鼓童ブログ Kodo Blog

代表メッセージ

北米の太鼓に学ぶこと/見留知弘


皆様いかがお過ごしでしょうか。太鼓芸能集団鼓童代表の見留知弘です。3月に入り、暖かい日も少しずつ増えて過ごしやすくなる頃ではありますが、春になる嬉しさと、それに伴うアレルギーとの両方がありますね。

さて、1月末より始まりました「鼓童ワン・アース・ツアー2015〜神秘」北米ツアーは折り返しを過ぎ、東海岸地域にて公演しております。北米といえば、鼓童の前身の「佐渡の國 鬼太鼓座」時代より大変お世話になっている方々がおられます。

それは、アメリカの太鼓グループの方々です。

Photo: Taro Nishita

2005年アメリカ公演より

私が鼓童に入る以前のお話も先輩からたくさん聞いておりますが、そこについては鼓童結成30周年記念本「いのちもやして、たたけよ」をお読みいただくことにして、ここでは私の体験談として書かせて頂きます。私が北米ツアーに行っていた8年前までは、アメリカの太鼓のスタイルは、古い時代に伝わったものに加えて、新しい北米の太鼓のスタイルが生まれ始めた頃だったと記憶しています。

Photo: Taro Nishita

鼓童の初期には毎年アメリカツアーを行っており、公演先では各地のグループの方々に大変お世話になり、温かく迎え入れて頂ました。そんな数ある太鼓グループの中でも、カリフォルニア州サンノゼを拠点とされているサンノゼ太鼓さんには、稽古場に舞台道具とツアーの備品などを保管頂いていた時期もありました。

Photo: Mitsunaga Matsuura

ただ、近年はお互いのグループで世代交代が進んでいて、ベテランメンバーがツアーに付かなくなったこともあり、ある年に交流の場を設定して下さり、車座になって話した事がありました(写真上)。それは、お互いのバックボーンの事、太鼓の事、日系社会など、サンノゼの方も、これからの鼓童との繋がりについてコミュニケーションが必要だと感じて下さっての企画でした。

その時に見学させて頂いた稽古では、礼儀作法がしっかりされていて、畳に上がる際に一礼をして稽古を始めた立ち居振舞いが、私はとても印象に残りました。いつでも稽古が出来る環境がある私達には、そのような気持ちを切り替える境界というものがなかったので、それ以降、稽古を始める時には足袋に履き替えるなど、気持ちを切り替える環境を作りました。そして、日本の文化や心が、世代が変わっても引き継がれ、そしてなによりご自分達のアイデンティティを大切にされていると思いました。

Photo: Taro NishitaPhoto: Taro Nishita

Photo: Taro Nishita

2005年アメリカツアーの様子(1枚目の写真、中央が元メンバーの渡辺薫さん)

海外に出る時には、やはり自国の文化を説明出来る知識を持たなければならないと思いますが、なかなか簡単な事ではないですね。海外ツアー先のほうが、日頃気付かない事に気付いたり、文化や生活などの違いから得たりする事もあります。中でも日本人のすばらしい所は、海外の文化や食文化を、日本人に合うようにアレンジしていける所だと思います。

今回「神秘」で北米をツアーしている鼓童メンバーにも、たくさんの発見や収穫があることを期待しています。

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鼓童ワン・アース・ツアー2015〜神秘 北米ツアー
http://www.kodo.or.jp/oet/index_ja.html#schedule13a

BAM(ニューヨーク)公演PR映像

メサ公演プロモーション映像
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「The Huffington Post」に鼓童の紹介記事掲載

e-nikka.ca :坂本雅幸インタビュー記事掲載

BAMのブログに渡辺薫さんのインタビュー記事掲載


年頭のごあいさつ/見留知弘


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鼓童が新しい体制になりまして、間もなく丸3年を迎えます。

鼓童の初期に先輩達が手探りで築き上げて来た芸道が30年の鼓童の舞台の主軸となってきました。良くも悪くも、鼓童の舞台のベースはそこにあると思っていました。

その中で新しい演目を入れても柱としては同じでありマンネリ化を打開出来ない状況を、芸術監督として就任してくださった玉三郎さんが切り開いて下さいました。長く鼓童を見ていただき、深いご理解と愛情をもって、芸術監督を引き受けて下さって、今日があります。

Photo: Simon Jay Price

Photo: Simon Jay Price

舞台表現としての太鼓芸能は、まだまだ歴史は浅いのですが、その中で、鼓童が新たな事に取り組み、それが積み重なって歴史となり、その時代ならではの演奏や古い時代の表現も両方できるという、大きなグループになって行く時期に入っているのだと思います。半纏を脱いで、半纏の良さが分かる。私も研修所で教える時に、対極の事をわざと行ってみて、やっと理解してもらえる事もあります。

3月には、「道」という1990年代の演目を題材にした舞台が行われますが、ただ再演ではなく、新しい感性の演奏者が奏でる演目はどう表現されるのか、また新たな一面をお見せ出来るように、試行錯誤しております。

Photo: Satoko Maeda

今年も大きな舞台から、小さな舞台まで、様々な活動を行ってまいります。

2015年も、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

2015年2月1日
太鼓芸能集団「鼓童」代表 見留知弘

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新年明けましておめでとうございます/見留知弘


新年明けましておめでとうございます。

皆様にとりまして素晴らしい一年となりますよう、お祈り申し上げます。

2014年の鼓童は、「伝説」、「神秘」、「打男」、「永遠」、「交流学校公演」「佐渡特別公演」など、さまざまな作品の世界各地での上演を通じ、数多くの出逢いに恵まれました。

Photo: Takashi Okamoto

本年も、芸術監督・坂東玉三郎氏のご指導のもと、ベテランから若手まで一丸となり、より高いレベルの舞台表現を目指し、精進いたしますとともに、皆様に舞台をお楽しみいただけますよう、一生懸命に努めて参ります。

本年もご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

2015年元旦
太鼓芸能集団 鼓童
代表 見留知弘

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2014年を振り返って/見留知弘


皆様こんにちは。太鼓芸能集団鼓童代表の見留知弘です。

12月に入り、佐渡の最高峰・金北山にも雪化粧を見るようになりましたが、例年よりは暖かい師走の入りを迎えています。

さて、少し気が早くもありますが、今月は今年1年の鼓童を振り返ってみたいと思います。

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まず1月末のヨーロッパでの「伝説」公演と、同時進行で実施した国内での小編成公演、春には「神秘」・交流学校公演の2つの国内ツアー、さらに並行して「佐渡特別公演」と各地での小編成の舞台を行いました。

Photo: Takashi Okamotomystery_asakusa_TO_3213-f-ss

6月には2回目となりました浅草公会堂での「神秘」連続公演も成功を収め、応援してくださる浅草の方々との絆をさらに深めることができました。

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7月には交流学校公演ツアーのメンバーで、新しい演目と内容での「打男」のヨーロッパ公演を実施いたしました。2つのツアーを同時に行なうことはすでに定着していますが、今回初めて坂東玉三郎氏演出の異なった作品を世界で同時に上演できたことは、演奏者・スタッフともに大きな自信となりました。

そして夏には、地元佐渡でのアース・セレブレーション。

Photo: Takashi Okamoto

「城山コンサート」の初日は、名誉団員から準団員まで、鼓童の歴史の中でも最多となる総勢32名が出演いたしました。近年はメンバーの数も増えて、皆で同じ舞台に立つ機会がありませんでしたので、若くパワーみなぎる太鼓や、熟練の演奏など、稽古の時からお互いがとても刺激的で楽しい時間を過ごすことができました。

Photo: Takashi Okamoto

世代を超えて、同じ太鼓で繋がっている事は、改めてすばらしく、お客様にも30年の層の厚さを感じていただけたことと思います。

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また、2日目には、新体操で磨かれ、研ぎすまされた肉体をもつ「BLUE TOKYO」の皆さんを、3日目には、さらにダンスの世界で独自な表現方法を追求する「DAZZLE」の皆さんと元ブルーハーツのドラマーの梶原徹也さんをお迎えし、ジャンルの枠を越えた、表現の融合と発信がされました。

秋には、若干のキャストの交替を行い、「神秘」の国内ツアー・交流学校公演の2つのツアーと、「佐渡特別公演」のベテランメンバーが、小編成、ソロ活動などを各地で精力的に行いました。また、昨年の11月から1年間掛けて展開して参りました「神秘」ツアーは、おかげさまで、国内のすべての日程を終了いたしました。各地の会場へのご来場とご声援をありがとうございました。なお、こちらは引き続き、北米での上演を予定しています。

Photo: Takashi Okamoto

そして11月には、新作舞台の「鼓童ワン・アース・ツアー~永遠」と、新演出の交流学校公演が、キャストを新たに稽古を始め、「永遠」は、11月20日に地元佐渡で初日を迎える事ができました。

Photo: Takashi Okamoto

この作品は、全ての楽曲が新たに書き下ろされたもので、演奏者には高い演奏技術と表現力が求められ、鼓童の舞台表現の新たな段階を感じていただける内容になっています。

両ツアーとも、これから1ヶ月にわたって各地で公演を予定しておりますので、お近くに鼓童が参りました際には、ぜひ皆様のご来場をお待ち致しております。

年の瀬の何かと忙しい日々ではありますが、公演のひととき、心を休めていただき、鼓童の音色で、一年を楽しく締めくくって頂けたらと思っております。

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忘れないために〜鼓童ハートビート・プロジェクト/見留知弘


みなさまこんにちは。太鼓芸能集団鼓童代表の見留知弘です。

11月に入り、鼓童村の木々の緑にも黄色、赤と彩りが加わり、いよいよ秋の深まりを感じています。昨年の11月から始まった「鼓童ワン・アース・ツアー神秘」と、同時進行で行われて来ました「学校交流公演」が、おかげさまで無事に一区切りとなり、メンバーが長旅から帰って来ました。これからは新作の「鼓童ワン・アース・ツアー永遠」と、新演出の「交流学校公演」の最終仕上げの稽古期間を過ごしてまいります。

さて今月は、その両ツアーの中で11月30日にアオーレ長岡(新潟県長岡市)にて行われる「鼓童ハートビート・プロジェクト」公演について、お話しさせて頂きます。

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新潟県中越地震が起きて今年で10年目を迎えます。地域の更なる復興と東日本大震災被災地の復興を祈願して、「鼓童ワン・アース・ツアー永遠」、「交流学校公演ワークショップ」、東北の芸能団体を招聘しての「芸能ステージ」公演を行うになりました。

その中の1つに、昨年の12月、岩手県大槌町で行われた「奈奈子祭~冬の陣~」で競演させて頂いたご縁で、大槌町の城山虎舞さんをお招きします。「芸能ステージ」公演では各芸能団体と鼓童のメンバーが共演する企画があるのですが、それに向けて手解きをして頂くために、先日現地へと行ってまいりました。

Photo: Michiko ChidaPhoto: Michiko Chida

【釜石まつり】立派な山車を曳きながら、各地区の芸能が神輿の先導役となる/尾崎神社の元禄12年作の神輿を拝観する

ちょうど隣町の釜石では祭りの時期で、実際のお祭りで行われる虎舞を見る事もできました。
そして被災地の状況も見てまいりました。

Photo: Michiko Chida

私が見た所は、釜石と大槌と陸前高田の一部だけですが、まだまだ復興と言うにはほど遠い現状にあるという事、また時間が経つにつれて忘れ去られて来てしまっているなと思いました。新しい建物が次々と建てられ、道路も土地も整備されて、少しずつ復興していると思われる所もありますが、その横には、3月11日のままの状況が残っており、どの地域にもたくさんの仮設住宅がありました。

Photo: Michiko ChidaPhoto: Tomohiro Mitome

陸前高田 奇跡の一本松

岩手だけでなく、沿岸の多くの芸能団体が被災され、大切な仲間を失くされ、祭りの道具一式も流されてしまったと聞きます。芸能の存続が出来なくなっている所が多くある中に、復活しつつある所もあり、今回の岩手訪問は祭りと芸能がいかに生きる力になっているかを思い知る機会となりました。

Photo: Michiko Chida

大槌虎舞さんの定期練習にて稽古をつけて頂く。小中高校生の若者も沢山参加していた。

城山虎舞さんは、2013年の9月に復活宣言をされたそうで、多くの公演に出向いて、見ている人に元気や勇気や感動を与えるような、とても勢いのあるすばらしい虎舞と演奏を披露しておられます。今月30日の公演では、私もその一員となる気概を持って、演奏に参加させて頂きます。

そして東北の芸能からはあと二団体、長年の私達の師匠であります、岩手県北上市の岩崎鬼剣舞の皆さん、福島県いわき市の菅波じゃんがら念仏踊りの皆さんも駆けつけてくださいます。どちらも震災以来、慰霊・鎮魂の芸能として広く活動し、東北の方々を鼓舞し、また全国の方々に東北の心を伝えて来られました。

長岡でのこの「鼓童ハートビート・プロジェクト」公演は、鼓童の新作、そして東北の芸能団体との共演をご覧いただける大変貴重な1日です。

どうぞ皆様のご来場と、ご支援をお願い申し上げます。

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11月30日 中越大震災10年復興祈念・東日本大震災復興祈願祭~たくましく前へ、長岡~
「鼓童ハートビート・プロジェクト」
http://www.kodo.or.jp/oet/20141130a_ja.html

鼓童サイト|ハートビート・プロジェクト Heartbeat Projectheartbeat_project_logo


鼓童研修生の秋 〜夢の舞台に立つために/見留知弘


みなさまこんにちは。太鼓芸能集団鼓童代表の見留知弘です。

10月に入り、涼しさから寒さに移りゆく季節となってきました。

「鼓童ワン・アース・ツアー〜神秘」と、「交流学校公演」ツアーは、ただ今国内を巡っており、みなさまの中には既にご覧頂けた方も、これからという方もいらっしゃるかと思います。私はと申しますと、10月2日から宿根木公会堂で開催されます「鼓童佐渡特別公演2014・秋」に出演いたします。こちらへのご来場もお待ちしております。

さて今月は、鼓童文化財団研修所の鼓童メンバー養成コースで学ぶ研修生の様子をお話しさせて頂きたいと思います。

Photo: Taro Nishita

鼓童の舞台メンバーになるためには、鼓童文化財団研修所で2年間の研修を修了し(2年次進級のための選考もあります)、選考を経なければなりません。選考された研修生は「準メンバー」となり、約一年間、公演や様々な現場での経験を積み、再度選考を経て、正式なメンバーとして採用されます。

研修所では、夏季は5時、冬季は5時30分に起床し、掃除、体操、トレーニング。食事の後は、楽器準備やウォームアップをして午前稽古。昼食を挟んで午後の稽古、夕飯後は各自あるいは揃っての稽古を行ない、夏季は10時まで、冬季は10時30分までに就寝するというのが、普段のスケジュールです。時には、約40キロ程離れた鼓童村での稽古や作業などがあり、その時は食事時間を節約するためにお弁当を準備して移動したりしています。

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また研修所では、一つの目標に向かって集中する時期に携帯電話等の電子機器の必要はないと考えています。人と人とのコミュニケーションであったり、伝えるという根本的な事をメール、インターネットに頼らずに行うという点では、舞台にも通ずる所があり、それ故に研修所への電子機器の持ち込みは制限されています。研修所では休みの日以外は、本当に時間に追われるような感じで一日が終わってしまいますので、携帯電話やパソコンを手放せない生活にいた人も、次第にそれがなくても問題がなく過ごせるようになります。

研修所

4月に入所した1年生は現在、半年が経過したところで、生活にも慣れ、研修生らしくなってきました。彼らは現在、鼓童の代表演目である「屋台囃子」や「三宅」を、曲の形として完成させながら、基本稽古を同時にし、体力と技術と精神力を鍛えている途中です。

研修所

基本稽古は繰り返しで、彼らには面白くないかもしれませんが、自分の土台を作るための大事な稽古と時間です。技術というのは、その土台がしっかりしていなければ、その上に乗せたとしても、脆く崩れ去ってしまいます。

例えば「屋台囃子」では長い時間を打ち続ける稽古をするのですが、打ち続ける体力がなければ、曲を通す時には最後まで叩ききれず、リズムがズレたり音が弱くなったり、曲の完成度が大変低くなってしまいます。

Photo: Erika Ueda

彼らにとっては今、体力を付ける稽古が重要で、曲を覚える事と基本稽古を反復しながら体を強くしています。しっかり稽古を重ねれば、技術は後からついてくるのです。

一方、2年生は体力的にしっかりしてきているので、今度は技術を伸ばし、一人一人の頑張りだけではなく、アンサンブルとして一つの大きな力を発揮するための稽古を行います。強弱や抑揚、ニュアンスなども時間をかけて細かく指導、一人一人に技術が身に付いて初めて、良いアンサンブルが生まれるのです。

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2年生に残された研修期間は、あと3ヶ月しかありません。
12月の最終発表会に向けて、稽古に集中して仕上げたい所ですが、秋には色々なイベント、お米や柿の収穫作業等もあり、一日一日が今まで以上に大切になります。目標である舞台メンバーを目指すためにも、悔いが残らないよう、一丸となって頑張ってほしいところです。

また、1年生も同じ時期に2年生に進級するための選考がありますので、これからの3ヶ月間は同じような緊張感を持って過ごすことになります。

月並な言葉でありますが、「心・技・体」を鍛える事はそう簡単ではありません。研修所に入った頃を振り返って初心に戻り、自分が舞台に立つ姿を想像して、頑張って欲しいと思います。

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鼓童文化財団研修所について

鼓童文化財団研修生・実習生募集
一次募集:2014年10月1日(水)~11月18日(火)必着


道具作りから学ぶ演奏者の心/見留知弘


Photo: Erika Ueda

皆さんこんにちは。太鼓芸能集団鼓童代表の見留知弘です。

9月になり、佐渡では秋の気配を少しずつ感じられるようになりました。アース・セレブレーション、そして小木祭り…。小木町界隈は、祭りの賑わいが終わると、静けさにつつまれ、毎年一気に秋を感じさせる時期となります。

さて、今月はバチ作り、道具作りへの思いという事で、お話しさせて頂きます。

Photo: Erika Ueda

太鼓を打たれる方から、しばしば「バチはご自分で作られるのですか?」という質問を受ける事があります。全てのバチではありませんが、自分のバチは自分で作ります。これは鼓童の活動理念の一つである、「つくる」の部分にも繋がっているところです。

研修所に入所したら、まず自分の箸を作り、それからバチ作りへと。角材から鋸でバチの長さを切り出し、そして鉋で四角から丸に削っていきます。

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最初は上手く作れませんが、どんなにでこぼこでも楕円形でも、自分が手を掛けて作ったバチは、気持ちが籠もっていて、愛着があります。そして、そのバチが折れてしまったショックというのは大きいもので、折れたバチは、まとめておいて小正月の「とうどや」でバチ供養をする所まで、大切にしています。

バチは同じ材から一組を作るのですが、大体同じ重さでなければ左右で同じ音色にならないので、音にこだわる私達にとってバチ作りはとても重要です。

つまり[バチを作る = 音を作る]ということになる訳です。

Photo: Taro Nishita

さて、私は研修生へのバチ作りを指導していますが、彼らに必ず伝える言葉があります。

「太鼓・バチ・道具など、大切にしない者は上達しない!!」

それはどんな事にも通じると思いますが、太鼓の扱いが悪ければ、その扱いと同じ反応しか太鼓はしてくれません。手間をかければ、手間をかけた分だけ、太鼓は音で返してくれます。

Photo: Maiko Miyagawa

バチも同じです。

バチがなければ、太鼓打ちは太鼓が叩けません。太鼓と人の間に存在し、人の思いを太鼓に伝えてくれるのがバチであり、だから「相棒」という言葉があるのだと、かつて先輩から教えて頂きました。

そして、バチを作るためには、鉋(かんな)が必要です。おろしたての時には、切れ味も適度に良いのですが、使えば刃先がなくなり、切れなくなります。

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良いバチを作るためには、鉋の手入れが必要で、鉋の構造を知る事と、刃を砥ぐ事が、綺麗なバチを作る上では、常に必要不可欠で、道具の手入れにも繋がってきます。

こうしたお話でいつも思い浮かべるのは、私達鼓童の太鼓の台や、屋台など、数々の舞台に関わる品を作って下さった、指物師の故・西須殉治さんのことです。

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西須さんの仕事は見事で、当時はほとんどの道具をお願いしていましたが、いつも私達からの無理難題な注文を、期待以上の「作品」として、作って下さいました(*月刊「鼓童」2012年12月号vol.321参照 ▶PDFをみる)。

それは日本古来からの職人技であり、職人さんの魂が籠もっていて、引き継いで行きたいものの一つだと思います。

ただ、現代社会においては、こうしたものは受け継ぐ人がおらず、途絶えてしまうことが多いようです。芸能も同じで、継続が危ぶまれたり、すでに出来なくなってしまった芸能のことを聞くにつけても、失われたものを惜しむと同時に、沢山の宝をなんとか後世に残していきたいと思います。

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太鼓は牛と木の命を頂いている楽器です。気持ちを込めて打たなければ、心に響きません。

思う心・大切にする心が、自然と音に表れるよう、演奏者にとっての大事な心構えとして、これからも伝えていきたいと思います。

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8月の鼓童はアース・セレブレーション/見留知弘


皆さん、こんにちは。太鼓芸能集団鼓童代表の見留知弘です。
7月の佐渡は、梅雨入りはしていたものの、良いお天気の日が多かった一方で、大雨洪水警報が出る日もありました。場所によっては土砂崩れもあり、全国の皆様からもご心配を頂きました。

公演活動の方では、5月初旬から始まった鼓童ワン・アース・ツアー〜神秘の国内ツアー班が、2ヶ月半のツアーを終えて佐渡に戻り、7月初旬に出発しました打男のヨーロッパツアー班も、スペインとフランスでの公演を終えて、無事に戻ってまいりました。

そしていよいよ8月。
8月といえば、アース・セレブレーション(EC)ですね。

Photo: Satoko MaedaPhoto: Satoko Maeda

今年で27回目を迎えるアース・セレブレーションの城山メインステージは、初日は、鼓童オールキャストが出演する「海の祭」。中日は、BLUE TOKYOさんをお迎えしての「大地の祭」。楽日は、BLUE TOKYOさん・DAZZLEさんと、特別出演でドラマー梶原徹也さんをお迎えしての「祝祭」。3日間のコンサートが行われます。

Photo: Maiko Miyagawa

城山コンサートは、野外の芝生の上でのんびりと、星空をバックに見ながらコンサートを楽しんだり、音に身を委ねて踊ったり、寝転がって聴いたり、鼓童を野外で見られる数少ない機会です。

Photo: Satoko MaedaPhoto: Maiko Miyagawa
Photo: Maiko MiyagawaPhoto: Satoko Maeda

そしてアース・セレブレーションは、コンサートだけのイベントではありません。プレイベントの薪能、太鼓や佐渡の芸能、ダンスを体験できるワークショップ、佐渡の歴史や自然、文化を楽しめる佐渡体験プログラム、様々なジャンルのパフォーマンスを無料でご覧いただけるフリンジ、世界各国の食べ物や雑貨等の店が揃うハーバーマーケットなど、周辺イベントも盛り沢山です。

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また今年は、久しぶりにECシアターが復活します。鼓童大吟醸「五衆(ごしゅ)」と名付けられた小編成の舞台で、私も出演させていただきます。既に稽古を重ねており、このような小さな空間での小編成だからこそできる舞台となりそうです。ぜひご期待いただければと思います。

こうしたコンサート以外のイベントにもご参加いただき、アース・セレブレーションを楽しみ尽くしていただければと思います。

Photo: Takashi OkamotoPhoto: Takashi Okamoto

フェスティバルの期間中は、鼓童の拠点がある佐渡の西南端に、国内のみならず、海外からもお客様が集います。“祭り”が繰り広げられる3日間、リピーターの皆さんも、初参加の皆さんも、夏の佐渡のひととき、それぞれの楽しみ方をして頂きたいと願い、私達も楽しみながら、盛り上がってまいりたいと思っております。

ぜひ夏の佐渡を、そして野外コンサートを体験しに、私達鼓童の拠点である、佐渡においでください。お待ちしております。

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城山コンサート2014


鼓童と佐渡/見留知弘


皆さん、こんにちは。太鼓芸能集団鼓童代表の見留知弘です。
6月の上旬には、関東地方まで梅雨入りしましたので、佐渡も中旬には入るかと思っておりましたが、偏西風の蛇行等もあるようで、対岸の新潟県内は雨でも、佐渡では曇りで最高気温が24度前後の日が多く、朝晩は肌寒いくらいでした。

さて今月は、「鼓童と佐渡の繋がり」という事で、お話をさせて頂きます。

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鼓童文化財団研修所(佐渡市柿野浦)

前身の鬼太鼓座時代を含めますと、鼓童が佐渡に拠点を構えてから、40年以上の歳月が過ぎました。佐渡市に合併前の10市町村の時代には、初期には畑野町を活動拠点とし、次に真野町を経て、現在の小木町へ移ったのが26年前のことです。研修所は相川町での6年間の後、真野町で4年、現在の柿野浦地区に移転して来年で20年になります。

いま鼓童の舞台に立っているメンバーは、ほぼ全員がこの柿野浦の研修所の修了生であり、振り返るとこれまで200人近くの若者が、佐渡に渡ってきたという事になります。研修所を修了して、そのまま佐渡に定住した方々も何人もおりますし、もちろん私達鼓童のメンバーやスタッフも、佐渡で家族を持ち、暮らして行く中での繋がりが生まれ、子ども達が地域の学校に通う事で、さらに繋がりが広がっています。

なぜ佐渡に拠点を置いたのか、という話になりますと、なかなか説明に時間を要します。詳しくは、鼓童の30周年記念誌「いのちもやして、たたけよ。」をお読み頂きますと、色々な事が分かって、私達の根っこの部分をお知りいただけると思います。

「鼓童ワン・アース・ツアー〜伝説」より「鬼太鼓」(Photo: Simon Jay Price)

「鼓童ワン・アース・ツアー〜伝説」より「鬼太鼓」(Photo: Simon Jay Price)

さて、佐渡にはたくさんの芸能や、祭りがあり、芸能を生業に活動している私達の舞台でもそのいくつかをアレンジし、演目に上げさせて頂いております。佐渡の祭りには、一軒一軒への門付け芸が多く、訪ねた各家々で氏子さん達に振る舞われ、祭りを見学している私達も、お家の中に招いて頂き、ご馳走を頂く事があります。1988年に小木地区に鼓童村が開村してから、地区での祭りの際にはお声がけを頂き、数軒のお家を続けてまわり、振る舞って頂く事があります。

岩首まつりの様子

佐渡・岩首まつりの様子

そこで私達も、日頃お世話になっている佐渡の方々に、地元の祭りのように自分たちの家ともいえる鼓童村で感謝を表したいと、鼓童村祭りとして振る舞いを行う事もあります。歴史がある祭りのように、日程も定着しているものではないのですが、自分達が出来る範囲で、感謝の気持ちをお伝えできたらと考えております。

そして鼓童文化財団では、地域振興のための様々な取り組みを行っており、その1つには、佐渡太鼓体験交流館(たたこう館)があります。主には島外からの修学旅行生の体験プログラムとして定着し、佐渡の娯楽施設として、地域に根ざした活動を行っております。

太鼓体験の様子

7月に入り、鼓童の演奏活動は、国内の神秘ツアー、ヨーロッパの打男ツアー、小編成やソロ活動等、多岐にわたって行われます。佐渡が誇れる金銀山・朱鷺などには及ばないかもしれませんが、佐渡の皆さんからは、「佐渡には鼓童がある」とおっしゃって頂けるよう、また舞台をご覧になった皆さんには、演奏と共に、佐渡もアピール出来るように努めてまいります。まだまだ力不足ではありますが、少しでも佐渡にご恩返しが出来ればと考えております。

Photo: Maiko Miyagawa

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浅草公演によせて/見留知弘


皆様こんにちは。太鼓芸能集団鼓童代表の見留知弘です。

5月の佐渡は、とても汗ばむ日もあれば、肌寒い日もありました。過ごしやすい時期から、だんだん夏に向かっているのを感じております。さて、今月は浅草公演についてお話しいたします。

Photo: Takashi Okamoto

昨年始まりました鼓童の浅草連続公演も、お陰様で二年目を迎えました。浅草といえば、当ブログでもご紹介しております三社祭をはじめ、一年中活気のあふれる下町です。古くから芝居小屋や映画館が立ち並び、江戸から伝わる文化が今なお継承されているお土地柄といえるでしょう。

浅草には舞台用の道具や衣装等のお店が多くあり、鼓童も日頃からお世話になっておりますが、さらに前身の鬼太鼓座の創立に関わってくださった永六輔さんのご出身地ということもあり、並ならぬご縁を感じています。永六輔さんとは、鼓童結成初期の1982年に浅草公会堂で開催した「『永六輔+鼓童』投げ銭興行」という公演でご一緒いたしました。これは永さんの企画・構成・演出で、全編何の筋書きもなく、舞台上で永さんのリクエストに応えてメンバーが太鼓や唄や踊りを披露していくというものでした。

それから時を経て2013年、鼓童は約30年振りに浅草公会堂で公演を行いました。一年以上続いた「鼓童ワン・アース・ツアー2013〜伝説」の国内の千秋楽を、浅草での4日連続の公演で迎えられたことで、私たちは大きな手応えをつかむことができました。

Photo: Taro Nishita

2013年6月「鼓童ワン・アース・ツアー〜伝説」浅草公演

さて浅草は、浅草寺、仲見世通り、雷門を中心に、世界から観光客が集まる日本を代表する観光地ですが、近年は東京スカイツリーの開業もあいまって、街づくりの新しい動きが広がっています。また同時にエンターテインメントの新しい発信地としても注目されています。

そんな魅力の尽きぬ浅草の歴史と文化を心ゆくまで楽しみ、そして過去から未来への時間の流れを感じながら、「鼓童ワン・アース・ツアー2014〜神秘」浅草公会堂公演にご来場いただきますと、また違った感覚で公演をお楽しみいただけることでしょう。

Photo: Takashi Okamoto

色々な芸能・芸能者が育まれ、また生まれつつある浅草の地で毎年連続公演を行うことにより、鼓童の取り組みに皆様からご指導ご鞭撻をいただき、末長く応援していただけるよう目指してまいりたいと考えております。また誠に僭越ながら、浅草文化の賑わいにわずかでも役立たせていただければと願っております。

浅草の鼓童、皆様のご来場をお待ちしております。

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鼓童ワン・アース・ツアー2014〜神秘

2014年6月21日鼓童 DVD「伝説」発売

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