大太鼓への入口が ”特殊” だったもので/大塚勇渡インタビュー

Photo: Takashi Okamoto

聞き手:伊達なつめ(演劇ジャーナリスト)

鼓童の大太鼓には、キャリアを十分積んで、まわりに認められた人が、屋台に上がって褌姿で叩く──というイメージがありましたが、僕の場合は特殊で、準メンバーのころ若手育成の目的で玉三郎さんから「大太鼓を打つのが見たい」というリクエストがあって打ったのが、入口だったんです。その後『螺旋』(2016年初演)では、通常は二拍子や四拍子で叩く大太鼓を、五拍子・四拍子・三拍子で創ってみるよう指示されたこともありました。

Photo: Erika Ueda

大太鼓は、お客様に見えるのは背中だけなのでごまかしが利かず、体力的にも精神的にも、自分のすべてを出し切らなければできない特別なものです。ですから最初は、敢えて弱い音を利かせたり、いろいろな拍子に挑戦することに、怖さがありました。でも、突きつめて叩かなければいけないと思うのと同時に、自分の中から出てくるリズムを聴いてほしい、という気持ちも湧いてきて……。

Photo: Erika Ueda

現在は、そこにメッセージを伝えられる技術と構成力が伴えば、自分独自のリズムもひとつの音楽の形になる、と考えられるようになりました。『巡 -MEGURU-』の『天涯』の大太鼓もそうです。ひたすら打ち込むことから始め、稽古を重ねてだんだんと音楽的な抑揚が付けられるようになってきて、いまは、主旋律のマリンバの音をアレンジで入れたりもしています。自己と対峙しつつ、作品の世界観や心地よさを感じていただける演奏を目指したいと思います。

Photo: Takashi Okamoto

Photos: Takashi Okamoto, Erika Ueda

 


大塚勇渡

Hayato Otsuka

高校1年生より太鼓を始める。2013年研修所へ入所。2016年より正式メンバー。舞台では主に、太鼓を担当。2015年「打男」浅草公演、「永遠」「混沌」国内ツアーに参加。2016年「打男」ブラジルツアー、「混沌」国内ツアー参加。音楽性のある太鼓を得意とし「螺旋」では「大太鼓」を担当、新曲「螺旋」「綾織」に抜擢。真摯に太鼓と向き合い、優しさとストイックな一面を併せ持つ。

2017年、「打男」北米、国内ツアー参加、クライマックスの演目を務める。「坂東玉三郎がいざなう鼓童の世界」、「幽玄」で坂東玉三郎氏と共演。2018年「Evolution」ヨーロッパツアー参加。

大塚勇渡プロフィール
https://www.kodo.or.jp/meguru/member/hayato