鼓童×三宅島芸能同志会/住吉佑太

すごすぎる打撃と対峙すると、笑えてくることがある。
そして、それをも上回る、とんでもない打撃を体感したとき、なぜか涙が出てくることを私は知っている。

先日、久々に舞台袖で泣いた。

Photo: Yone

三宅島芸能同志会の皆さんと共演した「成田太鼓祭 『成田山千年夜舞台』」。

太鼓好きのお客様はもちろん、太鼓打ちも集結する場である。
晴れていれば夜舞台での演奏だったが、今年は生憎の雨。
急遽、体育館での演奏となったが、客席の空気感は、太鼓祭りならではの、期待と熱気に包まれていた。

同志会の皆さんとは、これまでも何度も共演することはあったが、今年は初の試みで、鼓童と同志会による祭音ツアーを予定している。

両者が順番に曲を演奏するだけではなく、もっと深く密接なコラボレーションができないかと、いろいろと試行錯誤を重ねながら、新曲もいくつか作った。

今年のツアーのテーマ曲として書いた「海流」というオープニング曲は、成田太鼓祭りが初披露。

鼓童アンサンブルと、同志会の打ち込みを融合したかった。

鼓舞されるようなメロディーと、同志会の皆さんが、何億回と打ち込んできたグルーヴが混ざり合って、海流のような力強いうねりを生み出す、そんな曲になった。

 

「海流」に続いて、2曲目は見留知弘と、同志会代表の明男さんによる「祭音」。

明るく、楽しげなリズムの中に、確実に積み重ねられてきた、お二人の太鼓打ちとしての生き様が見え隠れする。

3曲目に「さすらひ」を挟んで、4曲目は「祭宴」。

2018年の「巡」のときに、三宅をモチーフにした新曲が作れないかと、中込健太が中心となって作曲した。
打ち込みからのソロまわし。康暉、啓、一誠と、順番に魂を繋いで、最後は知弘さん。

今まで聞いたことのない唸り声と、とてつもない音量の打音。
沸き立つような興奮と、それを抑え込むような殺気が拮抗して、会場は一瞬で張り詰める緊張感に包まれる。

曲が終わると、堰を切ったような拍手と熱気が押し寄せてくる。
それはアース・セレブレーションをゆうに超える熱気だった。

そんな熱気の中、鼓童と入れ替わって、同志会の皆さんが舞台に出ていく。
たぎる覚悟とその立ち姿に、また押し潰されそうな静寂が訪れる。

切り裂くような締太鼓の音から木遣りが始まり、それぞれの打ち込みへと繋がっていく。
たった3回の表打ち。

その3回で全てを出し切るような、後先をまったく考慮していない捨て身の一撃。
足の指先からバチ先まで、まさに全身全霊の打ち込み。
歪んだ顔から漏れ出す声と共に、とてつもない打撃音が飛んでくる。

すごすぎて笑えてくる。
それが4人分重なったとき、気付いたら泣いていた。

声をかけずにはいられなかった。
皆、舞台袖から大声を出して声を枯らした。

それはお客様も同じだったように思う。
舞台が終わったあと、今までに聞いたことがないほどの声援と掛け声を浴びた。
とんでもないものが生まれたという実感があった。

「そこにほんまの打ち込みがあったら、舞台美術も照明もいらんなと思った」
と、浅野昭利さんから嬉しいご感想をいただいた。

舞台芸術としての太鼓の可能性を模索する私たちにとって、ついつい演出に凝りすぎてしまうこともあるが、今一度、足腰を鍛え直し、何が一番大切なのかを考えるきっかけになった。

同志会の皆さんとの公演は、これからも続いていく。
その度に、足腰を鍛え直して臨む。
あのとてつもない打撃音が、私たちの目を覚ましてくれる。

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次の公演は5月24日(水)
稲城市立 i プラザホールでの公演です。

健太・佑太と、津村和宏さん、秀紀さん、春快さんの5人での公演となります。
いろんな角度から三宅を見つめ直し、形は違えど、打ち込むというシンプルな行為の中にある共通項を、感じていただけるような作品になっています。
ぜひ、劇場に足をお運びください!