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【出逢い】「紺碧の彼方」作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー『青い海に潜めた 数字の魔法』/寄稿・清川 仁


鼓童創立35周年記念コンサート 第一夜
〜出逢い〜
8月18日(木) 東京・サントリーホール

<鼓童×新日本フィルハーモニー交響楽団>
ープログラムー
伊左治直作曲 「浮島神楽」世界初演
猿谷紀郎作曲 「紺碧の彼方」世界初演
石井眞木作曲 「モノプリズム」
冨田勲作曲 「宇宙の歌」

「紺碧の彼方」作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー
青い海に潜めた 数字の魔法

文●清川 仁

Photo: Erika Ueda

冷静さの中に血の沸き立つような情熱と魂。それが、何度も演奏を聴かせていただいた僕が感じる、鼓童の素晴らしい魅力です。オーケストラとの共演ではそこに、ストイックなまでの客観性、冷静さを増幅し織り交ぜてゆけないかと考えました。おもむくままに音を大きくする、速くするということも大事ですが、同時に自分が今どういう状況にいてそう叩いているかということを、別の視点で見てみることも重要かも知れません。

Photo: Erika Ueda

新曲「紺碧の彼方」のエッセンスは、3連符と4拍のシンプルなポリリズムにあります。それが細胞のような最小単位であり、なおかつ全体を支配しています。稽古では、この混じり合わない3と4の組み合わせを何度も練習しましたが、終盤では最初と比べものにならないほど緻密になりました。

Photo: Erika Ueda

平胴太鼓3台、締太鼓2台という最小限のユニットでどこまで色んな変化が可能かということにも着目しています。

作曲家には、それぞれの作品ごとにその作品を構成する原理が必要と考えています。思いつきの鼻歌も作曲に違いないけれど、普遍性や客観性には疑問がある。ドの次にレが来る必然性、どうしても次はこの音に行かなきゃいけない、という仕組みを作ることが二十世紀以降の作曲とも言えるでしょう。

Photo: Erika Ueda

伊勢神宮の式年遷宮の曲を創らせていただいたとき、左右対称の神殿の形に倣って、5楽章それぞれを全てシンメトリーの構図にしました。今回は、紺碧の海に囲まれた佐渡の風景と、少しずつサイズが異なる3台の平胴太鼓とを、同居させる仕組みに行き着きました。3台の太鼓の胴の幅はおよそ60センチ、65センチ、70センチ。紺碧という色の由来になったラピスラズリという鉱石は、硬度が5〜5.5。その比を割り出して導いた10:11:12:13:14という数字の組み合わせで、新曲は出来ているのです。

Photo: Kenta Nakagome

タイトルが示す通り、青い海の果てに一体何があるのだろうかという思いも込めています。そうした詩的なイメージと、数学や哲学めいた仕組みとを同居させることが芸術だと考えています。

Photo: Erika Ueda

お聴きになる方には、仕組みを理解していただく必要はありませんが、太鼓が似たようなことをやっているようで少しずつ違う、というデリケートな変化を感じていただければ嬉しいです。また、紺碧の彼方のような広い空間を、オーケストラの楽器の倍音によって存分に感じていただければと思います。

Photo: Erika Ueda

猿谷紀郎 Toshiro Saruya:慶応義塾大学を卒業後、ニューヨークのジュリアード音楽院作曲科、同大学院を卒業。ミュンヘンビエンナーレBMWシアタープライズ最高作曲賞、クーセヴィツキーファウンデイションなど受賞し、1992年武満徹監修サントリーホール国際作曲委嘱シリーズにおいて初演された「Fiber of the Breath《息の綾》」で一躍その名を知られることとなった。芥川作曲賞、出光音楽賞、尾高賞、佐治敬三賞、芸術祭大賞など受賞。2014年には、第62回伊勢神宮式年遷宮の奉祝曲《交響詩「浄闇の祈り2673」》で3度目の尾髙賞を受賞した。

清川 仁 Jin Kiyokawa:読売新聞東京本社文化部記者。音楽担当記者として、邦楽ポピュラーを中心に、ジャズ、クラシック、純邦楽など幅広く取材を行う。年間、100人以上のアーティストに取材し、100本以上のコンサートに足を運ぶ。 「次世代シャンソン歌手発掘コンテスト」(日本シャンソン協会主催)審査員。


news20160818kodo35th_01-1鼓童創立35周年記念コンサート

http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

8月18日(木) 第一夜 〜出逢い〜
18:00開場/18:30開演
東京・サントリーホール

出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也

料金:S席9,800円 A席7,800円 B席6,800円(全席指定、未就学児の入場はご遠慮ください。)

お問い合わせ:チケットスペース Tel. 03-3234-9999(月〜土、10:00〜12:00、13:00〜18:00)


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