響き合う/石原泰彦
最後の公演地、北京。街には新旧さまざまなビルがたち並び、駅舎も手の込んだ作りで壮観。
道路には、きれいなバスも走っていれば、昔ながらの三輪バイクも健在です。
近くの公園では、明るくなると人が集まり始め、思い思いに体を動かしています。私も早起きして「朝活」、思い切って卓球の仲間に入れてもらいました。(石原は写真上・左)
開かれた雰囲気の上海、エネルギー感溢れる広州。それに比べると少し落ち着いてどこか昔の中国を思わせる北京は、これまでの公演地ほどの盛り上がりはもしかしたらないのではないだろうか。そんな少し漠とした不安を、どこかで感じていました。
ところが、蓋を開けてみるとアンコール曲中の拍手、そして歓声はこれまでの公演地を凌ぐのではないかと思われるほど。何ともまっすぐな中国の皆さんの感情表現は、ここにも健在でした。
今回の旅、普段は研修所を担当し佐渡で日々研修生に向き合っている私が、スタッフの一人として同行しました。
いつもは、鼓童の音を生み出すその「土台づくりの場所」にいる私。今回は「その音の届く先」に、2週間身を置きました。
その旅の中で、こうして太鼓を携えて世界を旅している活動の意味を、改めて五感で感じてみたい、と思っていました。
鼓童には、掲げている活動理念があり、その前半部分は「太鼓とともに世界をめぐり、・・・」で始まります。
今回は6公演、見てくださった方々は7千人余り。14億人近い中国の人口からするととても小さな一歩ですが、大きな大きな中国を、19年ぶりに太鼓とともにめぐることができました。
そして活動理念の後半は「・・・、多様な文化や生き方が響き合うひとつの地球を目指します」と続きます。
何か大きすぎて、何となくイメージで捉えて終わってしまいがちなこの部分も、実際の旅の中で感覚的に捉えてみたいと思いました。
街ゆく人々の様子、食べ物、生活習慣、仕事の進め方、などなど。その違いに、驚いたり、時に戸惑ったり。またそのつながりに、面白みを感じたり。
<中国で出会ったそんなこんな・・・
①えっ?これも食べるの?(アヒルの口がスーパーに)
②「朝から外食?」(朝の外食は日常/テイクアウトも)
③これがうわさの・・・北京ビキニ(暑さをしのぐため、シャツを半分あげてお腹を出す/鼓童メンバー健吾が再現。※おなかが引き締まりすぎていたので、膨らませてもらっています)
④「そこまで言う?」(その場で言うべきことを言って、物ごとを進める。見ていて少しドキドキするけれど、お互い言い終わったら「試合終了〜」という感じ。オモシロイ・・・。)
⑤入国の手荷物検査、舞台で使う「篠笛」を持っていたメンバー:欧米では「これは何だ?」とよく引っかかるんですけど、同じアジアだからすぐ分かってもらえました
自分の感覚と違うものとの出会いの連続、そこには「合う・合わない」「好き・苦手」といった感情が生まれることもあります。
ただ、その場所に身を置いてみると、「響き合う」という感覚は、何か無理に好きになったり、受け入れようとしたりというようなことではなく、単純に「互いに知る」ということ、そして「互いに自分でいる」ということのように思いました。
いろいろ(多様)だけど、もとは一緒(ひとつ)。
例えば、ひとつの細胞がそれぞれ違う役割に分化しながら、ひとりの人間となるように。
例えば、様々に進化した生き物が集まって、この世界を作っているように。
太鼓の原始的な音は、そんなことを感覚的に呼び覚ましてくれるように思います。
「あー、元々は一緒(ひとつ)なんだなあ」と感じながら、お互いの違い(多様)を知る(響き合う)こと。
そしてバランスが取れている状態が「ひとつの地球」なのかなあ、と。
この活動理念、壮大な感じもするけれど、まずは自分の身の回りでこんな感覚を持てるようになることが大事かな・・・。
<鼓童の活動理念>
私たちは、太鼓とともに世界をめぐり、多様な文化や生き方が響き合う「ひとつの地球」を目指します。
鼓童文化財団研修所
https://www.kodo.or.jp/apr