メンバー短信(草 洋介)

鼓童メンバーの草 洋介が2020年12月末日をもって退団することとなりました。お世話になった皆様に心より感謝申し上げます。

「稽古場」
私は鼓童村の稽古場が大好きです。 ここの床には今まで舞台を作ってきた沢山の演奏者の汗や涙が染み込んでいます。
「そんな場所で今は自分が太鼓を打っているんだ」という実感が、落ち込んだ時、心が折れそうな時にいつも救ってくれました。
自分の汗や涙も沢山この場所に染み込んでいます。

ある日、床の張り替え作業が行われました。
これまでのささくれの酷かった赤茶色の床の上に明るい黄褐色の板が張られました。
快適になった反面、以前の床への愛着から少し寂しさも感じていましたが、そこから数年たった今はまた新たな歴史の跡が黄褐色の床にも刻まれ始めています。

 

この度、鼓童を退団する決意をいたしました。

あんなに大好きだった稽古場が、いつからか「訪れる場所」のように感じはじめ「昨日より1ミリでも上手くなりたい」と思っていた気持ちがいつの間にか萎んでしまっていました。
そんな自分がこれ以上舞台に立つことを許せなくなりました。

鼓童は常に変化し続けながら太鼓の持つ無限の可能性を追求しています。
そしてこれからさらに進化を遂げていくのだと思います。
ただその礎となっている普遍的なものはこれからも変わらないとも思います。

赤茶色の床のように「今」を支える礎として、その一端を担えたことが私の誇りであり、この誇りを胸にこれからの人生を精一杯生きていきます。

これまで沢山の応援をしていただき、本当にありがとうございました。

草 洋介