『炎』の記憶/中込健太
『炎』の記憶 【EC2015】黒田征太郎×中村達也×中込健太ライブペインティング『炎』
2015年8月23日小木体育館 文●中込健太 写真●岡本隆史
アース・セレブレーション3日目の、真昼間。小木体育館には、溢れんばかりの人が集まっていた。時間がくると黒田さんは、『じゃあいこうか』という調子で、ひょいと体育館に入っていった。達也さんがそれに続き、自分もそこに入っていった。あまりにも、静かだった。キャンバス、ドラム、太鼓の前に各々が向かう。
大きく、ゆっくりと、呼吸している体育館。打ち合わせも、リハーサルもない。体育館の、外から吹いていた海風。蝉の声。草の匂い、ひまわり、潮のにおい、漁港、船、太陽。今日、三羽烏は、佐渡の命漲る夏の、ある一日、なのだ。夏の佐渡は昼時、その命の騒めく音でとても静かに感じられることがある。
黒田さんが『どうぞ』というような仕草でこちらに手を差し出す。
「音」だ。
僕は銅鑼を鳴らしはじめた。達也さんの一発目の音。達也さんのドラムの響きが理性を静かに消しさり、獰猛な欲望が騒ぎ出した。達也さんのドラムの音を浴びた無言の太鼓たちは、ゆっくりと何かを語りだす。自分の肉体はそれを媒介しているだけのものとなる。黒田さんは猛然と描きはじめた。
次々に塗り重ねられていく色。
そこからの僕の記憶は断片的になっている。
45分、自分たちも、観客もそれぞれが、それぞれの時を共有した。「人は、一人ではなにもできない」描きおえた黒田さんは、その言葉を観衆に投げかけた。
悠久の時を越えてきた佐渡の風土と、三人の血。そこに共鳴し、助けてくれた方々、海を越えて、島に引き寄せられた人たち、島のひとたち。全てのものが作用し合って、この体育館に集まった。一人一人の『炎』は一つになり大きく燃え上がった。
一つの大きな火柱となり、火の粉を撒き散らした。
そして、そこに居合わせた人たちはそれぞれに、その火を持ち帰り、また海を越えてそれまでの生活に戻っていった。
何かが、スタートした。と感じている。
お二人の大きな大きな懐のなかで、僕は、これまで感じたことのないほど「たたく」喜びを味わせていただいた。遥々、佐渡に来ていただき、同じ時を過ごせたことに、ただただお二人への、感謝の思いが溢れてくる。
それぞれの旅の中で、また三羽烏が、この佐渡での集合のように、どこかの土地で引き寄せられるように集まりたいと心から願っている。
今佐渡は、また静けさを取り戻している。秋が、そこまで近づいている気配。海に浸かったりしながら数日間、呆然とすごしていた。
8/23開催【EC2015】黒田征太郎×中村達也×中込健太ライブペインティング『炎』
詳細:http://www.kodo.or.jp/blog/pub/20150802_7108.html
▶▶『炎』ー三人でのライブに至るまでー/中込健太
http://www.kodo.or.jp/blog/performers/20150810_7166.html