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Tag ‘石塚充’

「道」ツアー千穐楽/松田菜瑠美


「道」ツアー千穐楽

Photo: Maiko Miyagawa

鼓童特別公演2017「道」、無事に千穐楽を迎えました。東京と大阪での短いツアーでしたが、全国からお客様にお越しいただきました。客席からの期待に応えるように渾身で打ち込む演奏者の姿に、私も時に鳥肌を立てながら見守っていました。

Photo: Maiko MiyagawaPhoto: Maiko Miyagawa
ベテランの演奏者とのツアー、長年大切にしてきた演目、半纏の衣装、どれも少し久しぶりで刺激を感じながら、その良さをメンバーそれぞれが再発見しています。

Photo: Maiko Miyagawa

Photo: Maiko Miyagawa

2012年から昨年の創立35周年までの5年間、芸術監督として坂東玉三郎さんに導いていただき、大きな挑戦に出て学んだこと、そして自分達の基盤に立ち返って見えたこと、この道のりがなければ分からなかったことだと思います。

Photo: Maiko Miyagawa

Photo: Maiko Miyagawa

旅先での新しい出会いや再会は心から嬉しく、発足から今に続く年月とご縁を感じております。ロビーで声をかけてくださった皆様、ご来場頂いた皆様、ありがとうございました。

Photo: Kazuki Imagai

最後に、今回お配りした公演プログラムに向けて、演出の石塚充が書いた文をご紹介します。

演出・石塚充コメント(公演プログラムより)

昨年鼓童は結成35周年を迎え、また新たな道のりへと踏み出そうとしています。その為にもまずはこの「道」公演を通して、自分たちの「現在地」を確認する必要があると感じました。

いま歩いているのはどのあたりなのか。いまできることは何なのか。足りないことは何なのか。いまこの手に握りしめているものは何なのか。これから何を掴み、あるいは手放せばいいのか。

35年の集大成としてではなく、いまこの瞬間を歩いている自分たちひとりひとりの言葉として語る、ということを大切にここまで稽古を重ねてきました。

Photo: Maiko MiyagawaPhoto: Maiko Miyagawa

長年演奏し続けている演目から新たに産声をあげた新曲まで、出演者ひとりひとりの言葉で、身体で、いまこの瞬間の鼓童の精一杯をお届け致します。

お楽しみいただければ幸いです。

Photo: Takashi Okamoto

演出:石塚充


【ラジオ出演】3月23日16:30ごろ〜ABCラジオに鼓童出演&生演奏!


3月23日ABCラジオに鼓童出演&生演奏!

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3月23日16:30ごろ〜ABCラジオ「武田和歌子のぴたっと」に、鼓童から石塚充、小松崎正吾が生出演、生演奏いたします。武田和歌子さんの番組への鼓童出演は3回目となります!

放送地域の皆様、お聞き逃しなく!

スクリーンショット 2017-03-22 23.39.35

ABCラジオ「武田和歌子のぴたっと」(月-金15:00〜18:00)
【出演時間】2017年3月23日(木・祝)16:30ごろ鼓童生出演予定
【MC】武田和歌子(ABCアナウンサー)、桂吉弥(木曜日パートナー)
【鼓童出演者】石塚充、小松崎正吾
【番組HP】http://abc1008.com/pitatto/

鼓童特別公演2017「道」(日本国内)

【ラジオ出演しました】3月23日16:30ごろ〜ABCラジオ「武田和歌子のぴたっと」に、鼓童から石塚充、小松崎正吾が生出演、生演奏しました。お聞きいただいたみなさま、有難うございました。明日からの「道」大阪公演へのご来場、お待ちしております…

鼓童 Kodoさんの投稿 2017年3月23日


「道」新曲紹介その4 ~かにmoon~/石塚充


「道」新曲紹介その4
〜かにmoon〜

とても静かな、真夜中の佐渡の海辺。
聞こえてくるのは波の音ばかり…と思いきや、
よーく耳をすますと、そこかしこで小さな小さな大騒ぎが…。

Photo: Narumi Matsuda

さてさて何が起きているのでしょう?
みなさんもそっと耳を傾けてみてください!

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演出

石塚充

出演(予定)

山口幹文齊藤栄一見留知弘船橋裕一郎石塚充中込健太前田剛史蓑輪真弥小松崎正吾三浦康暉三浦友恵米山水木


「道」新曲紹介その3 ~黄ポポ~/石塚充


「道」新曲紹介その3
ポポ~

紫雲しうん」とともにこちらも、真弥が今回のためにつくってくれた新曲。真弥らしい強めの太鼓アンサンブルに明るく軽快なメロディーが乗っかった、ハッピーな曲です。

Photo: Narumi Matsuda

謎の言葉「黄ポポ」とは何でしょうか?

この曲を聴いて、どんな景色が見えてくるでしょうか?? ぜひ劇場で体感して下さい!

mitsuruishizuka_s

演出

石塚充

出演(予定)

山口幹文齊藤栄一見留知弘船橋裕一郎石塚充中込健太前田剛史蓑輪真弥小松崎正吾三浦康暉三浦友恵米山水木


「道」新曲紹介その2 ~群青~/石塚充


「道」新曲紹介その2
群青ぐんじょう

厳密には新曲ではないのですが、アース・セレブレーションで2度ほど演奏したのみで、佐渡島外では初披露となります。

Photo: Narumi Matsuda

目の前に広がる、群青に輝く夏の海。海をめがけて駆け出していく気分の高揚と疾走感をイメージした曲です。

3月なのに、真夏の佐渡を味わえるお得感! お楽しみに!

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演出

石塚充

出演(予定)

山口幹文齊藤栄一見留知弘船橋裕一郎石塚充中込健太前田剛史蓑輪真弥小松崎正吾三浦康暉三浦友恵米山水木

【鼓童の稽古場】只今、夜稽古タイムです!基礎稽古、打ち込み、作曲など人それぞれ。9時間稽古後も元気にまだまだ太鼓を打つようです。

鼓童 Kodoさんの投稿 2017年2月24日


「道」新曲紹介その1~紫雲~/石塚充


「道」新曲紹介その1
紫雲しうん

今回の「道」では、鼓童の定番演目をがっつり演奏する他に、いまのメンバーたちの中から生まれてきた新曲をいくつか発表する予定です。

Photo: Mariko Sumiyoshi

紫雲しうんは、小柄なパワーヒッター蓑輪真弥が作曲。これまでの鼓童に根強くあった優しく華やかな女性像を突き抜けて、凛々しく力強く、気力と身体力を振り絞った女性の太鼓を聴いてみたいなと相談したところから始まりました。

“ファイター蓑輪”が己の細胞をフル稼動して作ってくれ、それを真弥水木友恵の、期待の若手女性メンバー3名が全力で打ち込んでいきます。どんな作品に仕上がっているのかは観てのお楽しみ!

乞うご期待!

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演出

石塚充

出演(予定)

山口幹文齊藤栄一見留知弘船橋裕一郎石塚充中込健太前田剛史蓑輪真弥小松崎正吾三浦康暉三浦友恵米山水木


「坂東玉三郎×鼓童特別公演 幽玄」製作発表


「坂東玉三郎×鼓童特別公演 幽玄」製作発表

Photo: Takashi Okamoto

本日、都内にて「坂東玉三郎×鼓童特別公演 幽玄」製作発表を行い、坂東玉三郎さん、鼓童メンバーの石塚充、中込健太、北前船代表取締役社長の青木が登壇いたしました。会見でのコメントを写真とともにお届けいたします。

坂東玉三郎

Photo: Takashi Okamoto鼓童とは、2006年の「アマテラス」で共演し、その後、2012年から4、5作と様々な作品を創らせて頂きました。そして2017年「アマテラス」に続く共演作として「幽玄」を上演いたします。

これまで、色々な作品を創ってまいりましたが、他の作品のお稽古の中で、ここにいる石塚充さん、中込健太さん、そして本日はいらっしゃいませんが、代表の船橋裕一郎さんたちと、「あなたたちはどんな作品が創りたいの?」という話になったんです。そうしましたら、「“日本のもの”を創りたい」と答えたんです。ただ、日本の様式を創るのはとても大変難しいという話をしました。もちろん和太鼓は日本のものであります。和太鼓の世界であれば、それなりのものができますが、日本の様式をもった美しさのある舞台を創るのは、難しいと思っているからです。しかし、それから色々と考えまして一昨年から“日本のもの”に向かって創りはじめました。

 

“日本のもの”というと、これまでもやってきたじゃないかと言われそうですが、極端に日本的なものというと世阿弥の世界かなと思います。歌舞伎は、世阿弥よりも(年月が)もっと下りますからね。太鼓というのは太古からあります。日本の独特の芸能の世界、舞台芸術というと、「能楽」を題材にした方がいいと思いました。

私が歌舞伎的なものやればそれで済むのでしょうが、鼓童とやるからにはあえて「幽玄」という世界。鼓童(の作品)とも歌舞伎とも違った世界に行きたいと思います。

Photo: Takashi Okamoto

─内容について

第一幕で「羽衣」の物語をやらせて頂きます。第二幕は、はじめ「石橋」だけと考えていましたが、やはり私が歌舞伎の世界からやってきたということもあり、「道成寺」の世界です。私が着ております衣装あるいは様式は、歌舞伎的な雰囲気を持ち込みたいと考えています。

─玉三郎さんの演じる役は?

「羽衣」では、天女を演じます。「道成寺」では、花子を演じます。「石橋」は、獅子として登場します。他にも天女のワキツレ等、花柳流の家元さんやお弟子さん、そして鼓童のメンバーにも出て頂く予定です。

Photo: Takashi Okamoto

─稽古で苦労している点は?

今回鼓童のメンバーは能楽の楽器を用いて、演奏する訳ではございません。その様式をもらって、翻訳していくわけです。ですので、その点は大変です。

歌舞伎にも能楽にも決まり事はあります。しかし、観阿弥、世阿弥の頃は違って、もっと自由だったと思うのです。ただ、決まり事を壊すだけ、自由で楽しければよいというものでもありません。その線引きをしていくのが稽古です。鼓童は、ちゃんとお稽古をしている人たちです。あまりにも芸能の幅が広くなってしまったために修行できる時間と場所が限られている。でも、佐渡というところに入って、ずっと稽古をし、自分たちを理解していくことができる。

この鼓童という素材でどれだけお客様が楽しんで頂けるものをできるか、というのが私の課題です。

Photo: Takashi Okamoto

石塚充(鼓童)

こんなにも早く、玉三郎さんと舞台の上でご一緒させて頂く機会を与えて頂き、さらにオーチャードホールをはじめ、全国各地の名だたる劇場で、上演をさせていただくことは、この上ない喜びであり、そして、身が引き締まる思いです。

今回は日本の伝統芸能を題材にしているということで、これまでよりも敷居が高く、難易度の高く、大変難しい作品にはなるかと思いますが、それをお客様にはシンプルに楽しんで頂けるように、皆さまの記憶に残るような素晴しい作品になるよう精一杯務めさせて頂きます。

能楽の稽古は、まず正座が大変ですね(笑) また、普段鼓童の作品は人間が生活をしている様や呼吸が通った音楽を演奏しますが、能楽は「人間じゃないところに行く」という印象です。先生方の呼吸等を見ていると、人間であるということを超えて行くという印象があります。

玉三郎さんがいらっしゃる前の鼓童は、しきたりのようなものがありました。そこへ玉三郎さんがいらして、何故そうしなきゃならないのかという疑問を投げかけられるんです。否定をするでも肯定をするでもなく、いつもニュートラルな状態で、発想として自分たちには無いことをおっしゃるんです。おかげで、今の鼓童は風通しがよくなり、明るく自由になったと思います。

Photo: Takashi Okamoto

中込健太(鼓童)

今まさに能楽の勉強を皆でしていますが、同じ太鼓でもこんなにも表現が違うものなのかと難しさを感じているところです。いつも玉三郎さんとご一緒するとき、玉三郎さんは今まで気付かなかったような太鼓の響きを気付かせてくださいます。今回もどんな新しい太鼓の響きが発見出来るのか楽しみです。

Photo: Takashi Okamoto

青木孝夫(株式会社北前船 代表取締役社長)

鼓童は2000年に坂東玉三郎さんと出会い、創立25周年の2006年に玉三郎さんとの共演の「アマテラス」という神話を題材にした作品を上演させて頂きました。玉三郎さんと共演ということは鼓童にとっては、夢のようなお話だったのですが、また今年このように実現することが出来ました。この17年間の玉三郎さんのご指導により鼓童が成長した姿をお見せできると思います。

テーマが「幽玄」ということなので、前作と比べ、さらに鼓童のメンバーたちに表現の緻密さと深さを求められることになると思います。一昨年から玉三郎さんのご指導に加え、主に能楽の先生方、花柳流の家元にもお力添えをいただき、とても充実した稽古をさせて頂いています。

世阿弥が言っている「珍しきが花」というように、鼓童の演奏によって、天地をつなぎ、宇宙にも届くような演奏をし、今までにないような作品が生み出せればと思っています。

Photo: Takashi Okamoto

撮影:岡本隆史

会見関連記事

[Astage]「アマテラス(2006年初演)」に続き共演第二弾!坂東玉三郎×鼓童 特別公演 幽玄〜製作発表会見
http://www.astage-ent.com/stage-musical/kodo-yugen-2.html

[RanRanEntertainment]坂東玉三郎、「鼓童」との共演第二弾『幽玄』の製作を発表!
http://ranran-entame.com/eventrepo/44730.html

[エントレ]坂東玉三郎「鼓童でも歌舞伎でもない、幽玄を作る」/「幽玄」製作発表レポート
http://entre-news.jp/2017/02/36204.html

[シブヤ経済新聞]渋谷Bunkamuraで坂東玉三郎さんと太鼓集団「鼓童」再共演へ 能の演目題材に /東京
http://www.shibukei.com/headline/12107/

[ステージナタリー]渋谷Bunkamuraで坂東玉三郎さんと太鼓集団「鼓童」再共演へ 能の演目題材に /東京
http://natalie.mu/stage/news/219169

[スポーツ報知]坂東玉三郎、太鼓集団「鼓童」と「アマテラス」以来2度目共演
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20170201-OHT1T50138.html

[スポニチアネックス]坂東玉三郎 太鼓集団「鼓童」と共演再び「魅せる舞台にしたい」
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/02/02/kiji/20170201s00041000328000c.html

[デイリースポーツ]坂東玉三郎、鼓童と2度目の共演「僕にとってもトライだった」
https://www.daily.co.jp/gossip/2017/02/01/0009878311.shtml

[テレ朝news]玉三郎、和太鼓集団と2度目共演!能を表現
http://news.tv-asahi.co.jp/news_geinou/articles/hot_20170201_160.html

[演劇キック]坂東玉三郎×鼓童の共演第二弾 『幽玄』!製作発表レポート
http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52018710.html

[歌舞伎美人]玉三郎が演出・出演『幽玄』を語る
http://www.kabuki-bito.jp/news/3842

[東京中日スポーツ]玉三郎×鼓童 再コラボ 花柳流お家騒動「影響なし」
http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/entertainment/news/CK2017020202000149.html

[日刊スポーツ]坂東玉三郎、太鼓集団・鼓童と再共演 能演目を表現
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1772990.html

[サンケイスポーツ]坂東玉三郎が密着カメラに苦笑「稽古はしにくいです。言いたいことが言えない」

http://www.sanspo.com/geino/news/20170201/geo17020119440039-n1.html


「螺旋を描いて進む未来」鼓童・船橋裕一郎×石塚充×坂本雅幸×住吉佑太 座談会


鼓童・船橋裕一郎×石塚充×坂本雅幸×住吉佑太 座談会
螺旋を描いて進む未来

聞き手◎伊達なつめ 写真◎岡本隆史

Photo: Takashi Okamoto

船橋 僕と(石塚)充の場合は、ちょうど準メンバーになった頃に、初めて玉三郎さんが佐渡にいらしたんです。

石塚充 Photo: Takashi Okamoto

石塚 その頃はまだ、そんなすごい方がいらっしゃると聞いても、自分のことで精いっぱいで、ことの重みをよくわかっていなかったんですけど、そんな状況下で、玉三郎さんから大太鼓を打つように言われたんです。当時の鼓童では「このパートはこの人」というのがほぼ決まっていて、特に大太鼓は固定メンバーが2人いたので、若手がやるという発想自体ありませんでした。だから先輩たちの反応も「えっ、おまえなの?」という感じ。毎日全体の稽古が終わった後、玉三郎さんと先輩たちがズラーッと居並ぶ中で僕と小田洋介の2人が大太鼓の裏打ちの稽古をする、というのが一ヶ月続きました。体力的にもきついですし、まだ右も左も分からない分際で、全員の目に曝されて大太鼓を打つ毎日というのは、ほんとにもう大変でした。

船橋 苦しかったよね(笑)。

石塚 ただ、そうやって叩き込まれたせいで、鼓童の先輩に教わっただけでは気付かないことにいろいろ気付くことができて、自分の中にも何か芽生えたものがある気がしました。玉三郎さんは、それまでの鼓童ではあり得なかった身体の使い方や考え方を示されるので、僕らよりもむしろ先輩たちの間で「そんな教え方あり!?」という戸惑いが強くなり、2、3年は重苦しい状態が続いたんですけど、『アマテラス』(’06年初演)のころには、もうすっかりいい雰囲気になっていましたね。

坂本雅幸 Photo: Takashi Okamoto

坂本 僕は『アマテラス』の稽古時は準メンバーだったんですが、佐渡の民俗芸能「鬼太鼓」を取り入れた場面で、玉三郎さんにその踊り手をやるように言われて、ものすごく丁寧に教えていただきました。研修生の時に、研修所がある柿野浦という集落に伝わる鬼太鼓を、土地の方に教わっていたのですが、玉三郎さんは「こうした方がいい」と、どんどん動きを変えていくんです。最初は、教わったものを壊す気がして抵抗があったんですけど、言われた通りにしてみると、身体の軸がきれいに見えたり、腕の広がりを大きく見せられたりと、元々あったものを、舞台で演じるためによりよくしていただいている、ということがわかって、さすがだと思いました。あの時教わった身体の軸の保ち方は、今でも常に意識するようにしています。

住吉 僕は、玉三郎さんが鼓童の芸術監督に就任した’12年に準メンバーになったんですけど、研修生の頃から、玉三郎さんは研修所に稽古を付けに来てくださっていたんです。

船橋 その年は、たまたま作品創りに取りかかる時期に、メンバーの多くが出払っていたんですね。でも(住吉)佑太たちの年の研修生は優秀な人材が揃っていたので、玉三郎さんのおっしゃることに対応できたんです。

住吉佑太 Photo: Takashi Okamoto

住吉 僕たち研修生は、最初は稽古を見学させていただくということで正座して並んで見ていたんですが、休憩時間に玉三郎さんがテクテク歩いていらして、「ちょっと見よう見まねでいいからやってみなさい」とおっしゃるので、やってみたら「ああ、意外とできるね…」と言われ、「(よっ)しゃぁ、ここでぶちかましたる!」って気合いが入りまして(笑)。実際には、ほとんどできてなかったはずなんですけど、気概を感じていただけたのかなと。

船橋裕一郎 Photo: Takashi Okamoto船橋 そうやって玉三郎さんは、特に若手にどんどん挑戦させていくので、先輩たちはそれを見て焦りながらも、自分の足元を見つめ直す、という感じでしたね。今から思えば、僕たちが入った頃は、鼓童には閉塞感があって、そこに外部から玉三郎さんがやって来たことで、物事が先に進み始めたんです。ただ、キャリアのある先輩たちにとっては、自分たちが築き上げてきたものを否定されたように感じたところもあると思います。僕自身は、(石塚)充やその下の世代が抜擢され活躍するのを、後ろから見ていた方なので、焦りはあったし、まあ今もあるんですけど、自分はパッと要求に応えられるタイプではないし、人とうち解けるのにも時間がかかるので、自分のペースで、一歩一歩やるしかない、と思っていました。精神的にはきつかったですけど、そのうちだんだんと、玉三郎さんに声を掛けられるようになりました。

Photo: Takashi Okamoto

現在も、若いメンバーの中には抜擢される者と、そうでない者がいるので、不安を抱くことはあると思います。でも、まじめに頑張っている人間のことは、玉三郎さんはちゃんと見ていて、何らかの形で、いいところを見出してくださるので、信じて努力を続けてほしいと思います。玉三郎さんのこういう指導者としての面も、とても勉強になります。

Photo: Takashi Okamoto

坂本 僕たちの世代以降は、わりと戸惑うこともなく、羽根を伸ばして自由にやらせてもらっていますけど、

住吉 いやぁ、『ワン・アース・ツアー~伝説』(’12)の時の逆風はすごかったですよ(笑)。

船橋 あれも大きな転換期でしたね。

住吉 終演後のアンケートが「こんなものを観に来たんじゃない!」みたいな感想ばっかりで、激しく凹みましたけど、その後アメリカでもツアーがあって、一年後にまた日本で上演した際には、ガラッと評価が変わったんですよね。

石塚 僕たちの世代は、それ以前から『アマテラス』みたいに演劇的な世界や、『打男 DADAN』のように振り切った大胆な作品で、「こんなおもしろい世界があるんだな」ということを経験してきていたんです。むしろ、けっこう長い時間をかけて、段階を踏んで変化してきた自覚があったので、『伝説』についても、別に驚かなかった。まぁ最初のうちの何年かは、ちょっと大変かもしれないけど、そのうち落ち着くだろうと、漠然と思っていましたね。

住吉佑太 Photo: Takashi Okamoto

住吉 心強かったですよ。僕たちの感覚では『伝説』では、「えっ、こんなことすんの!?」って躊躇するようなこともあったんですけど、充さんは「はい、じゃ、やりましょか」って淡々とやっていた。僕たちに「玉三郎さんがおっしゃってるのはこういうことだよ」ってわかりやすく説明してくださって、いわゆる従来の鼓童的なことと、玉三郎さんのおっしゃることの中間地点にいてくださる感じで、とても有難かったです。

坂本雅幸 Photo: Takashi Okamoto坂本 いわゆる「昔ながらの鼓童」が観たいという方は多いですし、その一方で新たな挑戦を評価してくださるお客様も、もちろんいらっしゃる。そして回数を重ねるごとに、だんだんと、挑戦と変化を楽しみに観に来てくださるお客様が、多くなってきていると感じます。玉三郎さん無しには不可能だったこの大変革を活かして、これからも自由に、いろいろなことに挑戦していきたいですね。

船橋 僕は、こうやって先を行ってくれるメンバーには、どんどん先に行ってほしいし、そうではない、別のおもしろい面を持っているメンバーには、その個性を活かした、別の表現を目指してほしい。将来も鼓童がそういう多様なグループとしてあり続けられるよう、その通過点の一人となることを目指したいと思います。

船橋裕一郎 Photo: Takashi Okamoto

ー鼓童創立35周年記念コンサートパンフレットより

rasen-web

公演紹介
http://www.kodo.or.jp/news/20160900oet_ja.html

全国ツアースケジュール
http://www.kodo.or.jp/oet/index_ja.html#schedule26a

12月14日(水)福岡公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161214a_ja.html

12月17日、18日 大阪公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161217-18a_ja.html

12月21日〜25日 東京・文京公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161221-25a_ja.html


【出逢い】「浮島神楽」作曲家・伊左治 直氏インタビュー『我が意を得たり 共に紡ぐ伝奇』/寄稿・清川 仁


鼓童創立35周年記念コンサート 第一夜
~出逢い~
8月18日(木) 東京・サントリーホール

<鼓童×新日本フィルハーモニー交響楽団>
ープログラムー
伊左治直作曲 「浮島神楽」世界初演
猿谷紀郎作曲 「紺碧の彼方」世界初演
石井眞木作曲 「モノプリズム」
冨田勲作曲 「宇宙の歌」

「浮島神楽」作曲家・伊左治 直氏インタビュー
我が意を得たり 共に紡ぐ伝奇

文●清川 仁

最初、作曲の話があった時の高揚感は、ちょっと格別でした。鼓童のCDはずっと聴いてきたので、本当にうれしかったですね。僕はブラジル音楽が好きなのですが、ブラジルにはサンバがあるけど日本には鼓童があるぞ、という思いも抱いていました。

Photo: Erika Ueda

今回は、まずワークショップのようなことをやりまして、自分の曲のサンプルをどんな風に叩いてくれるのか、色々な楽器を叩いてもらって音を確かめてみました。そして、練習をしながら、鼓童のみなさんと一緒に曲を作り上げていきました。僕の要求に対して、返ってくる反応が素晴らしいんですね。「こうやると、こう音色が変わります」とか、僕じゃ分からない楽器のことを教えてくれる。

Photo: Erika Ueda

鼓童は、和太鼓だけじゃなくてプラスアルファで色々な楽器を取り入れているので、今回はスリットドラムを入れてみました。また、僕は音だけでなく身ぶりや振る舞いにも興味があるので、音の良さだけじゃなくて、叩くフォームを含めて楽器を選択しました。オーケストラだけの時も身ぶりを取り入れたり、普段使われない打楽器を使ったり、ちょっとしたパフォーマンスも取り入れます。それ以上に鼓童は徹底しますよね。玉三郎さんが演技指導までして下さるんですから。

Photo: Takashi Okamoto

新潟県佐渡市・乙和池。中央、奥に浮かぶのが巨大な浮島。

僕は民俗学や伝奇伝承に興味があり、「浮島神楽」というタイトルをつけました。佐渡島には、巨大な浮島をもつ乙和池という場所がある。神聖で水がきれいだけど、使ってはいけないというタブーがある不思議な場所です。社会の便利さや不便さを問い直すようなテーマも感じるんです。また、僕が好きな民俗学者、網野善彦さんが唱えるように日本地図をひっくり返してみると、日本海が大きな湖のようになっていて、佐渡自体が日本海という湖の中にある大きな浮島に見えるんです。世界各地で演奏している鼓童自体が、南米やヨーロッパに現れる浮島のようなイメージにも通じているのではないかと思いました。

途中、密室のコンサートホールに穴を空けるような仕掛けも施します。動き出した音楽と、それと違う時間軸が入り込む不思議な状況を作ってみたい。精霊のようなものが入り込むイメージです。神楽のコミカルな要素も取り入れ、広い意味での神楽の本質を楽しんでもらえればと思います。

Photo: Erika Ueda

伊左治 直 Sunao Isaji1968年生まれ。日本音楽コンクール第1位、日本現代音楽協会作曲新人賞、芥川作曲賞、出光音楽賞を受賞。現代音楽系の作曲、パフォーマンスや即興演奏から、ブラジル音楽や昭和歌謡曲などのライブまで、様々な活動を展開している。2005年と2012年にはサントリー芸術財団による個展を開催。伝統楽器のための活動として、2013年に雅楽作品《紫御殿物語》、2014年に声明・謡・民謡・ポップスの共演による《ユメノ湯巡リ声ノ道行》などがある。

清川 仁 Jin Kiyokawa読売新聞東京本社文化部記者。音楽担当記者として、邦楽ポピュラーを中心に、ジャズ、クラシック、純邦楽など幅広く取材を行う。年間、100人以上のアーティストに取材し、100本以上のコンサートに足を運ぶ。 「次世代シャンソン歌手発掘コンテスト」(日本シャンソン協会主催)審査員。


news20160818kodo35th_01-1鼓童創立35周年記念コンサート

http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

8月18日(木) 第一夜 ~出逢い~
18:00開場/18:30開演
東京・サントリーホール

出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也

料金:S席9,800円 A席7,800円 B席6,800円(全席指定、未就学児の入場はご遠慮ください。)

お問い合わせ:チケットスペース Tel. 03-3234-9999(月~土、10:00~12:00、13:00~18:00)


<「出逢い」関連記事>

好対照 二つの新曲オーケストラ/寄稿・清川 仁
紺碧の彼方 作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー「青い海に潜めた 数字の魔法」/寄稿・清川 仁
浮島神楽 作曲家・伊左治 直氏インタビュー「我が意を得たり 共に紡ぐ伝奇」/寄稿・清川 仁


【出逢い】「紺碧の彼方」作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー『青い海に潜めた 数字の魔法』/寄稿・清川 仁


鼓童創立35周年記念コンサート 第一夜
〜出逢い〜
8月18日(木) 東京・サントリーホール

<鼓童×新日本フィルハーモニー交響楽団>
ープログラムー
伊左治直作曲 「浮島神楽」世界初演
猿谷紀郎作曲 「紺碧の彼方」世界初演
石井眞木作曲 「モノプリズム」
冨田勲作曲 「宇宙の歌」

「紺碧の彼方」作曲家・猿谷紀郎氏インタビュー
青い海に潜めた 数字の魔法

文●清川 仁

Photo: Erika Ueda

冷静さの中に血の沸き立つような情熱と魂。それが、何度も演奏を聴かせていただいた僕が感じる、鼓童の素晴らしい魅力です。オーケストラとの共演ではそこに、ストイックなまでの客観性、冷静さを増幅し織り交ぜてゆけないかと考えました。おもむくままに音を大きくする、速くするということも大事ですが、同時に自分が今どういう状況にいてそう叩いているかということを、別の視点で見てみることも重要かも知れません。

Photo: Erika Ueda

新曲「紺碧の彼方」のエッセンスは、3連符と4拍のシンプルなポリリズムにあります。それが細胞のような最小単位であり、なおかつ全体を支配しています。稽古では、この混じり合わない3と4の組み合わせを何度も練習しましたが、終盤では最初と比べものにならないほど緻密になりました。

Photo: Erika Ueda

平胴太鼓3台、締太鼓2台という最小限のユニットでどこまで色んな変化が可能かということにも着目しています。

作曲家には、それぞれの作品ごとにその作品を構成する原理が必要と考えています。思いつきの鼻歌も作曲に違いないけれど、普遍性や客観性には疑問がある。ドの次にレが来る必然性、どうしても次はこの音に行かなきゃいけない、という仕組みを作ることが二十世紀以降の作曲とも言えるでしょう。

Photo: Erika Ueda

伊勢神宮の式年遷宮の曲を創らせていただいたとき、左右対称の神殿の形に倣って、5楽章それぞれを全てシンメトリーの構図にしました。今回は、紺碧の海に囲まれた佐渡の風景と、少しずつサイズが異なる3台の平胴太鼓とを、同居させる仕組みに行き着きました。3台の太鼓の胴の幅はおよそ60センチ、65センチ、70センチ。紺碧という色の由来になったラピスラズリという鉱石は、硬度が5〜5.5。その比を割り出して導いた10:11:12:13:14という数字の組み合わせで、新曲は出来ているのです。

Photo: Kenta Nakagome

タイトルが示す通り、青い海の果てに一体何があるのだろうかという思いも込めています。そうした詩的なイメージと、数学や哲学めいた仕組みとを同居させることが芸術だと考えています。

Photo: Erika Ueda

お聴きになる方には、仕組みを理解していただく必要はありませんが、太鼓が似たようなことをやっているようで少しずつ違う、というデリケートな変化を感じていただければ嬉しいです。また、紺碧の彼方のような広い空間を、オーケストラの楽器の倍音によって存分に感じていただければと思います。

Photo: Erika Ueda

猿谷紀郎 Toshiro Saruya:慶応義塾大学を卒業後、ニューヨークのジュリアード音楽院作曲科、同大学院を卒業。ミュンヘンビエンナーレBMWシアタープライズ最高作曲賞、クーセヴィツキーファウンデイションなど受賞し、1992年武満徹監修サントリーホール国際作曲委嘱シリーズにおいて初演された「Fiber of the Breath《息の綾》」で一躍その名を知られることとなった。芥川作曲賞、出光音楽賞、尾高賞、佐治敬三賞、芸術祭大賞など受賞。2014年には、第62回伊勢神宮式年遷宮の奉祝曲《交響詩「浄闇の祈り2673」》で3度目の尾髙賞を受賞した。

清川 仁 Jin Kiyokawa:読売新聞東京本社文化部記者。音楽担当記者として、邦楽ポピュラーを中心に、ジャズ、クラシック、純邦楽など幅広く取材を行う。年間、100人以上のアーティストに取材し、100本以上のコンサートに足を運ぶ。 「次世代シャンソン歌手発掘コンテスト」(日本シャンソン協会主催)審査員。


news20160818kodo35th_01-1鼓童創立35周年記念コンサート

http://www.kodo.or.jp/news/20150917kodo35th_ja.html

8月18日(木) 第一夜 〜出逢い〜
18:00開場/18:30開演
東京・サントリーホール

出演:鼓童、新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也

料金:S席9,800円 A席7,800円 B席6,800円(全席指定、未就学児の入場はご遠慮ください。)

お問い合わせ:チケットスペース Tel. 03-3234-9999(月〜土、10:00〜12:00、13:00〜18:00)


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