鼓童ブログ Kodo Blog

内田依利インタビュー by ジョニ・ウェルズ


ジョニ・ウェルズが氏が、「鼓童ワン・アース・ツアー~神秘」と坂東玉三郎氏との作品作りについて、内田依利にインタビューを行いました。英語のブログに掲載されているインタビューを和訳して、皆さんにお届けします。

内田依利(うちだえり)は愛知県生まれ。鼓童メンバーの正式なメンバーとなって5年目。太鼓以外にも、唄、篠笛、踊りを担当。「鼓童ワン・アース・ツアー~神秘」では出演だけでなく、作曲も担当しています。

内田依利インタビュー by ジョニ・ウェルズ

 

Eri Uchida, Kodo Rehearsal Hall

内田依利(鼓童村の稽古場にて)

「鼓童ワン・アース・ツアー~神秘」は、坂東玉三郎さんを鼓童の音楽監督にお迎えしてからの第二作目です。今回、鼓童メンバーが作った曲のほとんどが新曲です。私にとって、玉三郎さんの第一作目「伝説」と、この第二作目の「神秘」の一番の違いは、女性メンバーがこれまで以上に活躍しているという点です。今までの鼓童の公演では、屋台囃子と大太鼓に向かって盛り上がっていって、お客様は男性奏者の強い印象を持ってお帰りになると思います。でも、「神秘」では女性奏者の印象も同じくらい残るかと思います。作品作りの始めの段階では皆で色んなことを試してみましたが、そのうちのいくつかは、演目として成り立つのかな、という不安もありました。この作品では、いつもに増して演劇的な要素があります。

「神秘」の演目のうち、二曲を私が作りました。「晴れわたる」という笛と太鼓を主体とした曲と、第二部の一曲目、「Chit Chat」という曲です。「Chit Chat」では、いわゆる「女子会」での女の子達のおしゃべりの様子を表現していて、第二部は、女性奏者が演奏しながら一緒に笑い合っているシーンから幕が開きます。

Chit Chat (From left: Maya Minowa, Mariko Omi, Eri Uchida, Akiko Ando)

Chit Chat
(左から:蓑輪真弥、小見麻梨子、内田依利、安藤明子)

一年前、玉三郎さんが私達に「神秘」をテーマにした曲を考えてアイデアを出すように言われました。私はそれまで作曲なんてしたことがなかったのですが、どうにかこうにか幾つかの曲を作って提出してみました。どうなるかは神のみぞ知る、です。でも、そうしたら何と使って頂けることになりました!それを機に、これからもっと作曲したいなぁと思うようになりました。作曲をする過程で、何かを創り出し、自分を表現するためには考え過ぎてはいけない、ということを発見しました。でも、もっと良いものを創るためには、沢山勉強しなきゃいけないなと思っています。

この作品では、神秘的な雰囲気を上手く創り出していると思います。次に何が起こるのか分からないような、どきどきわくわくするような要素があります。本当に沢山の色んなものが出てきますし、薄暗い照明の中で、提灯の明かりだけを使って様々なことをします。それによってお客様は想像力を掻き立てられ、さらに、ちょっと恐怖心のようなものさえ持つかもしれません。また、この作品では演奏者が舞台上で笑う場面があります。この間がとても難しく、自分たちにとって新しく、そして大きなチャレンジでした。他の特徴としては、若手が多数出演していて、メンバーになりたての新人も活躍している場面です。私は今年でメンバーになって5年目ですが、今回のキャストの中でキャリアは上から数えて4番目なんです!「神秘」は、これまでの鼓童にはない作品のため、太鼓とは直接関係ないようなこともたくさん勉強していますが、最終的には学んだことは全て太鼓の演奏に返ってきているのではないかと思います。

Namahage

なまはげ

玉三郎さんとの作品作りについて言えば、玉三郎さんは雰囲気作りを非常に大切にされていると思います。リズムを説明される時、「ドンドコ」とか、「カラカラ」とか、「テンテケ」といった従来使われているような言葉はお使いになりません。その代わり例えば、「“ザゾン”の音をちょうだい!」とおっしゃいます。「ザゾン?ザゾンってどんな音なんだろう」と思うこともあります。理解するのに苦労することもありますが、とても新鮮ですね。普通ならここでクレッシェンドになるとか、そこでブレスを入れるとか予想できるのですが、玉三郎さんはとても自由です。それでも、玉三郎さんのおっしゃった通りに出来ると、最終的にはとても自然な音になったりします。これは、玉三郎さんはいつもお客様にはどう聞こえるかということを、お客様の視点で考えておられるからだと思います。私達はこれまで、自分達演奏者にとって一番良く聞こえる音を出してきたんですよね。今までは私達にとって素晴らしく響いていたことも多分沢山ありましたけど、もし一歩外に出てお客様の立場で聞いてみれば、例えばソロを誰が演奏しているのか分からなかったかもしれないし、もしかしたら不協和音を聞いていただけかもしれません。

私は舞台への姿勢全部に玉三郎さんから影響を受けているような気がします。これまでよりもずっと真摯に、より集中して演奏に取り組むようになりました。全てのことが「舞台に立つ」ためにあるような感じです。mystery_TO_2251

「アマテラス」の公演後は、毎回玉三郎さんが細部に至るまでアドバイスを下さいましたが、演出の時は、「あなたならできる!」という感覚も与えて下さいます。舞台に立っている時は、心を開かなければなりません。玉三郎さんはいつでも、気兼ねせずに接することを許して下さいます。また、いつでも若手を成長させて下さいます。まるで、上の方から引っ張られているような感じです。玉三郎さんは、自分が考えている以上のことを達成できるんだ、と思わせてくれます


※ジョニ・ウェルズ氏によるインタビュのー記事は、英語ブログでご覧いただけます↓
http://kodo.or.jp/blog_en/articles-interviews/20140414_398.html

鼓童ワン・アース・ツアー~神秘 2014年9月~10月
http://www.kodo.or.jp/oet/index_ja.html#schedule09a


ジョニ・ウェルズ(Johnny Wales)

1953年、カナダ・トロント生まれ。トロント大学卒業(学士号取得)。1975年に初めて日本を旅行、その際、鼓童の前身である「佐渡の國 鬼太鼓座」に出会う。また文弥人形の師匠である浜田守太郎氏にも出会う。1976年カナダに帰国、鬼太鼓座の初めてのカナダツアーの制作を担当。1977~78年、佐渡に住み文弥人形を学ぶ。それ以来、鬼太鼓座、そして鼓童の仕事にたびたび関わりながら、文弥人形の指導、通訳、翻訳、また舞台照明の仕事に従事。その後、文弥人形の指導、活動をしながら木彫師として鼓童の舞台で使用する面を作成。1987年には The Kodo Beat(英文ニュースレター、2011年春に終刊)の最初の編集者として活躍。写真家、イラストレーター、そして Kodo eNews(英文電子ニュースレター、2013年12月に終刊)やブログ作成にも関わる。現在、ジョニ・ウェルズはフリーランス・イラストレータ、アニメーター、木彫師、人形遣い、そして作家としての肩書を持つ。カナダでは7冊の児童向け作品の挿絵を描き、その中の一冊『Gruntle Piggle Takes Off』(Viking Childrens Books出版)において、1996年、カナダの文学作品賞であるThe Governor General’s Awardの候補となる。1995年より、読売新聞にて、東京についてのイラストによるコラムを連載。現在、佐渡にて妻・智恵子と秋田犬のKyla (カイラ)とともに暮らす。

Website: www.johnny-wales.com (英語・日本語)

アーカイブ

カテゴリー

Top