「春風」配信から1ヶ月!/住吉佑太
少しずつ、朝夕が涼しく感じられるようになってきました。アツい夏も、もうすぐ終わりですね。鼓童はすでに、新たな作品や舞台に向かって進み始めています。
鼓童提供楽曲の第一弾「春風」が配信されてから、約1ヶ月が経ちました。
予想以上の反響に、私たちも驚いています。本当にありがとうございます。
今日は、この「春風」という曲について、私たちが大切にしていることを、音楽的な解説も踏まえながら、少しお伝えできればと思っています。
まず、この曲を作るときに心がけたのは、「誰もがやりたい!そして、できそう!」と思えるキャッチーなものでありながら、尚且つやってみると意外と難しくて、やりがいを感じられる曲にすることです。
この曲を難しいと思うかどうか、それがアンサンブルの質を左右する、大きなターニングポイントになるかと思います。リズムやメロディーを追って演奏できるようになる、そこがスタート地点です。
この曲の基本のノリは、三つ打ち、ドンドコと呼ばれるもので、いかにも和太鼓らしいリズムでもあります。
ドンドコとドンツンだけで聴かせられるようになって一人前
by 今海一樹(元プレイヤー 現舞台監督) ※ドンツンというのは、この曲の韻パートがやっているような、4分音符の強拍を打ちながら、8分音符の裏間に弱打を入れるフレーズのこと。
という言葉があるように 笑
ドンドコのノリには、とても奥深いものがあります。
地域によっても、いろいろなニュアンスがありますし、世界中の民族音楽の中にも、ドンドコに似たリズムがたくさんあります。
では「春風」の場合、どういうドンドコを打つべきなのか。
それは打ち手のセンスに任せられているわけですが 笑
まず、担ぎ桶以外のリズムをよく聴いてみましょう。
韻パートのドンツン、それから締太鼓のツクテケ、そこに大間のキメが入ってきます。
音像としては、ドンツンの方が前にあって、ツクテケが軽やかにバックに流れている中で、低音のキメが入ってくる感じですね。
それを包括したドンドコのニュアンスにしていく必要があります。
意外と大切なのが、ドンドコの間に入ってくるドンドンという8分音符です。
ドンドコ ドンドコ ドンドコ ドンドン
というフレーズが続きますね。
このドンドンの裏拍のニュアンスが軽くなりすぎると、曲としても滑っていってしまうし、キメのリズムとも馴染みが悪くなってしまいます。
この裏拍を、しっかり重めに入れていくことが、この曲の推進力に繋がります。
私たちはよく「重めに入れる」という言い方をします。それは「遅めに入れる」のとは違います。太鼓というのは、『ドン』の組み合わせでしかありません。
その一音にどれだけの情報を詰められるか、ということが演奏の充実に繋がっていくわけですが、『ドン』の情報というのは、意外にもその音が出てくる以前のプロセスや、音と音の間にあったりします。
表拍にくる『ドン』と、裏拍にくる『ドン』をしっかり打ち分けるためには、どうすればいいか。
口唱歌で書くならば
『ドン』と『スットン』となりますね。
ここで大切になってくるのが、「重心」と「踏み」です。
自分の重心が、重力方向に対して下がっていく途中にアタックのタイミングがあるのか、上がっていく途中にあるのか、それによって「音の向き」が決まってきます。
表拍に『ドン』とくるときは、重心が下がっていく途中にアタックがあると言えます。(厳密には違うんですけど、文字だとそこまでお伝えできないので、そういう書き方をさせて頂きます。詳しくは実際にお会いできるときに!笑)
裏拍に『スットン』とくるときは、逆に重心が上がっていく途中にアタックがあることになります。
この『スッ』の部分は「踏み」になるわけです。この「踏み」をしっかりとることで、音を「重めに入れる」ことができます。キメのリズムは、まさにそのことが大切になってきます。
ドン ウン ウン スットン スットン ウン ウン スト ドン
と続いていくわけですが、この休符の部分にこそ、音を充実させていく秘密が隠れています。
この一音一音の「音の向き」と質感について考えてみると、また新しい価値観が見えてくるかもしれません。
アンサンブルを揃えるというのは、音が出ている部分だけを揃えることではありません。そうすれば自ずと、それぞれのリズムのニュアンスが見えてきます。
例えば、[A2]の担ぎ桶の4拍目の裏、
ドンドコ ドンドコ ドンドコ ドンドンと
キメのリズムの4拍目の裏
ドン ウン ウン スットンは
同じタイミングで鳴っています。
よっぽどの事情がない限り、そこの「音の向き」は揃えたいですね。そういうふうにして、アンサンブルの質を高めていきます。それに加えて、どういった表現をするか、ということも大切になってきます。
目線は?意識のベクトルは?
今このシーンは誰を見せたいのか?
体の中心の開き具合や、胸の角度を少し変えるだけでも、見えてくる印象が大きく変わります。
前に出てくるときに、体の中心(眉間や胸)を開きながら出てくると、実際の距離以上に前に出てきた感を出せます。逆にバッキングにいるときは、いい意味で背景としてそこに存在できれば、見た目の奥行きにも繋がります。
そうすると、フォーカスがはっきりしてきますね。
全体的にぼやっと伝えるのではなく、シーンの切り替わりをはっきりさせることで、メリハリのある演奏になっていきます。
他にも、私たちが大切にしていることはたくさんあるのですが、文字でお伝えするのも難しいので、今日はこのへんで…
引き続き「春風」を、楽しみながら深めて頂けると嬉しいです。
私たちも、毎日深めていく稽古ばかりです。
「これでできた!」ということはありません。
だから、いつまでもやり続けられるのかもしれませんね!
今日お伝えしたのは、あくまで私の価値観です。
絶対にこの通りやった方がいい!というわけではありません。
正解や不正解という話ではなく、太鼓を通じて、お互いの価値観や感覚をすり合わせていくことが大切だと思っています。
そのとき、皆が共有できる話題やきっかけに「春風」が為り変われたなら…
それ以上に嬉しいことはありません!!
また皆さんと、太鼓の話ができる日を心待ちにしています!
プレイリスト|春風
<メイン動画>
春風 Shunpuu(正面)https://youtu.be/ojhbnndvkBI
春風 Shunpuu(アングル色々 ver.)https://youtu.be/JnuYwpJUY7w
↓ぜひ演奏の仕方など研究してください🎵
春風 全パートMIX: https://youtu.be/RDZsrXYmA78
春風 平胴太鼓・締太鼓 https://youtu.be/gyFiQIuZdwA
春風 篠笛 https://youtu.be/AfKe7fZJi_U
春風 長胴太鼓 https://youtu.be/RNIPtl6rsWE
春風 担ぎ桶・ジャンガラ https://youtu.be/SsAgjwaF8BY