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<対談>梶原徹也氏が鼓童・見留知弘に突撃インタビュー


新作「混沌」のドラム監修の梶原徹也さん(元ザ・ブルーハーツ)と鼓童代表・見留知弘の対談をお届けします。大太鼓のこと、舞台や衣装の変化、太鼓への想いなど、梶原さんが見留へ突撃インタビュー。ぜひご覧ください。

<対談>
「混沌」ドラム監修・
梶原徹也氏 × 鼓童代表・見留知弘

2015年8月5日 鼓童村にて
写真:岡本隆史

Photo: Takashi Okamoto

梶原徹也(以下、K):鼓童さんに関わらせてもらって、早4年が経ちました。今まで外から見ていた部分と、最近では鼓童の中に入ってみての部分と、色々なものが見えてきました。鼓童ファンとしてですね、率直に、色んな質問させていただきたいなと思っていましたので…もう色んなこと聞きますけど良いですか(笑)。

見留知弘(以下、M):はい(笑)。

K:知弘さんが代表になられたのは何年ですか?

M:2012年からになります。

K:それまでは、藤本吉利さんとかが?

M:いえ、鼓童の演奏者の中では代表者はいませんでした。それまで鼓童の代表は、北前船の社長の青木孝夫が兼ねていたのですが、2012年に太鼓芸能集団鼓童とそれを支える3法人(株式会社北前船、公益財団法人鼓童文化財団、有限会社音大工)に分かれました。マネージメントする北前船は引き続き青木が立って、私は演奏者の代表として就任させていただきました。

K:なるほど。じゃあ組織として、かなりシステムが変わったっていうことなんですね。その趣旨っていうか、大きな意味はどういうことだったのでしょうか。

M:それまでは、演奏者もスタッフも含めて「鼓童」っていう所がありましたが、それをもう少し、役割分担を明確にするためにも、しっかり演奏者の代表を立てた方が良いっていうことがあり、話し合いました。

K:鼓童の一つのメインの顔として大太鼓っていうのがありますよね。それをまず吉利さんがずっとやってこられて、その後知弘さんが受け継いだ転換期のお話を伺えますか。

Photo: Takashi OkamotoM:遡っていくと鬼太鼓座時代の時には、林英哲さんがずっと大太鼓をされていました。鼓童になって英哲さんが抜けてから、吉利さんが大太鼓を打ってこられたんですね。その間に、今は離れてしまっているメンバーや、(齊藤)栄一さんが大太鼓を打っていた時期もありました。

そして、1980年代の後半ぐらいから大阪の高槻で3年に一度、高槻市内の全中学生対象の公演をやっていたんですね。で、自分が鼓童に入った年(1990年)に一番若手で参加しました。この公演は若手が中心で出演をし、普段は大先輩が叩いているパートを与えられて演奏する、とても貴重で実りある3年に一度の学校公演でした。

そして、その3年後の公演で「大太鼓をやりなさい」っていう風に言われまして、そこで初めて大太鼓を叩いたんですね。またその3年後の1996年の時も大太鼓を叩きました。そうやって場数を踏んでいく中で、1997年に初めてツアーでやってみないかという話がありました。吉利さんの次に私が続けて叩いていく形になり、その時代のメインは吉利さんでしたが、ツアーごとに代わりながら叩かせてもらいました。そして、何年も経験するようになってから自分に任せてもらった感じです。


Photo: Takashi OkamotoPhoto: Takashi Okamoto

K:今も玉三郎さんが “お仕置きタイム” と称して、若手メンバーに大太鼓を教えられてますけれども、あれがもう、見てて興味津々、面白くてしようがないですよね。その場にいる吉利さんも一つ一つ解説してくださるので(あ、そういうふうに打ってるんだ)と見ていて興味深いですし、知らない世界というか。そういう、手ほどきみたいなことは、昔からあったのでしょうか。

M:当時、具体的な手ほどきというのは、まぁ、ほとんど無かったと言っても良いかもしれないですね。もちろん、吉利さんの構成を参考にさせてもらって、自分なりに、自分の手を入れつつ作っていきました。吉利さんのスタイルは、どちらかと言うと裏打ちがあって一人で自由に打っていくっていうものでした。自分は最初そのスタイルから、裏打ちと一体感をもって作り上げていくっていうスタイルに変えていったんです。なので結構、裏打ちに助けられてる所もありますね。

K:へー、そうなんですか。

M:はい。だから、昔の大太鼓っていうと、裏打ちはもう淡々と叩いているだけという感じだったんですけれども、それを二者で一つのものを作り上げて相乗効果が出るスタイルにしました。私の場合は手(リズム)をほとんど決めてしまって、それに裏打ちも添わせて打ってもらっています。

K:そういうアイデアが出てくるっていう過程に、自分のスタイルや得意なものを追求していったことがあるのでしょうね。

Photo: Takashi Okamoto

M:自分なりの色んな手を考えていかなくてはならなかったので。今、”お仕置きタイム(大太鼓稽古)” でやっている、私の大太鼓の手を、今度は若手メンバーが最初の骨組みとして始めて、そこから自身オリジナルの手を入れてるんですけれども。吉利さんは持ち前のキャラクターで即興に近い形で叩いているところがありますね。私は逆に一個ずつ山を作って、それがトータルとしてクレッシェンドになるように考えたりしています。13分ほどの長い時間の演奏になると、それなりに展開していかないと同じ手が出てきてしまうので。

K:そして基本的にテンポが正確ですよね。

M:そうですね。でもやっぱりフレーズによってどうしても大太鼓って、テンポが揺れるんですよね。速くなったりとか遅くなったりとか。それに、裏打ちが結構合わせてくれていたりして。

K:一時期、小田洋介さんがずっと裏打ちをやってたっていう話を聞きましたが。

M:彼の感性って凄いですよ。何かこう、野生の勘と言うか。それで、表打ちの言いたいことを後押ししてくれたりとか、隙間をどういうふうにアクセントを入れたらいいか、感じて打ってくれました。そういう意味では洋介と一緒に作り上げた感じです。

Photo: Takashi Okamoto

K:玉三郎さんが芸術監督として関わられるようになってきて、舞台芸術として洗練された世界を追求する、というような流れになってきたじゃないですか。そのことについて最初はどういうふうに理解して消化していかれましたか。

M:遡ると、2000年から玉三郎さんに関わっていただいて、まず「鼓童ワン・アース・ツアー スペシャル」というのが、一番最初に玉三郎さんに3年かけて作品を作っていただきました。その時に、まず白い半纏を作られたんです。今まで着てる藍染の半纏を私たちはずっと着てきたんですけれども、それの白バージョンを作られました。

K:あ、写真で見たことある!

M:その時に、今まで自分たちは藍染しか着たことがなかったので、正直最初は(白ってどうなんだろう)と思いました。その後に「アマテラス」を経て、2009年に「打男」があり、佐渡での最終通しが終わって、翌日から東京に乗り込むという時に、玉三郎さんに「ちょっと髭生やしてくれない?」って言われて、「えっ!」って(笑)。更に、初めてタンクトップを着たり、頭にウィッグを付けたりしました。実際、髭を生やして普段と違う衣裳を着ると「自分じゃない」という感覚がありましたね。そして、2012年の「ワン・アース・ツアー〜伝説」の舞台で初めて半纏ではなくタンクトップとジーンズ姿、2部はきらきらの衣裳

K:はい、きらきらでしたね(笑)。

M:そうなった時に、最初はみんなにも戸惑いはあったと思います。なので、その戸惑いがお客さんに伝わってた部分もあったのかと、今振り返って思いますね。

K:あぁ、なるほどね、そうかぁ…

M:舞台の内容としては、1部の「カデン」は新作でしたが、でもそれ以外で、新しいスタイルの曲というのはなかったと思います。それに対して、タンクトップであったりとか、きらきらの衣裳だったっていうことが、それまでの鼓童とのギャップがあって。そこに対してお客様の戸惑いがあったと思うんですけれどね。アメリカではタンクトップというのは、どちらかと言うとあんまり良い印象がないようで、少し暴力的なイメージがあるらしいんです。なので日本ツアーではずっとタンクトップで通してきて、アメリカツアーでは腹掛とパッチで行いました。自分はアメリカ公演ではお客さんとして観たのですが、初めて観た時に、逆に凄く、その姿(腹掛やパッチ)に違和感があったんです。

K:あぁ、逆に。

M:「カデン」みたいな、ああいう自由な、今までに無かったセットの中での腹掛姿が、逆にこう、凄く違和感があったというか。それは、今まで自分が感じなかったことでしたね。「カデン」っていう曲にはタンクトップの衣裳の方が良かったんだと、初めてアメリカで感じました。

Photo: Takashi OkamotoK:なるほどね。へぇー。そっかそっか。じゃあ、もうそれはある意味の固定観念みたいなのがあったり、半纏とかにとらわれてたりした所を、良いふうに崩して変えていただいたということなんですかね。

M:そうですね。自分たちにも固定観念がありましたし、観ているお客様もやっぱり、鼓童の衣裳っていうのは半纏・腹掛というのが定着していたのですが、玉三郎さん的にそれは和太鼓の伝統的な衣裳ではないというお考えもあるので。「何でも着られる、何でも叩ける表現者であってほしい」っていうことを仰っていました。そういう意味で、「剥がしてもらった」って言うんですかね。自分たちだけではできなかったことだと思うんです。
今までの舞台は、自分たち鼓童の中だけでほとんど演出してきました。なのでどうしても演奏者の視点で構成を考えていた部分があったと思います。やっぱり玉三郎さんは外から見られているので、その舞台を、芸術作品を見るっていう視点で作られているのだろうと思いますね。お客様が観た時に作品として完成するよう、玉三郎さんが整えてくださった。「伝説」はちょっとずつ移行しながら、「神秘」はもうほとんど新曲で、「永遠」ももう全くゼロから作られたというように、少しずつ新しい要素を加えながら。演奏者も「神秘」の時から、玉三郎さんの作品としてゼロから一緒に作っていった経験が大きく、衣裳が半纏とは違うことには全然、抵抗感なかったと思います。なので、それもお客様に伝わって、衣裳に対する固定観念が払われた感じがやっとしました。

K:ちなみに次の作品の「混沌」では、その固定観念を破るという意味でドラムが出てきたり、タイヤが出てきたりするんですけれども、どういう風に、見えていますか。

M:玉三郎さんは、芸術監督になられた際に「鼓童の振り幅を大きくして、とにかく大きく振ってみて、何が返ってくるのかっていうのを見たい」っておっしゃっていたんですね。そういう意味では、段々段々振り幅が大きくなってきて。お客様も徐々にそういう新しいことに鼓童がチャレンジしている姿を受け入れてくださってきたと感じますし、玉三郎さんの演出の舞台から観ている方には最初からこういうものだと思われているので、そういう意味では、違和感を感じなくなってきているように思います。

K:そうなんですね。

Photo: Takashi OkamotoM:老舗のお店とか、何でもそうなのかもしれませんが、やっぱり長く続いていくものは、その時代の新しいものをどんどん取り込んでいますね。本質がちゃんとあれば、どんなものでも受け入れられていくのかもしれないですね。和太鼓の舞台芸能のこれから先についても、ずっと同じものだと、いずれ飽きられてしまうと思います。自分たちの昔のスタイルっていうのは、一個しかなかったんですよ。「鼓童ワン・アース・ツアー」といえば、「三宅」があって、「大太鼓」があって、「屋台囃子」というものがいつも登場する舞台でしたが、玉三郎さんは歌舞伎とかクラシックと同じように、レパートリーをたくさん作ってくださっているんです。「伝説」、「神秘」、「永遠」、それから「混沌」、その先にまだ作品を一緒に考えてくださっていますが、そういうのがあれば作品として繰り返し上演していけるし、人が代わってもその作品自体が残っていく。舞台芸術としてちゃんと成り立つように、先のことを考えてくださっています。そして、音楽的にも整えてくださいました。今までは「行け行け!」と大きな音で感情的な演奏もあったと思いますが、今はもっと抑制されて、作曲者の意図に沿ってできるようになってきましたね。そういう意味では凄く、表現の幅が広がったと思います。音も強いか弱いかだけではなく、何段階もの表現ができるようになってきたことは、玉三郎さんのご指導のおかげです。

K:一つ一つが本当に勉強になって、何か嬉しいというかね、本当に幸せな空間で。毎回、稽古が楽しいんですけれども。本質の部分というか、変わらない「核心」の部分で言うと、やっぱり人間の生きているエネルギーとか、自然と一体になるというか、そういうものを感じてそれを表現するみたいなことだと思うんですけれども。例えば「屋台囃子」は秩父の夜祭の太鼓を舞台向けにアレンジされていると思いますが、そういう所は、意識して鼓童で伝承されているのでしょうか。

M:研修所では必ず「屋台囃子」、「三宅」、それから伝統芸能の踊りなどを学びます、そういうものはやっぱり根っこになるんですよね。植物で言ったら舞台は花の部分で、研修所っていうのは見えない根っこの部分を作るところ。そこでやっぱり、どれだけ色んな経験してきたのか、どれだけ努力して頑張ってきたかっていうのが舞台に上がった時に光るものになると思います。でもあまりにも舞台と研修所がかけ離れているとギャップがあるので、最近は舞台でやっている演目も指導するようにしています。

K:この間、研修生の発表会も見させていただいて、技術云々じゃなくて、本当に何か必死にやっているっていう所で伝わってくる部分が凄くあって感動しました。「屋台囃子」にしても秩父の夜祭というのがあって、その秩父の神様や大自然の八百万の神々に対して、太鼓を叩いているということが基本じゃないかなと思っていて。獅子躍や鬼剣舞など他の芸能もそうですが、そういうものは全部こう、鎮魂だったりとか、感謝の気持ちだったりとか…研修所で田んぼや畑の作業をする中で、そういう自然への感謝を実感したり、学んでいることが凄いと思います。

Photo: Takashi Okamoto

M:そうですね。まず、研修所がある地元のお祭りに、担い手として参加させていただいてます。神事というか、そういう経験が凄い大きいと思いますね。例えば「屋台囃子」とか「三宅」は、現地を訪れることがなかなか難しいので、ビデオとか写真を見せて、「実際のお祭りはこういうものですよ、ここでこういうふうに叩かれてますよ」というのをまずちゃんと知ってもらうんですね。それを知らないと、ただ鼓童の舞台に上がっている太鼓だけを見て習得することになってしまうので。「元の芸能についてきちんと知った上で、鼓童のアレンジされたものを勉強していきましょう」というふうにしています。また太鼓は、それ自体にエネルギーがあると言うか、牛や大木、生きていたものから成っているので、そこに対する感謝っていうのを大事にしなくてはならないことも伝えています。

K:素晴らしいですね。そうやって追求していくと、自分も自然の一部であって、周りに感謝しているということは、自分も生かされているっていうことでもあると思います。自分にも一所懸命何かこう、自然界に還元しているっていう所に行き着く感じがして。叩いている中で、個々と個々とが凄い繋がって、どーっと響き合っているような、そんなとっても幸せな瞬間があるんですよね。

M:太鼓も結局「言葉」だと思います。何千人というホールで一番遠くの人に届かせるためには、きちんとしっかり、大きな声で喋らなきゃいけないというのと同じで、太鼓も滲んだような音ではなく、しっかりと伝わるような太鼓を叩かなくてはいけない。例えば、地打ちであったら「ソロを打つ人にしっかり伝えることを意識して、ちゃんと自分の音に責任を持ちなさい」という風に。「自分が出している音にちゃんと責任を持たないといい加減な音になってしまうので、そこをしっかり、もっと意識して、疲れていても口唱歌だけはちゃんとしっかり言い続けなくては」と。

K:なるほど。ドラムでは、その人の持っているエネルギーがぽーんと爆発していれば格好良いと思いますが、その代わり、スタイルだけ格好良さを持ってきちゃうと薄っぺらいものになっちゃいますね。そういうのはいつもね、心に留めていますけれども。

M:そういう意味で、私がやっぱりドラムの人の凄いと思うところは、テンションが上がっても、しっかりバンドを支えているっていう。どんなにテンションが上がってもテンポがキープできて、「ノリ」もきちんとキープできるところが素晴らしいと思います。

Photo: Takashi Okamoto

K:いやいやいや、それは人それぞれですよ。僕も走る方が好きなので、あんまり気にはしてないんですけれども。「全員走っていっちゃったらもう全然気にならない。」っていうバンドにいましたけど(笑)。
では最後に、見留さんとしての音楽観というか世界観というか、展望みたいなことを教えてもらえますか。

Photo: Takashi OkamotoM:自分は、従来の鼓童のスタイルでずっとやってきた人間なので、やっぱり何かこう、何て言うんですかね。自分に正直に真っ直ぐぶつかっていくことしかできないので、そういう意味ではあんまり変化球は投げられない。直球勝負しかできないので、それでも自分はそうやって演奏してきたので、最後まで貫いていきたいなという部分はありますね。

K:それは格好良いですね。

M:どっちかって言うと演奏者っていうよりは、まぁ職人に近い感じかもしれないんですけれども。

K:これからも真っ直ぐな太鼓をどうぞ叩きつづけてください。

M:ありがとうございます。


Photo: Takashi Okamoto

梶原さんと見留、対談後に固い握手。


【佐渡へ初演を観にいこう!】
23日、新作「混沌」佐渡初演!
http://www.kodo.or.jp/oet/20151123a_ja.html
11/22 17時まで受付:アミューズメント佐渡 Tel. 0259-52-2001、蔦谷書店佐渡佐和田店(窓口へ)
(鼓童チケットサービスでの受付は終了しました)
当日券は23日14時より劇場で販売

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「混沌」作品紹介

スケジュール(2015年11月佐渡初演〜12月)

「混沌」ブログ


梶原徹也 かじわら・てつや
1963年福岡県生まれ。ロックバンド「ザ・ブルーハーツ」の元ドラマーであり、世界中で演奏活動を続けるドラム奏者。ロック、和太鼓やダンス、アクロバット飛行機とのコラボなど、ジャンルにこだわらずパワー全開でドラムを叩いて、爆発する生命エネルギーを伝えている。また、バリアフリー・ロックバンド「サルサガムテープ」やフリースクールでの音楽講座など、大人数でリズムを自由に叩きながら、参加者全員で音楽の楽しさを共有する、という活動を積極的に行っている。2015年3月からは、鼓童メンバー・小田洋介とのバンド「えびす大黒」も始まった。


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見留知弘 みとめ・ともひろ
1970年8月17日生まれ。東京都足立区出身。5歳より地元の太鼓グループで太鼓を始める。1989年研修所入所、1990年よりメンバーとして活動。国内外のツアーで三宅や屋台囃子などの演目で数々の舞台に立つ。1997年からは大太鼓を担当し、長年にわたり舞台の精神的な柱として活動。2006年、樹齢600年の大木から太鼓をつくる「手作り欅太鼓プロジェクト」で棟梁を務めるなど、ものづくりへの情熱も熱い。2012年4月より4年間、太鼓芸能集団鼓童の初代代表に就任。ソロ・小編成公演、ワークショップなどで活動の幅を広げる一方、一打一打へのこだわりと正確な技術で、研修生への指導にも尽力する。


11月、秋から冬への移ろいの中で/見留知弘


11月、秋から冬への移ろいの中で

皆様いかがお過ごしでしょうか。太鼓芸能集団鼓童代表の見留知弘です。11月に入り、めっきり寒くなってまいりました。

Photo: Takashi Okamoto
10月18日の鹿児島公演で、2014年の11月から始まりました、坂東玉三郎芸術監督の演出第3弾「鼓童ワン・アース・ツアー〜永遠」が、1年間の国内ツアーを終えました。今回は「永遠」という深い意味を持ったタイトルで、すべてが新しい曲での舞台、鼓童にとって、新しい表現にまた一歩踏み込んだ作品となりました。

提供:Les Grands Ballets Canadiens de Montreal

提供:Les Grands Ballets Canadiens de Montreal

時を同じくしてカナダでは、現代バレエ作品「輝夜姫」が上演されました。お陰様で公演は毎回盛況で、ダンサーや、西洋打楽器、雅楽奏者の皆様とも、とても良い関係を育みながら公演が行われました。

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公演の合間には、海外で初めてとなる学校公演が行われ、初めて日本の太鼓の響きに触れるモントリオールの子どもたちに、メンバー達もフランス語での自己紹介に挑戦するなど、とてもよい交流の時間となったとのことです。

海外での公演はさらに、10月の末には「打男」が香港で、11月には小編成でのバリ島公演が続き、ともに29年ぶりの訪問となります。いずれの公演にも、前回の経験者はおらず、演奏者にとっては初めての体験。きっと大きな刺激を受けて来る事でしょう。公演のご報告やお土産話はこのブログ等でご紹介してまいります。どうぞお楽しみに。

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2014年の「神恩感謝 日本太鼓祭」の様子

また、私は2014年に引き続き、伊勢神宮の「おかげ横丁」で行われます「第13回 神恩感謝 日本太鼓祭」に出演致します。この催しには国内各地から素晴らしい演奏団体が集結し、2日間にわたり熱演が繰り広げられます。

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2014年「収穫祭」の様子

そして本年は、研修所が、柿野浦地区の旧岩首中学校に移転して20周年を迎えました。例年11月の初旬に行われている、研修生自身が企画・運営して行うイベント「収穫祭」も今年は「大収穫祭」と銘打ち、研修所を修了したメンバーが研修生とともに演奏させていただくなど、大きな会になる予定です。この「収穫祭」は、日頃お世話になっている、柿野浦や岩首地区周辺の皆様、研修所や鼓童としてお世話になっている方々と、鼓童のメンバー、スタッフそして研修所の修了生との、再会の場でもあり、同窓の場でもあります。20周年の節目にふさわしい収穫祭になる事、楽しみにしております。

Photo: Takashi Okamoto

そして、いよいよ11月23日には、坂東玉三郎芸術監督の演出最新作、「鼓童ワン・アース・ツアー〜混沌」が、佐渡で初演を迎えます。

今回の作品では、これまで以上に大胆で自由な発想のもとに、西洋の音、東洋の音、そして日本の音が、入り混じり、そしてまた分かれていくという、そんな混沌や調和の世界が、繰り広げられてまいります。

Photo: Takashi OkamotoPhoto: Takashi Okamoto

11月の鼓童は、新しい作品と共に、新しいツアーが始まる、胸躍るスタートの月です。
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「鼓童文化財団研修所」説明会開催(大阪、東京)


9/26東京、9/27大阪
「鼓童文化財団研修所」説明会開催

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研修所apprentice20140610_02

「太鼓芸能集団 鼓童」メンバー養成コースの研修生への応募をご検討中の方を対象に、説明会を開催します。

東京会場
日時:2015年9月26日(土)10:30〜12:00
会場:文京シビックセンター・会議室(文京区春日)

大阪会場
日時:2015年9月27日(日)10:30〜12:00
会場:ホテル新大阪・会議室(大阪市東淀川区)

参加費:無料/各会場とも15分前より受付開始
お申し込み・お問い合わせ:(公財)鼓童文化財団 (担当:本間)
Tel. 0259-81-4100(月〜金/9:30 〜 17:00) Fax. 0259-86-3631 Email: kenshujo@kodo.or.jp

※事前の申込みがなくてもご参加いただけますが、会場設営や資料準備の都合上、できるだけご連絡ください。

研修所について:http://www.kodo.or.jp/apprentice/index_ja.html

研修所紹介映像

<研修所紹介映像>▶Youtubeで再生 https://youtu.be/9VzM4tu2K7k


研修生・津軽手踊りの稽古/千田倫子


7月6日〜7日 津軽手踊りの稽古

Photo: Chieko Kojima

津軽手踊りの石川義純(いしかわ・よしじゅん)先生と中学生のお弟子さんが研修所へ出稽古においでいただきました。鼓童は前身の鬼太鼓座初期から、石川流を創始した石川義衛(いしかわ・よしえ)先生を青森に訪ね、教えを請うてきました。義衛先生亡き後、純粋にその教えや技を守り継いできた方々のお一人が義純先生です。鼓童村で挨拶がわりに、と普段着のまま踊ってくださった先生の「あいや節」からは、津軽のふるさとの風景が広がって見え、涙が出てきて仕方ありませんでした。

Photo: Michiko ChidaPhoto: Michiko Chida

この機会に合わせて「じょんから節」を予習していた研修生もグングン吸収し、月末の発表会に向けて意欲を燃やす日々です。


鼓童文化財団研修所「夏の体験入所」のご案内/千田倫子


鼓童文化財団研修所
8/3〜8/5「夏の体験入所」のご案内

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鼓童文化財団研修所では、例年お問い合わせをいただく学生の方々の夏休み期間に合わせて、2泊3日の「夏の体験入所」プログラムを実施することにしました。いわゆるオープンカレッジのようなもので、鼓童文化財団研修所に興味を持ち、将来、応募を考えてくださっている方々で研修生の日常を一緒に体験し、研修所での共同生活の雰囲気を感じていただこうというものです。また、鼓童メンバーによる太鼓の稽古体験の時間もあり、これは、通常の見学にはないプログラムです。

上限15名としますが、まだ余裕がございます。間際のご案内になりますが、研修生、鼓童メンバー、研修所スタッフ等と気軽に話し、質問やアドバイスを受けるなど、思う存分触れ合い体験できる3日間です。興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。


<研修所紹介映像>▶Youtubeで再生 https://youtu.be/9VzM4tu2K7k

夏の体験入所

◆日時:2015年8月3日(月)〜8月5日(水)
◆会場:鼓童文化財団研修所(佐渡市柿野浦)
◆料金: 8000円(税込)宿泊費・食費等含む(佐渡までの交通費はご負担ください)
◆集合・解散
8/3(月)両津港集合15時10分(12:35新潟発フェリー)
8/5(水)両津港解散12時10分
(12:40両津発フェリー/12:55発ジェットフォイルに乗船可能)
◆参加資格:高校生以上〜24歳
◆応募締切:7月27日(月)
◆予定する主な内容
・稽古(鼓童代表:見留知弘による稽古/見留知弘の研修生への稽古を見学/研修生による稽古成果発表/トレーニング/ストレッチ)
・生活(食事作りと片付け・掃除・農作業など)
・関連施設見学(鼓童村=太鼓芸能集団「鼓童」拠点/深浦学舎=鼓童文化財団「地域づくりコース」拠点)
◆お問合わせ/お申込先:鼓童文化財団研修所(担当:千田/石原)
※電話は日中、繋がらない場合があります。恐れ入りますが、お問い合わせはできる限りメールにてお願いいたします。
Email: kenshujo@kodo.or.jp
Tel. 0259-28-2999、Fax. 0259-28-2997

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http://www.kodo.or.jp/apprentice/index_ja.html


【番組放映】BS1とNHKワールドで放送「Journeys in Japan」で鼓童研修所紹介


BS1とNHKワールドで放送「Journeys in Japan」で鼓童研修所紹介

提供:Journeys in Japan提供:Journeys in Japan

外国人リポーターが日本各地を訪ね、外国人の視点から日本の新たな魅力を発見する旅番組「Journeys in Japan」で佐渡と佐渡の芸能・鬼太鼓が特集されます。その中で鼓童文化財団研修所や鼓童についても紹介、研修生による太鼓演奏や研修生活についてのリポートもあります。なんと世界130カ国で放映!各国の皆様、ぜひご覧ください。

番組名:Journeys in Japan

【放映時間・放送局】
1)NHKワールドで放送(NHK worldのWEBサイトで試聴可能):2015年6月23日8:30〜、14:30〜、21:30〜、24日午前2:30〜(各28分)
日本国内ではNHKワールドのホームページでストリーミング放送がご覧いただけます。
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/

2)BS1で放送:2015年6月24日(水) 午前3:00~3:30(=23日深夜)
http://www4.nhk.or.jp/journeys/

3)NHKワールドオンデマンド:放送後、全世界で視聴可能(放送後30日程度)。NHKワールドのWEBサイトからアクセス
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/vod/journeys/20150623.html

【番組内容】新潟県佐渡島。その昔、流人(るにん)がもたらした京の都の貴族文化、商人が運んだ町人文化、江戸の武家文化が交わり、独自の文化を育んできた島だ。京から配流された世阿弥が発展させたことで知られる能を始め、太鼓に合わせ鬼が舞う「鬼太鼓」や「文弥人形」など、まさに佐渡島は伝統芸能の宝庫である。今回は、コンテンポラリーダンサーのアレッサンドラが、鬼太鼓を学ぶ旅。暮らすように佐渡に滞在し、鬼太鼓の稽古に励む。生活に根差した芸術とともに発展してきた佐渡島の魅力を伝える。

Photo: Erika Ueda

コンテンポラリーダンサーのアレッサンドラさんと鼓童研修生(研修所にて)


佐渡・羽茂祭り「薪能」/本間康子


6月15日佐渡・羽茂祭り「薪能」

羽茂祭りでは、毎年薪能が奉納されます。夕刻、かがり火の火入れ前に仕舞や舞囃子が演じられ、研修生も仕舞「紅葉狩」を披露させていただきました。

Photo: Yasuko Honma

能舞台に立つ経験など、なかなかできるものではありません。自然の風を感じながら舞ったり謡ったりするのは、気持ちがよかったのではないかと思います。

Photo: Yasuko Honma

この舞台に向けて、5月に宝生流能楽師・朝倉俊樹先生に初めてご指導いただきました。舞を舞った4人はもちろんですが、地謡も研修生だけで謡うことを目標にしましたので、地頭(リーダー)役となった人が中心となって一生懸命復習したことと思います。本番では、地謡の声が稽古の時よりもよく揃っていました。

羽茂昭諷会の皆様には、着物や袴の着付けを見ていただいたり、様々にお世話になりました。なお、メインイベントの薪能の写真は、私も地謡で参加しておりましたため、残念ながら撮れませんでした。


芽吹く季節に/見留知弘


Photo: Taro Nishita
皆様いかがお過ごしでしょうか。太鼓芸能集団鼓童代表の見留知弘です。5月に入り、とても過ごしやすく、清々しい季節となりました。花々が次々と咲き誇り、力がみなぎる春です。

Photo: Takashi Okamoto

例年鼓童の4月は、11月佐渡初演の「鼓童ワン・アース・ツアー」の新作のための稽古や、初夏から行われる「鼓童ワン・アース・ツアー〜永遠」、交流学校公演、「鼓童佐渡特別公演」等の稽古と、自然のサイクルと同じに、芽吹く時期でございます。

そして今年の5月は、2006年に初演、2013年に東京・博多・京都と、全ての会場で大盛況となった、「アマテラス」が大阪・松竹座にて行われます。

Photo: Takashi Okamoto

私達の芸術監督、坂東玉三郎氏と鼓童が共演する貴重な機会、そして前回に引き続きまして、特別出演に愛音羽麗さんをお迎えし、またさらに新たな演出を加え、皆様にお届け致します。神話の物語を、和楽器の音色で紡ぎながら、太鼓の持つ力で、時には荒ぶる神を、そして八百万の神々の宴を表現します。

Photo: Takashi Okamoto

そして宴はアメノウズメ(愛音さん)の舞いとともにクライマックスに達し、岩戸から光り眩しきアマテラスが登場。その瞬間には、演者である我々も、演奏をしながら感動してしまうほどの物凄い波動があり、まさに格別の時間がそこには存在します。この機会をどうぞお見逃し無く!

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また、大型連休中には、地元佐渡にて、ベテランメンバーを中心に今年入りたての準メンバーも加わって、4年目の鼓童佐渡特別公演が行われております。3月の北陸新幹線の開業、4月は新造船あかねの就航と、佐渡の南玄関、小木―直江津航路が近く、便利になり、午後の公演であれば、島外から日帰りも出来るスケジュールが組めるまでになりました。国の重要伝統的建造物群保存地区の中に在る木造建築の芝居小屋、宿根木公会堂で行われる特別な舞台へぜひご来場下さい。

そして4月より、今までの生活とは別世界での経験を始めた新研修生12名。だんだん生活サイクルに慣れ、稽古はもちろん、色々な習い事、農作業に地元の祭りなど、初めての経験がどんどんやって来ますが、それが2年後、5年後、10年後と、未来の自分の土台を作る事になります。そんな経験を積んだ研修生が、今の舞台を支えてくれています。そしてその道筋を作ってきてくれた先輩方がいます。色々な世代、色々な表現の舞台をお届け致します。

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「柿野浦の祭り」34期研修生初めての大役/千田倫子


Photo: Michiko Chida

10日前に入所したばかりの12名(男性8名・女性4名)の34期研修生。地元柿野浦集落の祭りのこの日、早くも1年生だけのドキドキの共同作業が訪れます。その使命は、研修所に門付けにきてくれる鬼太鼓を、お料理を作ってお迎えすること。いつもの頼りの2年生は、鬼や獅子頭などの役をいただいて、もてなされる側の鬼太鼓連中。2年生も、昨年の自分達のドタバタを思い出して力を貸したいところですが、こればかりはどうにもなりません。「料理間に合ってくれよ!」とただただ祈るのみ。

さて前日から台所で格闘の限りを尽くした1年生、何とか間に合って、太鼓の音が山を上がって来るのと同時に心づくしのご馳走を並べて、食卓が整いました。料理を挟んではずむ地元の方々との会話。集落の一員として鬼太鼓連中に入れてもらって活躍する2年生の晴れ姿。桜、心地よい風、校舎に刻まれる太鼓の音…。

Photo: Michiko ChidaPhoto: Michiko Chida

集落の皆さんの力で建てたこの校舎が今も生きている様子を見に、そしてこの祭りの日の気持ちよい風景を楽しみに毎年上がって来てくれる方もいます。こんなに明るくて朗らかで、喜びに満ちた光景の中にいられるのは、なんて幸せで希有なことでしょうか。本当に柿野浦の皆さんに感謝しています。

午後からは、1年生は心おきなく太鼓に付いてまわって、佐渡の祭りというものを、柿野浦の祭りというものを味わいます。ただお昼を境に天気が変わり、後半はひどい雨に打たれながらの門付けとなりました。

Photo: Michiko Chida

雨になるとワラジは水を吸ってすぐに形を変えていくし、その足元から冷えが来て、見ている方が本当に切なくなってきますが、どんな悪条件だろうがやり抜くからヒーローです。鬼を中心に、皆の意識も気持ちのまとまりも集中してきます。

Photo: Michiko Chida

「やっぱり鬼太鼓っていいなあ〜」。鬼の格好良さだけではない、総てを含んだこの言葉をつぶやいて、1年目の柿野浦の祭りが終わります。そして密かに「来年は絶対鬼を打つ!」と強く心に思うのです。ハレの日はまた1年後。人々の祭りへの気持ちは12ヶ月かけてまた練り上げられていきます。

鼓童文化財団研修所
http://www.kodo.or.jp/apprentice/index_ja.html


研修生、能に挑戦。/本間康子


Photo: Yasuhiko Ishihara

3月1日に羽茂公民館で行われた「羽茂文化団体能楽部門発表会」に研修生が参加しました。昨年までご指導いただいていた松永政雄先生がご高齢のため稽古終了となり、今年からはプロの先生のご指導を受けることになりました。まずはその前に地元の方から「手ほどき」として稽古を3回ほどつけていただいた、という状態での初舞台です。

Photo: Yasuhiko Ishihara

「紅葉狩(もみじがり)」という能の仕舞を発表しました。とにかく、おしまいまで通すことで精一杯ですが、舞と地謡に分かれて、それぞれの課題に懸命に取り組みました。また、小中高校生の方々も参加していて、高校生の堂々とした舞にも良い刺激をいただけました。

Photo: Yasuko Yamaguchi

慰労会では色々なお話も伺えて、貴重な交流の場となりました。

地元の皆さんは、囃子会などに研修生が参加することを、毎年楽しみにしていただいております。ご指導いただいたり、着物や袴の着付けを教えていただいたりした御礼に、慰労会では「帆柱起こし音頭」を歌わせていただきました。

Photo: Yasuhiko Ishihara


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