自分を、鼓童を、良くしていくために。/池永レオ遼太郎インタビュー

Photo: Maiko Miyawaga

聞き手:大滝知里

静かな意志の強さを瞳に宿し、凛とした佇まいと生来の明るさが舞台で映える池永レオ遼太郎。鼓童の若手メンバーの中で、プレイヤーとして活躍するほか、自ら演出・作曲なども手掛ける才能の持ち主は、アメリカに生まれ育った帰国子女だ。『巡-MEGURU-』ツアー開始前、彼にこれまでの歩みを聞いた。

「日本人であることと、アメリカ人であること。その間で己のアイデンティティーを考える機会が多く、鼓童に惹かれたのも、海外の人たちが日本の文化を“おぉ、いいね!”と受け取る感覚に近かったように思います」

チェロ、ピアノ、ギター、ベースと、幼少から音楽に触れていた池永の太鼓との出合いはアメリカでの大学生時代。鼓童に入るきっかけは、「山での自給自足の研修がやりたかったから」と笑うが、聞けば、成績優秀で器用に何でもできてしまうタイプで、「50年後、朝起きた時に“人生これで良かったのか”と後悔するのが嫌だった」とか。

その思考の底には「常に自分を革新したい」という確固たる人生の指針があり、それは、国内外で伝統芸能の裾野を広げ、ジャンルを超えたアーティストとの共作で新たな領域を目指している鼓童の精神に重なる。

研修中、周りは自分よりも太鼓がうまい人ばかり。特に池永の期はスターぞろいで、「初めて“壁”にぶつかりました」と明かす。

「大きな悲しみとか、感情が高まった時にいい曲が書けるタイプなんだ、という発見もありました。作曲も演奏も、全力で対峙した時に生まれる“何か”というのが必ずあるんです。一度その感覚を知ってしまったら、追い求めずにはいられない。今も飢えている状態ですね(笑)」

Photo: Maiko Miyawaga

演出家デビューとなった「アース・セレブレーション2017」の『鼓童若手連中』では、自らの発信で志願者を募り、正月休みを返上して稽古を実施。そのかいあって公演は成功し、フランスの太陽劇団の招聘によりパリ公演『Kodo Next Generation』を実現させた。

「いろんな人を巻き込んでいき、自分が台風の目になることが、楽しかったんです。いい作品創りのために、メンバーそれぞれが火花を散らしてクリエーションを循環させる。お互いに刺激を受けて成長しましたし、これを期に、演出や作曲に声を掛けて頂くなど、可能性も広がって」

いわく、「飽きっぽい性格」だが、その嗅覚の鋭さと行動力には驚かされる。

そして11月より巡演中の『巡』は、若手・住吉佑太の演出デビュー作。MV制作に初めて挑んだり、気概を感じさせる作品で、池永は演奏に徹する。

Photo: Heday Masuda

「僕自身、何曲か、アレンジに入ったりもしていますが、クレジットされるほどではなくて。今回は純粋に、リスペクトしている住吉のために演奏を頑張りたいと思っています。クラシックをやっていたり、ロックバンドを組んでいたりしたので、僕は洋楽のコードをよく使いますが、住吉は変拍子を入れたり “何じゃこりゃ!?” とビックリするようなマニアックな曲を創るので、面白いですよ(笑)。ですから、今回は特にお客様の反応が気になります。メインは太鼓ですが、マリンバを使ったり、衣裳もこれまでと少し違ったり、新しいチャレンジばかりなので、楽しんで頂けると思います」

Photo: Takashi Okamoto

そう瞳を輝かせて語る池永の、少し先の未来を聞いてみた。

「芸術は立ち止まってはいけないと思うんです。鼓童が培って来たものを大切に、さらに新しさと共存させて、自分がいなくなっても次へ繋がり、続いてく。後に続く後輩たちをいかに導き、自分も、この鼓童という集団も、良くしていけるかということを考えています。何より太鼓に熱心な人たちなので(笑)。こういった時代にも妥協せず、太鼓と向き合う人たちがいる。それをもっともっとたくさんの人に知って頂きたいと思っています」
鼓童と共に進化する、池永の姿にもぜひ注目を。

Photo: Maiko Miyawaga

撮影: Maiko Miyagawa
舞台撮影:Takashi Okamoto, Heday Masuda


「巡 -MEGURU-」東京公演スケジュール

2018.12.15(土)18:00 東京都調布市 調布市グリーンホール
2018.12.16(日)16:30 東京都福生市 福生市民会館 大ホール(もくせいホール)

2018.12.19(水) 〜2018.12.23(日)東京都文京区 文京シビックホール大ホール
▼開演時間:
12.19(水) 19:00
12.20(木) 14:00
12.21(金) 14:00
12.22(土) 14:00
12.23(日) 14:00


Photo: Takashi Okamoto

池永レオ遼太郎

Ryotaro Leo Ikenaga

大学1年生より太鼓を始め、学内の太鼓グループで活動。2013年研修所へ入所。2016年より正式メンバーとなる。舞台では主に太鼓、笛を担当。2015年「打男」浅草公演、「永遠」「混沌」国内ツアーに参加。「混沌」ではフルートを演奏。2016年、「螺旋」国内ツアー、「打男」ブラジルツアーに参加。

2017年、「坂東玉三郎がいざなう鼓童の世界」、「幽玄」で坂東玉三郎氏と共演。「打男」北米、国内ツアー参加。「鼓童若手連中」で舞台演出デビュー。

2018年、フランスの著名な劇団「太陽劇団」の招聘により演出舞台「鼓童若手連中」の海外版、「Kodo Next Generation」をパリにて上演。また、「道」の演出補佐を務める。「Evolution」ヨーロッパツアー参加。旋律楽器も得意とし作曲にも力を注ぐ。

池永レオ遼太郎
https://www.kodo.or.jp/meguru/member/ryotaroikenaga

三宅/中込健太

「大太鼓」はもちろん思い入れが強いけど

「三宅」もまた自分にとって大事な太鼓だなと改めて思いました。

Photo: Erica Ueda

新人の頃なんとかツアーについて舞台に上がるきっかけをもらったのは「三宅」という演目だったし、他の稽古全然しないで三宅ばっかり叩いてて他の曲に全然入れない時期もあった。

三宅のソロをやる中で自分を爆発させる、野生化させる事に目覚めたのかもしれない。

(見留)知弘さんや(小田)洋介さんがこの演目を通じてなんもできない新人の自分を目覚めさせた。

Photo: Erica Ueda

挫折感を味わって、なんもできないとき、研修生同期で三宅島芸能同志会のカズが『一緒に三宅叩こうぜ』と誘ってくれて、津村さん一家にお世話になり叩きまくる中で自分が再生していった。

彼らの炸裂する音にまた目を覚まされた。

身体の調子が悪い時は「三宅」叩いてると治る。

Photo: Erica Ueda

何かがはじまろうとしているときには「三宅」を叩く機会がどこからともなくやってくる。

佑太が新しく、演出をすることになり、一緒にやろうと言ってくれたとき、その演出のなかで「三宅」をまた新たにアレンジして叩いてほしいと頼まれ今回「祭宴」というタイトルで自分たちなりの三宅を作った。

Photo: Takashi Okamoto

これまでふりかえれば太鼓が自分を鍛えあげ、導いてきた。

Photo: Takashi Okamoto

今回新たな気持ちで巡という作品に向かっていますが

また「三宅」が、自分の肉体と精神を侵食しはじめています。

Photo: Heday Masuda

Photos: Takashi Okamoto, Heday Masuda, Erika Ueda


中込健太

Kenta Nakagome

2004年研修所入所、2007年よりメンバーとして活動。舞台では主に太鼓を担当。「大太鼓」や「屋台囃子」など力強い太鼓を得意とし、パワフルでエネルギー漲る演奏が魅力。心優しく、幅広いお客様に慕われている正統派の太鼓打ち。2015年「アース・セレブレーション」ではイラストレーターの黒田征太郎氏、ドラマーの中村達也氏とライブペインティング「炎」を開催、2016年「鼓童村コンサート」の演出を務めた。
2017年、「道」「交流公演」「初音ミク×鼓童スペシャルライブ」出演。「アース・セレブレーション」でBRAHMAN、梶原徹也氏、EIJI SUZUKI氏と共演。「幽玄」「坂東玉三郎がいざなう鼓童の世界」で玉三郎氏と共演。2018年「Evolution」ヨーロッパツアー参加。若手メンバー指導にも力を注ぎ、作曲も行う。

中込健太プロフィール
https://www.kodo.or.jp/meguru/member/kenta

大太鼓への入口が ”特殊” だったもので/大塚勇渡インタビュー

Photo: Takashi Okamoto

聞き手:伊達なつめ(演劇ジャーナリスト)

鼓童の大太鼓には、キャリアを十分積んで、まわりに認められた人が、屋台に上がって褌姿で叩く──というイメージがありましたが、僕の場合は特殊で、準メンバーのころ若手育成の目的で玉三郎さんから「大太鼓を打つのが見たい」というリクエストがあって打ったのが、入口だったんです。その後『螺旋』(2016年初演)では、通常は二拍子や四拍子で叩く大太鼓を、五拍子・四拍子・三拍子で創ってみるよう指示されたこともありました。

Photo: Erika Ueda

大太鼓は、お客様に見えるのは背中だけなのでごまかしが利かず、体力的にも精神的にも、自分のすべてを出し切らなければできない特別なものです。ですから最初は、敢えて弱い音を利かせたり、いろいろな拍子に挑戦することに、怖さがありました。でも、突きつめて叩かなければいけないと思うのと同時に、自分の中から出てくるリズムを聴いてほしい、という気持ちも湧いてきて……。

Photo: Erika Ueda

現在は、そこにメッセージを伝えられる技術と構成力が伴えば、自分独自のリズムもひとつの音楽の形になる、と考えられるようになりました。『巡 -MEGURU-』の『天涯』の大太鼓もそうです。ひたすら打ち込むことから始め、稽古を重ねてだんだんと音楽的な抑揚が付けられるようになってきて、いまは、主旋律のマリンバの音をアレンジで入れたりもしています。自己と対峙しつつ、作品の世界観や心地よさを感じていただける演奏を目指したいと思います。

Photo: Takashi Okamoto

Photos: Takashi Okamoto, Erika Ueda

 


大塚勇渡

Hayato Otsuka

高校1年生より太鼓を始める。2013年研修所へ入所。2016年より正式メンバー。舞台では主に、太鼓を担当。2015年「打男」浅草公演、「永遠」「混沌」国内ツアーに参加。2016年「打男」ブラジルツアー、「混沌」国内ツアー参加。音楽性のある太鼓を得意とし「螺旋」では「大太鼓」を担当、新曲「螺旋」「綾織」に抜擢。真摯に太鼓と向き合い、優しさとストイックな一面を併せ持つ。

2017年、「打男」北米、国内ツアー参加、クライマックスの演目を務める。「坂東玉三郎がいざなう鼓童の世界」、「幽玄」で坂東玉三郎氏と共演。2018年「Evolution」ヨーロッパツアー参加。

大塚勇渡プロフィール
https://www.kodo.or.jp/meguru/member/hayato

鼓童の舞台で『三宅』を打つのが夢でした/米山水木インタビュー

Photo: Takashi Okamoto

聞き手:伊達なつめ(演劇ジャーナリスト)

私は2歳の時から太鼓を始めて、小学生の時に鼓童を知り、中学1年から高校3年までは、三宅太鼓の教室に通い続けていました。『三宅』は、太鼓打ちとしての自分の原点であり、いちばん自分らしさが出せるものでもあって、いつか鼓童に入って『三宅』を打つのが夢でした。ただ、これまでの鼓童の公演作品では、『三宅』を女性の奏者が打つことは無かったので、果たして自分が鼓童の半纏を着て『三宅』を打つということはあり得るのか? ということを、ずっと考え続けていまして、だんだん「夢」から「できたらいいな」くらいに思っていました。

Photo: Erika Ueda

ですから、今回『祭宴』の中で演奏する『三宅』スタイルの打ち手のひとりに指名していただいて、すごくうれしかったです。男性二人と並んで打つということで、どう打てばいいか迷ったんですが、佑太さんは「自由に、水木の中から出てくる音や動きをどんどん活かしていい」と言ってくださいました。

Photo: Erika Ueda

私自身、『三宅』を打っている時は何も余計なことを考えていなくて、本当に魂で打っている実感があるんです。太鼓を演奏する人を見ていると、その人の太鼓人生が見えてくるもの。私も自分のたどってきた道をまっすぐに見せれば、音や動きに、それが自然に出てくると信じて打っています。

Photo: Takashi Okamoto

『巡』は、鼓童が試行錯誤しながら新しい可能性を見出そうとしている作品です。その新しい方向へ発展してゆくきっかけの位置に、いま自分は立っているのかなと感じています。

Photo: Erika Ueda

Photos: Takashi Okamoto, Erika Ueda

 


米山水木

Mizuki Yoneyama

2歳から太鼓を始める。2013年研修所へ入所。2016年より正式メンバー。舞台では主に、太鼓を担当。2015年「道」、「交流公演」「佐渡特別公演」、ロシア「平和友好文化フェスティバル」出演、インドネシア・バリでの公演など国内外の公演に参加。即興性に富んだ舞台経験を積む。2016年「若い夏」「交流公演」など国内で活動。

2017年、「初音ミク×鼓童スペシャルライブ」、「道」、「交流公演」、「KODO × Kids Dance」出演。2018年エジプトでの「Japanese Drums Concert」に出演。安定感とパワフルな演奏に、爽快な笑顔が持ち味の女性奏者。

米山水木プロフィール
https://www.kodo.or.jp/meguru/member/mizukiyoneyama

『巡』には故郷の風景も描かれていると思います/山脇千栄インタビュー

Photo: Ryotaro Leo Ikenaga

聞き手:伊達なつめ(演劇ジャーナリスト)

今年、正メンバーになりました。太鼓は小学校2年の時から始めていたので、研修生のころまでは、過去に積み重ねてきたものをもとに自信満々で叩いていたんですが、準メンバーになったら、いきなり何もできていないことに気づいて戸惑いました。太鼓の撥を振り下ろすたびに「それ違う」と言われ、先輩の音を聴かせてもらいながら、繰り返しやっているうちに、最近やっと、撥のタッチや音の違いがわかってきた感じです。

Photo: Takashi Okamoto

私には子どものころからの習慣で「打っている自分を見てもらう」という感覚がまとわりついていたんですが、今の目標は、とにかく「いい音を届ける」。これに尽きます。太鼓の音にはひとりひとり個性があって、聴いただけで「(中込)健太さんの音」「(蓑輪)真弥さんの音」ってわかるようになるんですが、私も早く、そういういい音を出せるようになりたいです。

『巡』は、特に「巡Ⅱ」など、佑太さんらしい乗れる曲が多いですね。

Photo: Takashi Okamoto

私は風鑼を担当しているんですが、MVに出てくる佐渡や、地元の香川県三豊の風景を思い浮かべながら演奏しています。

Photo: Erika Ueda

三豊は山と、遠くまで見渡せる平野もあって、空がすごくきれいな、ほんとにいいところなんですよ。(同じ三豊出身の)佑太さんは、きっと三豊の風景を想像しながら曲を創ったんだと思います。

Photo: Ryotaro Leo Ikenaga

このあいだ「そうですよね」と確認したら、「いや、それはない」って言われたんですけど(笑)、いえ、きっと無意識のうちにイメージしているはずです。

Photos: Takashi Okamoto, Ryotaro Leo Ikenaga, Erika Ueda

 


山脇千栄

Chie Yamawaki

2015年研修所へ入所。2017年より準メンバー、2018年より正式メンバー。舞台では主に、太鼓、笛を担当。2017年「佐渡宿根木公演」、「若い夏」、「交流公演」出演。2018年エジプトでの「Japanese Drums Concert」に出演。

山脇千栄プロフィール
https://www.kodo.or.jp/meguru/member/chieyamawaki

若手の繊細さと僕らの強い身体で、より豊かな表現を/石塚充インタビュー

Photo: Ryotaro Leo Ikenaga

聞き手:伊達なつめ(演劇ジャーナリスト)

今回マリンバを使うと知った際、なんだかとても合点がゆきました。住吉の作品は、音程のない楽器にもメロディーを感じさせるものが多く、彼の中には、つねに太鼓のリズムより音階がある感じがしていたからです。

Photo: Erika Ueda

いままでの鼓童は、いろいろな音楽を取り入れつつも、つくり方自体は、音楽よりも日本の芸能寄りだった気がします。一晩かけてクライマックスにもっていく神楽のように、10分の曲にも導入に長い時間をかけたり、演奏者の意気で何小節にするかが決まったり。最終的に小節数は確定するにしても、そこに至るまでに、打ち手の温度や呼吸が色濃く反映されていました。これに対して、住吉のつくり方はポップス音楽的で、すべての小節数が、最初からカッチリと決まっています。

Photo: Erika Ueda

はじめは自分の意志や感情と関係なく音楽が進行していき、追い立てられるような気がしたんですが、逆にそこに飛び込んでしまうと、風景の一部になれる感覚が芽生えてきましたし、長かった助走がなく、どこを切り取ってもおもしろく聴けるところも、これまでの鼓童との違いだと思います。住吉の作曲はとても細かくて、マリンバだけで何パートもあり、鳴物も音の高低を何種類もつけています。僕が鼓童に入った頃には、とても聞き分けられなかった繊細な音を、ふつうに取り入れているんですが、玉三郎さんに指導していただいた時代を経たお陰で、僕たちも繊細な音が聞き分けられるようになったわけで、改めてありがたく思っています。

Photo: Ryotaro Leo Ikenaga

住吉たち若い世代は、僕たちとは違う感覚を持ち、ずっと先を走っているので、ついていくのに必死なんですが、自分にないものをたくさん見せてもらえて、とても刺激的で楽しいです。僕や中込健太の世代は、選択肢は少なかったけれど、いろいろな意味で足腰がしっかりしていて、ひとつのことを徹底的に突きつめて身体をつくってきたところがあります。後輩たちのように、音層が厚くて繊細な演奏と、僕らの身体をミックスすることで、より強く豊かな表現を実現することが、僕らの役割だと思っています。

Photos: Ryotaro Leo Ikenaga, Erika Ueda

 


石塚充

Mitsuru Ishizuka

家族全員が太鼓の演奏家という環境で、幼い頃から太鼓に囲まれて育つ。1999年研修所入所、2002年よりメンバー。新人時代より主要演目に抜擢され、舞台では主に太鼓を担当。2007年より演出も手がける。穏やかな語り口と観察眼、的確な指示でメンバーからの信頼も厚い。「焔の火」「Stride」などを作曲。2013年、2015年「アマテラス」の音楽監督、スサノオ役を務めた。
2017年、「道」「EC30周年お祝いライブ」「ミッチェルシアター」の3つの舞台を演出。「坂東玉三郎がいざなう鼓童の世界」「幽玄」で玉三郎氏と共演。「初音ミク×鼓童スペシャルライブ」、石川さゆり「45周年記念リサイタル」、「KODO × Kids Dance」、「打男」国内ツアーなど多数の舞台に出演。

石塚充プロフィール
https://www.kodo.or.jp/meguru/member/mitsuru

住吉佑太弱冠26歳、念願の演出家デビュー!/演出・住吉佑太インタビュー

聞き手:伊達なつめ(演劇ジャーナリスト)

曲をつくる際、玉三郎さんは、まず景色が浮かび、そこに音をつけていくそうです。僕は、最初に音が出てきて、後からストーリーと景色をつけていくやり方をします。ストーリーを先行させると、どうも僕の場合は、自分の中にある価値観以上のものが出てこないんです。逆に音を先行させると、本能的に湧き上がってきたものや、もっと大きな何かから出てきたものを、自分を通して音にしているような感覚が得られます。ただ、そうするとストーリーが後付けになるので、全体の流れがつくりにくい、という欠点があります。両方のバランスが取れると、いいんでしょうね。

もともと、曲作りだけでなく、何かを創り出すこと自体が好きなので、その最たるものである「演出」を、いつかはやってみたいと思っていました。今回初めて挑戦してみて、始めのうちは楽しかったんですが、さまざまな決断を下す段階になると葛藤の連続で、こんなにきついものだとは思いませんでした。

今までは自分でやりたいように曲をつくり、「どうぞ」と渡したら、あとは演出家が直してくれていましたけど、今回は曲もほとんど自分でつくり、直すのも自分でやらなければならないですからね。出演するメンバー各自の個性を活かしながら、曲ごとにどう並べ変えてゆくか。舞台上にどういう景色を出現させるか。そして、そこにどんな音をあてていくか。この「人」「景色」「音」の三角形が、演出には非常に大事であるということを、いま痛感し、学んでいるところです。

 

Photos: Takashi Okamoto

 


住吉佑太(鼓童)

演出:住吉佑太

Yuta Sumiyoshi

小学校2年生より和太鼓を始める。2010年研修所入所、2013年よりメンバー、「大太鼓」やソリストに抜擢される。舞台では主に、太鼓、笛、「混沌」公演ではドラムを担当。軽やかなバチ捌きを得意とし、また「草分け」「結」「炯炯」「綾織」など舞台の要となる数々の楽曲を生み出す、鼓童のサウンドメーカー。
2017年、「打男」北米・国内ツアー参加。「坂東玉三郎がいざなう鼓童の世界」、「幽玄」で坂東玉三郎氏と共演。
2018年「Evolution」ヨーロッパツアー参加、「巡 -MEGURU-」で初演出を務める。

鼓童サイト|住吉佑太プロフィール
https://www.kodo.or.jp/about/member/yutasumiyoshi

鼓童のサウンドメーカー2人による、「巡」アレンジ!

Photo: Takashi Okamoto

鼓童のサウンドメーカー住吉佑太(左)&池永レオ遼太郎(右)

遼太郎による「巡」アレンジにヨーロッパツアー中の動画を合わせた、ロードムービーを公開!
そして、「巡」作曲者・佑太による”トランス・ヴァージョン”も本サイトで初披露。

2人にこの「巡」楽曲アレンジの面白さを語ってもらった。

Kodo 2018 Europe Tour Scenes / Music: 巡 -MEGURU-

arranged by Ryotaro Leo Ikenaga

聞き手:伊達なつめ(演劇ジャーナリスト)


Photo: Takashi Okamoto

池永 去年のアメリカ・ツアーの時に、個人的にiPhoneで撮った動画を、メンバーに見せていたんです。

住吉 それが面白かったので、同じように『巡』の音楽に合わせてつくってもらえないかと、遼太郎に頼んでみました。

池永 楽曲にあわせて、今年のヨーロッパ・ツアーで巡った全都市を、訪問順に並べてはめ込んでいったんですけど、映像の方が足りなくて、編集にはちょっと苦労しました。

住吉 曲自体も、遼太郎がアレンジしてくれました。『巡』はもともと日本的な5音階でできていて、コードも一般的にはスリーコード(基本の3つの和音で構成される)のところを、敢えて2つのコードにしてあります。ただ2コードだと、どうしても暗いイメージが強くなるので、「メジャースケール※の感じにしてくれない?」と頼んだら、メロディーはそのままに、和音を別のものにして変化を付けてきた。こういう発想は、いままで無かったですね。

→※メジャースケール(外部リンク http://chaco2008.com/theory/1-3_majorscale.html

池永 2コードから4コードに増やしたらどうかな、と思ってやってみました。こういうループする感じ、ゲーム音楽やBGMなどでは、よく使われるコード進行です。つくるのに時間もそれほどかかりませんでした。

Photo: Takashi Okamoto

住吉 ひとつの音型をひたすら繰り返す(=ループ)ミニマル・ミュージック系の曲は、鼓童にはあまりないタイプですね。今回、シンプルさを強調したら、図らずもこうしたアレンジが可能になりました。僕がつくった”トランス・ヴァージョン”の『巡』も同様で、生演奏とはまったく異なり、音色の制限もなく、いくらでも音を重ねられるDTM(desktop musicの略。パソコンのマウスやキーボードを打ち込んでつくる音楽の総称)で遊んでみたもので、かなりぶっ飛んでます(笑)。

巡 -MEGURU- Trance Version / 鼓童 Kodo

arranged by Yuta Sumiyoshi

住吉 これを鼓童の舞台で演奏することはありませんが、いろいろ試してみることが、新しい音楽表現を生み出したり、様々な客層の方への興味の入り口になったりすると思うんです。

池永 そうですよね。僕らにとっては、こういうのもとても自然な音楽のつくり方です。やっていて楽しいですし、楽しくないと意味がありませんから。

住吉 たとえば民謡で使う三味線も、日本に伝わってきた時に「これ使ってみたらいいんじゃない?」という好奇心で取り入れたものが、定着したわけですよね。こういうことは歴史的に繰り返されているのですから、僕たちも「邦楽器だから」と縛りをつけずに、かっこいいと感じたものを、柔軟に取り入れていければと思っています。

Photo: Takashi Okamoto

Photos: Takashi Okamoto


住吉佑太(鼓童)

演出:住吉佑太

Yuta Sumiyoshi

小学校2年生より和太鼓を始める。2010年研修所入所、2013年よりメンバー、「大太鼓」やソリストに抜擢される。舞台では主に、太鼓、笛、「混沌」公演ではドラムを担当。軽やかなバチ捌きを得意とし、また「草分け」「結」「炯炯」「綾織」など舞台の要となる数々の楽曲を生み出す、鼓童のサウンドメーカー。
2017年、「打男」北米・国内ツアー参加。「坂東玉三郎がいざなう鼓童の世界」、「幽玄」で坂東玉三郎氏と共演。
2018年「Evolution」ヨーロッパツアー参加、「巡 -MEGURU-」で初演出を務める。

鼓童サイト|住吉佑太プロフィール
https://www.kodo.or.jp/about/member/yutasumiyoshi


池永レオ遼太郎

池永レオ遼太郎

Ryotaro Leo Ikenaga

大学1年生より太鼓を始め、学内の太鼓グループで活動。2013年研修所へ入所。2016年より正式メンバーとなる。舞台では主に太鼓、笛を担当。2015年「打男」浅草公演、「永遠」「混沌」国内ツアーに参加。「混沌」ではフルートを演奏。2016年、「螺旋」国内ツアー、「打男」ブラジルツアーに参加。
2017年、「坂東玉三郎がいざなう鼓童の世界」、「幽玄」で坂東玉三郎氏と共演。「打男」北米、国内ツアー参加。「鼓童若手連中」で舞台演出デビュー。
2018年、フランスの著名な劇団「太陽劇団」の招聘により演出舞台「鼓童若手連中」の海外版、「Kodo Next Generation」をパリにて上演。また、「道」の演出補佐を務める。「Evolution」ヨーロッパツアー参加。旋律楽器も得意とし作曲にも力を注ぐ。

鼓童サイト|池永レオ遼太郎プロフィール
https://www.kodo.or.jp/about/member/ryotaroikenaga