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太鼓音楽にいざなわれ、垣間みる「永遠」。/芸術監督・坂東玉三郎


太鼓音楽にいざなわれ、垣間みる「永遠」。
芸術監督・坂東玉三郎

2014年公演パンフレットより
撮影:岡本隆史

太鼓芸能集団「鼓童」の芸術監督に就任してから早くも2年が過ぎ、3年目となりました。第1作目の「伝説」に続き2作目は「神秘」を、そして3作目として、今年は「永遠」をお届けいたします。また2014年の7月には、ヨーロッパツアーの為に「打男 DADAN」を新しく改訂して上演致しました。新しいツアー作品が4作とも考えられるのです。

Photo: Takashi Okamoto

今回の「永遠」では、全てを新曲で演出しました。このテーマを太鼓の公演で感じて頂くのは大変に難しいことですが、そこを楽しく創ることが出来たら、かえって面白い作品が出来るのではないかという感覚もありました。永遠とは、森羅万象の移り変わり、地球の回転、宇宙の広がり、人生の輪廻や、物事が螺旋状に回って行く 〝風〟のようなものを感じられたら永遠を表現出来るのではないかとも考えたのです。

Photo: Takashi Okamoto

稽古中「永遠」について皆で話し合っていたのですが、永遠とは「望み」であったり「夢」であったり「叶わぬ」ことであったり、現実には無いことだということに気が付きました。人間の思考の中だけに存在する観念なのでしょう。それだからこそ、永遠を求めて「ピラミッド」を作ったり「スフィンクス」に思いを込めたりしてきたのです。しかし現実に存在する物質的な物には限りがあります。「魂」だけが永遠なのかも知れませんが、魂は「存在」ではなく、ただ「有」るだけのようにも思うのです。観念的な考えではありますが「永遠」とは「有」と「無」の繰り返しなのではないでしょうか。

新曲としては「夜霧」「カタライ」「青天」「午睡」「魅惑」「直線」などが有り、様々な雰囲気を醸し出すことも出来ました。

Photo: Takashi OkamotoPhoto: Takashi Okamoto

「青天」は「神秘」の「霹靂」に続く、坂本雅幸君の新曲です。前田剛史君の作曲も数曲有ります。

Photo: Takashi OkamotoPhoto: Takashi Okamoto

また自分の新曲としては「午睡」と「魅惑」です。「魅惑」は、これまで鼓童に有った様々な金物の演奏で作曲してみました。振付も曲に似合うように振り付けました。「午睡」では木製の楽器を使ったのです。すると午後ののんびりした雰囲気が出て来て「午睡」と名付けたのです。

Photo: Takashi Okamoto

芸術監督として今日に至るまでに、太鼓を打つことと、音楽を奏でることの意味を様々な角度から考えていました。「大太鼓」や「三宅」などは、打ち手が自分の寸時の即興で構成をしながら体力の続く限り打ち続けて最終の盛り上がりまで持って行きます。その神秘的な風情が見る人に感動を与えてきました。その太鼓の打法は、全て太鼓の打ち手に委ねられるのです。しかし私は、将来に向かって音楽性を重視した太鼓というものが何であろうかと考えていたのです。それは打ち手が、作曲家の意図に忠実に、速度や強弱等が十分に制御され、そして抑制されていなければならないということでした。自由な表現というものは、それらの事柄が制覇され、打ち手が客観性を持って初めて成し得ることだと気が付いたのです。そして何よりも、太鼓で奏でる音楽を聴衆が「長い時間聞いていても心地良いと感じてくれること」に最大の目的を持っていかなければならないと考えたのです。

Photo: Takashi Okamoto

考えてみますと、70年代後半から各地に大変多くの太鼓グループが生まれました。これからの太鼓演奏というものを考えた時に、今日までの太鼓の打法と、太鼓の音楽性というものが僅かに別の意味を持っているということを、佐渡に通って十数年経った今になってやっと理解出来るようになったのです。そして今後は、新しく作られたものと、古くから伝わっているものが交互に往復し繰り返され、回転しながら螺旋状に成長して行くことが出来たら素晴らしいことに成るという考えに至ったのです。

Photo: Takashi Okamoto

毎年良い作品創りを…と考えながら、一生懸命演出に明け暮れしているうちに、あっと言う間に月日が経ってしまいました。団員の皆も、稽古の進め方、作品の作り方などを順調に進めていけるようになったのも嬉しいことです。これからも鼓童の皆と最大の力を尽くして未来に向って参ります。

今後ともに皆様の御支援を賜りますようお願い申し上げます。

坂東玉三郎

20150607oet

「永遠」6〜7月、9〜10月国内ツアー
http://www.kodo.or.jp/news/20150606oet_ja.html

【6〜7月】新潟・神奈川・埼玉・群馬・千葉・大阪・長野・京都・愛媛・広島
【9〜10月】千葉・茨城・宮城・山形・岩手・秋田・静岡・愛知・兵庫・鳥取・山口・福岡・鹿児島

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