リズムのないリズム/住吉佑太

今回初めて、ケンタタクユウタタクとして劇中音楽を担当させていただいた「Liebestraum」の本番現場に、中込健太と2人で立ち会ってきました。

写真:大洞博靖

照明の山口明子さん、美術の多田さやかさん、そして踊りの皆川まゆむさん。
それぞれの個性がぶつかり合い、融合しあって、今までに観たことがない舞台空間が出来上がっていました。

写真:大洞博靖

そんな世界の一端を、音楽で担えたことがとても嬉しく、自分たちの作った音から、世界が広がっていくその過程は、とても面白く、勉強になるものでした。

今回、お声がけいただいた、皆川まゆむさんとの出会いは、2020年の秋、香川県は栗林公園でのパフォーマンスがきっかけでした。

写真:大洞博靖

ショーの合間を縫って、一緒に公園でセッションをして遊んだとき、自分たちの出すリズムが、いつもと違う存在感であることに気付かされました。音楽的な条件だけで進行すると、踊りとぶつかってしまうような感覚がありました。

写真:大洞博靖写真:大洞博靖今回の音作りにおいても、そういった踊り手のもつリズムと、私たちの発するリズムが、お互いに同じ存在感で舞台空間にあるということを常に意識しました。

例えば、音は変化しないドローン系のものであったとしても、まゆむさんが周期的に体を動かしたり、緩急をつけたりすれば、そこにはある種のリズムが生まれます。  ※音高の変化なしに長く持続される音

音楽がその隙間を埋めてしまわないように。

でも時には、お互いに拮抗しあったり、それぞれ関係なく進行したりしながら音と踊りの世界が交錯することで、そこに大きなうねりが生まれていきました。

写真:大洞博靖

そしてさらに、照明や美術の効果も加わって、これまで辿り着いたことがないような舞台世界が作られていく。
こうした作曲体験は、自分の音楽観にも大きく影響を与えてくれました。

「律動は人類のアイデンティティである」という伊福部昭さんの言葉があります。自然界にありふれた「パルス」と、人為的に生み出される「リズム」の違いを認識できるのは人間だけだというお話です。

ですが、その境目とはなんでしょう。

パルスとリズム、物音と音楽。

動作と踊り。

この作品作りを通して、次なる探求への扉が開かれたような気がしています。

写真:大洞博靖

今回は少人数でのコラボレーションでしたが、少しずつ規模を大きくしていきながら、また新たな作品を一緒に作っていけたら、とても嬉しく思います。

ご来場いただいたお客様はもちろん、この作品に関わってくださったすべての皆様へ今一度感謝をお伝えします。本当にありがとうございました。

温かくもアツく、鋭い作品でした!!

またやりましょう!

写真:大洞博靖

写真:大洞博靖

公演概要:
https://www.kodo.or.jp/performance/performance_solo/37358

10月17日「祭音〜MATSURINE 2021〜」に向けて/住吉佑太

太鼓というのは、打てば響く、シンプルな楽器です。

だからこそ、表現の幅は無限大ですし、その全てを受け止めてくれる楽器でもあります。音楽としての太鼓を考えるとき、「太鼓じゃないといけない理由」を、よく考えます。

太鼓のもつ歴史的背景が、インスピレーションのきっかけになることもあれば、もっとフラットに、楽器としての特徴を活かした音作りを目指すこともあります。

様々な太鼓の可能性を模索していく中で、やはり西洋的な音楽観だけでは、測り切れないものがあると強く感じています。

音楽性というものを超えて伝わってくる、音以外のバイブレーション。
太鼓を一打鳴らす。

たったそれだけの行為から、打ち手の全てが立ち上ってくるような。今回の祭音公演では、私が演出・構成を担当させていただきます。

まだ私が入団1年目の頃、2回目の開催となる祭音に初めて参加しました。

同志会の皆さんの一打の重み。

あの衝撃は、いつ見てもハッとさせられるものがあります。

この夏には、見留知弘鼓童在籍30年記念公演「軌跡」でも共演させていただきました。「三宅」を通して、同志会の皆さんと鼓童が共演する舞台、祭音。

今回は、いつもとはまた違った角度から、両者がクロスオーバーするシーンも作れたらと思っています。同志会、鼓童という肩書き以前に、一人の打ち手として、表現者としてお互いが太鼓に向き合い続けてきた中から、湧き出てくるものを詰め込みます。

一夜限りの魂の舞台、お見逃しなく!!

2021年10月17日(日)鼓童出演「霧島市民会館自主文化事業『祭音〜MATSURINE 2021〜』」(鹿児島県霧島市)

 

NAYUTA/住吉佑太

ケンタタクユウタタク2ndアルバム「NAYUTA」
デジタルリリースと共に
100部限定!カセットテープでのフィジカルリリースが決定!!

住吉佑太よりコメント

今作では、フィールドレコーディングを多用しています。

ありふれた音を見つめ直し、時にそこに身を置いて、自分たちの中から湧き出てくるものを形にしていきました。

いつものように、スタジオでマイクを立てて録音するのではなく
あらゆる環境の中で音を作っていくその過程は
音楽というものを捉え直すきっかけとなりました。

Photo: Kenta

どこからが旋律なのか。
どこからがリズムなのか。

音程感や拍子感にとらわれない
もっと大きなうねりを感じてみたくなりました。

 

音から想像する。
音を創造する。

そんなことを何万回、何億回、何那由多回も繰り返しながら
僕らの音楽は常に変化していきます。

カセットテープでのフィジカルリリースについても
音楽と向き合う環境を変える、小さなきっかけになるといいなと思っています。
様々なストリーミングサービスで、なんでも聴ける時代だからこそ
「ちゃんと聴く」という行為を、能動的に選択して、僕らの音に向き合ってもらいたい。

デジタルでは絶対に再現できない、アナログ特有の質感や
デジタルとの音質の違いも楽しんでいただければ幸いです。

集めたくなるデザインにもご注目。

鼓童オンラインストア各配信プラットフォーム

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中込健太&住吉佑太「ケンタタクユウタタク」プロフィール

NAYUTA

ケンタタクユウタタク2ndアルバム

デジタルリリースと共にカセットテープでのフィジカルリリース。カセットは100本限定!

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静岡県文化プログラム「ふじのくに伝統芸能フェスティバル」/住吉佑太

「静岡県文化プログラム ふじのくに伝統芸能フェスティバル」に参加してきました。解説や実演を交えながら、静岡県の伝統芸能、郷土芸能を中心に、様々な芸能を紹介していくこちらのプログラム。「継承」をテーマに、100年後の芸能について考える、そんなきっかけ作りの場でもありました。

その一環として、静岡県立駿河総合高校の和太鼓部の皆さんと、我々鼓童が共演する運びとなりました。

撮影:猪熊康夫(グランシップサポーター)

ただただ共演するのではなく、駿河総合高校の皆さんのために、私が曲を書かせていただきました。

共に一から楽曲を作り、稽古ややりとりを重ねながら、太鼓や舞台芸能と向き合うことの大変さや奥深さ、そしてその楽しさについて、一緒に太鼓を叩きながら伝えていきました。

かがりび」という曲名も、生徒のみんなが考えてくれました。

Photo: Tomohiro YonetaniPhoto: Tomohiro Yonetani初回、2回目、そして直前のリハーサルと、稽古を重ねる度に、どんどん成長していくみんなの吸収力には驚かされました。顧問の杉本先生も、生徒たちの自主性を尊重しながら、「やりたい」という自発的な気持ちを引き出していて、生徒たち一人一人に慕われていることが、端から見ても分かりました。

何よりこのイベント全体が、真剣に子どもたちの芸能に対する気持ちを後押ししていることが、端々から伝わってきました。

終演後、私たちのためのタクシーをお待たせしているという状況の中、生徒たちの質問や、サインに受け応えする時間がありました。言うまでもなく、その時間が長引けば長引くほど、タクシー料金が上がっていってしまうわけですが…その場にいた関係者誰一人として、生徒たちを急かすようなことはなく、むしろ笑顔でその様子を噛み締めるように見つめていたあの空気感。

私はあの空気感が、このイベントの気持ち良さの全てであると、改めて感じました。

自分たちも勉強になることがたくさんありました。本当にありがとうございました。

Photo: Tomohiro Yonetani

これからも「燎」の火が受け継がれ
そしてまた、皆さんと再会できる日を楽しみにしています。

 

【ゆめのうつつリレー】音楽監督として/住吉佑太

藤本容子NEWアルバム
〜佐渡もの語り〜ゆめのうつつ
楽しんで頂けておりますでしょうか!

音楽監督を担当いたしました、住吉佑太です。

容子さんと共に、試行錯誤を繰り返しながら、1曲1曲を大切に紡いで作ったこのCDには、私も特別な思い入れがあります。

Photo:中川晃輔

全曲、最初は容子さんがiPhoneで録音してくださった声から始まっています。

その録音に、私がいろいろな音を重ねながら、世界観を形作っていきました。

ある程度出来上がったら、容子さんにも確認して頂き、イメージを擦り合わせながら、ときには無茶振りに鍛えられながら…(笑)

ああでもないこうでもないと、1曲ずつ形にしていきました。

Photo: Akiko Umegaki

自分が音楽監督として関わるからには、懐かしい!という印象だけではなく、それでいてどこか新しい!と思わせたいという気持ちが強くありました。

かといって、いわゆるポップスのような歌物のアレンジにして、容子さんの「語る力」をかき消してしまないように。むしろ打ち出す世界観によって後押しできるような音楽を目指しました。

Photo: Yoko Fujimoto

普段の鼓童は、リズムが主体の音楽ですが、今回はメロディーと和音に重きを置いたアレンジのものが多いです。

1曲ごとの雰囲気に合わせて、和音や響きを決めていきました。

1曲目の「この峰の」に関しては、ド頭から、日本の響きではない和音を使っています。
こういったテンションコードと呼ばれる和音は
なかなか和楽器と馴染みにくいのですが
容子さんの旋律や、唄の世界観には、よく合うなと感じています。

音楽的には不安定な響きが、繊細さや美しさ、ときに力強さを表現してくれています。

レコーディングに関しても、できるだけ容子さんの息に合わせてできるよう、可能な限り全員一緒に、メトロノームを聴かずに録音しました。

「鬼太鼓若衆」などは、その息の感じが、とても心地よい仕上がりになっています!

響きと息。

そんなことも感じてもらえると、よりこのCDを楽しんで頂けるかと思います!

Photo: Takuro Susaki

次回は、藤本容子です。
お楽しみに! 

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