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鼓童特別公演2017「道」の稽古始動!/松田菜瑠美


鼓童特別公演2017「道」の稽古始動!

Photo: Narumi Matsuda

いよいよ一ヶ月後に迫った「道」公演の全体稽古が鼓童村で始まりました。

Photo: Narumi Matsuda

2015年の横浜公演以来、演出や楽曲も新たにしての再演です。鼓童と言えばコレ! の人気のあの曲この曲から、今回に向けて作った新しい曲もお披露目予定。演出担当の石塚充が得意とする、お客様も演奏者も楽しめるプログラムです。

Photo: Narumi Matsuda

ツアーでは東京は福生・小平・大田と3公演、大阪では新歌舞伎座で2日間3公演行ないます。3月、是非お越しください。

演出:石塚充
出演:山口幹文、齊藤栄一、見留知弘、船橋裕一郎、石塚充、中込健太、前田剛史、蓑輪真弥、小松崎正吾、三浦康暉、三浦友恵、米山水木


気魄の伝受 〜「幽玄」稽古場レポート〜/文・伊達なつめ


気魄の伝受
〜「幽玄」稽古場レポート〜

文●伊達なつめ 撮影●岡本隆史

Photo: Takashi Okamoto

葛野流家元・亀井広忠先生による能楽囃子の稽古の様子

2016年11月中旬、佐渡にある鼓童の稽古場を訪ねた。この日は、能楽囃子のうがくばやし大鼓方おおつづみかた葛野流家元かどのりゅういえもと亀井広忠かめいひろたださんが、能の囃子とうたいについて指導するために、また、舞の振付および立方たちかた(踊り手)として共演する日本舞踊・花柳流はなやぎりゅうの若き家元・壽輔じゅすけさん、達真たつまさん、源九郎げんくろうさんの三人も、稽古に参加していた。

Photo: Takashi Okamoto

玉三郎さん、花柳壽輔さん、達真さん、源九郎さんのお稽古の様子

今回の『幽玄ゆうげん』には謡曲ようきょく羽衣はごろも』、『道成寺どうじょうじ』、『石橋しゃっきょう』の一節を取り入れる予定で、準備が進められている。まずは亀井さんが、『羽衣』の場面で使われる「序ノ舞じょのまい」について、「いちばん品があって、位の高い舞」と、他の舞との比較を含めて解説。「羽衣伝説」に基づく『羽衣』は、松の枝に掛かった羽衣を持ち帰ろうとした漁師が、これがないと天に帰れないと嘆く天人に、羽衣を返す代わりに天上界の舞を所望するという話。天人が舞う天上界の優雅な舞の部分が「序ノ舞」にあたる。

Photo: Takashi Okamoto

亀井さんが、今回の公演のため約5分にまとめた『羽衣』の「序ノ舞」を披露した。両手におうぎを持ち、右手で大鼓おおつづみ、左手で小鼓こつづみの拍子を打ちながら、口元で「ヒウ ルィ ヒョー」と声を出して笛の音を表現する。この見事なひとり三役パフォーマンスは、囃子の稽古時のスタイルだ。

Photo: Takashi Okamoto

これに対して鼓童は、笛と銅鑼どらのほか、締太鼓しめだいこの奏者が十数人、横一列にズラッと並んでいる。歌舞伎舞踊にも『羽衣』はあるけれど、今回、漁師役の壽輔さんたちと天人役の玉三郎の立方とともに鼓童が創り出すのは、能版とも歌舞伎版とも異なる新たなオリジナル版。立方の動きはもちろん、音楽も能の『羽衣』の詞章ししょうや囃子に則りながら、鼓童的アレンジが施されている。

Photo: Takashi Okamoto

一声いっせい※1を拍子は楽譜のまま、(鼓童流に)翻訳してみたので、ちょっと聴いてみてください」

そう玉三郎が言い、『羽衣』の「一声」の演奏が始まった。ドラム・ロールのように細かく刻む太鼓たいこの音をベースに、鋭い笛の音と高低差のある締太鼓+インパクトある奏者たちのかけ声が響く。大鼓と小鼓のパートも、すべて太鼓で表現するという驚きのアイデアだ。

Photo: Takashi Okamoto

「新しいですね。まさに世阿弥ぜあみのいう『めずらしきが花』だ」※2

と亀井さん。続いて、鼓童は「クセ」と呼ばれる主要な部分の地謡じうたい※3を聴かせた。ここ数年、稽古始めに発声練習で謡を取り入れてきた成果か、非常に深く強く、伸びやかな重低音コーラスになっている。

Photo: Takashi Okamoto

「すごいですね。お世辞でなく、謡がうまい。みなさん耳がいいんでしょうね。たいしたものだ」

と亀井さんは感心しきり。能では囃子と地謡は完全に分業制だけれど、鼓童はこうして双方を兼ねるスタイルだ。

この「一声」の囃子と「クセ」の謡のプレゼンテーションで、鼓童と玉三郎が『幽玄』で何をしようとしているのか、さらに、鼓童の能の取り組み方の本気度を理解した亀井さんは、指導を具体的かつ個別化し、グイグイと熱を込め始めた。

Photo: Takashi Okamoto

本業である大鼓だけでなく、小鼓、太鼓、笛、謡、舞と、すべてを自ら実演してみせながら、技術とともに能楽師の気魄きはくを伝授する姿。鼓童の面々も、一瞬を惜しむように真剣に教えを仰ぐ。濃密でいて清々しい空気が、稽古場を満たしていた。

Photo: Takashi Okamoto

※1 一声=登場場面の囃子
※2 めずらしきが花=めずらしい(=新しい)ことは能の魅力の重要な要素のひとつ、といった意味
※3 地謡=謡曲の合唱部分

伊達なつめ
演劇ジャーナリスト。現代演劇、古典芸能、ダンス、ミュージカルなど、あらゆるジャンルのパフォーミングアーツを国内外で取材。著書『歌舞伎にアクセス』(淡交社)など。『InRed』『CREA』など雑誌での連載も。

坂東玉三郎×鼓童特別公演「幽玄」

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http://www.kodo.or.jp/news/20170500yugen_ja.html

【東京】2017年5月16日(火)~20日(土)Bunkamuraオーチャードホール
(問)チケットスペース Tel. 03-3234-9999 http://www.ints.co.jp

【新潟】2017年5月26日(金)~28日(日)新潟県民会館
(問)TeNYチケット専用ダイヤル Tel. 025-281-8000

【愛知】2017年5月31日(水)~6月2日(金)愛知県芸術劇場 大ホール
(問)中日劇場 Tel. 052-263-7171

【福岡】2017年9月2日(土)~18日(月・祝)博多座
【京都】2017年9月21日(木)~23日(土・祝)ロームシアター京都メインホール


鼓童新メンバー、新・準メンバーのお知らせ


鼓童新メンバー、新・準メンバーのお知らせ

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この度、準メンバーの小平一誠、前田順康、吉田航大が鼓童正メンバーとなりました。
(写真左手より、小平一誠、前田順康、吉田航大)

写真左手より、木村佑太、三枝晴太、渡辺ちひろ、山脇千栄、平田裕貴/Photo: Erika Ueda

また、2月1日より、研修所を修了した木村佑太、三枝晴太、平田裕貴、山脇千栄、渡辺ちひろが準メンバーとして活動いたします。
(写真左手より、木村佑太、三枝晴太、渡辺ちひろ、山脇千栄、平田裕貴)

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

▶︎鼓童新メンバー、新・準メンバー、メンバー短信


鼓童グループ集合!


2017年1月17日 鼓童村稽古場にて

本日、鼓童グループメンバーが稽古場に揃いました!
本年もよろしくお願いいたします。


鼓童村の餅つき/川村真悟


鼓童村の餅つき

Photo: Shingo Kawamura
冬休み明けの鼓童村ではご覧の通りの大雪に見舞われておりますが、皆元気にやっております。そんな中、今日は鼓童村恒例行事の餅つきが行われました。

Photo: Shingo Kawamura

若手を中心についた美味しい餅を皆でにぎやかに頂きました。これで今年一年も頑張れそうです。
Photo: Shingo KawamuraPhoto: Shingo Kawamura

いつも鼓童を応援して下さっている皆様、本年もどうぞ宜しくお願い致します。


若手、始動。/池永レオ遼太郎


若手、始動。

皆様、改めまして、新年あけましておめでとうございます。

Photo: Erika Ueda
僕達若手は少し早めの集合をし、4日から合宿稽古を行なっています。

Photo: Erika UedaPhoto: Erika Ueda

一度初心を思い出そう。

そう思い、企画した今回の合宿。三宅、屋台囃子などといった昔からの演目を大先輩の指導をうけながら稽古に励んでいます。

Photo: Erika Ueda

そして、新しい道もどんどん切り開いていこう。それぞれが色々なアイディアや曲を持ち寄り、音作りにも臨んでいます。

Photo: Erika Ueda

自分たちしかいない鼓童村。色々な発見や気づきがある毎日です。一日中音作りの出来る環境に恵まれている僕達は幸せだなぁ、と皆改めて感じています。

Photo: Erika UedaPhoto: Erika Ueda

2017年、若手のさらなる飛躍にご期待ください!

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【鼓童の稽古場】1月4日、若手メンバーが稽古場に集まり打初めました。冬休み中ですが朝から晩まで太鼓三昧。写真は6日の「三宅」基礎稽古の様子、指導は見留知弘です。心地よい太鼓の振動が鼓童村に響いています!

鼓童 Kodoさんの投稿 2017年1月6日


鼓童仕事納め


鼓童は昨日27日、早めの仕事納めとなりました。

鼓童創立35周年の2016年は、世界各地でたくさんの方々と出逢い、新たな表現の可能性に挑み、次の時代への飛翔に向けて大きな手応えを掴むことのできた一年でした。

来る2017年も、皆様の心の奥深くに届く舞台をお届けしてまいります。

どうぞ引き続き応援のほど、よろしくお願いいたします。

Photo: Taro Nishita

鼓童村食堂にて

【鼓童@文京・千穐楽】「螺旋」打ち納めました!東京では5日間8000人を超えるお客様にお届けしました。沢山のアンコールと温かい拍手を有難うございました!

Photo: Takashi Okamoto

鼓童 Kodoさんの投稿 2016年12月25日

【鼓童@文京】メリークリスマス!本日25日螺旋千穐楽!お待ちしております。

12月25日14時 文京シビックホール(当日券13時より)
http://www.kodo.or.jp/oet/20161221-25a_ja.html

鼓童 Kodoさんの投稿 2016年12月24日

【鼓童@文京】年末といえば、文京・鼓童!年内は本日24日、25日のあと2回公演です。坂東玉三郎氏演出の「螺旋」お見逃しなく!

12月24、25日14時 文京シビックホール(当日券13時より)
http://www.kodo.or.jp/oet/20161221-25a_ja.html

Photo: Takashi Okamoto

鼓童 Kodoさんの投稿 2016年12月23日

【鼓童@文京】本日も沢山のお客様にお越しいただきました、有難うございました。年内は24日、25日のあと2回公演です。年末といえば、文京・鼓童!

12月24、25日14時 文京シビックホール(当日券13時より)
http://www.kodo.or.jp/oet/20161221-25a_ja.html
イヴもクリスマスもお待ちしております!

Photo: Takashi Okamoto

鼓童 Kodoさんの投稿 2016年12月23日


心の芯に「芸術的要素」を/坂東玉三郎氏インタビュー


坂東玉三郎氏インタビュー
心の芯に「芸術的要素」を

2016年8月 鼓童創立35周年記念コンサートパンフレットより
文◎伊達なつめ 写真◎岡本隆史

Photo: Takashi Okamoto

──芸術監督就任当初(2012年)は、「和太鼓にはバリエーションが多いわけではないから」と苦労されている様子でしたが、次々と新しい表現が生み出されていますね。

玉三郎 「今日まで出来るだけのことをしてきた」という感じです。正確には「ないもの」を出すというより「ある」ものをそのままではなく展開させて幅を広げる作業になったということでしょうか。『大太鼓』『屋台囃子』『三宅』といった、鼓童のレパートリーを代表する太鼓の曲を沢山聴いていて、今後の為にもさらに新曲があった方がいいのではないかと思い、新しい音楽的なものを模索してきました。私は全てを譜面で伝えていくわけではないので、はじめから「こういうものを創ってほしい」という設計図を示すことはしてきませんでした。鼓童のメンバーが出してきた音を「この音と、この楽器を組み合わせて」やってみては「あ、ぜんぜん合わなかった、こちらの方が良いなあ・・・」などと言いながら、現場で創ってきたのです。

Photo: Takashi Okamoto

その結果、徐々に新しい音が出て来たのでしょうか。それともうひとつは、これまでなかった新しい楽器の組み合わせや使い方、この楽器を加えたら、あるいはこの太鼓の音を前に出さずに、後ろに持って行ったら、どれだけ融合して聞こえるか、といったことを試してきました。

Photo: Takashi Okamoto

──ワン・アース・ツアー『混沌』(2015年初演)で登場した太鼓奏者によるドラム演奏など、実にユニークでした。

玉三郎 同じ打楽器でも、奏法も音の性質もすべてが異なるドラムを使ってみることで、その後元に戻った時に彼らの耳に聞こえる太鼓の音が違ってきたことが、とてもよかったと思っています。たとえば一度旅に出て戻ってくると、自分が住む場所の違った面が見えてくるでしょう。それと同じことを、彼らも感じられるようになってきたのです。

Photo: Takashi Okamoto

──「ちょっとドラムに挑戦にしてみた」という次元とは異なり、「プロの太鼓打ちがドラムを演奏するとこうなる」という新たな楽器の解釈を提示していました。

玉三郎 そこまでいかなければ、お客様に失礼ですから。もちろん今回はプロのドラマーのようには出来なくても、鼓童ができる範囲で、最善のものをお見せしなければなりません。そのために、ここに至るまで3年間かけて稽古してきたのです。

Photo: Takashi Okamoto

──新たに挑戦する楽器の習得に3年をかけ、来年初演の新作の稽古もすでに始まっている。時間の取り方にゆとりと計画性がありますね。

玉三郎 僕自身、俳優として舞台に立つようになってから認めてもらえるまでには、多くの年数がかかりましたし、中国の伝統演劇である昆劇に出演した際も、最低、5、6年は必要でした。フランスの太陽劇団(テアトル・ドゥ・ソレイユ)だって、ひとつの作品を創るのに稽古に2年間もかけているわけです。シルク・ドゥ・ソレイユだって、きっとそうでしょう。本来作品創りというのはそういうものなんです。

──プロの演奏家でありながら、別のジャンルの音楽に挑む姿勢もユニークです。たとえて言えば、チェロの演奏家が胡弓を弾くようなものですよね。

玉三郎 クラシックのチェロの専門家は、人前では胡弓の演奏はしないでしょうけれど、鼓童はとにかく余裕があればやれるところはやってしまわなければならないのです。「やれないでしょう・・・」と言わないで「やれるでしょ?」って最初に言ってしまうんです・・・(笑)。そうするとみんな、だんだん出来るようになっていくんです。そもそも『三宅』(伊豆七島の三宅島)だって『屋台囃子』(埼玉県秩父市)だって、地方の芸能として演奏されているものを、舞台用にアレンジしてきたわけですから。鼓童はそうやって、あらゆる音を自分たちの音色にしてきたのです。ですから今後も、そういうことをして行かなければなりません。

Photo: Takashi Okamoto

──来年初演の新作『幽玄』は、『アマテラス』に次ぐ玉三郎さんと鼓童との共演第2作目、能の世界を鼓童の音色で表現しようという新たな挑戦ですね。

玉三郎 先年打ち手のみんなに、今後はどんなものをやりたいの?・・・と聞いてみたら「日本のものをやりたい」というのです。それじゃあそうしましょう・・・ということになりました。ただ「日本ものはとても難しいよ・・・」とだけは言いました。どこかで古典の専門家の目に触れるでしょうし、様式も技術も、どこまで掴めるかはわからないにしても、「やるんだ」「突き抜けたい」という思い込みだけでは出来ませんからね。お客様にお見せ出来るだけの、練り込む時間がないといけないでしょうね。お能の様式そのものは使えないですから、自分たちが使ってきた楽器で、能や歌舞伎の囃子方では使わない楽器で、稽古をしていかなければなりません。同じ楽器を使ってしまえば、専門家の方が素晴らしいに決まっているわけですから、自分たちの楽器を使って、表現できるように稽古しています。

Photo: Takashi Okamoto

──締太鼓ひとつとっても、能や歌舞伎の大太鼓と似ているようで違うし、違うけど似ているという…

玉三郎 音色が不思議な感じですよね。めずらしさも、新しさも必要ですし、稽古をしていると想像もつかないところにいくんです。それに『幽玄』というからには、謡も入った方がいいかなと思って、ここ5年間くらいやっている発声練習を、謡に活かせるように稽古しています。毎日練習して行けば、確実に声が出て来ますし「なんでもできちゃう」というわけではないですけれど、出来ることはきちんと学んでいきたいと思っています。

──能と歌舞伎と鼓童、と聞いて、アイリッシュダンスと類似点があるタップダンスやフラメンコと競演する『リバーダンス』の一場面を思い出しましたが、そうした広がりも期待できそうですね。

玉三郎 タンゴが酒場のコミュニケーションから生まれてきて、後に芸術的なものに発達したのと同じだと思います。ただ、神社やお寺に集まって演奏するのと、劇場で入場料をいただいてお客様にお越しいただくものとはまた別なことですから、それとは違う線をきちんと引いた状態を保たなければなりません。このようにして、鼓童は各地の芸能に影響を受けてきましたが、デビュー当時から海外公演を多く行う中で、ブルーマン・グループやストンプ(ともにオフ・ブロードウェイを中心に世界各地で公演を続けるパフォーマンス集団)や、シルク・ドゥ・ソレイユのラスベガスのショウの「ミステール」などにも影響を与えているそうです。最近のワン・アース・ツアー『伝説』『神秘』の海外公演では、十分に受け入れられたようですが「影響を受けた海外の打楽器演奏の方が、うまく叩けている」ということにならないように「しっかりとした自覚を持つように」とみんなには話しています。

Photo: Takashi Okamoto

──35周年を迎えた鼓童の今後のことは、どうお考えですか。

玉三郎 具体的には来年(2017年)の春から、「アマテラス」に続く鼓童との共演第2作目の『幽玄』の幕が開きます。9月には、博多座での公演も予定しています。そして秋からは『打男』の日本ツアーが始まります。2009年に創った『打男』が、来年から日本と北米のツアーを回れるようになったことは、演出家としてはとても嬉しいです。佐渡に通うようになってから16年が経ちました。これまで10作近くの作品を創ってきましたが、実は思いのほか大変な作業だったんです。つまり戯曲や筋立て等の全く無いところから、打楽器演奏群の一晩の舞台(コンサート)を構成して行くのですから。自分としては出来るだけ楽しんで創っては来ましたが、お客様がどう思ってくださるかは、また別なことです。特に鼓童の古くからのお客様には、今までとは違う方向性に対する違和感もあったと思います。現在は世界情勢も経済も大変難しい時期を迎えているように思います。そうした状況下で、鼓童のみなさんも「5年後、10年後に自分たちがどうなっていたいのか」・・・ということを真剣に考える時期が来ているのではないでしょうか。

Photo: Takashi Okamoto

鼓童の「和太鼓の曲」は初めから有りましたが、これからは純粋に「打楽器の曲」として考えて行かなければならないこともあるでしょう。また大きな意味で「音楽としての曲創りの捉え方」「舞台人としての有り方」も重要になってくるでしょう。それに加えて心の芯に「芸術的要素」を持って、進んで行ってもらいたいとも考えています。また「舞台裏はお客様には見えている」ということも伝えています。「エンターテインメント」でありながら「品格」も大事なことです。自分も今後の日本の芸術の有り方などを、問い直していきたいと思っているのです。

ー2016年8月 鼓童創立35周年記念コンサートパンフレットより


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坂東玉三郎(ばんどう たまさぶろう)
歌舞伎界の立女形。その深遠な美意識は様々な分野でも発揮され、「ロミオとジュリエット」「海神別荘」などの作品で舞台演出家として高い評価を得る一方、映像作品「外科室」「夢の女」「天守物語」で映画監督としての才能を発揮し、大きな話題となった。2012年4月から4年間、鼓童の芸術監督に就任。2012年9月に、歌舞伎女形として5人目となる重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定、また2013年にはフランス芸術文化勲章最高章「コマンドゥール」を受章した。


 

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「螺旋」公演紹介
http://www.kodo.or.jp/news/20160900oet_ja.html

全国ツアースケジュール
http://www.kodo.or.jp/oet/index_ja.html#schedule26a

12月14日(水)福岡公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161214a_ja.html

12月17日、18日 大阪公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161217-18a_ja.html

12月21日〜25日 東京・文京公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161221-25a_ja.html

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鼓童サイト「幽玄」ページ
http://www.kodo.or.jp/news/20170500yugen_ja.html


近藤克次さんが鼓童村にいらっしゃいました/松田菜瑠美


近藤克次さんが鼓童村にいらっしゃいました

11月22日、鼓童創設メンバーの一人で太鼓奏者の近藤克次さんが、来年太鼓芸能生活40年を記念して開催されるコンサート「苦打楽打」の稽古のために佐渡にいらっしゃいました。午前中は、齊藤栄一としっかりと打ち合わせを、、、とのことで譜面を広げていましたが、ドンドンドコドコ、いつの間にか文字通り机を叩いて「打ち合わせ」になっていました。Photo: Narumi Matsuda

二人とも、真剣ながら楽しそうです。

午後は、稽古場に場所を移して太鼓を使った稽古でした。稽古場に入るなり手際よく太鼓を準備して、最小限の会話で瞬く間に曲の通しが始まりました。鼓童でもお馴染みの曲なのですが、「28年ぶりに合わせました」と克次さん。時間の経過を感じさせない、息のあった段取りに、集中した打ち込み、的確な直し、とても貴重な場に立ち会わせていただきました。

Photo: Narumi Matsuda

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翌日は、佐渡の劇場で行われた「螺旋」公演にもお越しいただきました。ロビーでは、鼓童の演奏者、スタッフ、研修生、そして佐渡の方々が次々と克次さんと再会! 克次さんが、かつて佐渡で過ごした濃い時間の一端を感じ、私も来年のコンサートへの想いがより深くなりました。

Photo: Narumi Matsuda
来年2月のコンサート情報はこちら!チケットは好評発売中です。
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「苦打楽打」近藤克次太鼓芸能生活40周年記念コンサート
2017年2月4日(土)15:30開演
東京都・大田区民プラザ大ホール
鼓童からの出演者:藤本吉利、小島千絵子、齊藤栄一

http://www.kodo.or.jp/news/20170204kudarakuda_ja.html


鼓童の歴史 青木社長が語る35年/文・伊達なつめ


鼓童の歴史 青木社長(株式会社北前船)が語る35年

文●伊達なつめ

美しく厳しい自然に囲まれ、民俗芸能の宝庫である佐渡で文化のあり方を学び、地方から日本と世界を見つめ直す──。1981年にベルリンでデビューを飾った鼓童は、’60~’70年代の大学紛争を経た若者たちが、理想郷を求めて結成した佐渡の國鬼太鼓座が、その前身。大自然の中で生かされているという自覚を保ち、佐渡に活動拠点を定める基本理念と、プロフェッショナルの音楽芸能集団として、高度な芸術性の追求に努める新たなミッション。両輪の充実を目指して歩んできた鼓童の35年間を、青木社長が振り返る。

Photo: Takashi Okamoto

宮本常一先生(※民俗学者で鬼太鼓座設立時のアドバイザーでもあった)が力説されていた『地方から発信できる力を持つ』ことを可能にし、地域に根付くためには、会社組織にしてみんなが生活できる最低限の基盤を調えなければならない。そのために奔走したのが、初期の鼓童でした。豊かな自然と芸能文化が残っている環境が大事だと思い、佐渡にこだわりましたが、当時のメンバーみんなが、単純に佐渡が好きだった、という面も多分にありましたね。

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琉球舞踊の佐藤太圭子先生と鼓童・初期のメンバー

現実的な問題として、たとえ佐渡でも、周囲に民家があると太鼓を叩く音が騒音になってしまうので防音設備が必要ですが、1986年に現在の鼓童村がある場所(佐渡南西部の小木金田新田)を確保できて、まわりに何もないという、夢にまで見た環境を実現できました。

ただ、当時はこの「鼓童村構想」にみんなの意識が傾き過ぎていたところがあり、創造活動に集中したかった創立メンバーの林英哲さんは、一年で鼓童から去って行かれました。鬼太鼓座を始めた当初から集まっていたのは必ずしも芸能に興味のある若者ではなかったので、こうしたギャップが生じたんでしょうね。私個人は、英哲さんの演奏に感銘を受けて佐渡にやって来た口なので、この時は「もう鼓童は駄目かな」とほんとうに思いましたし、他のメンバーも、同じ気持ちだったかもしれません。その後太鼓も一度すべてなくなって8ヶ月活動を休止しましたが、1984年にはワン・アース・ツアーを開始し、1986年にはサントリーホールのこけら落としに参加させていただけるまでになりました。

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しかし、鼓童村建設が具体化した矢先の1987年には、構想を主導していた代表の河内敏夫が、事故で急逝しました。資金調達もすべて彼がしていたので、最初はその年の海外ツアーの費用を捻出するのにも想像を絶するくらい四苦八苦しましたが、掲げた理想を実現するために、いろいろな方に協力していただきながら、なんとか困難を乗り切ってきました。

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やっと運営も軌道に乗り、1993年には念願だった高い天井と、舞台と同じ広さの空間がある稽古場ができました。鼓童の活動も順調だった1999年頃、理屈ではうまく説明できないんですが、私の中に「このままでは鼓童は続かなくなる」という危機感が芽生え始めました。すでにいろいろなプロの太鼓グループが出現していて、鼓童がやってきたことは、みなさん大体できてしまっている。これからはプロの太鼓芸能集団として表現を深め幅を広げて他と差別化していかないと、淘汰されてしまうと感じたのです。

とはいえ、それを自分たちだけでやることには限界がある。どんな組織でも同じだと思いますが、20年もやってくると、組織の形とやり方が固定されてきて、新しいことに挑戦しにくくなってしまいます。そうなったら外から違う風を入れて固まったものを壊さないと、組織自体が駄目になってしまう。

そう思って、メンバーの意見を確認することもまったくせず(笑)、独断で玉三郎さんに鼓童との共演をお願いしに行きました。玉三郎さんは「最初から共演は難しいが、演出なら」とお引き受けくださって、2000年から佐渡の稽古場にお越しいただくようになりました。

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鼓童のメンバーにとっては、今までとはまったく異なる体験となり、戸惑いも大きかったようですが、玉三郎さんはそれを感じながらも、根気よく関わってくださいました。その時準団員だったのが、いま代表になっている船橋裕一郎や、石塚充の世代です。現在では、玉三郎さんが何かひとこと言うだけで、みんなすぐに理解するので、稽古は実にスムースに運んでいます。2012年からは芸術監督をお願いし、作品だけでなく、メンバーの体調管理から研修所の整備に至るまで、全体にわたる指導をしていただくようになっています。

Photo: Eri Uchida

振り返ってみると、35年間もよくやってこられたな、というのが実感ですが、自分たちの生きている時代だけで終わろうとしていたら、ここまでは来ていなかったと思っています。私には、太鼓芸能文化を、能や狂言や歌舞伎と同じように、何百年も引き継がれ、世界中の人々に楽しんでいただける芸能に引き上げたい、という夢があるんです。とても自分が生きている間にかなうことではありませんが、今やっておくべきことはあるはずです。玉三郎さんに指導をお願いしていることもそのひとつで、この貴重な時間にさまざまなことを学んでおくことが、10年後、20年後、30年後…100年後くらいに、必ず活かされると信じています。

これからも、生きている間にやらなければならないことを、精いっぱいやっていくつもりです。鼓童のメンバーたちも勉強を重ねて、もっともっと自身の表現を磨いてほしいと思っています。

ー鼓童創立35周年記念コンサートパンフレットより

 


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