鼓童ブログ Kodo Blog

鼓童ワン・アース・ツアー 〜神秘/寄稿●玉重佐知子氏


島根県では石見神楽が熱い!
温泉津から出雲へ「大蛇」をめぐる旅。

  「小林さんが神棚の前で柏手を打つ姿勢や作法がかっこよくて。日常生活の在り方が神楽の舞台につながっているんです。」と草洋介さんは言う。

 10年前から温泉津を訪れ、石見神楽に関わってきた草さんは、「罪やケガレを祓うなど、ここでは、日常生活の中に神様がある。石見神楽は、地元の人にとって、子どもに礼儀作法を教えたり、人間形成の場でもある。人々の生活の中に息づいている民俗芸能のすばらしさに触れて、蛇舞の型や技術だけではなく、生に繋がる精神や奥にある神秘を、鼓童にしかできない舞台として表現したい」という。今回、草さんは、同じく蛇舞を舞う七歳年下の小松崎正吾さんを伴い、小林工房で約二週間寝泊まりしながら、小林さんや「温泉津舞子連中」から蛇舞を教わり、共演しながら神楽を研究した。「この地で学びながら、大切なのは、昔も今も変わらずある、祈り、見えない明日への祈りだと思いました。稲穂が育つことへの願い、水の恵み、水害への不安、それらへの祈りが神楽の所作にこめられている。技やかっこよさより、奥にあるもの、本質に迫りたいです。ぼく自身は、蛇を舞いながら水の流れになりきれればと思います」と小松崎さんは言う。

 

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島根・龍御前神社で小林さんに「蛇舞」の稽古をつけていただく。
右から、小林泰三さん、草洋介、小松崎正吾。

 

神楽はがつづまった言葉といわれ、もともと奏楽、唱歌、舞踊、演劇といった歌舞音曲により神をお招きする神事芸能だった。しかし、明治時代、神懸かりによる託宣や、神職による演舞が禁止され、神楽は民間の手に委ねられた。石見神楽の「大蛇」は、観客を喜ばすために、竹と石州和紙でつくられる提灯蛇胴ができ、蛇の数も増え、口から火を噴くようになり、目が光り、どんどん派手になった。1970年の大阪万博で、石見神楽の「大蛇」が八頭立てで披露されて以降、一躍有名になり、一気に発展したという。現在は観光促進のイベントも多い。

「最近の神楽は、見た目のかっこよさばかり追求するあまり、派手な動き、エンターテイメント性に重きがおかれ、もともととして舞われていた本来の意味がなおざりにされている」と小林さんは危惧を感じている。

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