月17日(火)〜22日(日)Kodo Next Generation(フランス・パリ)

Photo: Takashi Okamoto

鼓童若手連中⑦『見えたい』背景/三浦康暉

photo: Takuro Susaki

パリに来て早や5日が経ち、初日に向け稽古も大詰めです。

稽古終わりには太陽劇団の方々と一緒にワールドカップ観戦をしたり、セッションなどして、スポーツや音楽のボーダレスを再認識しております。

Photo: koji Miyagiさて今回再演となる「若手連中」。

前回は稽古日もほほ無く、勢いだけと言っても過言ではない舞台でした。

ただ熱量は凄まじかった。

Photo: Erika Ueda

しかし、今後の鼓童の舞台を担っていくにはそれだけでは足りません。

今回の若手連中では鼓童演奏者のとしての覚悟、これからの鼓童を担っていくという決意のようなものが演奏者の背景に感じられるようなそんな舞台であり、自分自身もそうで在りたい思っています。

見えたい・・・・」背景。

自分の太鼓に対する思いなのか、滲み出てくる人となりか、はたまた見えてくるのは佐渡の風景なのかもしれません。

photo: Takuro Susaki

太鼓、笛、鳴り物を演奏してるだけで、いや立っているだけ背景が見えてくるそんな舞台であり、演奏者でありたいと思います。

先ずは200%でぶつかってきます!

2018年7月17日(火)〜22日(日)Kodo Next Generation(フランス・パリ)

Photo: Takashi Okamoto

鼓童若手連中⑧「新たな幕開け」/米山水木

ボンジュール!!

本日、「Kodo Next Generation」初日をむかえました。昨年のECから、今回のパリ公演まであっという間に時間が経ちました。

パリでの公演が決まった時、驚きと喜びもありましたが、逆に不安も感じました。けれども、「若手」という事に囚われず「自分と太鼓」と考えた時に、太鼓に対する思いが溢れ出てきて、それをこの同世代と「同じ音の空間」にいる感覚がたまらなく気持ち良くて、なんだか自分が太鼓を始めた頃のことを、思い出すんです。

Photo: Takuro Susaki
初日を迎え、お客様の「拍手」「歓声」「呼吸」全てが自分の身体の中に入ってきて、お客様と一緒にひとつの舞台に立っているような感覚でした。そして、お客様からの「拍手、歓声、呼吸」が「ありがとう。精進して頑張りなさい。」というメッセージにも感じました。最後はスタンディング・オベーション、拍手で包まれました。

Photo: Takashi Okamoto

公演後、お客様が思い思いに話している姿を見て、感じました。「自分⇔太鼓⇔観客」、お客様はその人の太鼓を観て「今までの太鼓人生」を感じるからそこに感動が生まれて、技術などはそれについてくるものであると思いました。どれだけ自分が太鼓と向き合えるのか、まだまだ幕は開いたばかりです。現状に満足することなく残りの公演も勤めて参ります。

Photo: Takuro Susaki

2018年7月17日(火)〜22日(日)Kodo Next Generation(フランス・パリ)

Photo: Takashi Okamoto

鼓童若手連中⑥「LIBERTE EGALITE FRATERNITE」/宮城紘司

昨年、ECシアター「鼓童若手連中」を立ち上げる際にスタッフ陣も若手で揃えたいという遼太郎さんの思いからお声がけいただき、嬉しい事に今年も関わらせて頂ける事になりました。

当時、私は準メンバーからスタッフへ転身して半年も経っていない身でした。正直なところ私は「若手」という以前にせいぜい「新米」という程度で「制作」というのも名ばかりでした。右も左も分からず、自分に何ができるのかを毎日自問自答していたのを覚えております。きっと今の篠くんと同じような心境だったのだと思います。

Photo: Takuro Susaki

あれから一年間鼓童の制作スタッフとして国内外を周り、失敗を重ねながら経験を少しずつ積んできました。

経験を積むということがとても難しく、体験を重ねるだけではなかなか積みあがってくれず、その都度の発見や反省を踏まえ、毎度新しいことに挑戦しなければ自身の引き出しが増えることはありませんでした。

しかし、今回太陽劇団から頂いた2週間に及ぶ滞在期間には新しい引き出しを増やせるキッカケが宝石箱のように溢れています。

Photo: Takuro Susaki

太陽劇団の本拠地はパリのCartoucherieという地域にあります。パリ市街から車で20分ほど走ると都会の風景から一変し、生い茂った木々が道路脇に増えてきます。しばらく進むと、「ヴァンセンヌの森」に入り、道路に面した門をくぐればそこには開けた敷地が広がっています。そこに太陽劇団の本拠地があります。

Photo: Takuro Susaki

太陽劇団の他にも幾つかの劇場が広場を囲い、地域の子供らが通う幼稚園や乗馬場などもあります。
「パリ」と聞いて真っ先に浮かぶ凱旋門やエッフェル塔が聳え立つイメージとは異なりました。

 

Photo: koji Miyagi

そんな中、横長に大きく広がりどっしりと構える太陽劇団劇場の入り口には「LIBERTE EGALITE FRATERNITE」と書かれてあります。

意味は「自由 平等 博愛」です。

Photo: koji Miyagi

聞くところによると、彼らの間に上下関係はなく、皆平等であるべきという理念のもと活動をされています。そのため、俳優、裏方、音楽家やシェフ、演出家にも給与の差はないそうです。

彼らが求めているのは個人が「出世」することではなく、共に「Style of Life (生活の在り方)」を集団として充実させることだそうです。

太陽劇団は世界各国から多くの難民を受け入れ劇団の一員として受け入れることで彼らの生活を支援されています。

Photo: koji Miyagi

食事準備の様子

何人もの難民が今の私たちのようにここで食事をいただきながら寝泊りをしていたそうですが、今では多くが自立した生活を送られているそうです。

一時期に比べると人数は減ったようですが今でも、スーダン、アフガニスタンやチベットなどからそれぞれの背景を持った方々がここCartoucherieで太陽劇団と一緒に生活をしています。もちろん、太陽劇団の演出家であるアリアーヌ・ムヌーシュキンさんも難民として受け入れている家族を我が子のように可愛がっています。

Photo: koji Miyagi日中は、幼稚園の子たちが先生と一緒に私たちのリハーサルを見学にきたり、馬小屋から広場まで気晴らしに散歩に出た馬の足元を子供たちが遊んだりしています。天気が良ければ外で思い思いの音を奏でる若者もいれば、夕方になるとワインを片手に宴が始まったり、、、

劇場に囲まれた広場には人種や宗教など関係なく様々な人々が集い、みんなが思いやりを持った温かい心で接し、笑顔がいつまでも絶えません。

Photo: koji Miyagi

私からすると理想郷のような場所であり、もしかすると自分たちが目指している集団の在り方もこのようなものなのかもしれない、、、と思いを毎日巡らせています。

この地に訪れ4日間過ごした今、アリアーヌ・ムヌーシュキンさんが何故私たち若手をここに招待してくださったのか、彼女の願いが段々と実感として分かってきた気がします。

W杯決勝の中継を私たちはフランス人とだけでなく、インド人、スーダン人、アフガニスタン人、チベット人と共に応援しました。

試合終了後、優勝を最後まで一番大きな笑顔で祝福していたのはスーダンから来た女性でした。
自身の生まれ故郷のように喜び、テレビに向けて拍手を送り続けていました。

Photo: Takuro Susaki

太陽劇団の「自由 平等 博愛」が根付く環境下で

鼓童の「くらす まなぶ つくる」がどのような形として「Kodo Next Generation」に表れるのか。。。

幕開けまであと1日となりましたが、今から楽しみで仕方がありません。

2018年7月17日(火)〜22日(日)Kodo Next Generation(フランス・パリ)

Photo: Takashi Okamoto

株式会社 北前船、有限会社 音大工 スタッフ紹介