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鼓童宣伝部

加藤泰監督作『ざ・鬼太鼓座』ベネチア国際クラシック部門での上映決定


加藤泰監督作『ざ・鬼太鼓座』ベネチア国際クラシック部門での上映決定

今年のヴェネチア映画祭(8/31~9/10)クラシック部門で、「ざ・鬼太鼓座」が選ばれ、上映されることになりました。世界から20本選ばれたうち、日本の作品は「七人の侍」と本作の2本になります。(『ざ・鬼太鼓座』は鼓童の前身「佐渡の國 鬼太鼓座」時代の1979年ごろに撮影された映画)

http://www.labiennale.org/en/cinema/news/22-07.html

WEB「シネマズ」より

WEB「シネマズ」より

加藤泰監督生誕100年を記念する快挙です。また、日本国内ではジャパンプレミアとして東京フィルメックス(11/19~11/27)での上映も決まりました。今後、各地で上映されるようです。

シネマズ|加藤泰監督作『ざ・鬼太鼓座』ベネチア国際クラシック部門での上映決定
https://cinema.ne.jp/news/ondekoza2016072717/

◆ウィキペディア「鬼太鼓座」より

ボストンマラソン完走後、そのまま舞台に上がり三尺八寸の大太鼓演奏でデビューをかざった鬼太鼓座はボストンの地元マスコミに大きく取り上げられ、以降、 日本国内外の公演も順調に進んでいったが、その後リーダーの田耕とメンバーとの間で意見やポリシーの相違が次第に表面化した。そして、その亀裂が決定的になったのは、映画『ざ・鬼太鼓座』の制作である。田耕は当時の鬼太鼓座を記録に残したいと映画制作を発案、自ら資金を調達しほぼ独断で企画を進め、松竹、朝日放送の協力を取り付け、3年の歳月をかけて映画を完成させる。しかし、実際に完成した映画は田耕の構想していた物とは全く異なった物であり、映画の内容を巡って、田耕は制作サイドと激しく対立し、結果的にこの映画はお蔵入りとなる(2014年現在、上映会などでの上映を除いて一般公開はされず、ソフト化もされていない)。

https://ja.wikipedia.org/wiki/鬼太鼓座

◆MovieWalker「ざ・鬼太鼓座」より

恋人吉三郎に会いたいがために火の見櫓の太鼓を叩き続けるお七/春になり、一斉に咲き誇った菜の花の中をお七は、津軽三味線のりズムにのりながら花嫁衣裳で 駆けめぐる。お七の新たな青春の始まり/七つの締大鼓にバチを落とすタクミ、ヨシカズ、カツジ、エイテツ、ハンチョウ、ヨシアキ、マサフミ。中大鼓が鳴り、締大鼓が後を追う。若者たちの歓喜の雄叫び/朝焼けの光の中を若者たちは鬼となって、実りを、収穫を求めて踊り跳ぶ。大太鼓の前に、六尺褌を締めて立 つエイテツとヨシアキが力をこめて叩き出した。しなる腕、踊るバチ、震える鼓、輝く瞳、したたる汗、豪快なりズムが響き渡る/祭は終った。刈入れの終えた 田園で藁を焼く煙が立ちのぼると佐渡に再び冬がくる。ミツルを先頭に五人の乙女たちはいつまでも踊り続ける。

http://movie.walkerplus.com/mv28067/

◆「ざ・鬼太鼓座」については「いのちもやして、たたけよ。」p.61に掲載

鼓童結成30周年記念出版「いのちもやして、たたけよ。– 鼓童30年の軌跡 –」
http://www.kodo.or.jp/news/20110607book_ja.html


[ONKYO×鼓童]創造を伝える音/住吉佑太


鼓童創立35周年記念グッズのご案内

インナーイヤー・ヘッドフォンE700Mのコラボレーション・モデル

オンキヨー&パイオニアイノベーションズ株式会社とのコラボレーションにより、ハイレゾ対応インナーイヤーヘッドホンの鼓童モデルが誕生しました。ハウジング部分にレーザーマーカによるロゴ彫刻(右側:巴印、左側:KODOロゴ)が施されています。

ただいま2次予約の受付中です。
予約受付:http://onkyodirect.jp/kodo.html

住吉佑太

創造を伝える音/住吉佑太

一聴して感じたのは、ひとつひとつの楽器の位置まで感じ取れる分離の良さでした。また低音から高音まで全体のバランスが抜群で、音楽の細かな変化まで鮮明に聴かせてくれます。様々な音楽ジャンルはもちろん、再生が難しい太鼓の響きもしっかりと伝えてくれました。

細かな変化をあるがままに聴かせてくれるので、日々の創作活動にも使ってみたいと感じています。

Photo: Takashi Okamoto

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e-onkyo musicにて、「永遠」ハイレゾ音源配信中!
http://www.e-onkyo.com/music/album/od015/


[ONKYO×鼓童]甦る緊張感/藤本吉利


鼓童創立35周年記念グッズのご案内

デジタル・オーディオ・プレーヤーDP-X1のコラボレーション・モデル
オンキヨー&パイオニアイノベーションズ株式会社とのコラボレーションにより、ハイレゾ対応デジタルオーディオプレイヤーの鼓童モデルが誕生しました。特典として、1985年「鼓童十二月公演」(新宿・シアターアプル)での藤本吉利による大太鼓演奏のアナログ録音を、ハイレゾ音源に変換して収録しています。

ただいま2次予約の受付中です。
予約受付:http://onkyodirect.jp/kodo.html

ONKYO×鼓童

甦る緊張感/藤本吉利

今回ハイレゾ化していただいた音源を聴き、当時の「一直線に太鼓にのめり込んでいく」感覚を思い出しました。

1985年、当時の大太鼓はまさに「命がけ」です。
最初の一打が鳴り出すまでの張り詰めた空気感、大切にしている打ち込みからの疾走感、クライマックスへの高揚感と荒い息遣いなど、30年前の緊張感が鮮やかに甦ってきます。

藤本吉利

今は「太鼓で唄う・太鼓で遊ぶ・全身全霊」というのが私のモットーです。これは今までに大太鼓で共演させて頂いた方々との出会い、長い時間打ち続ける事への挑戦、そして裏打ちなしでの独奏など、様々な試行錯誤を経て出来上がってきたと思っています。

この音源には、そうしたスタイルを作り上げる以前の、一心に太鼓に挑む「格闘」の様な演奏が収録されています。今とは違う30年前ならではのパワフルな演奏を、当時のシアターアプルの空気感と共にお楽しみ頂ければ嬉しいです。

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e-onkyo musicにて、「永遠」ハイレゾ音源配信中!
http://www.e-onkyo.com/music/album/od015/


【出逢い】「浮島神楽」作曲家・伊左治 直氏インタビュー『我が意を得たり 共に紡ぐ伝奇』/寄稿・清川 仁


鼓童創立35周年記念コンサート 第一夜
~出逢い~
8月18日(木) 東京・サントリーホール

<鼓童×新日本フィルハーモニー交響楽団>
ープログラムー
伊左治直作曲 「浮島神楽」世界初演
猿谷紀郎作曲 「紺碧の彼方」世界初演
石井眞木作曲 「モノプリズム」
冨田勲作曲 「宇宙の歌」

「浮島神楽」作曲家・伊左治 直氏インタビュー
我が意を得たり 共に紡ぐ伝奇

文●清川 仁

最初、作曲の話があった時の高揚感は、ちょっと格別でした。鼓童のCDはずっと聴いてきたので、本当にうれしかったですね。僕はブラジル音楽が好きなのですが、ブラジルにはサンバがあるけど日本には鼓童があるぞ、という思いも抱いていました。

Photo: Erika Ueda

今回は、まずワークショップのようなことをやりまして、自分の曲のサンプルをどんな風に叩いてくれるのか、色々な楽器を叩いてもらって音を確かめてみました。そして、練習をしながら、鼓童のみなさんと一緒に曲を作り上げていきました。僕の要求に対して、返ってくる反応が素晴らしいんですね。「こうやると、こう音色が変わります」とか、僕じゃ分からない楽器のことを教えてくれる。

Photo: Erika Ueda

鼓童は、和太鼓だけじゃなくてプラスアルファで色々な楽器を取り入れているので、今回はスリットドラムを入れてみました。また、僕は音だけでなく身ぶりや振る舞いにも興味があるので、音の良さだけじゃなくて、叩くフォームを含めて楽器を選択しました。オーケストラだけの時も身ぶりを取り入れたり、普段使われない打楽器を使ったり、ちょっとしたパフォーマンスも取り入れます。それ以上に鼓童は徹底しますよね。玉三郎さんが演技指導までして下さるんですから。

Photo: Takashi Okamoto

新潟県佐渡市・乙和池。中央、奥に浮かぶのが巨大な浮島。

僕は民俗学や伝奇伝承に興味があり、「浮島神楽」というタイトルをつけました。佐渡島には、巨大な浮島をもつ乙和池という場所がある。神聖で水がきれいだけど、使ってはいけないというタブーがある不思議な場所です。社会の便利さや不便さを問い直すようなテーマも感じるんです。また、僕が好きな民俗学者、網野善彦さんが唱えるように日本地図をひっくり返してみると、日本海が大きな湖のようになっていて、佐渡自体が日本海という湖の中にある大きな浮島に見えるんです。世界各地で演奏している鼓童自体が、南米やヨーロッパに現れる浮島のようなイメージにも通じているのではないかと思いました。

途中、密室のコンサートホールに穴を空けるような仕掛けも施します。動き出した音楽と、それと違う時間軸が入り込む不思議な状況を作ってみたい。精霊のようなものが入り込むイメージです。神楽のコミカルな要素も取り入れ、広い意味での神楽の本質を楽しんでもらえればと思います。

Photo: Erika Ueda

伊左治 直 Sunao Isaji1968年生まれ。日本音楽コンクール第1位、日本現代音楽協会作曲新人賞、芥川作曲賞、出光音楽賞を受賞。現代音楽系の作曲、パフォーマンスや即興演奏から、ブラジル音楽や昭和歌謡曲などのライブまで、様々な活動を展開している。2005年と2012年にはサントリー芸術財団による個展を開催。伝統楽器のための活動として、2013年に雅楽作品《紫御殿物語》、2014年に声明・謡・民謡・ポップスの共演による《ユメノ湯巡リ声ノ道行》などがある。

清川 仁 Jin Kiyokawa読売新聞東京本社文化部記者。音楽担当記者として、邦楽ポピュラーを中心に、ジャズ、クラシック、純邦楽など幅広く取材を行う。年間、100人以上のアーティストに取材し、100本以上のコンサートに足を運ぶ。 「次世代シャンソン歌手発掘コンテスト」(日本シャンソン協会主催)審査員。


news20160818kodo35th_01-1鼓童創立35周年記念コンサート

http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

8月18日(木) 第一夜 ~出逢い~
18:00開場/18:30開演
東京・サントリーホール

出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也

料金:S席9,800円 A席7,800円 B席6,800円(全席指定、未就学児の入場はご遠慮ください。)

お問い合わせ:チケットスペース Tel. 03-3234-9999(月~土、10:00~12:00、13:00~18:00)


<「出逢い」関連記事>

好対照 二つの新曲オーケストラ/寄稿・清川 仁
紺碧の彼方 作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー「青い海に潜めた 数字の魔法」/寄稿・清川 仁
浮島神楽 作曲家・伊左治 直氏インタビュー「我が意を得たり 共に紡ぐ伝奇」/寄稿・清川 仁


【出逢い】「紺碧の彼方」作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー『青い海に潜めた 数字の魔法』/寄稿・清川 仁


鼓童創立35周年記念コンサート 第一夜
〜出逢い〜
8月18日(木) 東京・サントリーホール

<鼓童×新日本フィルハーモニー交響楽団>
ープログラムー
伊左治直作曲 「浮島神楽」世界初演
猿谷紀郎作曲 「紺碧の彼方」世界初演
石井眞木作曲 「モノプリズム」
冨田勲作曲 「宇宙の歌」

「紺碧の彼方」作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー
青い海に潜めた 数字の魔法

文●清川 仁

Photo: Erika Ueda

冷静さの中に血の沸き立つような情熱と魂。それが、何度も演奏を聴かせていただいた僕が感じる、鼓童の素晴らしい魅力です。オーケストラとの共演ではそこに、ストイックなまでの客観性、冷静さを増幅し織り交ぜてゆけないかと考えました。おもむくままに音を大きくする、速くするということも大事ですが、同時に自分が今どういう状況にいてそう叩いているかということを、別の視点で見てみることも重要かも知れません。

Photo: Erika Ueda

新曲「紺碧の彼方」のエッセンスは、3連符と4拍のシンプルなポリリズムにあります。それが細胞のような最小単位であり、なおかつ全体を支配しています。稽古では、この混じり合わない3と4の組み合わせを何度も練習しましたが、終盤では最初と比べものにならないほど緻密になりました。

Photo: Erika Ueda

平胴太鼓3台、締太鼓2台という最小限のユニットでどこまで色んな変化が可能かということにも着目しています。

作曲家には、それぞれの作品ごとにその作品を構成する原理が必要と考えています。思いつきの鼻歌も作曲に違いないけれど、普遍性や客観性には疑問がある。ドの次にレが来る必然性、どうしても次はこの音に行かなきゃいけない、という仕組みを作ることが二十世紀以降の作曲とも言えるでしょう。

Photo: Erika Ueda

伊勢神宮の式年遷宮の曲を創らせていただいたとき、左右対称の神殿の形に倣って、5楽章それぞれを全てシンメトリーの構図にしました。今回は、紺碧の海に囲まれた佐渡の風景と、少しずつサイズが異なる3台の平胴太鼓とを、同居させる仕組みに行き着きました。3台の太鼓の胴の幅はおよそ60センチ、65センチ、70センチ。紺碧という色の由来になったラピスラズリという鉱石は、硬度が5〜5.5。その比を割り出して導いた10:11:12:13:14という数字の組み合わせで、新曲は出来ているのです。

Photo: Kenta Nakagome

タイトルが示す通り、青い海の果てに一体何があるのだろうかという思いも込めています。そうした詩的なイメージと、数学や哲学めいた仕組みとを同居させることが芸術だと考えています。

Photo: Erika Ueda

お聴きになる方には、仕組みを理解していただく必要はありませんが、太鼓が似たようなことをやっているようで少しずつ違う、というデリケートな変化を感じていただければ嬉しいです。また、紺碧の彼方のような広い空間を、オーケストラの楽器の倍音によって存分に感じていただければと思います。

Photo: Erika Ueda

猿谷紀郎 Toshiro Saruya:慶応義塾大学を卒業後、ニューヨークのジュリアード音楽院作曲科、同大学院を卒業。ミュンヘンビエンナーレBMWシアタープライズ最高作曲賞、クーセヴィツキーファウンデイションなど受賞し、1992年武満徹監修サントリーホール国際作曲委嘱シリーズにおいて初演された「Fiber of the Breath《息の綾》」で一躍その名を知られることとなった。芥川作曲賞、出光音楽賞、尾高賞、佐治敬三賞、芸術祭大賞など受賞。2014年には、第62回伊勢神宮式年遷宮の奉祝曲《交響詩「浄闇の祈り2673」》で3度目の尾髙賞を受賞した。

清川 仁 Jin Kiyokawa:読売新聞東京本社文化部記者。音楽担当記者として、邦楽ポピュラーを中心に、ジャズ、クラシック、純邦楽など幅広く取材を行う。年間、100人以上のアーティストに取材し、100本以上のコンサートに足を運ぶ。 「次世代シャンソン歌手発掘コンテスト」(日本シャンソン協会主催)審査員。


news20160818kodo35th_01-1鼓童創立35周年記念コンサート

http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

8月18日(木) 第一夜 〜出逢い〜
18:00開場/18:30開演
東京・サントリーホール

出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也

料金:S席9,800円 A席7,800円 B席6,800円(全席指定、未就学児の入場はご遠慮ください。)

お問い合わせ:チケットスペース Tel. 03-3234-9999(月〜土、10:00〜12:00、13:00〜18:00)


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好対照 二つの新曲オーケストラ/寄稿・清川 仁
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【出逢い:稽古ルポ】好対照 二つの新曲オーケストラ/寄稿・清川 仁


鼓童創立35周年記念コンサート 第一夜
〜出逢い〜
8月18日(木) 東京・サントリーホール

<鼓童×新日本フィルハーモニー交響楽団>
ープログラムー
伊左治直作曲 「浮島神楽」世界初演
猿谷紀郎作曲 「紺碧の彼方」世界初演
石井眞木作曲 「モノプリズム」
冨田勲作曲 「宇宙の歌」

Photo: Erika Ueda

8月東京・サントリーホールでの「出逢い」公演を前に、鼓童の本拠地、新潟・佐渡島にて作曲家・猿谷氏、伊左治氏、指揮者・下野氏とのリハーサルが行われました。その稽古場の様子を音楽記者の清川氏にレポートしていただきました。

好対照 二つの新曲オーケストラ

文●清川 仁

Photo: Erika Ueda

桜やスイセンの花が今を盛りと咲き誇り、春の訪れを寿ぐ祭りばやしも聞こえてきた4月上旬の佐渡島。風景が色づき、にぎわい始めたこの島に根を張る太鼓芸能集団・鼓童も、新たな芽吹きの季節を迎えていた。8月18日の「創立35周年記念コンサート第一夜〜出逢い〜」に向けた、世界初演となる新曲2曲を含む、オーケストラとの共演曲への取り組みだ。

稽古場には、現代音楽の最先端を走る作曲家、猿谷紀郎さんと伊左治直さん、将来の音楽界を担う俊英、指揮者の下野竜也さん、さらに、坂東玉三郎芸術監督の姿もあった。東京から新幹線と船を乗り継ぎ、なおかつ車で1時間あまり要する鼓童村へ、この顔ぶれを集めてしまう鼓童の行動力、組織力に恐れ入る。

筆者の目には、この稽古場で繰り広げられた1年前の光景が焼き付いている。「混沌」の稽古で、大きな平胴太鼓にメンバーが乗り、コーヒーカップのように稽古場をぐるぐる回る。玉三郎芸術監督がまさにその瞬間にひらめいたアイデアを言い放ち、鼓童メンバーがそれに生き生きと応じて次々に形にしていったのだ。

Photo: Erika UedaPhoto: Erika Ueda

しかし、今回の雰囲気は異なっていた。メンバーの身体は緊張で硬く、表情もこわばって見える。エレクトーン奏者が弾くオーケストラパートにつられてリズムを乱し、頭を抱える場面もあった。普段、奏者同士で呼吸を合わせてリズムを共有する鼓童メンバーにとっては、場を統率する指揮者も詳細に書き込まれた譜面も自由を奪う存在だっただろう。

そんな緊張状態を、テンポ抜群の進行とエネルギッシュな指導で解放させるのが、下野さんだ。「100点です! 1000点満点のね」。親指を突き上げ、いたずらっぽく微笑む。一瞬のリズムのズレも逃さず聞き分け、決して妥協を許さないが、それを明るい冗談に包んで場を和ます。

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隣には、下野さんの指示を丹念にメモするメンバーの坂本雅幸さんがいた。指揮者と作曲家がそろう貴重な場で、彼らの意図する音楽を必死にとらえようとしていた。

「自分たちは楽譜や、オーケストラに合わせることに慣れていないので、指揮者も作曲家もいない時に、僕がどのように稽古を進めていくか俯瞰して見る役割を任せていただいています。自分達が思っている以上にオーケストラと調和するのが難しいので、僕が通訳になれればと思います」

Photo: Erika Ueda

坂本さんは、下野さんから「こういうのは、太鼓の奏法としてありですか?」と問われる場面も多々あった。太鼓奏者側の窓口として、やはり指揮者にとっても良き通訳となっているのだ。同時に、下野さんの太鼓に対する敬意も感じられた。

「太鼓は、誰が叩いても音が出るでしょ。だから難しいんですよね。僕らクラシックの指揮者の中にも、打楽器奏者には平気でバチを替えろと言う人がいるんです。バイオリンに楽器を変えろなんて言わないのに、失礼な話です。誰もが音を出せるものをいかに質の高いものでやるのかは、誰でもできるものではないんです」

Photo: Erika Ueda

さて、今回、鼓童から新曲の委嘱を受けた2人の作曲家は、図らずも対極的なアプローチでこのプロジェクトに臨んだ。2曲の違いは、音にも見た目にも指導にも明白だった。音楽的にもパフォーマンスでも鼓童を伸び伸びと躍動させる伊左治さんの「浮島神楽」と、禁欲的なアプローチを導入して鼓童を新たな次元に立たせる猿谷さんの「紺碧の彼方」だ。

Photo: Erika Ueda
神秘的な燦めきで幕を開ける「紺碧の彼方」は、16分の7、16分の7、16分の5、8分の6・・・と、めまぐるしく拍子が変化。とりわけ、3連符と4拍の異なるリズムを核になって鳴らす締太鼓の2人は、音の強さのばらつきや速度のブレなどが細かく修正された。平胴太鼓を叩く住吉佑太さんは、戸惑いを感じながらも徐々に猿谷さんの狙いを理解しつつあった。

Photo: Takashi Okamoto

「太鼓らしいフレーズというか僕たちの体に染みついているリズムとは異なり、最初は面白くないなと思ったんです。でも、猿谷さんとお話しして、少しずつ理解してきました。楽しく高揚しながら演奏することで人間らしさに繋がるのではないかと思っていたけれど、冷たく研ぎ澄まされた中であっても、人としての呼吸、人間性が滲み出てくるのかもしれない」

Photo: Nobuyuki Nishimura
神楽の雰囲気から太古へ、そして宇宙へと世界が拡張していくかのよう伊左治さんの「浮島神楽」は、丸太形のスリットドラムや、三宅島式の横打ちスタイルなど見た目にもにぎやか。バットばちを両手でブンブン回しながら振り下ろす叩きっぷりながら、音量は確かに抑制されている石塚充さんも印象的だった。

Photo: Takashi Okamoto

「伊左治さんは、僕らを見た目も含めてオーケストラの異物として存在させようとして、打ち方や雰囲気も指示される。太鼓だけの練習の時はフォルテシモで叩いていたのですが、サントリーホールは響くので3分の1の音量に抑え、それでいて雰囲気は大振りしてほしいと。大変ですが、コントロールしています」

オーケストラのバックで、太鼓がそれぞれ割り当てられた7拍子や5拍子のフレーズをバラバラに進行させるパートでは、下野さんからユニークな提案があった。互いの音やフレーズの個性を際立たせるため、キャラクター設定をするというものだ。「怒りっぽい人」「メソメソした人」「勤続40年の幼稚園の先生」「いてもいなくてもいいようなお巡りさん」という個性的な人物設定の中で、「バツ5」担当の蓑輪真弥さんも絶妙に解釈した。

Photo: Erika Ueda

「ある程度人生を経験している人で、いろんな人を見ながら、あ、この人いいな、この音いいなという人にパッと乗っかっていく。またいい音が聞こえたら、そっちに乗り換える心移りが激しい人。でも一途なところもあるような」

たった2日間の稽古ながら、メンバーはオーケストラの緻密な音作りを水が染み込むようにみるみる吸収していった。見所のたっぷりの世界初演曲に加え、太鼓とオーケストラの共演の先駆けである石井眞木さんの「モノプリズム」、日本が世界に誇るシンセサイザーアーティスト、冨田勲さん作曲の「宇宙の歌」も演奏される。

下野さんは「作品群はすべて質感がたっぷりですが、決して食べ合わせが悪いわけではなく、非常に良く練られたプログラムです。素敵なサントリーホールでいっぱいの音を浴びていただきたいと思う」と語った。


IMG_4467-f2016年4月、稽古後に作曲家の猿谷さん、伊左治さん、指揮者の下野さん、エレクトーン奏者の清水さん、松田さん、芸術監督・玉三郎さんと鼓童メンバーでの記念撮影

清川 仁 Jin Kiyokawa:読売新聞東京本社文化部記者。音楽担当記者として、邦楽ポピュラーを中心に、ジャズ、クラシック、純邦楽など幅広く取材を行う。年間、100人以上のアーティストに取材し、100本以上のコンサートに足を運ぶ。 「次世代シャンソン歌手発掘コンテスト」(日本シャンソン協会主催)審査員。

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http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

8月18日(木) 第一夜 〜出逢い〜
18:00開場/18:30開演
東京・サントリーホール

出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也

料金:S席9,800円 A席7,800円 B席6,800円(全席指定、未就学児の入場はご遠慮ください。)

お問い合わせ:チケットスペース Tel. 03-3234-9999(月〜土、10:00〜12:00、13:00〜18:00)

冨田勲氏と鼓童

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作曲家・シンセサイザーアーティストの冨田勲さんが、今年5月5日にお亡くなりになりました。「宇宙の歌」は、鼓童のアルバム「ナスカ幻想」のために書き下ろされたもので、2008年にオーケストラ版として上演。今回8年ぶりに上演させていただくお願いに、「嬉しいお話です。鼓童村の『和泉邸』に一週間こもって作曲したうちの一曲です。」というご返事をいただき、当日にもご来場いただけるように準備をしていたところでした。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。


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紺碧の彼方 作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー「青い海に潜めた 数字の魔法」
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ロベール・ルパージュさん、鼓童村ご来訪!


ロベール・ルパージュさん、鼓童村ご来訪!

シルク・ドュ・ソレイユの「KA」や「TOTEM」などの作品の演出を手掛け、俳優の活動も行われているロベール・ルパージュさんが鼓童村にいらっしゃいました。

Photo: Yui Kawamoto

佐渡太鼓体験交流館にて太鼓体験

Photo: Yui Kawamoto

鼓童の演奏者やスタッフの間でもロベールさんのファンが多いのですが、なんとロベールさんご自身も長年鼓童を応援してくださっていたようです! とても素敵な出会いに感謝です。

2016年6月30日 鼓童村・食堂にて

2016年6月30日 鼓童村・食堂にて
左から河本唯、青木孝夫、ロベール・ルパージュさん(Robert Lepage)、クリスチャン・ギャロンさん(Christian Garon)、菅野敦司


7月9日、16日の2週連続(BS)D-LIFE「ジャパカル+」に鼓童(坂本雅幸、大塚勇渡、北林玲央)出演!


7月9日、16日 2週連続
(BS)D-LIFE「ジャパカル+」に鼓童出演!

Photo: Erika Ueda

7月9日(土)と16日(土)の午前9時30分より(BS)D-LIFE「ジャパカル+」に鼓童・坂本雅幸、大塚勇渡、北林玲央が出演します、是非ご覧ください。写真は番組MCのあやまんJAPANの皆さん、高橋友希さん、シューマッハさん、ゲストの皆様と。

Photo: Erika Ueda

収録の様子。太鼓演奏もあります!

(BS)D-LIFE「ジャパカル+」
放送局:D-LIFE(全国無料のBSテレビ局)http://www.dlife.jp/
放映日:2016年7月9日(土)、16日(土)午前9時30分~
「ジャパカル」番組詳細:世界中で注目を集めている日本の文化、ファッション、料理、ゲームなど、最新トレンドをお届け!流行を先取りしている雑誌や、流行の発信源である女性とコラボしながら発信する。
http://www.dlife.jp/lineup/variety/japaculplus/

D-LIFE視聴方法:
http://www.dlife.jp/howtowatch/


駐日アメリカ合衆国ケネディー大使、「若い夏」へご来場いただきました!


駐日アメリカ合衆国ケネディー大使、「若い夏」へご来場

Photo: Takashi Okamoto

2016年7月1日 浅草公会堂「若い夏」舞台上にて

先週末、浅草で行われた「若い夏」公演に駐日アメリカ合衆国ケネディ大使がご来場されました。1週間前の鼓童村ご来訪に続いてお会いするのが早くも2回!とても楽しんで頂けたようで光栄です。ご来場ありがとうございました!

撮影:岡本隆史

【関連記事】駐日アメリカ合衆国ケネディー大使、鼓童村ご来訪
http://www.kodo.or.jp/blog/pub/20160628_10111.html

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news20160701wakainatsu鼓童浅草特別公演「若い夏」
2016年7月1日(金)〜3日(日)東京都台東区 台東区立 浅草公会堂
http://www.kodo.or.jp/news/20160701asakusa_ja.html


「鼓童創立35周年記念コンサート」記者発表より


「鼓童創立35周年記念コンサート」記者発表より

Photo: Takashi Okamoto

5月31日、都内で8月開催の「鼓童創立35周年記念コンサート」に向けての記者発表を行いました。坂東玉三郎芸術監督、鼓童メンバー(船橋、石塚、坂本、住吉)4名、社長の青木が登壇し、それぞれ35周年への想いを語りましたので、コメントの一部をご紹介します。

Photo: Takashi Okamoto

◆坂東玉三郎コメント
鼓童とは2001年から一緒にお仕事をさせて頂きました。25周年の時には「アマテラス」という大きな公演で共演しました。2012年からは芸術監督を努めさせていただき、今回の35周年記念公演の演出もさせて頂きます。8月の記念公演では、第一夜「出逢い」は、オーケストラとの共演の集大成となり、第二夜「螺旋」は鼓童のみで、古典的なものと、将来に向かっての新作が回転しながら進んで行くイメージの演目に致しました。第三夜「飛翔」では、ダンサーと共演する公演となります。これまで創り上げてきた様々な作品が3日間に集約されています。また各公演で、鼓童のメンバーや、私が作曲した演目もあります。皆様にお楽しみ頂ければ幸いです。


Photo: Takashi Okamoto

◆船橋裕一郎コメント
素晴しい芸術監督のもとで35周年を迎えられるのが嬉しいです。玉三郎さんからは生き様全て、普段の食事や振る舞いなどの行動全てが舞台に繋がっているという覚悟やこだわり、突き詰め方など、演奏者としての心構えを教えて頂きました。8月の公演は、鼓童のこれまでとこれからが凝縮された内容で、太鼓、鼓童の可能性を十分にお見せ出来る3日間になると思います。太鼓の音色を無限に広げている最中ですので、より多くの皆様にご覧頂けたらと思います。

Photo: Takashi Okamoto

◆石塚充コメント
以前は、いかに力強い音を出せるかにこだわっていたのですが、玉三郎さんからは音色の違いが分かるくらいに、大きな太鼓でも「小さい音や優しい音、弱い音を大事にしなさい」と教えて頂きました。8月の公演は35周年の集大成ではありますが、これからの鼓童を担って行く20代、30代のメンバーが中心となっており、ここからスタートという意味も込めた公演でもあります。長年やってきた曲にも新しい解釈・切り口などを加え、新曲も上演しますので、これからの鼓童、太鼓の可能性を感じて頂けると思います。

Photo: Takashi Okamoto

◆坂本雅幸コメント
玉三郎さんの言葉で芸術に対する指針になる2つの言葉がありまして、「自信過剰とうぬぼれは芸の妨げになる」と「舞台上では、大きく、正しく、エレガントに」という言葉が、演奏者としての私の道しるべとなっています。8月の公演の第一夜「出逢い」は、これまでも演奏してきた石井眞木さん作曲の「モノプリズム」、冨田勲さん作曲の「宇宙の歌」に加え、世界初演となる猿谷紀郎さん作曲で拍子が複雑で挑戦しがいのある「紺碧の彼方」や、伊左治直さんとともに佐渡で音を出しながら作った動きのある、視覚的にも考えられた「浮島神楽」など、4曲全て印象が違う曲となっているので楽しんで頂ければと思います。

Photo: Takashi Okamoto

◆住吉佑太コメント
私は2012年に玉三郎さんが芸術監督になられた年に正メンバーになりまして、研修生の時から様々な価値観や技術を教えて頂き、当たり前のように考えていた固定概念に対して改めて考えるきっかけを頂きました。8月の公演でも作曲をさせて頂いたのですが、作曲する際に太鼓打ちでは思いつかないようなアイディアを頂きながら、固定概念に捕らわれない曲づくりが出来たと思いますので楽しんで頂ければと思います。

Photo: Takashi Okamoto

◆青木孝夫コメント
30年前にサントリーホールのオープニングシリーズで石井眞木さん作曲の「モノプリズム」という演目を小澤征爾さんの指揮で演奏させて頂き、今年鼓童創立35周年の記念の年にまたサントリーホールで公演させて頂ける事がとても感慨深いです。3日間それぞれ異なった演目を上演させて頂きます。これからも柔軟性と多様性を持って新しいものを創り上げていきたいと思います。

撮影:岡本隆史

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多くのメディアに取り上げられました

◆新聞
・読売新聞水曜夕刊「Pop Style」
・スポーツニッポン
・東京中日スポーツ
・デイリースポーツ
・日刊スポーツ
・サンケイスポーツ
・スポーツ報知
・公明新聞
ほか

◆雑誌
・「シアターガイド」8月号:7月2日発売
・「演劇界」:7月5日掲載
・「家庭画報」8月号
・「ミセス」
・「音楽現代」
ほか

◆WEBサイト
OZmall:熱い男たちの大地を揺らす音色に感動!太鼓芸能集団「鼓童」35周年記念コンサート開催http://www.ozmall.co.jp/oznews/06204/

デイリースポーツ:玉三郎「鼓童」演出へのこだわり
http://www.daily.co.jp/newsflash/gossip/2016/05/30/0009135193.shtml

デイリースポーツ②:坂東玉三郎「鼓童」演出にこだわり
http://www.daily.co.jp/gossip/2016/05/31/0009136220.shtml

テレ朝芸能特報:玉三郎&鼓童が35周年公演!
http://www.tv-asahi.co.jp/smt/f/geinou_tokuho/hot/?id=hot_20160530_100&

映画.com:坂東玉三郎、芸術監督務める「鼓童」35周年公演に自信「連綿と続けてきたもの詰まっている」
http://eiga.com/news/20160530/17/

日刊スポーツ:太鼓集団「鼓童」が35周年公演、演出は坂東玉三郎
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1655603.html

SPICE:坂東玉三郎が芸術監督を務める「鼓童」の35周年記念コンサート、今夏開幕
http://spice.eplus.jp/articles/58815

サンケイスポーツ:鼓童、35周年公演で集大成!坂東玉三郎も激励「素敵な太鼓を」
http://www.sanspo.com/geino/news/20160531/geo16053105010011-n1.html

スポーツニッポン:玉三郎が演出“太鼓判”公演「大太鼓抜きの歌舞伎は考えられない」
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/05/31/kiji/K20160531012691620.html

ローチケHMV 「鼓童創立35周年記念コンサート コメント動画が到着!」

news20160818kodo35th鼓童創立35周年記念コンサート
http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

2016年8月18日(木)、19日(金)、20日(土)サントリーホール
8月18日(木) 第一夜 〜出逢い〜
出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団/指揮:下野竜也
8月19日(金) 第二夜 〜螺旋〜
演出:坂東玉三郎/出演:鼓童
8月20日(土) 第三夜 〜飛翔〜
演出:坂東玉三郎/出演:鼓童、ゲスト:BLUE TOKYO、DAZZLE

プレイガイド
・チケットスペース Tel. 03-3234-9999(オペレーター) WEB「チケットスペースオンライン」検索
・サントリーホールチケットセンター Tel. 0570-55-0017
・チケットぴあ Tel. 0570-02-9999 [Pコード:286-898] http://pia.jp/
・イープラスhttp://eplus.jp/
・ローソンチケット Tel. 0570-000-407(オペレーター 10:00〜20:00)Tel. 0570-084-003 [Lコード:30118] http://l-tike.com/
・セブンチケット http://7ticket.jp/ 全国のセブン-イレブン店頭マルチコピー機
・東京文化会館チケットサービス Tel. 03-5685-0650


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