若手の繊細さと僕らの強い身体で、より豊かな表現を/石塚充インタビュー

Photo: Ryotaro Leo Ikenaga

聞き手:伊達なつめ(演劇ジャーナリスト)

今回マリンバを使うと知った際、なんだかとても合点がゆきました。住吉の作品は、音程のない楽器にもメロディーを感じさせるものが多く、彼の中には、つねに太鼓のリズムより音階がある感じがしていたからです。

Photo: Erika Ueda

いままでの鼓童は、いろいろな音楽を取り入れつつも、つくり方自体は、音楽よりも日本の芸能寄りだった気がします。一晩かけてクライマックスにもっていく神楽のように、10分の曲にも導入に長い時間をかけたり、演奏者の意気で何小節にするかが決まったり。最終的に小節数は確定するにしても、そこに至るまでに、打ち手の温度や呼吸が色濃く反映されていました。これに対して、住吉のつくり方はポップス音楽的で、すべての小節数が、最初からカッチリと決まっています。

Photo: Erika Ueda

はじめは自分の意志や感情と関係なく音楽が進行していき、追い立てられるような気がしたんですが、逆にそこに飛び込んでしまうと、風景の一部になれる感覚が芽生えてきましたし、長かった助走がなく、どこを切り取ってもおもしろく聴けるところも、これまでの鼓童との違いだと思います。住吉の作曲はとても細かくて、マリンバだけで何パートもあり、鳴物も音の高低を何種類もつけています。僕が鼓童に入った頃には、とても聞き分けられなかった繊細な音を、ふつうに取り入れているんですが、玉三郎さんに指導していただいた時代を経たお陰で、僕たちも繊細な音が聞き分けられるようになったわけで、改めてありがたく思っています。

Photo: Ryotaro Leo Ikenaga

住吉たち若い世代は、僕たちとは違う感覚を持ち、ずっと先を走っているので、ついていくのに必死なんですが、自分にないものをたくさん見せてもらえて、とても刺激的で楽しいです。僕や中込健太の世代は、選択肢は少なかったけれど、いろいろな意味で足腰がしっかりしていて、ひとつのことを徹底的に突きつめて身体をつくってきたところがあります。後輩たちのように、音層が厚くて繊細な演奏と、僕らの身体をミックスすることで、より強く豊かな表現を実現することが、僕らの役割だと思っています。

Photos: Ryotaro Leo Ikenaga, Erika Ueda

 


石塚充

Mitsuru Ishizuka

家族全員が太鼓の演奏家という環境で、幼い頃から太鼓に囲まれて育つ。1999年研修所入所、2002年よりメンバー。新人時代より主要演目に抜擢され、舞台では主に太鼓を担当。2007年より演出も手がける。穏やかな語り口と観察眼、的確な指示でメンバーからの信頼も厚い。「焔の火」「Stride」などを作曲。2013年、2015年「アマテラス」の音楽監督、スサノオ役を務めた。
2017年、「道」「EC30周年お祝いライブ」「ミッチェルシアター」の3つの舞台を演出。「坂東玉三郎がいざなう鼓童の世界」「幽玄」で玉三郎氏と共演。「初音ミク×鼓童スペシャルライブ」、石川さゆり「45周年記念リサイタル」、「KODO × Kids Dance」、「打男」国内ツアーなど多数の舞台に出演。

石塚充プロフィール
https://www.kodo.or.jp/meguru/member/mitsuru