鼓童ブログ Kodo Blog

Tag ‘前田剛史’

大山咲みリハーサル/松田菜瑠美


大山咲みリハーサル

Photo: Narumi Matsuda

9月3日に前田剛史が出演させていただく、高木正勝さんのコンサート「大山咲み」のリハーサルが始まりました。ピアノにアイヌの唄、パーカッション、クラシックの楽器など、さまざまな音が飛び交っています。

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普段はそれぞれの世界で活躍中のミュージシャン、歌手、ダンサーの皆さんが、音を合わせては、また新しい音が生まれています。

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和太鼓や鼓童の持ち味をどのように出していくのか、ただ今奮闘中です。

9月3日京都岡崎音楽祭 OKAZAKI LOOPS 
高木正勝コンサート「大山咲み」に前田剛史出演
http://www.kodo.or.jp/news/20160903okazakiloops_ja.html


鼓童浅草特別公演「若い夏」に向けて/前田剛史(演出)


鼓童浅草特別公演「若い夏」に向けて

鼓童は今年で創立35周年を迎えました。2012年からは坂東玉三郎さんを芸術監督にお迎えして足掛け5年になります。鼓童が誕生以来今日までに培ってきたもの、そして玉三郎さんとの出逢いから得てきたものを大切にし、今と向き合っていかねばなりません。そのような一つの節目となる年に、浅草公会堂に於いて「若い夏」という公演の演出を担当させていただく事となりました。

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山口幹文さんと齊藤栄一さんという2人の先輩の力添えをいただきながら、「若い夏」のタイトルの通り、年齢もキャリアも若いメンバーを中心に構成した舞台です。私や「若い夏」の出演者のほとんどは鼓童が人気を博して、一つの型が出来上がっている環境下での入団でした。これまで芸術監督とともに取り組んできた数年間は、自分達の固定概念を考え直しての出発でもありました。その時改めて『鼓童』という集団がどの様なものか見えてくることが多くありました。

今回の舞台では「若い夏」の題字を書いてくださった、左官職人の挾土秀平さんに舞台美術をお願いしました。

今年の1月に「若い夏」のメンバーと一緒に挾土さんの工房にお訪ねしました。その時、挾土さんのお声がけで、真冬にもかかわらず外で焚き火をして朝食にうどんを茹でて食べようということになったのです。

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自分が鼓童村で寮生活をしている時にみなで集まり、焚き火をしてはハムやチーズを焼いたりして食べたことがありますが、まさか挾土さんと共に、このようなスタイルで朝食を作ることになるとは思ってもみませんでした。挾土さんの号令で早速山から枝を集め、せっせと火を起こし、じっと鍋が沸騰するのを待つ。

Photo: Narumi Matsuda

その間に畑から大根をとってきてすり下ろす人、食器を準備する人、食べられるような場所を作る人。申し合わせずとも皆で協力して朝御飯のために動きます。具はツナと辛味大根のおろしだけ、とてもシンプルです。そして、麺が茹で上がったら釜揚げで熱々のうどんを好きなだけ食べる。「朝食、食べるぞ!」と言ったのが9時頃。食べ始めたのが11時頃。体も芯まで冷えお腹もペコペコの状態で食べたあのうどんの味は、「こんなに美味いうどん初めて食べた!」と思うほど体に染み渡りました。

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皆でたっぷり時間をかけて作り、味わう。このプロセスがあったからこそ、深く味わえ、普段の何十倍も吸収できることがありました。飛騨高山の地で職人として自然や日々の生活と向き合っておられる挾土さんの言葉には濁りがなく、芸術家というよりは「親方!」と言いたくなるような親しみを感じて引き込まれてしまう瞬間があります。挾土さんとの経験を通して、普段何気なく過ごしている中に、一つ一つを大切に生きることの大事さを再確認したのです。

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今の自分達でどんな舞台が作れるのか。鼓童として大切にしなくてはならないものは何なのか、先輩たちがここまで命燃やし打ち継いできてくれたものは何なのか。芸術監督が伝えようとしてこられたことは何なのか。自分に問いかけ、周囲と向き合って、新しい道を切り開く。これが今の自分達には大きな意味があるのだと感じています。「若い夏」がどんな舞台になるかはまだまだこれからですが、皆で精一杯創り、舞台に挑みたいと思っています。

Photo: Takashi Okamoto

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▼【残席わずか】鼓童浅草特別公演「若い夏」チケット好評発売中!
news20160701wakainatsu鼓童浅草特別公演「若い夏」
2016年7月1日(金)〜3日(日)東京都台東区 台東区立 浅草公会堂
http://www.kodo.or.jp/news/20160701asakusa_ja.html

【問】チケットスペース Tel. 03-3234-9999
(月〜土、10:00〜12:00、13:00〜18:00)

・チケットぴあ Tel. 0570-02-9999 [Pコード:286-894] http://pia.jp/
・イープラス http://eplus.jp/
・ローソンチケット Tel. 0570-000-407(オペレーター 10:00~20:00) Tel. 0570-084-003[Lコード:34284] http://l-tike.com/
・セブンチケット http://7ticket.jp/ 全国のセブン-イレブン店頭マルチコピー機


新しい挑戦/西村信之


新しい挑戦

昨年、ツアー中に前田剛史と話し合った。

自分たちが真の意味でどこまで「鼓童」であるのか。どうすれば「鼓童」になれるのか。自分たちは「鼓童」を追いかけているに過ぎないのではないか。現状についての憂いや不安も含め包み隠すことなくお互いに言い合った。そこで初めて自分がスタッフとして感じていたことと、前田が演奏者として感じていたことが同じであることに気づき、驚いた。

一つ至った答えは、自分たちで新しく何かを創り上げることが必要だということだった。その新しく創るという行為を通してでなければ、これまで鼓童を創り上げてきた人たちが切り開いてきた景色は見ることができない、言い換えれば、その行為を経て初めて創設者達の想いが理解できるのではと思った。

挾土秀平IMG_0945-fそんなことを考えている最中、大河ドラマ「真田丸」の題字を書いている挾土秀平さんの姿を見た。赤土の巨大な壁に、鏝で土をえぐりとる様に描くその姿はあまりにも衝撃的だった。途端に、この方と一緒に舞台を創りたいという激しい衝動に駆られ、何の伝手もない中すぐに連絡をし、気がつけば挾土さんの本拠地である飛騨高山まで来ていた。

極度の緊張のもと対峙した挾土さんは、すぐにその様子を察してくださったのだろう「僕に西村さんが探すものがあるかどうかわかりませんが、是非僕の世界をみてください。」と答えてくださった。その日は正午から真夜中まで挾土さんのアトリエや迎賓館をご案内いただき、じっくりと語りあう時間をいただいた。挾土さんが感じられる鼓童の印象やこれからの可能性から、前田と話し合ったことまで真剣に語り合った。左官としての経験とその視点から発せられる言葉一つ一つから、まさに自分が求めていた「何か」があった。これまで言葉にできなかったけれど、感じ欲していた「何か」を挾土さんは持っていらしたのだ。

「若い夏」は、芸術監督からの学びを生かし、改めて鼓童としての表現に挑戦する舞台である。その背景に、挾土さんの力が加わる。太鼓と左官、伝統と革新に挑戦する両者が生み出す舞台、その第一歩を踏み出した。

【チケット本日発売!】KODO_16summer_B1poster

鼓童浅草特別公演「若い夏」
2016年7月1日~3日 東京・台東区
http://www.kodo.or.jp/news/20160701asakusa_ja.html

【チケット本日発売!】
チケットスペース Tel. 03-3234-9999
(月~土、10:00~12:00、13:00~18:00)


「リズムを体感!コンサート」出演/前田剛史


鼓童出演「リズムを体感!コンサート」

本日、渋谷・bunkamuraオーチャードホールにて、『リズムを体感! コンサート』という題名で、東京都民の皆様対象の公演企画に参加させて頂きました。我々鼓童以外に、ギターの押尾コータローさん、タップの熊谷和徳さんも参加されており、数曲共演をさせて頂きました。

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鼓童は集団なので、ツアーや公演が自分達の中で完結する事が殆どで、他のアーティストの皆様と共演する機会はあまり多くありません。そんな中で今回トップアーティストのお二人との共演機会は非常に勉強する事が多く、実りある時間でした。1人で世の中を相手にしている人の偉大な人間力の様な物に、自分自身の小ささを改めて痛感します。ですがこの様な出会いは、確実に自分への刺激になり、単純に素敵な時間を過ごせたなと心から思います。

Photo: Taro Nishita

押尾コータローさん、熊谷和徳さん、本当に素敵な時間をありがとうございました!!

鼓童出演「リズムを体感!コンサート」
http://www.kodo.or.jp/news/20150926rhythm_ja.html

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岩崎さんと-IMG_1936-150926-taroN-f

岩崎宏美さんがご来場くださいました!終演後、メンバーとの一枚。


愛知県・東海市芸術劇場での公演/前田剛史


鼓童ワン・アース・ツアー〜永遠
2015年9月21日愛知県・東海市芸術劇場

Photo: Mitsuru Ishizuka

9月21日、東海市芸術劇場での公演。この劇場なんと…出来立てホヤホヤ。まだ誰1人と立っていない新しい舞台を、今回鼓童が使わせて頂きました。人生で日々沢山の舞台に立たせて頂きますが、こんな機会は後にも先にも無い様に思います。

Photo: Narumi Matsuda

楽屋、舞台裏、客席、道具達、全てがピカピカで、楽器搬入から新しい服に袖を通す様な気持ちで、汚さないように〜傷を付けないようにと、少し緊張しながらの作業でした。

Photo: Takashi Okamoto

本番が初まって、会場の空気はお客様も新しい劇場に少し緊張している様なぎこちなさも感じ、何だか普段とは全く違う空気の公演になりました。これから色んな人が奏でる音や演じる人間のエネルギーをどんどん吸収して、その人を支え、舞台も育って行くんだと思います。そんな初めの1ページを鼓童の音で綴る事が出来て嬉しく思います。初心に返ってこれからも頑張ります!

Photo: Takashi Okamoto

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「永遠」9〜10月国内ツアー
http://www.kodo.or.jp/news/20150606oet_ja.html

【9〜10月】千葉・茨城・宮城・山形・岩手・秋田・静岡・大阪・愛知・兵庫・鳥取・山口・福岡・熊本・鹿児島

ディスコグラフィー | 永遠
http://www.kodo.or.jp/discography/od013014_ja.html


WEBサイト「DAILY MORE」に鼓童記事掲載!


WEBサイト「DAILY MORE」に鼓童記事掲載!

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女性ファッション誌「MORE」のWEBサイト「DAILY MORE」に鼓童メンバーのインタビューが掲載されました。

<前編>では舞台への想いや稽古のことなどを、坂本雅幸、住吉佑太、漆久保晃佑のMORE世代3名が語っています。写真も盛り沢山、是非ご覧ください。<後編>では鼓童に入ったきっかけや、研修所時代について語っています。ぜひFacebook、Twitter等でシェアをお願いいたします!

【インタビュー】太鼓芸能集団『鼓童』にハマれ!(前編)
http://more.hpplus.jp/odekake/look/1613

【インタビュー】太鼓芸能集団『鼓童』にハマれ!(後編)
http://more.hpplus.jp/odekake/look/1614


▼▼▼こちらも要チェック!

【鼓童の舞台写真が盛りだくさん!】
芸団協広報誌「SANZUI」

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芸団協広報誌「SANZUI」の「特集 ホレボレ」で俳優・田中要次さんのコメントと合わせて、鼓童の舞台写真が掲載されています。以下のWEBサイトからダウンロードでご覧いただけます。ぜひご覧ください。
http://cpra.jp/sanzui/2015_sanzui/sanzui-vol07-2015-spring.html

 

【チケットぴあ関西WEB版】悠久の自然の営みを和太鼓の調べにのせて『鼓童 ワン・アース・ツアー2015~永遠』船橋裕一郎&前田剛史にインタビュー
http://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2015-05/kodo.html

【エンタステージ】太鼓音楽で「永遠」を紡ぐ 鼓童『ワン・アース・ツアー2015〜永遠』公演日程が決定
http://enterstage.jp/news/2015/05/002675.html

【文京アカデミーWEBサイト】「文京シビックホール提携団体・コメントリレー」に石塚充の記事が掲載
http://bunkyocivichall.jp/special_mail_magazine/1505/004/index.html

【Huffington Post】「神秘」アメリカ公演記事掲載
http://www.huffingtonpost.com/steve-mariotti/the-magic-of-taiko-for-am_b_7436620.html

【WEB「GREEN GLOBAL TRAVEL」】鼓童公演紹介、内田依利インタビュー記事掲載
http://greenglobaltravel.com/2015/03/26/kodo-taiko-drummers-japanese-culture


雑誌「クロワッサン」に鼓童インタビュー記事掲載


雑誌「クロワッサン」に鼓童インタビュー記事掲載

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4月25日発行の「クロワッサン」5/10特大号(No. 900)、「croissant culture『MUSIC』」で鼓童の紹介と船橋裕一郎、前田剛史インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。

マガジンハウス「クロワッサン」
http://magazineworld.jp/croissant/croissant-900/

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音楽ライターの小田島さん(中央)と、船橋(右)、前田(左)

3月18日テレビ神奈川「tvkありがとッ!」生出演


テレビ神奈川「tvkありがとッ!」生出演

3月18日(水)13:10ごろ「tvkありがとッ!」に鼓童が生出演します。太鼓演奏もあります!神奈川のみなさま、是非ご覧ください。

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テレビ神奈川「tvkありがとッ!」
3月18日(水)※鼓童の出演は13:10〜13:25ごろ出演の予定。
出演:船橋裕一郎、石塚充、前田剛史、立石雷

番組サイト:http://www3.tvk-yokohama.com/arigato/

そして、生出演の翌日より「道」公演!ご来場をお待ちしております。


▶YouTubeで再生 https://www.youtube.com/watch?v=r1N2ME9rH4E

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鼓童特別公演2015「道」
http://www.kodo.or.jp/news/20150319michi_ja.html

2015年3月19日(木)、20日(金)
神奈川県横浜市 KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>
演出:山口幹文
予定演目:族、Jang-Gwara、千里馬、道、三味線、モノクローム、三宅、三寒四温、山唄、大太鼓、屋台囃子
チケット残りわずかです。お問い合わせ:tvkチケットカウンター 045-663-9999

「鼓道」/前田剛史


鼓童特別公演2015「道」

Photo: Erika UedaPhoto: Erika Ueda

3月19、20日にKAAT神奈川芸術劇場で開催の「鼓童特別公演『道』」の稽古が2月より始まった。内容的にはいわゆる「クラシック鼓童」。数十年の間、鼓童が培ってきた演目や構成を今いるメンバーで再構築してみる。

ここ数年の舞台は、とにかく新しい事に挑戦し、楽曲や衣装なども今まで基本にあった物から一旦離れてみた。離れる事で、今まで気にも掛けていなかった事が見えてきたり、鼓童とは何なのだろうと改めて考えさせられる時間にもなっている。

Photo: Erika UedaPhoto: Erika Ueda

そしてこのタイミングでの『道』。

千里馬やモノクローム、三宅に大太鼓、屋台囃子。改めてそれぞれの楽曲に向き合ってみる。今まで鼓童という集団から滲み出ていた空気がここにあったのかと痛感した。

Photo: Erika Ueda

この稽古の中で諸先輩方から構え方、リズムのニュアンスや、太鼓に向かう気持ちなど久しぶりに伝えて貰い、そして一緒に演奏する。その中で改めて自分の甘さを感じ、先輩の壁の高さを感じた。

今は一筋縄では乗り越えられない壁にぶち当たり、自己嫌悪の日々だが、何故か逆にメラメラとやる気が湧いてくる。とにかく日々勉強になる時間だ。

Photo: Satoko Maeda
「温故知新」という言葉があるが、鼓童として失ってはならないものをこの「道」公演で改めて学び、新たな舞台作りにも活かしていきたいと思う。

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▶YouTubeで再生 https://www.youtube.com/watch?v=r1N2ME9rH4E

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鼓童特別公演2015「道」
http://www.kodo.or.jp/news/20150319michi_ja.html

2015年3月19日(木)、20日(金)
神奈川県横浜市 KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>
演出:山口幹文
出演者(予定):齊藤栄一、見留知弘、船橋裕一郎、石塚充、中込健太、前田剛史、立石雷、蓑輪真弥、稲田亮輔、神白佑樹、小池将也、米山水木
予定演目:族、Jang-Gwara、千里馬、道、三味線、モノクローム、三宅、三寒四温、山唄、大太鼓、屋台囃子

▶チケットのお求め
http://www.tvkcom.net/cgi-bin/ticket/tickets.cgi?t=141758331451

鼓童、そして和太鼓の原点こそが『永遠』/鼓童稽古場レポート


鼓童、そして和太鼓の原点こそが『永遠』

文●今井浩一(フリーライター)、写真●岡本隆史

 ▶PDFでみる/印刷をする

佐渡に初めて渡ったとき、その日最後の輝きを放ちながら、水平線の向こうに沈んでいく太陽がなんとも感動的だった。佐渡汽船の新たな高速カーフェリーがこの秋に「あかね」と名づけられたばかりだけれど、まさにそれがあの日の夕陽の色だった。そして合わせて佐渡で大切に育てられている天然記念物のトキの色にも重ねたネーミングなのだそう。そんな佐渡の夕陽は、島の豊かな自然を象徴している気がして、それがなぜなのかはわからないけれど、他所で見る夕陽に比べて格段に劇的だった。

鼓童の稽古場で、新作『鼓童ワン・アース・ツアー〜永遠』初の通し稽古を見ていて、実はそんなことを思い出していた。まるで秋祭りを彷彿とさせるような懐かしくて、温かな音色、オープニングからほどなくステージ後方に浮かび傾いていく太陽が、すぐさま佐渡のイメージを喚起させてくれたのだ。

それにしても『永遠』とはまた、過ぎるほどに壮大で、深遠なタイトルだ。

そのことについては、坂東玉三郎芸術監督はこうしたためている。

Photo: Takashi Okamoto
「永遠というテーマについて自分なりに思いを巡らせていたある日、ふと「自然の営み」が螺旋状に続いて行く、という考えに行き着いたのです。「自然の営み」を羅列することで「永遠」を表現出来たらと。厳密に言えば「永遠」というものは無いのかも知れませんが、それに繋がるきっかけとして 夜明け 光 雨 風 雲 波 星々 夕暮れ その中の「人間」というものが思い浮かび上がってきました。」

 

全員で試行錯誤する稽古場は
心、音、そして笑顔の交歓に満ちあふれていた

Photo: Takashi Okamoto

自然の営みは、人智ではどうにもならない圧倒的な力もあれば、小さな芽にも宿る生命の神秘のような力もある。そんなさまざまを、和太鼓の音色のあらゆる表情でつづっていくのが『永遠』、ではないだろうか。

これから始まるドラマを映し出すスクリーンが闇に広がっていくような曲「夜霧」(前田剛史作曲)で始まった。おりん(※1)の高音が、島を吹き抜ける涼やかな風のように響きわたる。そして横笛を軸にいろんな、新たに取り入れたものも含めた“打つ”楽器がベースのリズムを刻むメロディーは、前述した秋祭りの祭り囃子のよう。日本人の中に古くから伝わるなりわい、繰り返し繰り返し行われてきた営み。そんなものに対する郷愁をかき立てる。同時に波の音、風の音が加わり、佐渡の自然の豊かさを、海であったり山であったりの恵みへの感謝を思わせる。

(※1 正式名称は「ここちおんず」という仏具)

 

『永遠』の1部は、冒頭とエンディングが、こうした世界観で包み込まれている。和太鼓の爽快感を期待する観客をするりと交わし、はぐらかしてくすぐり、やがて燃え上がらせる。

桶胴のソロから続く「カタライ」(前田剛史作曲)では、一人の奏者の周りを大小いろんな大きさ、いろんな形の和太鼓がぐるりと囲み、そのさらに外側を4人の奏者が囲むというユニークなポジショニングで演奏が繰り広げられていく。それはまさにフリージャズのセッションのようだ。

Photo: Takashi Okamoto

「この曲は玉三郎さんから太鼓で囲ってみたらいいんじゃない? 囲った状態でつくってみてほしいと言われて作曲したものです。おしゃべり、会話するというテーマがあって、太鼓によってさまざまな拍子、それぞれに違う言葉(音)を持っているのですが、その個性がうまく混じり合って一連の曲になっていけばいいなあと。生きているうえでの、コミュニケーションとしての会話、人間の根源的な営みを描いているんです。玉三郎さんは太鼓を和音的な楽器として捉えていらっしゃるというか。音の高低が混じり合ったときのメロディー、複雑な中にも大きな波があるとか、そういうものを求められている気がします」

Photo: Takashi Okamoto

稽古場では、メンバーと同じ目線で、まさに「一緒に」作品づくりをする芸術監督がいる。すべてを瞬時にチョイスしていく姿は、太鼓の演奏はしなくとも、直感的に魅力的な要素がわかってしまうかのごとく。「カタライ」の返し稽古でも「いっそ、こうしてみたら」とメンバーのアイデアを大胆に膨らませていく。次!次!次!と叩く太鼓を指で素早く指示していく。奏者もそれを右へ左へ身体を切り返して負けじと叩き続ける。芸術監督のアドバイスによって、若い奏者たちが、動きが、音がより自由に、大胆になっていく。一息ついて芸術監督とメンバーたちが笑顔の交歓している稽古場は、皆がハジけている。そして先ほどのフリージャズは、奏者同士の濃密なやりとりへと変貌していくのだ。

 

芸術監督のさまざまなオーダーから
改めて太鼓の魅力に気づくことができた

Photo: Takashi Okamoto

この通し稽古が行われたのは9月の中旬のこと。8月21日から23日に行われたアース・セレブレーションの喧噪が徐々に秋風に変わりかけていた。しかし鼓童村の稽古場では、この11月からツアーを開始する新作『鼓童ワン・アース・ツアー〜永遠』の稽古が熱を帯びていた。世界を、国内をかけめぐっている鼓童とあって、数少ない全員が集まってのリハーサルは集中度がものすごい。『永遠』に取りかかったのは今年1月のことだったそうだ。「今回はすべて新曲で行きましょう!」の芸術監督の一言から始まった。これまでの作品は、鼓童の代表的な曲を核にアレンジしたり、形を変容させながらつくられることが多かったが、『永遠』はすべてがまっさらな状態からのスタートだ。


Photo: Takashi Okamoto

芸術監督から渡された『永遠』について(冒頭の)短い文章をもとに、イメージなどを一緒になって話し合い、共有した。「それをもとにアイデア出し、発表をする機会を何回か持ちました。その内容は曲であってもいいし、太鼓を叩く形でも太鼓の配置でもなんでもいいんです。それを玉三郎さんがご覧になって、その中から得た着想をもとに新作が練られていきました。この曲のこの部分を膨らませたい、この形を使ってみたいというものを核に徐々に作品ができていく感じです」(船橋裕一郎)。その後は芸術監督がチョイスした“種”をメンバーそれぞれが育てていく作業がずっと続けられ、その全貌が姿を表したのが9月上旬だった。

『永遠』は、坂東玉三郎が芸術監督となって演出を手がける第3作目。第1作目の『伝説』は、鼓童の伝説的演目と芸術監督が手掛けた新作曲をつないだ作品だった。第2作目の『神秘』は、闇と光の交差する幻想的な空間で、演劇的な要素、役者としての立ち方を追求したものに。芸術監督が求める表現、それは鼓童にとっての新たな挑戦というべきものだった。

Photo: Takashi Okamoto

「以前の鼓童というのは、歯を食いしばって、汗を飛び散らせながらデカい音を出してなんぼみたいなところが少なからずあった。玉三郎さんには逆に引き算を要められて、しばらくは小さい音、繊細な音をひたすら練習しましたね。そのことで一つの太鼓がどういう音色を持っているのかを改めて知る機会になりました。だから作曲するときでも、そうやって発見した音を散りばめられるようになりましたね」(前田剛史)。

Photo: Takashi Okamoto

「自分たちで演出をしているときには、新しいことをやろうと思っても、昔からの鼓童の伝統にしばられた部分が意外と大きいんだなと気がつきました。半纏、鉢巻きや褌が脱げなくて、脱げないがゆえに踏み出せなかった。確かに最初は衣裳を脱ぐことにさえ抵抗がありましたが、脱いでみたら気持ちも変わって、新しいことにチャレンジすることが面白くなってきました。玉三郎さんは思いもかけないことをおっしゃるんですけど(笑)、それが今では意外としっくりくることもある」(坂本雅幸)。

Photo: Takashi Okamoto

「今まで鼓童は、和太鼓と日本の民俗芸能をベースにしていたので、洋楽的なリズムをやること、ダンスのような身体のさばきには違和感があったんです。玉三郎さんが新しいことを積極的にやらせようとされていて、戸惑いながらも自分たちの受け幅が広くなってきて、今度はこれ、今度はこれとわかるようになってきたんです」(石塚充)。

2012年の正式就任以前から続く芸術監督との10年におよぶ交流を通して、その思いはメンバーの中で消化、浸透してきたからこそ、『永遠』では、皆がフラットな状態からスタートできたのだ。

 

和太鼓とは何か? そんな問いから生まれる新たな魅力

Photo: Takashi Okamoto

『永遠』の第二部もおりん(※2)の音から始まる。どうやらこの音は、観客が日常から離れるためのおまじないのようなものかもしれない。小さなシンバルのようなチャッパと鈴(すず)などの鳴りもののアンサンブルから始まる。そこから4人が抜け出し、コンテンポラリーでありながら土着性も感じさせるダンスを繰り広げる。チャッパやガムランの鳴り響く不思議なメロディーに併せてのダンスが異空間へと観客を誘う。

(※2 正式には「久乗おりん」)

 

異空間で最初に出会うのは「焚火」(小田洋介作曲)。まるで和太鼓の概念をくつがえしていくようなユーモアにあふれた演奏だ。5人の奏者が和太鼓の縁を円を描くようにツーっとなぞる、コンコンと叩く。和太鼓というもののすべてを使って、明らかに和太鼓とは違った音とリズムを生み出していく。誤解を恐れずに言えば、目を閉じて聞いていたら、デッキブラシやドラム缶などを使ったパフォーマンス、『ストンプ』の世界に入り込んでいくようだった。それが和太鼓が奏でているものとは思えなかったのだ。鼓童の影響を受けて『ストンプ』が誕生したのはよく知られていることであるけれど、その世界観の原点であり、太鼓の奥深い可能性を見せられた気がした。

Photo: Takashi Okamoto

「永遠というテーマを考える中で、僕にとってははるか昔にさかのぼる必要性があったんです。永遠は未来だけではなく過去にもあるわけじゃないですか。だったら和太鼓の基本的な演奏方法が確立される前の段階、和太鼓が和太鼓になる前の生まれた瞬間を想像してみたとき、曲をつくるうえで、従来の和太鼓の音のつくり方を外してみようと思ったんです。もしかしたらあんなの和太鼓じゃないとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれないけど、本当の原始の時代はどんなふうにやっていたかなんて誰もわからないじゃないですか。“従来の”という考え方自体が基本ができ上がってからのことですから」。

小田がこの発想にたどり着いたのも、『伝説』『神秘』という作品を経て、芸術監督が目指しているものが何であるかがわかってきたからだと言う。これは芸術監督が歌舞伎というものを伝統芸能ではなく現代と呼吸する表現に昇華させている姿勢に通じるものではないだろうか。鼓童の中心メンバーである小田が突出してこうした自由な発想を生み出すことは、ほかのメンバーへの影響も大きいはず。

 

Photo: Takashi Okamoto

やがて、笛の音とともに、ふさのついた長いバチを振りかぶっての踊りが始まっていく。円を描きながら回っていくうちに、それは平胴大太鼓を叩く動きに変わっていく。平胴大太鼓が1台から3台へ、叩き手も1人から数人へ。こうしたフォーメーションをはじめ、間(ま)、しなやかな動き、緩急などは芸術監督自身が大切にしているものであり、それらが皆に浸透しているのを感じさせる。「永遠というテーマを聞かされたとき、何かが回っているイメージが浮かんだんです。とにかく回りたいと考えて、最初はバチを回して、身体を回して、太鼓の周りを回ってみたら、このまま太鼓を増やしてたらと玉三郎さんがおっしゃって。回っているうちに同じところだけではなく、高まっていく感じを出せたり、太鼓を叩くだけではない空気の動きを出せたらいいなと」(石塚)。稽古場に太陽系のような関係性、引力が生まれていた。

Photo: Takashi Okamoto

そこからはおなじみの力強い和太鼓の世界。迫力あるリズムが疾走していく。鼓童のメンバーが、和太鼓と一体化しているようでもあり、壮絶に格闘するかのようでもある。気がつくと小田をはじめ3人の奏者が掌で太鼓に向かっている。それこそ、原始そうであったかのような姿からは、太鼓と闘いを通して対話をしているようでもある。これだけいろんな表情を見せた和太鼓がラストスパートに向かっていく。無骨に打ち続ける刹那がより際立っていく。最後の一打ちまで。

 

積み重ねてきたものの大切さを知る
鼓童版“温故知新”

和太鼓の魅力、和太鼓を超えた新しい魅力を鼓童のメンバー自身が発見し、それをまた観客自身が発見していく。それが『永遠』。改めて和太鼓という“もの”に無垢に向き合った。和太鼓とは何かを改めて考え、和太鼓を知り、そして当たり前だったことを投げ打ってさらに新たな可能性を広げていった。そして『永遠』では、鼓童の作品を締めくくってきた象徴たる大太鼓も登場するシーンがなくなった。でも違和感はまるでない。その代わりさまざまな和太鼓がいろいろな表情で魅せる。それが和太鼓とは思えないような音までも奏でる。だからこそ、力尽きるまで叩き続ける姿がより際立ち、感動を引き起こすのではないだろうか。そして同時に、30年以上積み重ねてきた歴史、方法論、経験、環境などなどが改めて素晴らしいものであることを実感している。新たなチャレンジの意義は、そこにもあった!

「玉三郎さんがいらしてからは、なんと言われようとも今までやってこなかったことにチャレンジをしてきた。もしかしたら、何が新しい、何が古いとかではなくて、どんなことをやっても鼓童の舞台だねって言われるようになりたいです。伝統曲も、コンテンポラリーダンスも同じ土俵で語られる武器にしていきたい」(坂本)。

「民俗芸能、和テイストのものには自分たちはすぐ行けるんです。この際、やれることはすべてやってしまうのがいいんじゃないかと思いますね。どんどん可能性を広げて、あとは自分たちで選べばいい」(前田)。

最後は小田の言葉で締めたいと思う。

Photo: Takashi Okamoto

「玉三郎さんが目指しているものが、うっすらですが見えてきました。将来どういうふうな太鼓打ち、芸能者になってほしいかという思いが見えてきましたね。求められているものが普通じゃない。より高度なものなんです。あえて言えば、これまでの鼓童より見た目は華やかに仕上がっているかもしれないけど、より古代に回帰しているのかもしれません。でもそれは鼓童の歴史じゃなくって、太鼓の生まれた理由にまでさかのぼっている感じ。僕らがやらなければいけないのは、これまで積み上げたものを置いていくこと。今まで積み上げたものの上で今があるわけですけど、同時に手放していく作業もしていかないといけない。たとえば自己表現への欲求を置いてきた先に、自分が見えてくるように。」(小田)。

だからこそ、鼓童にはこの言葉を贈りたいと思う。
鼓童は変わらない、しかし鼓童は変わり続ける。それこそが、『永遠』の姿なのかもしれない。

▶You Tube で再生 http://youtu.be/8_BHh_OyRVs

 

鼓童ワン・アース・ツアー2014〜永遠

news20141120oet170

11月 20日 (木) 【新潟】アミューズメント佐渡
11月 30日 (日) 【新潟】シティホールプラザ「アオーレ長岡」※
※中越大震災10年復興祈念・東日本大震災復興祈願祭 ハートビート・プロジェクト特別公演
12月 2日 (火) 【神奈川】ミューザ川崎シンフォニーホール
12月 4日 (木) 【愛知】愛知県芸術劇場コンサートホール
12月 6日 (土) 【大阪】NHK大阪ホール
12月 7日 (日) 【大阪】NHK大阪ホール
12月 10日 (水) 【岡山】岡山市民会館
12月 12日 (金) 【広島】上野学園ホール
12月 15日 (月) 【福岡】博多座
12月 16日 (火) 【福岡】博多座
12月 19日 (金) 【東京】文京シビックホール
12月 20日 (土) 【東京】文京シビックホール
12月 21日 (日) 【東京】文京シビックホール
12月 22日 (月) 【東京】文京シビックホール
12月 23日 (火・祝)【東京】文京シビックホール
12月 25日 (木) 【新潟】新潟県民会館

 

今井浩一(フリーライター)
日本大学芸術学部美術学科絵画科卒業。大学時代に演劇に出会い、演劇にハマる。演劇情報誌シアターガイドにて16年を過ごし、編集長、スーパーバイザーなどを経て、まつもと市民芸術館広報に。5年半勤めた後、フリーの編集・ライターに。信州を拠点に演劇をはじめ、アーティスト・クラフト作家、農家などを取材。最近はイベントの企画なども行っている。

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