鼓童ブログ Kodo Blog

Tag ‘稽古’

「道」へのみち/松浦充長


Photo: Mitsunaga Matsuura

聞き慣れた曲なのに新鮮な雰囲気が漂う稽古場でありました。

Photo: Mitsunaga MatsuuraPhoto: Mitsunaga MatsuuraPhoto: Mitsunaga MatsuuraPhoto: Mitsunaga Matsuura


▶YouTubeで再生 https://www.youtube.com/watch?v=r1N2ME9rH4E

news20150319michi
鼓童特別公演2015「道」
http://www.kodo.or.jp/news/20150319michi_ja.html

演出:山口幹文
出演者(予定):齊藤栄一、見留知弘、船橋裕一郎、石塚充、中込健太、前田剛史、立石雷、蓑輪真弥、稲田亮輔、神白佑樹、小池将也、米山水木
予定演目:族、Jang-Gwara、千里馬、道、三味線、モノクローム、三宅、三寒四温、山唄、大太鼓、屋台囃子

「道」の始まり/松浦充長


鼓童特別公演2015「道」稽古

Photo: Mitsunaga Matsuura

鼓童特別公演2015「道」の稽古が始まりました。

IMG_3367Photo: Mitsunaga Matsuura
IMG_0371Photo: Mitsunaga Matsuura

新準メンバーの神白佑樹、小池将也、米山水木も加わり、3月の公演まで稽古してまります。


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news20150319michi
鼓童特別公演2015「道」
http://www.kodo.or.jp/news/20150319michi_ja.html

演出:山口幹文
出演者(予定):齊藤栄一、見留知弘、船橋裕一郎、石塚充、中込健太、前田剛史、立石雷、蓑輪真弥、稲田亮輔、神白佑樹、小池将也、米山水木
予定演目:族、Jang-Gwara、千里馬、道、三味線、モノクローム、三宅、三寒四温、山唄、大太鼓、屋台囃子

2015年「アマテラス」始動!/石塚充


Photo: Erika Ueda

今年5月に松竹座にて再演することが決まった「アマテラス」。年明けからさっそく数日間の稽古が始まりました。

Photo: Erika UedaPhoto: Erika Ueda

今回の稽古には、演出&主演の玉三郎さん、アメノウズメ役の愛音羽麗さんの参加はなく、鼓童のメンバーだけで今一度ひとつひとつの音楽を丁寧に詰めていくという作業。
内容を思い出しながら、新たに身体に入れ直しながら、メンバーそれぞれが前回よりも一段上にいけるように音を奏でていきました。

Photo: Erika Ueda

こんなにも早く再挑戦する機会をいただいたので、より深い音質、より聴き心地の良い音楽をお届けできるように、もっともっと楽器たちと、自分の身体と、技術と向き合っていきます。

5月をお楽しみに!

news20150503amaterasu

http://www.kodo.or.jp/news/20150503amaterasu_ja.html

アマテラス(写真:岡本隆史、提供:TBS)

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島根での「石見神楽」稽古/花岡哲海


改めまして、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ、鼓童をよろしくお願い致します。

さて、みなさんはどんなお正月を過ごされましたか?

僕は1月28日から始まる「ワン・アース・ツアー2015〜神秘 北米ツアー」に向け、新人を加えた「大蛇(おろち)メンバー」で島根県・温泉津(ゆのつ)で稽古をしておりました。

20150110_183820石見神楽稽古

指導して下さったのは小林泰三さんを始め、温泉津町を中心に活動をしている、温泉津舞子連中(ゆのつ・まいこれんちゅう)のみなさんです。小林さんは神秘の構想から大蛇に携って下さった方の1人で、ご自身は石見神楽(いわみかぐら)の舞手であり神楽面の面職人でもあります。神秘で使っている蛇頭も、小林さん作なのです。

Photo: Takashi OkamotoPhoto: Takashi Okamoto

今回は新人を中心に稽古を進めて頂き、「どうしたらスムーズに動けるのか」「どうやったら大蛇に見えるのか」など、細かい所作や蛇胴のさばき方などを教えて頂きました。改めて気付く部分も多く、単純な動きに見えてすごく洗練されているのが石見神楽なんだなぁと感じました。

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今回の稽古では「夜神楽の『大蛇』に参加する」というミッションがありました。「夜神楽」とは、毎週土曜日に温泉津町の龍御前神社の社殿で行われる、温泉津舞子連中の定期公演です。2年前に初めて稽古に来た時も参加させて頂きました。

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夜、公演に向け社殿が飾り付されていくのですが、だんだんと石見神楽の空間や空気ができあがっていく様子は、とても感動するものがあります。神聖な場でありながら神様にすごく近いというか、崇敬の念を持ちながら身近に親しんでいる、そんな石見の人々と神様との関係が垣間見えました。2015年の初回の夜神楽公演ということもあり、神様が降りられる天蓋(てんがい)を特別に吊り、公演の支度が整いました。

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今回は「大蛇」の他に、場を清めるという意味の演目「塩祓い」の「奏楽(お囃子)」をさせて頂きました。小林さんは舞手として加わって頂き、無事に演奏ができましたが非常に難しかったです。

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お囃子の魅力というのは、聞くだけで踊り出したくなったり動きたくなったり、唄いたくなったりなど、人の気持ちを駆り立てる力がある所だと僕は思います。石見神楽は数百年受け継がれている芸能なので、観客を魅了し舞手を奮い立たせる、そんなお囃子が長い歴史の中で育まれて来たのだと思いました。ゾクゾクしてワクワクする、そんなお囃子や演奏ができる太鼓打ちになりたいものです。

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「塩祓い」「恵比寿」と演目は進み、最後の演目は「大蛇」。『全国を旅するスサノヲが出雲の斐伊川に来た所、嘆き悲しむ親子に出会いました。翁曰く、毎年 八岐大蛇がやってきて娘を食べてしまい、最後の1人になってしまった。スサノヲは娘との結婚を条件に八岐大蛇退治を引き受け、見事に大蛇を切り捨て退治しました。』というのがストーリーです。

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僕は大蛇を2年前の春に初挑戦し、今回で2回目となります。始まってしまえばあっという間という時間の印象はかわりませんが、1つ1つの所作に気をつかったり表現などに工夫を凝らしたりなど、前回よりもできた感覚はありました。また次に来た時は、もっと良いものにできたらと思います。

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稽古中や本番前、ふとした時などに小林さんはお話をして下さいます。

「哲海くん、良いものってのは時間がかかるんだよね。」

確かに、石見神楽に限らず芸能や芸術など、僕らが「いいなぁ…」と思うものには相当な時間が費やされています。その時間は、毎日の少しずつの積み重ねや失敗苦労の連続、良いものにしようという気持ちの表れです。だからこそ人々を魅了し、惹き付けるものが生まれるのだと思います。

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そして小林さんは続けます。「あたり前のことで良いから毎日やりなさい、しかも丁寧にすること。」

あたり前のこと、出来ているようで出来ていないこと。あいさつをする、靴をそろえる、感謝をする…。十人十色、その人にとっての「あたり前のこと」はいろいろありますが、あたり前なことの丁寧な積み重ねこそが、芸を極めるという事に繋がるし根源であると思います。舞台に直接関係する事でなかったとしても、巡り巡って役立つことがある。だからこそ、舞台人である前に1人の人間として芯をもっていきたいです。

Photo: Takashi Okamoto

北米ツアーまで残り2週間ちょっと。鼓童を、日本の太鼓を、日本の芸能を伝えるべく頑張ります!

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鼓童ワン・アース・ツアー2015~神秘 北米ツアー
http://www.kodo.or.jp/oet/index_ja.html#schedule13a


「鼓童交流公演」初演出/内田依利


12月7日の京都芸術劇場「春秋座」での公演に来てくださった皆様、本当にありがとうございました。

初めての演出で不安なことだらけでしたが、劇場の皆様に温かく迎えていただき、またスタッフの皆様も必死に私のつたない言葉を汲んでくださり、とても気持ち良く仕事をさせていただきました。ギリギリまで時間をかけて作り続けたので、メンバーも体力的にも精神的にもとても大変だったと思いますが、本番では見事に出し切ってくれました。

Photo: Takashi Okamoto

今回、明かり(舞台照明)を作って行く中で、演出上の工夫は色々しますが、結局見せたいものとは、人であり、音なのだなということを改めて気がつきました。

Photo: Takashi OkamotoPhoto: Takashi Okamoto

舞台上に出ているメンバーは一生懸命自分と仲間と太鼓と向き合って舞台に立っています。

そこに関わるスタッフの皆様、そしてお客様にとっても、この公演に関わる時間がなにかしら個人にとって大切な、気づきのようなものがある時間であって欲しいです。

私が演出として骨組みを作りましたが、そこに肉付けをし、命を注ぎ込むのはメンバーでありスタッフであり、お客さまであることは、公演を終えて私の中から湧いてきた「ありがたいなあ〜」という気持ちが実感させてくれました。

Photo: Takashi Okamoto

それぞれから出てくるものをできるだけニュートラルな気持ちでみていられると、それぞれが勝手に化学反応を起こしてくれて私の骨組みからは想像できなかったような世界が広がっていきます。

まだまだ至らぬ点も多いかと思いますがこれからも精進いたします。温かく見守っていただけましたら嬉しく思います。

Photo: Takashi Okamoto

今日からまた、ここで得たものをまた学校公演に生かし、全国の子ども達にぶつかってまいります!

Photo: Takashi Okamoto

 

※写真は佐渡での稽古より(撮影:岡本隆史)
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鼓童交流学校公演とは

 

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鼓童交流公演

【動画メッセージ】鼓童交流公演
http://www.kodo.or.jp/blog/productions/20141204_4144.html


鼓童、そして和太鼓の原点こそが『永遠』/鼓童稽古場レポート


鼓童、そして和太鼓の原点こそが『永遠』

文●今井浩一(フリーライター)、写真●岡本隆史

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佐渡に初めて渡ったとき、その日最後の輝きを放ちながら、水平線の向こうに沈んでいく太陽がなんとも感動的だった。佐渡汽船の新たな高速カーフェリーがこの秋に「あかね」と名づけられたばかりだけれど、まさにそれがあの日の夕陽の色だった。そして合わせて佐渡で大切に育てられている天然記念物のトキの色にも重ねたネーミングなのだそう。そんな佐渡の夕陽は、島の豊かな自然を象徴している気がして、それがなぜなのかはわからないけれど、他所で見る夕陽に比べて格段に劇的だった。

鼓童の稽古場で、新作『鼓童ワン・アース・ツアー〜永遠』初の通し稽古を見ていて、実はそんなことを思い出していた。まるで秋祭りを彷彿とさせるような懐かしくて、温かな音色、オープニングからほどなくステージ後方に浮かび傾いていく太陽が、すぐさま佐渡のイメージを喚起させてくれたのだ。

それにしても『永遠』とはまた、過ぎるほどに壮大で、深遠なタイトルだ。

そのことについては、坂東玉三郎芸術監督はこうしたためている。

Photo: Takashi Okamoto
「永遠というテーマについて自分なりに思いを巡らせていたある日、ふと「自然の営み」が螺旋状に続いて行く、という考えに行き着いたのです。「自然の営み」を羅列することで「永遠」を表現出来たらと。厳密に言えば「永遠」というものは無いのかも知れませんが、それに繋がるきっかけとして 夜明け 光 雨 風 雲 波 星々 夕暮れ その中の「人間」というものが思い浮かび上がってきました。」

 

全員で試行錯誤する稽古場は
心、音、そして笑顔の交歓に満ちあふれていた

Photo: Takashi Okamoto

自然の営みは、人智ではどうにもならない圧倒的な力もあれば、小さな芽にも宿る生命の神秘のような力もある。そんなさまざまを、和太鼓の音色のあらゆる表情でつづっていくのが『永遠』、ではないだろうか。

これから始まるドラマを映し出すスクリーンが闇に広がっていくような曲「夜霧」(前田剛史作曲)で始まった。おりん(※1)の高音が、島を吹き抜ける涼やかな風のように響きわたる。そして横笛を軸にいろんな、新たに取り入れたものも含めた“打つ”楽器がベースのリズムを刻むメロディーは、前述した秋祭りの祭り囃子のよう。日本人の中に古くから伝わるなりわい、繰り返し繰り返し行われてきた営み。そんなものに対する郷愁をかき立てる。同時に波の音、風の音が加わり、佐渡の自然の豊かさを、海であったり山であったりの恵みへの感謝を思わせる。

(※1 正式名称は「ここちおんず」という仏具)

 

『永遠』の1部は、冒頭とエンディングが、こうした世界観で包み込まれている。和太鼓の爽快感を期待する観客をするりと交わし、はぐらかしてくすぐり、やがて燃え上がらせる。

桶胴のソロから続く「カタライ」(前田剛史作曲)では、一人の奏者の周りを大小いろんな大きさ、いろんな形の和太鼓がぐるりと囲み、そのさらに外側を4人の奏者が囲むというユニークなポジショニングで演奏が繰り広げられていく。それはまさにフリージャズのセッションのようだ。

Photo: Takashi Okamoto

「この曲は玉三郎さんから太鼓で囲ってみたらいいんじゃない? 囲った状態でつくってみてほしいと言われて作曲したものです。おしゃべり、会話するというテーマがあって、太鼓によってさまざまな拍子、それぞれに違う言葉(音)を持っているのですが、その個性がうまく混じり合って一連の曲になっていけばいいなあと。生きているうえでの、コミュニケーションとしての会話、人間の根源的な営みを描いているんです。玉三郎さんは太鼓を和音的な楽器として捉えていらっしゃるというか。音の高低が混じり合ったときのメロディー、複雑な中にも大きな波があるとか、そういうものを求められている気がします」

Photo: Takashi Okamoto

稽古場では、メンバーと同じ目線で、まさに「一緒に」作品づくりをする芸術監督がいる。すべてを瞬時にチョイスしていく姿は、太鼓の演奏はしなくとも、直感的に魅力的な要素がわかってしまうかのごとく。「カタライ」の返し稽古でも「いっそ、こうしてみたら」とメンバーのアイデアを大胆に膨らませていく。次!次!次!と叩く太鼓を指で素早く指示していく。奏者もそれを右へ左へ身体を切り返して負けじと叩き続ける。芸術監督のアドバイスによって、若い奏者たちが、動きが、音がより自由に、大胆になっていく。一息ついて芸術監督とメンバーたちが笑顔の交歓している稽古場は、皆がハジけている。そして先ほどのフリージャズは、奏者同士の濃密なやりとりへと変貌していくのだ。

 

芸術監督のさまざまなオーダーから
改めて太鼓の魅力に気づくことができた

Photo: Takashi Okamoto

この通し稽古が行われたのは9月の中旬のこと。8月21日から23日に行われたアース・セレブレーションの喧噪が徐々に秋風に変わりかけていた。しかし鼓童村の稽古場では、この11月からツアーを開始する新作『鼓童ワン・アース・ツアー〜永遠』の稽古が熱を帯びていた。世界を、国内をかけめぐっている鼓童とあって、数少ない全員が集まってのリハーサルは集中度がものすごい。『永遠』に取りかかったのは今年1月のことだったそうだ。「今回はすべて新曲で行きましょう!」の芸術監督の一言から始まった。これまでの作品は、鼓童の代表的な曲を核にアレンジしたり、形を変容させながらつくられることが多かったが、『永遠』はすべてがまっさらな状態からのスタートだ。


Photo: Takashi Okamoto

芸術監督から渡された『永遠』について(冒頭の)短い文章をもとに、イメージなどを一緒になって話し合い、共有した。「それをもとにアイデア出し、発表をする機会を何回か持ちました。その内容は曲であってもいいし、太鼓を叩く形でも太鼓の配置でもなんでもいいんです。それを玉三郎さんがご覧になって、その中から得た着想をもとに新作が練られていきました。この曲のこの部分を膨らませたい、この形を使ってみたいというものを核に徐々に作品ができていく感じです」(船橋裕一郎)。その後は芸術監督がチョイスした“種”をメンバーそれぞれが育てていく作業がずっと続けられ、その全貌が姿を表したのが9月上旬だった。

『永遠』は、坂東玉三郎が芸術監督となって演出を手がける第3作目。第1作目の『伝説』は、鼓童の伝説的演目と芸術監督が手掛けた新作曲をつないだ作品だった。第2作目の『神秘』は、闇と光の交差する幻想的な空間で、演劇的な要素、役者としての立ち方を追求したものに。芸術監督が求める表現、それは鼓童にとっての新たな挑戦というべきものだった。

Photo: Takashi Okamoto

「以前の鼓童というのは、歯を食いしばって、汗を飛び散らせながらデカい音を出してなんぼみたいなところが少なからずあった。玉三郎さんには逆に引き算を要められて、しばらくは小さい音、繊細な音をひたすら練習しましたね。そのことで一つの太鼓がどういう音色を持っているのかを改めて知る機会になりました。だから作曲するときでも、そうやって発見した音を散りばめられるようになりましたね」(前田剛史)。

Photo: Takashi Okamoto

「自分たちで演出をしているときには、新しいことをやろうと思っても、昔からの鼓童の伝統にしばられた部分が意外と大きいんだなと気がつきました。半纏、鉢巻きや褌が脱げなくて、脱げないがゆえに踏み出せなかった。確かに最初は衣裳を脱ぐことにさえ抵抗がありましたが、脱いでみたら気持ちも変わって、新しいことにチャレンジすることが面白くなってきました。玉三郎さんは思いもかけないことをおっしゃるんですけど(笑)、それが今では意外としっくりくることもある」(坂本雅幸)。

Photo: Takashi Okamoto

「今まで鼓童は、和太鼓と日本の民俗芸能をベースにしていたので、洋楽的なリズムをやること、ダンスのような身体のさばきには違和感があったんです。玉三郎さんが新しいことを積極的にやらせようとされていて、戸惑いながらも自分たちの受け幅が広くなってきて、今度はこれ、今度はこれとわかるようになってきたんです」(石塚充)。

2012年の正式就任以前から続く芸術監督との10年におよぶ交流を通して、その思いはメンバーの中で消化、浸透してきたからこそ、『永遠』では、皆がフラットな状態からスタートできたのだ。

 

和太鼓とは何か? そんな問いから生まれる新たな魅力

Photo: Takashi Okamoto

『永遠』の第二部もおりん(※2)の音から始まる。どうやらこの音は、観客が日常から離れるためのおまじないのようなものかもしれない。小さなシンバルのようなチャッパと鈴(すず)などの鳴りもののアンサンブルから始まる。そこから4人が抜け出し、コンテンポラリーでありながら土着性も感じさせるダンスを繰り広げる。チャッパやガムランの鳴り響く不思議なメロディーに併せてのダンスが異空間へと観客を誘う。

(※2 正式には「久乗おりん」)

 

異空間で最初に出会うのは「焚火」(小田洋介作曲)。まるで和太鼓の概念をくつがえしていくようなユーモアにあふれた演奏だ。5人の奏者が和太鼓の縁を円を描くようにツーっとなぞる、コンコンと叩く。和太鼓というもののすべてを使って、明らかに和太鼓とは違った音とリズムを生み出していく。誤解を恐れずに言えば、目を閉じて聞いていたら、デッキブラシやドラム缶などを使ったパフォーマンス、『ストンプ』の世界に入り込んでいくようだった。それが和太鼓が奏でているものとは思えなかったのだ。鼓童の影響を受けて『ストンプ』が誕生したのはよく知られていることであるけれど、その世界観の原点であり、太鼓の奥深い可能性を見せられた気がした。

Photo: Takashi Okamoto

「永遠というテーマを考える中で、僕にとってははるか昔にさかのぼる必要性があったんです。永遠は未来だけではなく過去にもあるわけじゃないですか。だったら和太鼓の基本的な演奏方法が確立される前の段階、和太鼓が和太鼓になる前の生まれた瞬間を想像してみたとき、曲をつくるうえで、従来の和太鼓の音のつくり方を外してみようと思ったんです。もしかしたらあんなの和太鼓じゃないとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれないけど、本当の原始の時代はどんなふうにやっていたかなんて誰もわからないじゃないですか。“従来の”という考え方自体が基本ができ上がってからのことですから」。

小田がこの発想にたどり着いたのも、『伝説』『神秘』という作品を経て、芸術監督が目指しているものが何であるかがわかってきたからだと言う。これは芸術監督が歌舞伎というものを伝統芸能ではなく現代と呼吸する表現に昇華させている姿勢に通じるものではないだろうか。鼓童の中心メンバーである小田が突出してこうした自由な発想を生み出すことは、ほかのメンバーへの影響も大きいはず。

 

Photo: Takashi Okamoto

やがて、笛の音とともに、ふさのついた長いバチを振りかぶっての踊りが始まっていく。円を描きながら回っていくうちに、それは平胴大太鼓を叩く動きに変わっていく。平胴大太鼓が1台から3台へ、叩き手も1人から数人へ。こうしたフォーメーションをはじめ、間(ま)、しなやかな動き、緩急などは芸術監督自身が大切にしているものであり、それらが皆に浸透しているのを感じさせる。「永遠というテーマを聞かされたとき、何かが回っているイメージが浮かんだんです。とにかく回りたいと考えて、最初はバチを回して、身体を回して、太鼓の周りを回ってみたら、このまま太鼓を増やしてたらと玉三郎さんがおっしゃって。回っているうちに同じところだけではなく、高まっていく感じを出せたり、太鼓を叩くだけではない空気の動きを出せたらいいなと」(石塚)。稽古場に太陽系のような関係性、引力が生まれていた。

Photo: Takashi Okamoto

そこからはおなじみの力強い和太鼓の世界。迫力あるリズムが疾走していく。鼓童のメンバーが、和太鼓と一体化しているようでもあり、壮絶に格闘するかのようでもある。気がつくと小田をはじめ3人の奏者が掌で太鼓に向かっている。それこそ、原始そうであったかのような姿からは、太鼓と闘いを通して対話をしているようでもある。これだけいろんな表情を見せた和太鼓がラストスパートに向かっていく。無骨に打ち続ける刹那がより際立っていく。最後の一打ちまで。

 

積み重ねてきたものの大切さを知る
鼓童版“温故知新”

和太鼓の魅力、和太鼓を超えた新しい魅力を鼓童のメンバー自身が発見し、それをまた観客自身が発見していく。それが『永遠』。改めて和太鼓という“もの”に無垢に向き合った。和太鼓とは何かを改めて考え、和太鼓を知り、そして当たり前だったことを投げ打ってさらに新たな可能性を広げていった。そして『永遠』では、鼓童の作品を締めくくってきた象徴たる大太鼓も登場するシーンがなくなった。でも違和感はまるでない。その代わりさまざまな和太鼓がいろいろな表情で魅せる。それが和太鼓とは思えないような音までも奏でる。だからこそ、力尽きるまで叩き続ける姿がより際立ち、感動を引き起こすのではないだろうか。そして同時に、30年以上積み重ねてきた歴史、方法論、経験、環境などなどが改めて素晴らしいものであることを実感している。新たなチャレンジの意義は、そこにもあった!

「玉三郎さんがいらしてからは、なんと言われようとも今までやってこなかったことにチャレンジをしてきた。もしかしたら、何が新しい、何が古いとかではなくて、どんなことをやっても鼓童の舞台だねって言われるようになりたいです。伝統曲も、コンテンポラリーダンスも同じ土俵で語られる武器にしていきたい」(坂本)。

「民俗芸能、和テイストのものには自分たちはすぐ行けるんです。この際、やれることはすべてやってしまうのがいいんじゃないかと思いますね。どんどん可能性を広げて、あとは自分たちで選べばいい」(前田)。

最後は小田の言葉で締めたいと思う。

Photo: Takashi Okamoto

「玉三郎さんが目指しているものが、うっすらですが見えてきました。将来どういうふうな太鼓打ち、芸能者になってほしいかという思いが見えてきましたね。求められているものが普通じゃない。より高度なものなんです。あえて言えば、これまでの鼓童より見た目は華やかに仕上がっているかもしれないけど、より古代に回帰しているのかもしれません。でもそれは鼓童の歴史じゃなくって、太鼓の生まれた理由にまでさかのぼっている感じ。僕らがやらなければいけないのは、これまで積み上げたものを置いていくこと。今まで積み上げたものの上で今があるわけですけど、同時に手放していく作業もしていかないといけない。たとえば自己表現への欲求を置いてきた先に、自分が見えてくるように。」(小田)。

だからこそ、鼓童にはこの言葉を贈りたいと思う。
鼓童は変わらない、しかし鼓童は変わり続ける。それこそが、『永遠』の姿なのかもしれない。

▶You Tube で再生 http://youtu.be/8_BHh_OyRVs

 

鼓童ワン・アース・ツアー2014〜永遠

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11月 20日 (木) 【新潟】アミューズメント佐渡
11月 30日 (日) 【新潟】シティホールプラザ「アオーレ長岡」※
※中越大震災10年復興祈念・東日本大震災復興祈願祭 ハートビート・プロジェクト特別公演
12月 2日 (火) 【神奈川】ミューザ川崎シンフォニーホール
12月 4日 (木) 【愛知】愛知県芸術劇場コンサートホール
12月 6日 (土) 【大阪】NHK大阪ホール
12月 7日 (日) 【大阪】NHK大阪ホール
12月 10日 (水) 【岡山】岡山市民会館
12月 12日 (金) 【広島】上野学園ホール
12月 15日 (月) 【福岡】博多座
12月 16日 (火) 【福岡】博多座
12月 19日 (金) 【東京】文京シビックホール
12月 20日 (土) 【東京】文京シビックホール
12月 21日 (日) 【東京】文京シビックホール
12月 22日 (月) 【東京】文京シビックホール
12月 23日 (火・祝)【東京】文京シビックホール
12月 25日 (木) 【新潟】新潟県民会館

 

今井浩一(フリーライター)
日本大学芸術学部美術学科絵画科卒業。大学時代に演劇に出会い、演劇にハマる。演劇情報誌シアターガイドにて16年を過ごし、編集長、スーパーバイザーなどを経て、まつもと市民芸術館広報に。5年半勤めた後、フリーの編集・ライターに。信州を拠点に演劇をはじめ、アーティスト・クラフト作家、農家などを取材。最近はイベントの企画なども行っている。

「永遠」魅惑ダンサーズ/地代純


最新作、鼓童ワン・アース・ツアー「永遠」。初日開幕まであと数日に迫り、稽古はすでに佳境に入っております。

Photo: Masayuki Sakamoto
撮影:坂本雅幸

今回、僕たち4人は「魅惑」という演目の中で今までにない新しい踊りを踊ります。幻想的で儀式の様な不思議な舞。是非、劇場でご覧ください。

Photo: Takashi Okamoto

別次元へと誘なう音の螺旋。
生き物のように絡み合う演出。
そしてそこに映し出される人間たち。

緞帳が開いたら、そこは異世界。
「永遠」お楽しみに。

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鼓童ワン・アース・ツアー2014〜永遠

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11月 20日 (木) 【新潟】アミューズメント佐渡
11月 30日 (日) 【新潟】シティホールプラザ「アオーレ長岡」※
※中越大震災10年復興祈念・東日本大震災復興祈願祭 ハートビート・プロジェクト特別公演
12月 2日 (火) 【神奈川】ミューザ川崎シンフォニーホール
12月 4日 (木) 【愛知】愛知県芸術劇場コンサートホール
12月 6日 (土) 【大阪】NHK大阪ホール
12月 7日 (日) 【大阪】NHK大阪ホール
12月 10日 (水) 【岡山】岡山市民会館
12月 12日 (金) 【広島】上野学園ホール
12月 15日 (月) 【福岡】博多座
12月 16日 (火) 【福岡】博多座
12月 19日 (金) 【東京】文京シビックホール
12月 20日 (土) 【東京】文京シビックホール
12月 21日 (日) 【東京】文京シビックホール
12月 22日 (月) 【東京】文京シビックホール
12月 23日 (火・祝)【東京】文京シビックホール
12月 25日 (木) 【新潟】新潟県民会館


交流公演内田組始動!/中込健太


Photo: Erika UedaPhoto: Erika Ueda

11月末よりツアーが始まる、内田依利演出の「交流公演」稽古がスタートしました。メンバーも一新し、雰囲気もがらりと変わりました。

私は大太鼓を担当することになり、今から気持ちを高ぶらせています。

Photo: Erika Ueda

自分も舞台や演奏の経験を積んできて、色々なことができるようになってきた気がしますが、大太鼓に向かっていく時にはそういうものも全て忘れて、まっさらな気持ちでいたいです。表現するというよりは、その日大太鼓を目の前にした時の気持ちのままに、打ち込んでいます。

吉利さんに「どうしたらフレーズを決めないで即興的に叩けるのですか」と訊いたら、「自分の出した音に入っていくんや」と言われました。その言葉がとても心に残っていて、私も自分の出した音に触発されながら、その時の気分で叩いています。それ以来、叩けば叩く程、音の中、太鼓の中に入っていくような感覚を覚えました。

Photo: Takashi Okamoto

太鼓の響きを浴びて湧いてきた自分の感情に、正直に向き合っていきたいです。

鼓童|交流公演
http://www.kodo.or.jp/news/20141200koryu_ja.html

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「SWITCH」記事掲載のお知らせ


SWITCH Vol.32

本日20日発売の雑誌「SWITCH Vol.32」で鼓童新作「永遠」に挑む、船橋裕一郎、坂本雅幸のインタビュー記事が紹介されています。是非ご覧ください。

SWITCH PUBLISHING サイト
SWITCH Vol.32 No.11 椎名林檎[音楽家の逆襲]
(2014年10月20日発行/Switch Publishing)

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鼓童[新しい自由のかたち]
坂東玉三郎が鼓童の芸術監督に就任してから2年。柔らかな緊張感が漂う稽古場に潜入
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鼓童佐渡特別公演稽古が始まりました/山中津久美


「鼓童佐渡特別公演-2014秋-」稽古

佐渡特別公演の会場となる宿根木公会堂で、稽古が始まりました。鼓童ベテラン組中心で繰り広げる舞台。久々に舞台復帰した阿部好江がうたう「磯節」は、時間を忘れてうっとり聴き入ってしまうほど。「かわさき」では男性陣の演奏に小島千絵子と阿部好江の踊りが華を添え、そして準メンバーの稲田亮輔による佐渡の芸能「鬼太鼓」は、若い力がみなぎる演目です。

Photo: Tsugumi Yamanaka

見どころは、「大太鼓」のトリプルキャスト。
藤本吉利、齊藤栄一、見留知弘の大太鼓は、見逃せません。みなさまのご来場を心よりお待ちしています。

news20141002sadospecialperformance鼓童佐渡特別公演2014-秋-
2014年10月2日(木)〜5日(日)
会場:宿根木公会堂(佐渡・小木地区)
– – – – – – – – – – –
出演:鼓童(藤本吉利、小島千絵子、山口幹文、齊藤栄一、見留知弘、稲田亮輔)
特別­出演:阿部好江

[全6回公演]
10月2日・3日 開演15時
10月4日・5日 開演11時と15時
料金(大人)3,500円(小人)4歳~小学生1,500円
お申込み:チケットサービス 0259-86-2330


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