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Tag ‘住吉佑太’

アメリカの旅/住吉佑太


アメリカの旅

今年も残りわずかとなりました。寒暖差の激しい日が続いていますが皆様いかがお過ごしでしょうか。先日、スタッフの河本がブログに書きましたように、11月の26日から12月の20日まで、アメリカを旅しておりました。

【鼓童ブログ】ロサンゼルスで太鼓三昧!/河本唯

Photo: Kim Nakashima

On Ensemble の皆さん、渡辺薫さん、Fumi Tanakadateさんと住吉佑太(Photo: Kim Nakashima)

ロサンゼルスに始まり、サンディエゴ、ラスベガス、シカゴ、ニューヨークと各地を巡り、ワークショップやコンサートを行いました。

先々ではいろんな方々と出会いました。太鼓や音楽をされている方や、そうでない方とも。それぞれのコミュニティの仲間にいれて頂いて、様々な形での交流がありました。あるときは観光をしながら。お酒を飲みながら。セッションをしながら… 各地で本当にお世話になりました。

Photo: Kim Nakashima

ロサンゼルスにて On Ensemble の皆さん、渡辺薫さん、Fumi Tanakadateさんと共演(Photo: Kim Nakashima)

どこで何をしたかということを書き始めると、とてつもなく長い文章になってしまうので…(笑)この旅を通して、何を感じたか、どんな学びがあったかを少し掻い摘んで書きたいと思います。

「1人」でどこまでできるか試したい!そんな思いもあって、この旅を計画しました。今まで甘えてた部分、音楽的なことも、語学的なことも(笑)全部しっかり向き合って、武者修行のような旅にしたいと思って出発しました。

Photo: George Hirose

ニューヨーク、ShapeshifterにてKaoru Watanabe’s Néo の皆さんと(Photo: George Hirose)

みんなで出している音ではなく、自分が出している音がすべて。それは物理的に自分だけ、ということでもあるし、自分の出している音に責任を持ってセッションに参加するということでもあります。それはジャムセッションに限らず、太鼓のアンサンブルやワークショップであっても「鼓童」ではなく、その中の「住吉佑太」としてその場に臨んでみたい。

Photo: George HirosePhoto: George Hirose

今回の旅では、即興で何かを演奏する機会がたくさんありました。「自分の出している音が相手を刺激している!」そんな感覚を改めて覚えました。それは鼓童の中でも絶対ないといけない感覚だなとも思いました。

同じ舞台上で刺激しあえる感覚。
その心地よさと、そこに至るまでの緊張感。
どう展開していこうか、どういう流れにしたいか。
しかも自分だけではなく、いろんなミュージシャンがいる中で、自分はどういう音が出せるか。どういう音を出したいか。
言葉ではなく音で会話していく感覚。(英語での会話も危ういというのに 笑)
次はこうしよう!ここでブレイクをいれよう!
そのやりとりが音楽になって、大きな流れを作っていく。

そんな感覚はとても自分にとって、とても新鮮で大きな学びでした。

Photo: Kim NakashimaPhoto: Kim Nakashima

各地でのワークショップも、とても刺激的なものでした。なるだけ通訳して頂かなくても伝えられるように!という心意気だけは…(笑)前にも書きましたが、ワークショップにおいては背伸びもできなければ、カッコつけることもできません。伝わるのは等身大の自分が、普段どんなことを大切にしていて、日々何を思っているか。舞台と同じくらい、毎回学びがたくさんありました。日本人とはまた違った視点からの質問が飛び交います。とても鋭角的な質問から、広義なものまで。こんな気持ちや理論が自分の中にあったんだ!と、気付かせて頂くことも多々ありました。

Photo: Yui Kawamoto

まだまだ書きたいことはたくさんあるのですが、いろんなことがありすぎて、ちょっとまだうまくまとめられていません…また少しずつ自分の中に沈殿してきたら、どんどん発信していきたいと思っています。

各地で出会った皆様には、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。またお会い出来る日を楽しみにしています!

では、よいお年を!

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ロサンゼルスで太鼓三昧!/河本唯


ロサンゼルスで太鼓三昧!

Photo: Yui Kawamoto

アメリカはカリフォルニア州・ロサンゼルスからレポートいたします。海外公演を主に担当する制作スタッフの私はこの暖かい町で育ちました。現在住吉佑太のソロ活動の序盤をサポートする為、故郷に帰ってきております。

Photo: Yui Kawamoto

アメリカ各地では日本の和太鼓の文化が浸透しており、その「アメリカらしい」和太鼓が私は大好きです。

太鼓に関わっているもの同士が一つのコミュニティーで繋がっており、お互いを支え合いながら、意見交換をしたり、新しいアイディアを生み出したりもします。そんなアメリカの和太鼓文化を住吉佑太のこれまでの活動と共に皆さまにご紹介いたします。

Photo: Yui Kawamoto

渡米して早速行ったのが浅野太鼓USAに隣接しているLos Angeles Taiko Instituteでの集中ワークショップ。サンクスギビング(感謝祭)の連休中にも関わらず、5時間の講習を満員で行う事が出来ました!

Photo: Yui Kawamoto

参加者は高校生から社会人まで年齢様々で、太鼓も経験豊富な方から、習いたての方まで多くの方に来て頂きました。住吉にとって今回はアメリカ初のワークショップ。勉強してきた英語で一生懸命指導しました。

Photo: Yui Kawamoto

ここでは複数の太鼓を使った「太鼓セット」のワークショップを行いました。締太鼓と桶太鼓のセットはアメリカでもポピュラーなスタイルでしたが、「音高の近い二つの太鼓でフレーズを奏でる」今回のワークショップでは新しい発見が出来たのではないでしょうか。

そしてアメリカの太鼓コミュニティーで忘れちゃいけないのが若き大学生! 大学の和太鼓サークルは年々増えており、実はカリフォルニア州だけで15組以上のチームが存在します。

Photo: Yui KawamotoUCLAの学食にて

アメリカ最古の大学チームは1990年に創立された私の母校であるUCLAのKyodo Taikoといいます。学生時代に和太鼓との出会いがあったから、現在私は太鼓の仕事をしているのだと思います。恩返しの意味も込めて今回Kyodo Taikoとのワークショップも実現させることが出来ました。

Photo: Yui Kawamoto

場所は大学敷地内の地下駐車場! 様々なサークルが活発に活動しているキャンパスで練習場所を探すのも一苦労。車のアラームを鳴らしながら我武者羅に太鼓の稽古に励んでいた日々を鮮明に思い出させるような時間でした。

Photo: Yui Kawamoto

アメリカに昔から伝わる「ワイン樽太鼓」も渋い音を奏でます。

Photo: Yui Kawamoto

普段日本から来たプロに学ぶ機会がない学生たちも真剣にワークショップを受けてくれて、「太鼓を叩いてこんなに楽しかったのは久しぶり」と声を掛けてもらうだけで本当にうれしい気持ちになりました。

さて、ロサンゼルスを締めくくるのはこちらの公演。満員御礼!

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ジャズやロックのテイストを取り入れながら和太鼓を奏でるOnEnsembleはアメリカの太鼓界で知らない人がいないほど大人気です。

Photo: Yui Kawamoto

OnEnsembleの皆さんとのリハーサル

彼らの演奏に加わるのは元鼓童メンバーでニューヨークを拠点に活動している渡辺薫さんとアーティストのFumi Tanakadateさん、そして鼓童の住吉佑太です。このメンバーの最大の共通点は変拍子で繰り広げる音楽的なグルーヴ。ロス滞在期間中に何度かリハーサルを行い、ついに明日が本番となります!

Photo: Yui Kawamoto渡辺薫さん

住吉佑太のコラボレーションがまだ見たい方は12月5日(月)カリフォルニア州サンディエゴにて、渡辺薫さんの新アルバム「Neo」をフィーチャーする公演も行われますのでどうぞお見逃しなく!

「Kaoru Watanabe Néo ft. Yuta Sumiyoshi」詳細
https://www.eventbrite.com/e/kaoru-watanabe-neo-ft-yuta-sumiyoshi-kodo-tickets-27792765911?aff=es2

2016年11~12月住吉佑太ソロ活動(アメリカ)
http://www.kodo.or.jp/news/20161127yuta_ja.html


「螺旋を描いて進む未来」鼓童・船橋裕一郎×石塚充×坂本雅幸×住吉佑太 座談会


鼓童・船橋裕一郎×石塚充×坂本雅幸×住吉佑太 座談会
螺旋を描いて進む未来

聞き手◎伊達なつめ 写真◎岡本隆史

Photo: Takashi Okamoto

船橋 僕と(石塚)充の場合は、ちょうど準メンバーになった頃に、初めて玉三郎さんが佐渡にいらしたんです。

石塚充 Photo: Takashi Okamoto

石塚 その頃はまだ、そんなすごい方がいらっしゃると聞いても、自分のことで精いっぱいで、ことの重みをよくわかっていなかったんですけど、そんな状況下で、玉三郎さんから大太鼓を打つように言われたんです。当時の鼓童では「このパートはこの人」というのがほぼ決まっていて、特に大太鼓は固定メンバーが2人いたので、若手がやるという発想自体ありませんでした。だから先輩たちの反応も「えっ、おまえなの?」という感じ。毎日全体の稽古が終わった後、玉三郎さんと先輩たちがズラーッと居並ぶ中で僕と小田洋介の2人が大太鼓の裏打ちの稽古をする、というのが一ヶ月続きました。体力的にもきついですし、まだ右も左も分からない分際で、全員の目に曝されて大太鼓を打つ毎日というのは、ほんとにもう大変でした。

船橋 苦しかったよね(笑)。

石塚 ただ、そうやって叩き込まれたせいで、鼓童の先輩に教わっただけでは気付かないことにいろいろ気付くことができて、自分の中にも何か芽生えたものがある気がしました。玉三郎さんは、それまでの鼓童ではあり得なかった身体の使い方や考え方を示されるので、僕らよりもむしろ先輩たちの間で「そんな教え方あり!?」という戸惑いが強くなり、2、3年は重苦しい状態が続いたんですけど、『アマテラス』(’06年初演)のころには、もうすっかりいい雰囲気になっていましたね。

坂本雅幸 Photo: Takashi Okamoto

坂本 僕は『アマテラス』の稽古時は準メンバーだったんですが、佐渡の民俗芸能「鬼太鼓」を取り入れた場面で、玉三郎さんにその踊り手をやるように言われて、ものすごく丁寧に教えていただきました。研修生の時に、研修所がある柿野浦という集落に伝わる鬼太鼓を、土地の方に教わっていたのですが、玉三郎さんは「こうした方がいい」と、どんどん動きを変えていくんです。最初は、教わったものを壊す気がして抵抗があったんですけど、言われた通りにしてみると、身体の軸がきれいに見えたり、腕の広がりを大きく見せられたりと、元々あったものを、舞台で演じるためによりよくしていただいている、ということがわかって、さすがだと思いました。あの時教わった身体の軸の保ち方は、今でも常に意識するようにしています。

住吉 僕は、玉三郎さんが鼓童の芸術監督に就任した’12年に準メンバーになったんですけど、研修生の頃から、玉三郎さんは研修所に稽古を付けに来てくださっていたんです。

船橋 その年は、たまたま作品創りに取りかかる時期に、メンバーの多くが出払っていたんですね。でも(住吉)佑太たちの年の研修生は優秀な人材が揃っていたので、玉三郎さんのおっしゃることに対応できたんです。

住吉佑太 Photo: Takashi Okamoto

住吉 僕たち研修生は、最初は稽古を見学させていただくということで正座して並んで見ていたんですが、休憩時間に玉三郎さんがテクテク歩いていらして、「ちょっと見よう見まねでいいからやってみなさい」とおっしゃるので、やってみたら「ああ、意外とできるね…」と言われ、「(よっ)しゃぁ、ここでぶちかましたる!」って気合いが入りまして(笑)。実際には、ほとんどできてなかったはずなんですけど、気概を感じていただけたのかなと。

船橋裕一郎 Photo: Takashi Okamoto船橋 そうやって玉三郎さんは、特に若手にどんどん挑戦させていくので、先輩たちはそれを見て焦りながらも、自分の足元を見つめ直す、という感じでしたね。今から思えば、僕たちが入った頃は、鼓童には閉塞感があって、そこに外部から玉三郎さんがやって来たことで、物事が先に進み始めたんです。ただ、キャリアのある先輩たちにとっては、自分たちが築き上げてきたものを否定されたように感じたところもあると思います。僕自身は、(石塚)充やその下の世代が抜擢され活躍するのを、後ろから見ていた方なので、焦りはあったし、まあ今もあるんですけど、自分はパッと要求に応えられるタイプではないし、人とうち解けるのにも時間がかかるので、自分のペースで、一歩一歩やるしかない、と思っていました。精神的にはきつかったですけど、そのうちだんだんと、玉三郎さんに声を掛けられるようになりました。

Photo: Takashi Okamoto

現在も、若いメンバーの中には抜擢される者と、そうでない者がいるので、不安を抱くことはあると思います。でも、まじめに頑張っている人間のことは、玉三郎さんはちゃんと見ていて、何らかの形で、いいところを見出してくださるので、信じて努力を続けてほしいと思います。玉三郎さんのこういう指導者としての面も、とても勉強になります。

Photo: Takashi Okamoto

坂本 僕たちの世代以降は、わりと戸惑うこともなく、羽根を伸ばして自由にやらせてもらっていますけど、

住吉 いやぁ、『ワン・アース・ツアー~伝説』(’12)の時の逆風はすごかったですよ(笑)。

船橋 あれも大きな転換期でしたね。

住吉 終演後のアンケートが「こんなものを観に来たんじゃない!」みたいな感想ばっかりで、激しく凹みましたけど、その後アメリカでもツアーがあって、一年後にまた日本で上演した際には、ガラッと評価が変わったんですよね。

石塚 僕たちの世代は、それ以前から『アマテラス』みたいに演劇的な世界や、『打男 DADAN』のように振り切った大胆な作品で、「こんなおもしろい世界があるんだな」ということを経験してきていたんです。むしろ、けっこう長い時間をかけて、段階を踏んで変化してきた自覚があったので、『伝説』についても、別に驚かなかった。まぁ最初のうちの何年かは、ちょっと大変かもしれないけど、そのうち落ち着くだろうと、漠然と思っていましたね。

住吉佑太 Photo: Takashi Okamoto

住吉 心強かったですよ。僕たちの感覚では『伝説』では、「えっ、こんなことすんの!?」って躊躇するようなこともあったんですけど、充さんは「はい、じゃ、やりましょか」って淡々とやっていた。僕たちに「玉三郎さんがおっしゃってるのはこういうことだよ」ってわかりやすく説明してくださって、いわゆる従来の鼓童的なことと、玉三郎さんのおっしゃることの中間地点にいてくださる感じで、とても有難かったです。

坂本雅幸 Photo: Takashi Okamoto坂本 いわゆる「昔ながらの鼓童」が観たいという方は多いですし、その一方で新たな挑戦を評価してくださるお客様も、もちろんいらっしゃる。そして回数を重ねるごとに、だんだんと、挑戦と変化を楽しみに観に来てくださるお客様が、多くなってきていると感じます。玉三郎さん無しには不可能だったこの大変革を活かして、これからも自由に、いろいろなことに挑戦していきたいですね。

船橋 僕は、こうやって先を行ってくれるメンバーには、どんどん先に行ってほしいし、そうではない、別のおもしろい面を持っているメンバーには、その個性を活かした、別の表現を目指してほしい。将来も鼓童がそういう多様なグループとしてあり続けられるよう、その通過点の一人となることを目指したいと思います。

船橋裕一郎 Photo: Takashi Okamoto

ー鼓童創立35周年記念コンサートパンフレットより

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公演紹介
http://www.kodo.or.jp/news/20160900oet_ja.html

全国ツアースケジュール
http://www.kodo.or.jp/oet/index_ja.html#schedule26a

12月14日(水)福岡公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161214a_ja.html

12月17日、18日 大阪公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161217-18a_ja.html

12月21日〜25日 東京・文京公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161221-25a_ja.html


[ONKYO×鼓童]創造を伝える音/住吉佑太


鼓童創立35周年記念グッズのご案内

インナーイヤー・ヘッドフォンE700Mのコラボレーション・モデル

オンキヨー&パイオニアイノベーションズ株式会社とのコラボレーションにより、ハイレゾ対応インナーイヤーヘッドホンの鼓童モデルが誕生しました。ハウジング部分にレーザーマーカによるロゴ彫刻(右側:巴印、左側:KODOロゴ)が施されています。

ただいま2次予約の受付中です。
予約受付:http://onkyodirect.jp/kodo.html

住吉佑太

創造を伝える音/住吉佑太

一聴して感じたのは、ひとつひとつの楽器の位置まで感じ取れる分離の良さでした。また低音から高音まで全体のバランスが抜群で、音楽の細かな変化まで鮮明に聴かせてくれます。様々な音楽ジャンルはもちろん、再生が難しい太鼓の響きもしっかりと伝えてくれました。

細かな変化をあるがままに聴かせてくれるので、日々の創作活動にも使ってみたいと感じています。

Photo: Takashi Okamoto

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e-onkyo musicにて、「永遠」ハイレゾ音源配信中!
http://www.e-onkyo.com/music/album/od015/


【出逢い】「浮島神楽」作曲家・伊左治 直氏インタビュー『我が意を得たり 共に紡ぐ伝奇』/寄稿・清川 仁


鼓童創立35周年記念コンサート 第一夜
~出逢い~
8月18日(木) 東京・サントリーホール

<鼓童×新日本フィルハーモニー交響楽団>
ープログラムー
伊左治直作曲 「浮島神楽」世界初演
猿谷紀郎作曲 「紺碧の彼方」世界初演
石井眞木作曲 「モノプリズム」
冨田勲作曲 「宇宙の歌」

「浮島神楽」作曲家・伊左治 直氏インタビュー
我が意を得たり 共に紡ぐ伝奇

文●清川 仁

最初、作曲の話があった時の高揚感は、ちょっと格別でした。鼓童のCDはずっと聴いてきたので、本当にうれしかったですね。僕はブラジル音楽が好きなのですが、ブラジルにはサンバがあるけど日本には鼓童があるぞ、という思いも抱いていました。

Photo: Erika Ueda

今回は、まずワークショップのようなことをやりまして、自分の曲のサンプルをどんな風に叩いてくれるのか、色々な楽器を叩いてもらって音を確かめてみました。そして、練習をしながら、鼓童のみなさんと一緒に曲を作り上げていきました。僕の要求に対して、返ってくる反応が素晴らしいんですね。「こうやると、こう音色が変わります」とか、僕じゃ分からない楽器のことを教えてくれる。

Photo: Erika Ueda

鼓童は、和太鼓だけじゃなくてプラスアルファで色々な楽器を取り入れているので、今回はスリットドラムを入れてみました。また、僕は音だけでなく身ぶりや振る舞いにも興味があるので、音の良さだけじゃなくて、叩くフォームを含めて楽器を選択しました。オーケストラだけの時も身ぶりを取り入れたり、普段使われない打楽器を使ったり、ちょっとしたパフォーマンスも取り入れます。それ以上に鼓童は徹底しますよね。玉三郎さんが演技指導までして下さるんですから。

Photo: Takashi Okamoto

新潟県佐渡市・乙和池。中央、奥に浮かぶのが巨大な浮島。

僕は民俗学や伝奇伝承に興味があり、「浮島神楽」というタイトルをつけました。佐渡島には、巨大な浮島をもつ乙和池という場所がある。神聖で水がきれいだけど、使ってはいけないというタブーがある不思議な場所です。社会の便利さや不便さを問い直すようなテーマも感じるんです。また、僕が好きな民俗学者、網野善彦さんが唱えるように日本地図をひっくり返してみると、日本海が大きな湖のようになっていて、佐渡自体が日本海という湖の中にある大きな浮島に見えるんです。世界各地で演奏している鼓童自体が、南米やヨーロッパに現れる浮島のようなイメージにも通じているのではないかと思いました。

途中、密室のコンサートホールに穴を空けるような仕掛けも施します。動き出した音楽と、それと違う時間軸が入り込む不思議な状況を作ってみたい。精霊のようなものが入り込むイメージです。神楽のコミカルな要素も取り入れ、広い意味での神楽の本質を楽しんでもらえればと思います。

Photo: Erika Ueda

伊左治 直 Sunao Isaji1968年生まれ。日本音楽コンクール第1位、日本現代音楽協会作曲新人賞、芥川作曲賞、出光音楽賞を受賞。現代音楽系の作曲、パフォーマンスや即興演奏から、ブラジル音楽や昭和歌謡曲などのライブまで、様々な活動を展開している。2005年と2012年にはサントリー芸術財団による個展を開催。伝統楽器のための活動として、2013年に雅楽作品《紫御殿物語》、2014年に声明・謡・民謡・ポップスの共演による《ユメノ湯巡リ声ノ道行》などがある。

清川 仁 Jin Kiyokawa読売新聞東京本社文化部記者。音楽担当記者として、邦楽ポピュラーを中心に、ジャズ、クラシック、純邦楽など幅広く取材を行う。年間、100人以上のアーティストに取材し、100本以上のコンサートに足を運ぶ。 「次世代シャンソン歌手発掘コンテスト」(日本シャンソン協会主催)審査員。


news20160818kodo35th_01-1鼓童創立35周年記念コンサート

http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

8月18日(木) 第一夜 ~出逢い~
18:00開場/18:30開演
東京・サントリーホール

出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也

料金:S席9,800円 A席7,800円 B席6,800円(全席指定、未就学児の入場はご遠慮ください。)

お問い合わせ:チケットスペース Tel. 03-3234-9999(月~土、10:00~12:00、13:00~18:00)


<「出逢い」関連記事>

好対照 二つの新曲オーケストラ/寄稿・清川 仁
紺碧の彼方 作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー「青い海に潜めた 数字の魔法」/寄稿・清川 仁
浮島神楽 作曲家・伊左治 直氏インタビュー「我が意を得たり 共に紡ぐ伝奇」/寄稿・清川 仁


【出逢い】「紺碧の彼方」作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー『青い海に潜めた 数字の魔法』/寄稿・清川 仁


鼓童創立35周年記念コンサート 第一夜
〜出逢い〜
8月18日(木) 東京・サントリーホール

<鼓童×新日本フィルハーモニー交響楽団>
ープログラムー
伊左治直作曲 「浮島神楽」世界初演
猿谷紀郎作曲 「紺碧の彼方」世界初演
石井眞木作曲 「モノプリズム」
冨田勲作曲 「宇宙の歌」

「紺碧の彼方」作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー
青い海に潜めた 数字の魔法

文●清川 仁

Photo: Erika Ueda

冷静さの中に血の沸き立つような情熱と魂。それが、何度も演奏を聴かせていただいた僕が感じる、鼓童の素晴らしい魅力です。オーケストラとの共演ではそこに、ストイックなまでの客観性、冷静さを増幅し織り交ぜてゆけないかと考えました。おもむくままに音を大きくする、速くするということも大事ですが、同時に自分が今どういう状況にいてそう叩いているかということを、別の視点で見てみることも重要かも知れません。

Photo: Erika Ueda

新曲「紺碧の彼方」のエッセンスは、3連符と4拍のシンプルなポリリズムにあります。それが細胞のような最小単位であり、なおかつ全体を支配しています。稽古では、この混じり合わない3と4の組み合わせを何度も練習しましたが、終盤では最初と比べものにならないほど緻密になりました。

Photo: Erika Ueda

平胴太鼓3台、締太鼓2台という最小限のユニットでどこまで色んな変化が可能かということにも着目しています。

作曲家には、それぞれの作品ごとにその作品を構成する原理が必要と考えています。思いつきの鼻歌も作曲に違いないけれど、普遍性や客観性には疑問がある。ドの次にレが来る必然性、どうしても次はこの音に行かなきゃいけない、という仕組みを作ることが二十世紀以降の作曲とも言えるでしょう。

Photo: Erika Ueda

伊勢神宮の式年遷宮の曲を創らせていただいたとき、左右対称の神殿の形に倣って、5楽章それぞれを全てシンメトリーの構図にしました。今回は、紺碧の海に囲まれた佐渡の風景と、少しずつサイズが異なる3台の平胴太鼓とを、同居させる仕組みに行き着きました。3台の太鼓の胴の幅はおよそ60センチ、65センチ、70センチ。紺碧という色の由来になったラピスラズリという鉱石は、硬度が5〜5.5。その比を割り出して導いた10:11:12:13:14という数字の組み合わせで、新曲は出来ているのです。

Photo: Kenta Nakagome

タイトルが示す通り、青い海の果てに一体何があるのだろうかという思いも込めています。そうした詩的なイメージと、数学や哲学めいた仕組みとを同居させることが芸術だと考えています。

Photo: Erika Ueda

お聴きになる方には、仕組みを理解していただく必要はありませんが、太鼓が似たようなことをやっているようで少しずつ違う、というデリケートな変化を感じていただければ嬉しいです。また、紺碧の彼方のような広い空間を、オーケストラの楽器の倍音によって存分に感じていただければと思います。

Photo: Erika Ueda

猿谷紀郎 Toshiro Saruya:慶応義塾大学を卒業後、ニューヨークのジュリアード音楽院作曲科、同大学院を卒業。ミュンヘンビエンナーレBMWシアタープライズ最高作曲賞、クーセヴィツキーファウンデイションなど受賞し、1992年武満徹監修サントリーホール国際作曲委嘱シリーズにおいて初演された「Fiber of the Breath《息の綾》」で一躍その名を知られることとなった。芥川作曲賞、出光音楽賞、尾高賞、佐治敬三賞、芸術祭大賞など受賞。2014年には、第62回伊勢神宮式年遷宮の奉祝曲《交響詩「浄闇の祈り2673」》で3度目の尾髙賞を受賞した。

清川 仁 Jin Kiyokawa:読売新聞東京本社文化部記者。音楽担当記者として、邦楽ポピュラーを中心に、ジャズ、クラシック、純邦楽など幅広く取材を行う。年間、100人以上のアーティストに取材し、100本以上のコンサートに足を運ぶ。 「次世代シャンソン歌手発掘コンテスト」(日本シャンソン協会主催)審査員。


news20160818kodo35th_01-1鼓童創立35周年記念コンサート

http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

8月18日(木) 第一夜 〜出逢い〜
18:00開場/18:30開演
東京・サントリーホール

出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也

料金:S席9,800円 A席7,800円 B席6,800円(全席指定、未就学児の入場はご遠慮ください。)

お問い合わせ:チケットスペース Tel. 03-3234-9999(月〜土、10:00〜12:00、13:00〜18:00)


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【出逢い:稽古ルポ】好対照 二つの新曲オーケストラ/寄稿・清川 仁


鼓童創立35周年記念コンサート 第一夜
〜出逢い〜
8月18日(木) 東京・サントリーホール

<鼓童×新日本フィルハーモニー交響楽団>
ープログラムー
伊左治直作曲 「浮島神楽」世界初演
猿谷紀郎作曲 「紺碧の彼方」世界初演
石井眞木作曲 「モノプリズム」
冨田勲作曲 「宇宙の歌」

Photo: Erika Ueda

8月東京・サントリーホールでの「出逢い」公演を前に、鼓童の本拠地、新潟・佐渡島にて作曲家・猿谷氏、伊左治氏、指揮者・下野氏とのリハーサルが行われました。その稽古場の様子を音楽記者の清川氏にレポートしていただきました。

好対照 二つの新曲オーケストラ

文●清川 仁

Photo: Erika Ueda

桜やスイセンの花が今を盛りと咲き誇り、春の訪れを寿ぐ祭りばやしも聞こえてきた4月上旬の佐渡島。風景が色づき、にぎわい始めたこの島に根を張る太鼓芸能集団・鼓童も、新たな芽吹きの季節を迎えていた。8月18日の「創立35周年記念コンサート第一夜〜出逢い〜」に向けた、世界初演となる新曲2曲を含む、オーケストラとの共演曲への取り組みだ。

稽古場には、現代音楽の最先端を走る作曲家、猿谷紀郎さんと伊左治直さん、将来の音楽界を担う俊英、指揮者の下野竜也さん、さらに、坂東玉三郎芸術監督の姿もあった。東京から新幹線と船を乗り継ぎ、なおかつ車で1時間あまり要する鼓童村へ、この顔ぶれを集めてしまう鼓童の行動力、組織力に恐れ入る。

筆者の目には、この稽古場で繰り広げられた1年前の光景が焼き付いている。「混沌」の稽古で、大きな平胴太鼓にメンバーが乗り、コーヒーカップのように稽古場をぐるぐる回る。玉三郎芸術監督がまさにその瞬間にひらめいたアイデアを言い放ち、鼓童メンバーがそれに生き生きと応じて次々に形にしていったのだ。

Photo: Erika UedaPhoto: Erika Ueda

しかし、今回の雰囲気は異なっていた。メンバーの身体は緊張で硬く、表情もこわばって見える。エレクトーン奏者が弾くオーケストラパートにつられてリズムを乱し、頭を抱える場面もあった。普段、奏者同士で呼吸を合わせてリズムを共有する鼓童メンバーにとっては、場を統率する指揮者も詳細に書き込まれた譜面も自由を奪う存在だっただろう。

そんな緊張状態を、テンポ抜群の進行とエネルギッシュな指導で解放させるのが、下野さんだ。「100点です! 1000点満点のね」。親指を突き上げ、いたずらっぽく微笑む。一瞬のリズムのズレも逃さず聞き分け、決して妥協を許さないが、それを明るい冗談に包んで場を和ます。

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隣には、下野さんの指示を丹念にメモするメンバーの坂本雅幸さんがいた。指揮者と作曲家がそろう貴重な場で、彼らの意図する音楽を必死にとらえようとしていた。

「自分たちは楽譜や、オーケストラに合わせることに慣れていないので、指揮者も作曲家もいない時に、僕がどのように稽古を進めていくか俯瞰して見る役割を任せていただいています。自分達が思っている以上にオーケストラと調和するのが難しいので、僕が通訳になれればと思います」

Photo: Erika Ueda

坂本さんは、下野さんから「こういうのは、太鼓の奏法としてありですか?」と問われる場面も多々あった。太鼓奏者側の窓口として、やはり指揮者にとっても良き通訳となっているのだ。同時に、下野さんの太鼓に対する敬意も感じられた。

「太鼓は、誰が叩いても音が出るでしょ。だから難しいんですよね。僕らクラシックの指揮者の中にも、打楽器奏者には平気でバチを替えろと言う人がいるんです。バイオリンに楽器を変えろなんて言わないのに、失礼な話です。誰もが音を出せるものをいかに質の高いものでやるのかは、誰でもできるものではないんです」

Photo: Erika Ueda

さて、今回、鼓童から新曲の委嘱を受けた2人の作曲家は、図らずも対極的なアプローチでこのプロジェクトに臨んだ。2曲の違いは、音にも見た目にも指導にも明白だった。音楽的にもパフォーマンスでも鼓童を伸び伸びと躍動させる伊左治さんの「浮島神楽」と、禁欲的なアプローチを導入して鼓童を新たな次元に立たせる猿谷さんの「紺碧の彼方」だ。

Photo: Erika Ueda
神秘的な燦めきで幕を開ける「紺碧の彼方」は、16分の7、16分の7、16分の5、8分の6・・・と、めまぐるしく拍子が変化。とりわけ、3連符と4拍の異なるリズムを核になって鳴らす締太鼓の2人は、音の強さのばらつきや速度のブレなどが細かく修正された。平胴太鼓を叩く住吉佑太さんは、戸惑いを感じながらも徐々に猿谷さんの狙いを理解しつつあった。

Photo: Takashi Okamoto

「太鼓らしいフレーズというか僕たちの体に染みついているリズムとは異なり、最初は面白くないなと思ったんです。でも、猿谷さんとお話しして、少しずつ理解してきました。楽しく高揚しながら演奏することで人間らしさに繋がるのではないかと思っていたけれど、冷たく研ぎ澄まされた中であっても、人としての呼吸、人間性が滲み出てくるのかもしれない」

Photo: Nobuyuki Nishimura
神楽の雰囲気から太古へ、そして宇宙へと世界が拡張していくかのよう伊左治さんの「浮島神楽」は、丸太形のスリットドラムや、三宅島式の横打ちスタイルなど見た目にもにぎやか。バットばちを両手でブンブン回しながら振り下ろす叩きっぷりながら、音量は確かに抑制されている石塚充さんも印象的だった。

Photo: Takashi Okamoto

「伊左治さんは、僕らを見た目も含めてオーケストラの異物として存在させようとして、打ち方や雰囲気も指示される。太鼓だけの練習の時はフォルテシモで叩いていたのですが、サントリーホールは響くので3分の1の音量に抑え、それでいて雰囲気は大振りしてほしいと。大変ですが、コントロールしています」

オーケストラのバックで、太鼓がそれぞれ割り当てられた7拍子や5拍子のフレーズをバラバラに進行させるパートでは、下野さんからユニークな提案があった。互いの音やフレーズの個性を際立たせるため、キャラクター設定をするというものだ。「怒りっぽい人」「メソメソした人」「勤続40年の幼稚園の先生」「いてもいなくてもいいようなお巡りさん」という個性的な人物設定の中で、「バツ5」担当の蓑輪真弥さんも絶妙に解釈した。

Photo: Erika Ueda

「ある程度人生を経験している人で、いろんな人を見ながら、あ、この人いいな、この音いいなという人にパッと乗っかっていく。またいい音が聞こえたら、そっちに乗り換える心移りが激しい人。でも一途なところもあるような」

たった2日間の稽古ながら、メンバーはオーケストラの緻密な音作りを水が染み込むようにみるみる吸収していった。見所のたっぷりの世界初演曲に加え、太鼓とオーケストラの共演の先駆けである石井眞木さんの「モノプリズム」、日本が世界に誇るシンセサイザーアーティスト、冨田勲さん作曲の「宇宙の歌」も演奏される。

下野さんは「作品群はすべて質感がたっぷりですが、決して食べ合わせが悪いわけではなく、非常に良く練られたプログラムです。素敵なサントリーホールでいっぱいの音を浴びていただきたいと思う」と語った。


IMG_4467-f2016年4月、稽古後に作曲家の猿谷さん、伊左治さん、指揮者の下野さん、エレクトーン奏者の清水さん、松田さん、芸術監督・玉三郎さんと鼓童メンバーでの記念撮影

清川 仁 Jin Kiyokawa:読売新聞東京本社文化部記者。音楽担当記者として、邦楽ポピュラーを中心に、ジャズ、クラシック、純邦楽など幅広く取材を行う。年間、100人以上のアーティストに取材し、100本以上のコンサートに足を運ぶ。 「次世代シャンソン歌手発掘コンテスト」(日本シャンソン協会主催)審査員。

news20160818kodo35th_01-1鼓童創立35周年記念コンサート
http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

8月18日(木) 第一夜 〜出逢い〜
18:00開場/18:30開演
東京・サントリーホール

出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也

料金:S席9,800円 A席7,800円 B席6,800円(全席指定、未就学児の入場はご遠慮ください。)

お問い合わせ:チケットスペース Tel. 03-3234-9999(月〜土、10:00〜12:00、13:00〜18:00)

冨田勲氏と鼓童

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作曲家・シンセサイザーアーティストの冨田勲さんが、今年5月5日にお亡くなりになりました。「宇宙の歌」は、鼓童のアルバム「ナスカ幻想」のために書き下ろされたもので、2008年にオーケストラ版として上演。今回8年ぶりに上演させていただくお願いに、「嬉しいお話です。鼓童村の『和泉邸』に一週間こもって作曲したうちの一曲です。」というご返事をいただき、当日にもご来場いただけるように準備をしていたところでした。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。


<「出逢い」関連記事>
紺碧の彼方 作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー「青い海に潜めた 数字の魔法」
浮島神楽 作曲家・伊左治 直氏インタビュー「我が意を得たり 共に紡ぐ伝奇」


打っ叩く/住吉佑太


打っ叩く

「混沌」ツアーも、残すところ3週間ほどとなりました。今回の作品はかなり挑戦的な舞台となっておりまして、賛否両論、様々な感想や意見をお聞きしています。そんな中、今さらではありますが、僕の「混沌」という舞台への想いを改めてお話したいと思います。

Photo: Takashi Okamoto

玉三郎さんとのプレミアムコンサートの中でも、少しお話する機会がありましたが「ドラムをやることへの抵抗はなかったのか」というお話からさせて頂きます。

正直、とてもありました!(笑)
抵抗という言葉がふさわしいかどうかは別にして「なんで太鼓打ちがドラムなんだ!」という気持ちが最初は常にありました。その気持ちが邪魔をして、ドラムの稽古にも身が入らなかったりこんなことをしてていいのか、なんていう焦燥感のようなものすら感じていました。

Photo: Takashi Okamoto

ドラムの稽古は、3年くらい前からすでに少しずつ始まっていたのですが「よし!やるぞ!」という気持ちになるまで、なかなか腹をくくれずにいました。

そこから気持ちが大きく変わるきっかけとなったのは、とある日のドラム稽古のことです。ちょうど「混沌」が始まる半年ほど前のことだったかと思います。小田洋介と坂本雅幸と僕、3人並んでひたすらドラムを打っ叩き続けるという時間がありました。梶原さんのアツいカウントが飛び交って「ワン!ツー!スリー!フォー!」僕たちは何度もドラムを打っ叩く。汗が飛び散る。無我夢中で打っ叩く。

Photo: Takashi Okamoto

そして、その稽古が終わった夕方、稽古場の空気感が、屋台囃子の打ちっ放し(*)の稽古のあとと、同じ空気だと感じたんです。

*屋台囃子をひたすらみんなでまわして打ち続ける稽古。

鼓膜の奥がまだ少し鳴っていて、薄ぼんやりとした熱気と、汗の匂いが残る稽古場。

そのとき、ふと思ったんです。「一緒じゃねえか」と。

Photo: Takashi Okamoto

何かを打っ叩く行為。それは人間の根底にある「狩猟本能」のようなものなのかもしれません。その証拠に、太鼓と対峙するとき、怒っているわけじゃないのに、「うおー!!」という気持ちが芽生えてきます。

魂の震え。

それと同じ感覚になったんです。ドラムを叩いていて初めて、うおー!!って感じたんです。

Photo: Takashi Okamoto

西洋だの東洋だの日本だの、そういう文化圏の違いを越えて、というよりも、その奥深くにある感覚。
日本人として、太鼓打ちとして、ということよりももっと深い部分。人類としてのアイデンティティーのようなもの。

Photo: Takashi Okamoto

まぁどういう言葉で表現するべきかなのかは、まだ全然分かりませんが、直感的にそのようなものを感じました。

「じゃあ、太鼓でやればいいじゃねえか」という話に戻るんですが、僕たちはこれまでもずっと、そういう気持ちで太鼓を叩いてきたはずなんです。

太鼓ってそういうもの。っていう感覚が、みんなどこかに根付いています。それは僕たちだけでなく、お客様の中にも太鼓って言ったらこうでしょ!みたいな感覚はあるはずです。樹齢何百年という木に、動物の皮を張った、たくさんの命と歴史が刻み込まれた楽器。表面的であれどうであれ、先ほどもお話した、打ち手の「うおー!!」という魂の震え。でもそれが当たり前になっているのでこの感覚ってなんだろうなんて、改めて考えることってないんじゃないかなと思います。

Photo: Takashi Okamoto

そういう意味で今回、和太鼓じゃないものを叩くことでたくさんの気付きがありました。

ドラムにも深い歴史があります。その話はさて置き、
プラスティックの皮を打っ叩いて!
和太鼓の力を借りずに!
僕たちの魂の震えを伝えることができたら…

Photo: Takashi Okamoto

人形劇と同じようなものになればいいなと思っています。

なんで人形で演技するのか。本物の人間でやる方が、表情も豊かで、動きもなめらかなのに。でもそこには「人形」という、ある種「無機質」なものを通すことで、その奥にある本質そのものを際立たせるという意味があるのではと思っています。

僕たちも和太鼓ではなくドラムを叩くことで逆に「打っ叩く」という魂が、より浮き彫りになっていけばいいなと。

Photo: Takashi Okamoto

もちろんそれだけではなく(打っ叩いて暴れてればいいというわけではなく…笑)ドラムを練習することで、和太鼓にはない感覚や音楽的、技術的な学びがたくさんありました。

そういった思いの全て、学びの全てをこの「混沌」という舞台に詰め込んでお届けしているつもりです。

明日は佐賀公演。これからもツアーは続きます。ぜひ、劇場に足をお運び頂き生で感じて頂ければと思います。

Photo: Takashi Okamoto

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「鼓童創立35周年記念コンサート」記者発表より


「鼓童創立35周年記念コンサート」記者発表より

Photo: Takashi Okamoto

5月31日、都内で8月開催の「鼓童創立35周年記念コンサート」に向けての記者発表を行いました。坂東玉三郎芸術監督、鼓童メンバー(船橋、石塚、坂本、住吉)4名、社長の青木が登壇し、それぞれ35周年への想いを語りましたので、コメントの一部をご紹介します。

Photo: Takashi Okamoto

◆坂東玉三郎コメント
鼓童とは2001年から一緒にお仕事をさせて頂きました。25周年の時には「アマテラス」という大きな公演で共演しました。2012年からは芸術監督を努めさせていただき、今回の35周年記念公演の演出もさせて頂きます。8月の記念公演では、第一夜「出逢い」は、オーケストラとの共演の集大成となり、第二夜「螺旋」は鼓童のみで、古典的なものと、将来に向かっての新作が回転しながら進んで行くイメージの演目に致しました。第三夜「飛翔」では、ダンサーと共演する公演となります。これまで創り上げてきた様々な作品が3日間に集約されています。また各公演で、鼓童のメンバーや、私が作曲した演目もあります。皆様にお楽しみ頂ければ幸いです。


Photo: Takashi Okamoto

◆船橋裕一郎コメント
素晴しい芸術監督のもとで35周年を迎えられるのが嬉しいです。玉三郎さんからは生き様全て、普段の食事や振る舞いなどの行動全てが舞台に繋がっているという覚悟やこだわり、突き詰め方など、演奏者としての心構えを教えて頂きました。8月の公演は、鼓童のこれまでとこれからが凝縮された内容で、太鼓、鼓童の可能性を十分にお見せ出来る3日間になると思います。太鼓の音色を無限に広げている最中ですので、より多くの皆様にご覧頂けたらと思います。

Photo: Takashi Okamoto

◆石塚充コメント
以前は、いかに力強い音を出せるかにこだわっていたのですが、玉三郎さんからは音色の違いが分かるくらいに、大きな太鼓でも「小さい音や優しい音、弱い音を大事にしなさい」と教えて頂きました。8月の公演は35周年の集大成ではありますが、これからの鼓童を担って行く20代、30代のメンバーが中心となっており、ここからスタートという意味も込めた公演でもあります。長年やってきた曲にも新しい解釈・切り口などを加え、新曲も上演しますので、これからの鼓童、太鼓の可能性を感じて頂けると思います。

Photo: Takashi Okamoto

◆坂本雅幸コメント
玉三郎さんの言葉で芸術に対する指針になる2つの言葉がありまして、「自信過剰とうぬぼれは芸の妨げになる」と「舞台上では、大きく、正しく、エレガントに」という言葉が、演奏者としての私の道しるべとなっています。8月の公演の第一夜「出逢い」は、これまでも演奏してきた石井眞木さん作曲の「モノプリズム」、冨田勲さん作曲の「宇宙の歌」に加え、世界初演となる猿谷紀郎さん作曲で拍子が複雑で挑戦しがいのある「紺碧の彼方」や、伊左治直さんとともに佐渡で音を出しながら作った動きのある、視覚的にも考えられた「浮島神楽」など、4曲全て印象が違う曲となっているので楽しんで頂ければと思います。

Photo: Takashi Okamoto

◆住吉佑太コメント
私は2012年に玉三郎さんが芸術監督になられた年に正メンバーになりまして、研修生の時から様々な価値観や技術を教えて頂き、当たり前のように考えていた固定概念に対して改めて考えるきっかけを頂きました。8月の公演でも作曲をさせて頂いたのですが、作曲する際に太鼓打ちでは思いつかないようなアイディアを頂きながら、固定概念に捕らわれない曲づくりが出来たと思いますので楽しんで頂ければと思います。

Photo: Takashi Okamoto

◆青木孝夫コメント
30年前にサントリーホールのオープニングシリーズで石井眞木さん作曲の「モノプリズム」という演目を小澤征爾さんの指揮で演奏させて頂き、今年鼓童創立35周年の記念の年にまたサントリーホールで公演させて頂ける事がとても感慨深いです。3日間それぞれ異なった演目を上演させて頂きます。これからも柔軟性と多様性を持って新しいものを創り上げていきたいと思います。

撮影:岡本隆史

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多くのメディアに取り上げられました

◆新聞
・読売新聞水曜夕刊「Pop Style」
・スポーツニッポン
・東京中日スポーツ
・デイリースポーツ
・日刊スポーツ
・サンケイスポーツ
・スポーツ報知
・公明新聞
ほか

◆雑誌
・「シアターガイド」8月号:7月2日発売
・「演劇界」:7月5日掲載
・「家庭画報」8月号
・「ミセス」
・「音楽現代」
ほか

◆WEBサイト
OZmall:熱い男たちの大地を揺らす音色に感動!太鼓芸能集団「鼓童」35周年記念コンサート開催http://www.ozmall.co.jp/oznews/06204/

デイリースポーツ:玉三郎「鼓童」演出へのこだわり
http://www.daily.co.jp/newsflash/gossip/2016/05/30/0009135193.shtml

デイリースポーツ②:坂東玉三郎「鼓童」演出にこだわり
http://www.daily.co.jp/gossip/2016/05/31/0009136220.shtml

テレ朝芸能特報:玉三郎&鼓童が35周年公演!
http://www.tv-asahi.co.jp/smt/f/geinou_tokuho/hot/?id=hot_20160530_100&

映画.com:坂東玉三郎、芸術監督務める「鼓童」35周年公演に自信「連綿と続けてきたもの詰まっている」
http://eiga.com/news/20160530/17/

日刊スポーツ:太鼓集団「鼓童」が35周年公演、演出は坂東玉三郎
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1655603.html

SPICE:坂東玉三郎が芸術監督を務める「鼓童」の35周年記念コンサート、今夏開幕
http://spice.eplus.jp/articles/58815

サンケイスポーツ:鼓童、35周年公演で集大成!坂東玉三郎も激励「素敵な太鼓を」
http://www.sanspo.com/geino/news/20160531/geo16053105010011-n1.html

スポーツニッポン:玉三郎が演出“太鼓判”公演「大太鼓抜きの歌舞伎は考えられない」
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/05/31/kiji/K20160531012691620.html

ローチケHMV 「鼓童創立35周年記念コンサート コメント動画が到着!」

news20160818kodo35th鼓童創立35周年記念コンサート
http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

2016年8月18日(木)、19日(金)、20日(土)サントリーホール
8月18日(木) 第一夜 〜出逢い〜
出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団/指揮:下野竜也
8月19日(金) 第二夜 〜螺旋〜
演出:坂東玉三郎/出演:鼓童
8月20日(土) 第三夜 〜飛翔〜
演出:坂東玉三郎/出演:鼓童、ゲスト:BLUE TOKYO、DAZZLE

プレイガイド
・チケットスペース Tel. 03-3234-9999(オペレーター) WEB「チケットスペースオンライン」検索
・サントリーホールチケットセンター Tel. 0570-55-0017
・チケットぴあ Tel. 0570-02-9999 [Pコード:286-898] http://pia.jp/
・イープラスhttp://eplus.jp/
・ローソンチケット Tel. 0570-000-407(オペレーター 10:00〜20:00)Tel. 0570-084-003 [Lコード:30118] http://l-tike.com/
・セブンチケット http://7ticket.jp/ 全国のセブン-イレブン店頭マルチコピー機
・東京文化会館チケットサービス Tel. 03-5685-0650


【本日掲載!】読売新聞夕刊「pop style」住吉佑太特集


【本日掲載!】読売新聞夕刊「pop style」

住吉佑太

本日22日の読売新聞夕刊「pop style」に鼓童・住吉佑太が掲載されました。写真も内容もたっぷりのインタビュー記事です。ぜひぜひ、ご覧下さい!

読売新聞

読売新聞・夕刊発行地域=関東、関西、石川・富山地区、福岡・関門地区、札幌市周辺

【購入できます!】掲載紙購入方法はこちら
http://blog.yomiuri.co.jp/popstyle/yukan.htm


鼓童創立35周年記念コンサート
2016年8月18日(木)、19日(金)、20日(土)サントリーホール
8月18日(木) 第一夜 〜出逢い〜
8月19日(金) 第二夜 〜螺旋〜
8月20日(土) 第三夜 〜飛翔〜【完売】
http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html
チケットスペース Tel. 03-3234-9999(オペレーター) WEB「チケットスペースオンライン」検索
サントリーホールチケットセンター Tel. 0570-55-0017 http://suntory.jp/HALL/
チケットぴあ Tel. 0570-02-9999 [Pコード:286-898] http://pia.jp/
イープラスhttp://eplus.jp/
ローソンチケット Tel. 0570-000-407(オペレーター 10:00〜20:00)Tel. 0570-084-003 [Lコード:30118] http://l-tike.com/
セブンチケット http://7ticket.jp/ 全国のセブン-イレブン店頭マルチコピー機
東京文化会館チケットサービス Tel.03-5685-0650


「混沌」ツアースケジュール
http://www.kodo.or.jp/oet/index_ja.html#schedule24a
2016年6月24日(金)19:00 高知県高知市 高知市文化プラザかるぽーと(大ホール)
2016年6月26日(日)16:30 鳥取県鳥取市 鳥取市民会館
2016年7月2日(土)18:00 愛媛県松山市 松山市民会館
2016年7月3日(日)17:00 愛媛県宇和島市 南予文化会館
2016年7月5日(火)19:00 山口県岩国市 シンフォニア岩国
2016年7月8日(金)18:30佐賀県佐賀市 佐賀市文化会館 大ホール
2016年7月10日(日)17:00 福岡県北九州市 北九州市立黒崎ひびしんホール
2016年7月12日(火)18:30 大分県日田市 パトリア日田大ホール
2016年7月14日(木)18:30 宮﨑県延岡市 延岡総合文化センター
2016年7月22日(金)19:00 長野県長野市 長野市芸術館メインホール
2016年7月24日(日)15:00 静岡県焼津市 焼津文化会館


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