調律/大塚勇渡
調律
自分にとっては初上陸の上海の地、
野外公演初日は強い雨が降っていました。
太鼓が濡れないよう気を配りながらのチューニング。
(太鼓の縄の締め具合を)上げても上げても
更に湿度を吸い、音程が下がるので
出る直前まで調整が必要でした。
足元も水で濡れ、
その湿度は舞台上でも音程が
下がっていくのが分かるほどでした。
野外で演奏する事に加えて
打ち応えが違う分、
アプローチを変えていく必要があり、
これまで何度も繰り返してきた
この作品ですが、初めての感覚でした。
初めての土地であることに加え
この天候の事もあり、
心配な気持ちもありましたが、
悪天候の中
最後まで観て頂いた
お客さんのストレートな反応、
そして現地の方を含めた親切な
裏方スタッフの皆さんの尽力によって
救われました。
こうして振り返ると
当たり前な事は何一つなく、
沢山の人と物の思いが結集して
公演が成り立つという事を
改めて実感し、
体感する事が出来ました。
今この場がある事に感謝です。
そして関わって頂く方々、
ツアーを一緒に回る太鼓にも感謝です。
2日目にはその思いも相まって、
今できる全てを出し切ろうという
気持ちで太鼓に向かいました。
その時お客さんと感じた一体感は、
個人個人という点の繋がりを超えて
人間としての
面の繋がりを感じるものでした。
舞台で最後に残るもの。
そしてそこに自分の思いはあるのかどうか。
表現者として今後歩んでいく上でも、
貴重な経験だと思える2日間でした。
気候も生活も仕事も食文化も
日本と異なる側面は沢山ありますが、
舞台を通して
共通する感覚を味わう事が
出来た事は嬉しかったです。
これからも一つ一つの事に丁寧に
向き合っていこうと思います。