「なんだか、すっごくおもしろかった」/山脇千栄
太鼓を始めたのは、小学校2年生の時だった。
その年偶然にも、鼓童の交流公演が、香川県にやって来た。
覚えているのは、
屋台囃子や千里馬の演奏ではない。
「半纏をきた頭がつるピカの人がマイクでユーモア満載に喋っていた」ということ。
そしていちばんに「なんだか、すっごくおもしろかった」ということだ。
それから17年後。自分自身が鼓童の団員になり、交流公演ツアーにつくことになった。
鮮明に自分の中に残っていた
「なんだか、すっごくおもしろかった」
という記憶。
それを今度は自分自身が、届ける側になった。
が、なかなか難しい。
正解もない。
緊張していれば、
それは子ども達に説明しようのない波長で
伝わってしまう。
教科書のようなMCは、
もちろん子ども達からぽかーんとした表情が
返って来てしまう。
あの「なんだか、すっごくおもしろかった」の裏側に
何が隠されているのか。必死に考えた。
今日の公演は、
「なんだか、すっごくおもしろかった」のか?
毎日同じ道を通って、同じ制服を着て、
同じ友達に会って、
授業を受けて、昼休みがあって掃除をして…。
そこに、突然やって来た大きな太鼓たちと半纏姿のお兄さんお姉さん。
鼓童の交流公演は、
日常生活にとって、とてつもなく大きな”刺激”だと思う。
小学校2年の自分がそうだったように、
25歳の今の自分もそうあるべきなのである。
今日の演奏に向かう自分の心が楽しくて、本気で太鼓が面白くて。
だから、
「きょうはとてもおもしろかったし、たのしかったです。」
と言ってもらえる。感想文に、そう書いてもらえる。
エネルギーの相互作用。
エネルギーのプレゼント交換。
そのエネルギーは現場で作って間に合うものではない。
ツアーメンバーが稽古の初日から旅の途中も、
ずっと継続して作り上げていく緻密なものであった。
きっと、あの17年前に見た栄一さんは
本気で心が楽しくて、本気で太鼓が面白かったに違いない。
8歳の私に特大のエネルギーをプレゼントしてくれた。
今度は、私が負けないくらいのエネルギーをみんなにプレゼントしたい。
ツアーを終えて、また佐渡での稽古の日々。
千里馬の演奏前、バチを構えた時、
ふと交流公演の記憶が蘇って来て、
みんな元気にしてるかな、
なんて思い出したりしています。
学校での公演写真は2017年12月伊丹の中学校にて/撮影:岡本隆史
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