鼓童若手連中⑥「LIBERTE EGALITE FRATERNITE」/宮城紘司

昨年、ECシアター「鼓童若手連中」を立ち上げる際にスタッフ陣も若手で揃えたいという遼太郎さんの思いからお声がけいただき、嬉しい事に今年も関わらせて頂ける事になりました。

当時、私は準メンバーからスタッフへ転身して半年も経っていない身でした。正直なところ私は「若手」という以前にせいぜい「新米」という程度で「制作」というのも名ばかりでした。右も左も分からず、自分に何ができるのかを毎日自問自答していたのを覚えております。きっと今の篠くんと同じような心境だったのだと思います。

Photo: Takuro Susaki

あれから一年間鼓童の制作スタッフとして国内外を周り、失敗を重ねながら経験を少しずつ積んできました。

経験を積むということがとても難しく、体験を重ねるだけではなかなか積みあがってくれず、その都度の発見や反省を踏まえ、毎度新しいことに挑戦しなければ自身の引き出しが増えることはありませんでした。

しかし、今回太陽劇団から頂いた2週間に及ぶ滞在期間には新しい引き出しを増やせるキッカケが宝石箱のように溢れています。

Photo: Takuro Susaki

太陽劇団の本拠地はパリのCartoucherieという地域にあります。パリ市街から車で20分ほど走ると都会の風景から一変し、生い茂った木々が道路脇に増えてきます。しばらく進むと、「ヴァンセンヌの森」に入り、道路に面した門をくぐればそこには開けた敷地が広がっています。そこに太陽劇団の本拠地があります。

Photo: Takuro Susaki

太陽劇団の他にも幾つかの劇場が広場を囲い、地域の子供らが通う幼稚園や乗馬場などもあります。
「パリ」と聞いて真っ先に浮かぶ凱旋門やエッフェル塔が聳え立つイメージとは異なりました。

 

Photo: koji Miyagi

そんな中、横長に大きく広がりどっしりと構える太陽劇団劇場の入り口には「LIBERTE EGALITE FRATERNITE」と書かれてあります。

意味は「自由 平等 博愛」です。

Photo: koji Miyagi

聞くところによると、彼らの間に上下関係はなく、皆平等であるべきという理念のもと活動をされています。そのため、俳優、裏方、音楽家やシェフ、演出家にも給与の差はないそうです。

彼らが求めているのは個人が「出世」することではなく、共に「Style of Life (生活の在り方)」を集団として充実させることだそうです。

太陽劇団は世界各国から多くの難民を受け入れ劇団の一員として受け入れることで彼らの生活を支援されています。

Photo: koji Miyagi

食事準備の様子

何人もの難民が今の私たちのようにここで食事をいただきながら寝泊りをしていたそうですが、今では多くが自立した生活を送られているそうです。

一時期に比べると人数は減ったようですが今でも、スーダン、アフガニスタンやチベットなどからそれぞれの背景を持った方々がここCartoucherieで太陽劇団と一緒に生活をしています。もちろん、太陽劇団の演出家であるアリアーヌ・ムヌーシュキンさんも難民として受け入れている家族を我が子のように可愛がっています。

Photo: koji Miyagi日中は、幼稚園の子たちが先生と一緒に私たちのリハーサルを見学にきたり、馬小屋から広場まで気晴らしに散歩に出た馬の足元を子供たちが遊んだりしています。天気が良ければ外で思い思いの音を奏でる若者もいれば、夕方になるとワインを片手に宴が始まったり、、、

劇場に囲まれた広場には人種や宗教など関係なく様々な人々が集い、みんなが思いやりを持った温かい心で接し、笑顔がいつまでも絶えません。

Photo: koji Miyagi

私からすると理想郷のような場所であり、もしかすると自分たちが目指している集団の在り方もこのようなものなのかもしれない、、、と思いを毎日巡らせています。

この地に訪れ4日間過ごした今、アリアーヌ・ムヌーシュキンさんが何故私たち若手をここに招待してくださったのか、彼女の願いが段々と実感として分かってきた気がします。

W杯決勝の中継を私たちはフランス人とだけでなく、インド人、スーダン人、アフガニスタン人、チベット人と共に応援しました。

試合終了後、優勝を最後まで一番大きな笑顔で祝福していたのはスーダンから来た女性でした。
自身の生まれ故郷のように喜び、テレビに向けて拍手を送り続けていました。

Photo: Takuro Susaki

太陽劇団の「自由 平等 博愛」が根付く環境下で

鼓童の「くらす まなぶ つくる」がどのような形として「Kodo Next Generation」に表れるのか。。。

幕開けまであと1日となりましたが、今から楽しみで仕方がありません。

2018年7月17日(火)〜22日(日)Kodo Next Generation(フランス・パリ)

Photo: Takashi Okamoto

株式会社 北前船、有限会社 音大工 スタッフ紹介