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弾け続ける「玉三郎・鼓童」 ─鼓童と玉三郎の十六年─/文・伊達なつめ
弾け続ける「玉三郎・鼓童」
─鼓童と玉三郎の十六年─
文●伊達なつめ
ー鼓童創立35周年記念コンサートパンフレットより
玉三郎と鼓童の出会いは16年前。青木代表から鼓童との共演の申し出を受け、まずは演出という形でかかわることを引き受けた玉三郎は、機会を見つけては佐渡の稽古場を訪れ、グループの体制やメンバーひとりひとりの個性を把握しながら、約2年後に『ワン・アース・ツアー スペシャル』(’03)を創り上げた。
鼓童のダイナミックな打法に、繊細で柔和な表現力が加わった舞台は好評を博し、続く’06年の鼓童結成25周年には、ついに青木の念願だった両者の共演『アマテラス』が実現。
’09年には、佐渡の稽古場で自主稽古するメンバーたちの姿を見て玉三郎が思いついたという、小編成でスタイリッシュな演出の『打男 DADAN』が評判となるなど、玉三郎は着実に、鼓童のポテンシャルを引き出していった。
’12年、その手腕に鼓童のさらなる進化を託されて、玉三郎が芸術監督に就任( ※2012年より4年間)。演出家として作品単位で芸術的クオリティの責任を負うだけでなく、鼓童という集団を基盤から整備し、方向性を定めて総体的にプロフェッショナルとして向上させていく立場をも担うこととなった。こうして、本格的な玉三郎による新体制がスタートした。
食事等の体調管理や稽古場の空調といった環境面まで、実際の玉三郎の指導は多岐に及ぶが、舞台表現の姿勢においてもっとも強く表れているのは、「演奏技術の向上」と「自由な発想」による、バリエーションの広がりだ。たとえば前者については、就任時にこう語っている。
「技術がなければニュアンスを出すことはできないので、芸術監督になることが決まってから、太い撥を持つ前に、細いドラムスティックで太鼓を叩くことを取り入れました。太い撥で叩いていると、太鼓の面に撥が触れている時間が長くなるけれど、細いスティックだと、一瞬、面に触れることで強い音が出たり、叩いた弾みを利用して叩くことができる。面に長くいるのと一瞬しかいないのとの音色の違いを、打ち手には自分でわかるようになってほしかったですし、実際に細い撥で大きい太鼓を叩くと、最初は違和感があっても、そのうちどんどん音が出るようになって、太い撥がいらなくなるほどになるんです。打ち方のバリエーションもグッと増えるのですよ」
その成果がいかほどかは、本日の舞台に響く音色を耳にすれば、説明不要だと思う。
後者の「自由な発想」を求める点においては、撥を鈴に替えてみたり、北米を中心に練習用の太鼓として代替的に使われていることが多い自動車のタイヤを、敢えて持ち出したり、奏法も構造も似て非なる西洋のドラムについて基礎から学び、和太鼓奏者のプロにしかできない、独自のソロ演奏に昇華させたり……。あらゆる常識や固定観念から解き放たれた、遊び心と自由な精神を、何よりも尊ぶ。それが幅広く斬新な表現の開拓につながっているわけだけれど、玉三郎の意識の根底には、柔軟であるべき鼓童が、必要以上にスタイルを硬直化させたり、権威付けを行おうとする傾向への危惧があった。
「それまでの鼓童には、『大太鼓は神聖なものだから滅多に打ってはいけない』といった雰囲気ができ上がっていたんです。鼓童が誕生して、たかだか数十年しか経っていないというのにね。僕はそんなことぜんぜん気にする必要はないと思うから、『(大太鼓を)縦じゃなく横向きにしましょう』と躊躇せず言いましたし、年功序列もなくしました。『伝統が』とか、『先代が』とかいう話は、まだ若い鼓童では言わないでほしい、という気持ちですね」
伝統や様式、権威の功罪というものを、身をもって知る歌舞伎俳優だけに、説得力は抜群。これは内側からは是正しづらい硬直状態を、玉三郎という外からの刺激で打開してもらえれば、という青木代表の思惑とも一致する。
敢えて「伝統」になりかけていた鼓童のスタイルに執着しないことを選択した玉三郎は、鼓童のトレードマークとしてファンにもメンバーにも親しまれてきた鉢巻きと半纏の衣装を用いず、汗まみれ・力まかせの荒削りな演奏スタイルも封印。短い曲が多かったレパートリーを見直し、20分前後の長尺の新曲を次々に発表して、鑑賞する側へも意識の変革を促した。素朴で力強い太鼓打ちによる祝祭空間から、一編のドラマのように緩急と緊張感に満ちた芸術的世界へ。劇的な変化を遂げた主軸の「ワン・アース・ツアー」シリーズは、玉三郎の美意識に共鳴する観客には熱烈に歓迎され、往年の鼓童のスタイルを愛する観客には、少なからずショックを与えた。
第1弾の’12年初演『伝説』では、喧しいほどの賛否両論の嵐が起こり、「変革には痛みを伴う」ことを実感した気がした。それでも、『神秘』(’13)、『永遠』(’14)、『混沌』(’15)と、回を重ねるごとに、演じ手側にも受け手側にも戸惑いが消え、現在は新しい鼓童の世界を、積極的に享受する土壌が調いつつあるようだ。
周到な準備期間を設けて稽古に励み、自由度と完成度の高い、攻めの姿勢を貫く玉三郎・鼓童。まだまだ弾け続けて、世界のショービジネスの先頭に立って欲しいと思う。
ー鼓童創立35周年記念コンサートパンフレットより
「螺旋」公演紹介
http://www.kodo.or.jp/news/20160900oet_ja.html
12月17日、18日 大阪公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161217-18a_ja.html
12月21日〜25日 東京・文京公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161221-25a_ja.html
本日発売!浅草公演ライブDVD「伝説」/鼓童オンラインストア
2013年の浅草公演ライブDVD「伝説」本日より発売を開始いたします。
なお、浅草公会堂にてDVD「伝説」をお買い求めの方、先着100名様にDVD収録の大太鼓奏者3名のサイン入りポストカードプレゼントいたします。
鼓童 DVD「伝説」
http://www.kodo.or.jp/store/14_1446.html
鼓童オンラインストア
http://www.kodo.or.jp/store/index.html
鼓童「伝説」DVDミュージックビデオ公開/鼓童広報
鼓童DVD「伝説」ミュージックビデオが出来ました。2013年の浅草公会堂での「鼓童ワン・アース・ツアー 〜伝説」をライブ収録したDVDが、6月21日に発売されます。
そのDVD「伝説」ミュージックビデオが完成しました。
YouTubeリンク▼
http://youtu.be/VNBKj1Xxur0
現在国内ツアー中の「鼓童ワン・アース・ツアー2014 〜神秘」は各劇場へ、こちらはご自宅で、と両方ともお楽しみ頂ければ嬉しいです。
発売は浅草公会堂公演初日の6月21日。公演会場と鼓童オンラインストアにてお求め頂けます。
ヨーロッパツアー班、旅の様子/秋元淳
「鼓童ワン・アース・ツアー〜伝説」ヨーロッパツアー班、いよいよロシア・モスクワ公演にて千秋楽を迎えます。
ドイツ、オランダ、スウェーデン、エストニアでの旅の様子をたくさんの写真とともにお届けします。
ヨーロッパでお世話になっているある会社の創立30周年のお祝いに、バチをプレゼント。草洋介が『神秘』のシーンを細密画のように綺麗に描いてくれました。
ドイツのツアー終了!お世話になったツアマネージャーのフリーダさん(中央)を囲んで。 ▶続きを読む
ドイツ・ベルリンより/秋元淳
3月5日ベルリンBerliner Philharmonie、完売公演の様子。
世界最高峰の音響を誇ると言われる本会場、クラシック以外の催しはほとんど行われない中で鼓童は定期的に演奏させていただいており、本当に名誉かつ有り難いことです。 ▶続きを読む
ドイツ・ミュンヘンより/秋元淳
「鼓童ワン・アース・ツアー~伝説」ヨーロッパツアー班は、只今ドイツでの公演を行っています。
ミュンヘンの公演会場Philharmonie im Gasteig満席公演の様子。3月3日、4日と2日間公演をほぼ完売で迎えていただき、本当に有り難いです。 ▶続きを読む
アイルランド・ダブリンより/秋元淳
ダブリンの National Concert Hall。
満席のお客様に迎えられました。演奏も熱がこもり、満場のスタンディングオベーションをいただきました。
在アイルランド日本大使館の渥美大使が奥様とご来場くださいました。公演前日には公邸にもお招きいただき、勝、洋介、研三、雅幸、麻梨子と制作スタッフで伺いました。
イギリスより/秋元淳
「鼓童ワン・アース・ツアー~伝説」ツアー班、イギリスにやってまいりました。
2月19日リヴァプール、20日マンチェスターの様子を写真とともにお届けします。
リヴァプールのホテル裏に、当地出身の「あの方」の名を冠したアート・スクールが!
ビートルズのメンバーがかつて行っていた学校のようです。
リヴァプールの会場 Philharmonic Hall。開演前の様子。 ▶続きを読む
シャトレ座での公演/井上陽介
「鼓童ワン・アース・ツアー〜伝説」シャトレ座での公演
フランス・パリのシャトレ座で約一週間、全5回の公演を行いました。シャトレ座では公演日前に、公開ドレリハというものがあります。演目を取材者、スタッフの方、そのご家族と、和太鼓を知らない方々に見て評価していただく公演です。
この公演が大好評!
おかげで情報誌や口コミで広まり、全5回の本公演ほとんどが満席。沢山の拍手をいただき充実した公演となりました。
シャトレ座のスタッフの方は皆さん、とても気さくで鼓童に興味のある方が多く、公演を心より喜んでくださいました。
大太鼓裏打ち/地代純
「鼓童ワン・アース・ツアー〜伝説」大太鼓裏打ち
第二幕、三者連続大太鼓の最後を締めくくる小田洋介(以下、洋介さん)の大太鼓。
野性的で、開放的で、すべて本能のまま打ち込んでいるような。そんな大太鼓。今回、僕はその“裏打ち※”です。
大太鼓を挟んだあの場所の空気感と緊張感はすごいものがあります。最初は、頑張れば頑張るほどについていけなくなったり、衝突してしまったり、先走ってしまったりと、僕のエネルギーが洋介さんのエネルギーに上手いこと寄り添うことができないまま、それが悔しくてずっと悩んでいました。
ミラノ最終日、洋介さんと本番前の稽古で、「力抜いて、冷静になれ。」と言われ、ある種割り切ってものすごく冷静にやってみました。
そしたら、「そう、その感じや!冷静になったらいろんなもんが見えたやろ?俺と真逆の方向のエネルギーで向かうんや。ほんなら2人のエネルギーが丁度いいところで巡り会うからな。」と。
自分の感覚に確かな新たなものが芽生えた気がしました。こういうことか!と。2人がぴったり合うとこんなに気持ちが良いものなのだと。
大太鼓の裏打ちは勉強になります!
今日も大太鼓の裏側で頑張っております!
※大太鼓の裏で表打ちの人と一心同体となり、ベースを刻む人