紡ぎ続ける未来を/山脇千栄
鼓童は、
早春の交流公演ツアーへと繰り出しています。
3月12日、舞台は淡路島の三原志知小学校でした。
ツアー出発前に、
スタッフより、
「これを見て欲しい」と
鼓童メンバーにある映像を見せました。
そこに映っていたのは、
鼓童そっくりのウロコ模様のミニ半纏を纏い、
元気一杯に『彩』を演奏する子どもたち。
胸元には「志童」と書かれてあります。
笛、担ぎ桶の両面打ち、大太鼓ソロ…
一人ひとりがしっかりとパートをこなし、
子どもたちのみで『彩』が完璧に演奏されていく様子に
メンバー一同ビックリ。
私は密かに感動して涙ぐんでしまいました。
「鼓童さんと彩をコラボレーションしたい」
子どもたちから頂いたメッセージを受け取って、
私たちは胸を弾ませて淡路島へと渡りました。
到着したら、体育館は鼓童一色。
歓迎のイラストと名前が体育館に散りばめられています。
小さな太鼓がずらりと並んでいて、
ここで一生懸命練習してるんだろうなあ…と想像しながら、
交流公演の準備を進めます。
鼓童リハーサルが終わった後、
志童の子どもたちの全校児童51人が
可愛らしいバチ袋を持って、
コラボレーションの練習に来てくれました。
まずお互いが『彩』を演奏し、音の挨拶です。
そして、鼓童が演奏で大切にしていることを伝えながら
コラボレーションの『彩』を何度か一緒に練習し、準備は万端。
本番は、近隣の幼稚園や小学校の子どもたち、保護者の方々、
三原志知小学校のみんなは、あのミニ半纏を着て体育館に集まってくれました。
半纏を着ている私たちの目の前に
全く同じ衣装を着た子供達が座って、
鼓童の交流公演がスタートします。
なんだか不思議な光景です。
体でリズムをとったり、真剣な眼差しで演奏を見るのはもちろん、
大きな音も平気な様子に、
さすが和太鼓が身近にある小学校だなぁと感じました。
全ての鼓童の演奏が終わった後、
志童の皆さんからお礼の演奏を2曲聞かせて頂き、
最後は、志童と鼓童のエネルギッシュな
彩の演奏が体育館いっぱいに響き渡り、
観て頂いていた方々から、大きな拍手をいただきました。
本当に素敵な時間でした。
笑顔で太鼓を叩いている
子どもたちを見て、こんな気持ちが溢れて来ました。
この子たちの未来に、
また鼓童が登場することがあるかもしれない。
それは鼓童メンバーになることかもしれないし、
お客さんとして鼓童を観に来ることかもしれない。
はたまた、頭の中の片隅のちっぽけな思い出かもしれない。
それでも今日一緒に演奏できた経験や、
楽しかったという記憶は、
きっと未来と繋がってくれるはず。
太鼓の力で、一人でも多くの子どもたちが
笑顔になれるのならば、
鼓童は、未来を紡ぎ続けること。
未来を紡いでいく明るいエネルギーを
出会った皆さんにこれからも絶やさず届けていくこと。
そして何より、
鼓童が在り続けること。
これがどれだけ重大なことか。
阪神淡路大震災から24年、
東日本大震災から8年。
明日が来ることが当たり前じゃない。
そんな言葉が、胸に刻まれている中で
子どもたちがずっとこの笑顔を絶やさないでいられるように。
明るい未来がずっとあり続けるように。
そして、純粋に太鼓が楽しめるこの環境がいつまでも
あり続けるように…。
と、グッと背筋が伸びるのでした。
私も同じように小学生の時に鼓童の舞台を見ました。
そして、あの時から今まで、先輩方が鼓童を紡いで来てくれて、
今、鼓童の一人としての自分が在ります。
楽しくて太鼓を叩いていると、
ここにたどり着きました。
太鼓が過去と現在と未来を繋いでくれています。
私たちは、今回これぞ「未来に繋がるミニ鼓童」に出会えました。
この奇跡がいつまでも循環していくことを
熱く願うばかりです。