本公演は「巡」という言葉をテーマに据え、「景色が見える音作り」を大切にしながら、全編新曲で構成した舞台となっております。
森羅万象、巡らないものはありません。
太陽と月、水や命など、循環しないものはありません。
始まったものはやがて終わり、また始まる。時空を超えて、何度も何度も。
それは魂や人々の思いのような、精神的なものにまで至ります。
そうやって何万年も巡り、受け継がれてきた物語に、私たちは無意識のうちに影響されているのではないでしょうか。
どんな国や文化圏の人でも、同じように感じ取る心象風景があるとすれば、それは個々人の記憶や知識だけに起因するものではないように思えます。
では、そこに共通するものとは何か。
私たちはいつの時代も、その何かを追い求めて、芸術というものに触れてきたのだと思います。
美術や音楽をはじめ、様々な芸術活動がありますが、そのすべては人間が生きていく上で、必ずしも必要なものではありません。
それなのに人類は、寝る間を惜しんで絵を描いたり、音楽を作ったりしてきました。
私も同じように、どうしようもなく曲を作りたくなる瞬間があります。
自分の中に溜まった何かを、形にしたくなる感覚です。
魂の声を聞きたい。
その衝動こそ、巡り巡ってきた一つの物語であり、この作品を通して、私が表現したいものでもあります。
鼓童の音が呼び覚ます心象風景を巡りながら、皆さんと一緒に魂を辿れたら。
そんな思いで、一音一音、大切に奏でていきます。
「巡 -MEGURU-」演出・住吉佑太(鼓童)