「柿野浦の祭り」34期研修生初めての大役/千田倫子
10日前に入所したばかりの12名(男性8名・女性4名)の34期研修生。地元柿野浦集落の祭りのこの日、早くも1年生だけのドキドキの共同作業が訪れます。その使命は、研修所に門付けにきてくれる鬼太鼓を、お料理を作ってお迎えすること。いつもの頼りの2年生は、鬼や獅子頭などの役をいただいて、もてなされる側の鬼太鼓連中。2年生も、昨年の自分達のドタバタを思い出して力を貸したいところですが、こればかりはどうにもなりません。「料理間に合ってくれよ!」とただただ祈るのみ。
さて前日から台所で格闘の限りを尽くした1年生、何とか間に合って、太鼓の音が山を上がって来るのと同時に心づくしのご馳走を並べて、食卓が整いました。料理を挟んではずむ地元の方々との会話。集落の一員として鬼太鼓連中に入れてもらって活躍する2年生の晴れ姿。桜、心地よい風、校舎に刻まれる太鼓の音…。
集落の皆さんの力で建てたこの校舎が今も生きている様子を見に、そしてこの祭りの日の気持ちよい風景を楽しみに毎年上がって来てくれる方もいます。こんなに明るくて朗らかで、喜びに満ちた光景の中にいられるのは、なんて幸せで希有なことでしょうか。本当に柿野浦の皆さんに感謝しています。
午後からは、1年生は心おきなく太鼓に付いてまわって、佐渡の祭りというものを、柿野浦の祭りというものを味わいます。ただお昼を境に天気が変わり、後半はひどい雨に打たれながらの門付けとなりました。
雨になるとワラジは水を吸ってすぐに形を変えていくし、その足元から冷えが来て、見ている方が本当に切なくなってきますが、どんな悪条件だろうがやり抜くからヒーローです。鬼を中心に、皆の意識も気持ちのまとまりも集中してきます。
「やっぱり鬼太鼓っていいなあ〜」。鬼の格好良さだけではない、総てを含んだこの言葉をつぶやいて、1年目の柿野浦の祭りが終わります。そして密かに「来年は絶対鬼を打つ!」と強く心に思うのです。ハレの日はまた1年後。人々の祭りへの気持ちは12ヶ月かけてまた練り上げられていきます。