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島根での「石見神楽」稽古/花岡哲海
改めまして、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ、鼓童をよろしくお願い致します。
さて、みなさんはどんなお正月を過ごされましたか?
僕は1月28日から始まる「ワン・アース・ツアー2015〜神秘 北米ツアー」に向け、新人を加えた「大蛇(おろち)メンバー」で島根県・温泉津(ゆのつ)で稽古をしておりました。
指導して下さったのは小林泰三さんを始め、温泉津町を中心に活動をしている、温泉津舞子連中(ゆのつ・まいこれんちゅう)のみなさんです。小林さんは神秘の構想から大蛇に携って下さった方の1人で、ご自身は石見神楽(いわみかぐら)の舞手であり神楽面の面職人でもあります。神秘で使っている蛇頭も、小林さん作なのです。
今回は新人を中心に稽古を進めて頂き、「どうしたらスムーズに動けるのか」「どうやったら大蛇に見えるのか」など、細かい所作や蛇胴のさばき方などを教えて頂きました。改めて気付く部分も多く、単純な動きに見えてすごく洗練されているのが石見神楽なんだなぁと感じました。
今回の稽古では「夜神楽の『大蛇』に参加する」というミッションがありました。「夜神楽」とは、毎週土曜日に温泉津町の龍御前神社の社殿で行われる、温泉津舞子連中の定期公演です。2年前に初めて稽古に来た時も参加させて頂きました。
夜、公演に向け社殿が飾り付されていくのですが、だんだんと石見神楽の空間や空気ができあがっていく様子は、とても感動するものがあります。神聖な場でありながら神様にすごく近いというか、崇敬の念を持ちながら身近に親しんでいる、そんな石見の人々と神様との関係が垣間見えました。2015年の初回の夜神楽公演ということもあり、神様が降りられる天蓋(てんがい)を特別に吊り、公演の支度が整いました。
今回は「大蛇」の他に、場を清めるという意味の演目「塩祓い」の「奏楽(お囃子)」をさせて頂きました。小林さんは舞手として加わって頂き、無事に演奏ができましたが非常に難しかったです。
お囃子の魅力というのは、聞くだけで踊り出したくなったり動きたくなったり、唄いたくなったりなど、人の気持ちを駆り立てる力がある所だと僕は思います。石見神楽は数百年受け継がれている芸能なので、観客を魅了し舞手を奮い立たせる、そんなお囃子が長い歴史の中で育まれて来たのだと思いました。ゾクゾクしてワクワクする、そんなお囃子や演奏ができる太鼓打ちになりたいものです。
「塩祓い」「恵比寿」と演目は進み、最後の演目は「大蛇」。『全国を旅するスサノヲが出雲の斐伊川に来た所、嘆き悲しむ親子に出会いました。翁曰く、毎年 八岐大蛇がやってきて娘を食べてしまい、最後の1人になってしまった。スサノヲは娘との結婚を条件に八岐大蛇退治を引き受け、見事に大蛇を切り捨て退治しました。』というのがストーリーです。
僕は大蛇を2年前の春に初挑戦し、今回で2回目となります。始まってしまえばあっという間という時間の印象はかわりませんが、1つ1つの所作に気をつかったり表現などに工夫を凝らしたりなど、前回よりもできた感覚はありました。また次に来た時は、もっと良いものにできたらと思います。
稽古中や本番前、ふとした時などに小林さんはお話をして下さいます。
「哲海くん、良いものってのは時間がかかるんだよね。」
確かに、石見神楽に限らず芸能や芸術など、僕らが「いいなぁ…」と思うものには相当な時間が費やされています。その時間は、毎日の少しずつの積み重ねや失敗苦労の連続、良いものにしようという気持ちの表れです。だからこそ人々を魅了し、惹き付けるものが生まれるのだと思います。
そして小林さんは続けます。「あたり前のことで良いから毎日やりなさい、しかも丁寧にすること。」
あたり前のこと、出来ているようで出来ていないこと。あいさつをする、靴をそろえる、感謝をする…。十人十色、その人にとっての「あたり前のこと」はいろいろありますが、あたり前なことの丁寧な積み重ねこそが、芸を極めるという事に繋がるし根源であると思います。舞台に直接関係する事でなかったとしても、巡り巡って役立つことがある。だからこそ、舞台人である前に1人の人間として芯をもっていきたいです。
北米ツアーまで残り2週間ちょっと。鼓童を、日本の太鼓を、日本の芸能を伝えるべく頑張ります!
鼓童ワン・アース・ツアー2015~神秘 北米ツアー
http://www.kodo.or.jp/oet/index_ja.html#schedule13a
島根で「神秘」公演千穐楽/松田菜瑠美
島根で「神秘」公演千穐楽
10/26 島根・大田市民会館にて「神秘」公演千穐楽。阿部研三、井上陽介は、ワン・アース・ツアーとしては最終公演になりました。
ツアーの最終地点は、石見神楽のある島根県。メインビジュアルでもあり、目玉演目の一つである「蛇舞」の本場で千穐楽を迎えました。島根に入った途端に草洋介のテンションが急上昇するなど、皆少々のプレッシャーを感じていましたが、ロビーでは蛇頭制作の小林泰三さんと、蛇胴制作の林史浩さんの展示(写真下)があり、客席からは蛇舞を教えていただいた温泉津(ゆのつ)舞子連中の皆様から絶えず応援の声と拍手が送られ、演奏者にはとても心強かったのではと思います。その中で演奏がより生き生きとなり、お客様だけでなく場内案内や舞台袖にいるスタッフも共にこの高揚した空気を作っているようでした。