鼓童ブログ Kodo Blog

鼓童ワン・アース・ツアー 〜神秘/寄稿●玉重佐知子氏


『アマテラス』から『神秘』へ
〜日本の心の、神話や民俗芸能に潜む神秘と出逢う舞台

文●玉重佐知子
写真●岡本隆史、玉重佐知子、上田恵里花

新作『神秘』の開幕迫る ─巳年の縁に導かれて

地鳴りのような響きの中を渦巻く大蛇、荒ぶる鬼や囃子。ほの暗い闇に浮かび上がる、時に怖くもあり、どこか懐かしい存在…。『神秘』は、日本各地に伝わる民俗芸能が持つ、神聖さや祈りの中に潜む神秘的な空気を鼓童の太鼓で表現する作品だ。神社や仏閣、あるいは、身近な森での様々なものとの出会い、そこで感じる非現実的で素晴らしい雰囲気が劇場で繰り広げられる。

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玉三郎さんが公演の演出のため佐渡の鼓童村に通い始めた2001年は巳年だった。それから一回り巡った巳年の今年、石見(いわみ)神楽の「大蛇(おろち)」に学んだ蛇舞(じゃまい)が一つの見せ場となる『神秘』が初演される。
9月、スタッフの上田恵里花さんのご案内で、石見神楽の本拠地である島根県を訪ね、温泉津(ゆのつ)町で地元神楽団体「温泉津舞子連中(ゆのつまいこれんちゅう)」を率いる小林泰三さんから蛇舞の指導を受ける『神秘』のメンバー草洋介さんと小松崎正吾さんの稽古の現場を取材させていただいた。石見から、八岐大蛇退治の神話の舞台、出雲にも足をのばし、「大蛇」づくしの旅を続ける中、蛇の神様に導かれているような気がした。

 

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鼓童村稽古場にて「神秘」蛇舞稽古の様子

 

6月、佐渡を訪ねた折、鼓童村は『アマテラス』と『神秘』の稽古の真っ最中だった。

『アマテラス』は天照大神の「天の岩屋戸」、『神秘』の蛇舞は「須佐之男命の大蛇退治」と、「古事記」や「日本書紀」でおなじみの神話が題材だ。昨年は古事記編纂から1300年、今年は伊勢神宮や出雲大社の式年遷宮が重なり、日本の国や民族の記憶の基層が顧みられる年でもあった。神話や神事(かみごと)を題材にした鼓童の公演が今年行われることはタイムリーで、特別な意図があるように思われた。演出家である玉三郎さんにその本意を訊ねると、「偶然です」とおっしゃる。

「遷宮と重なったのは全くの偶然。鼓童と出逢った頃、共演するなら神話がいい。古代、トンと物を叩いて音をだすところから始まった太鼓。そういう始源の音楽の一座と一緒にやるなら、太古の話、アマテラスかスサノオの話がいいと思ったのです。」

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