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オンキヨー×鼓童 鼓童創立35周年記念限定モデル


オンキヨー×鼓童 鼓童創立35周年記念限定モデル

DP-X1イメージ
鼓童創立35周年を記念し、オンキヨー&パイオニアイノベーションズとのコラボ企画が実現いたしました。

創立35周年アニバーサリーモデルとして、オーディオファンから高い評価を得ているハイレゾ対応インナーイヤーヘッドホン「E700M」には巴と鼓童ロゴの刻印入り。高精細なハイレゾ音源を高い性能で再生するデジタルオーディオプレイヤー「DP-X1」には鼓童オリジナルのレザーケースと、未発表音源、オリジナル壁紙をパッケージしていただきました。
本日(5月28日)より7月3日まで、ネット予約を受付いたします。詳細はONKYO DIRECTにてご確認下さい。

DP-X1に収録して頂いた未発表音源は、1985年12月13日に新宿シアターアプルにて催された「鼓童十二月公演」より、藤本吉利の「大太鼓」です。30年前のアナログオープンリールからハイレゾ音源へ変換する作業とコラボ商品について、オーディオ評論家の長濱貞治さんに取材していただきました。以下にご紹介いたします。


文・取材◎長濱貞治 構成◎山本 昇

コラボ・モデルにプリインストールされる未発表音源のマスタリングに携わるソニー・ミュージックスタジオの鈴木浩二さん(左)と鼓童の洲﨑拓郎さん

コラボ・モデルにプリインストールされる未発表音源のマスタリングに携わるソニー・ミュージックスタジオの鈴木浩二さん(左)と鼓童の洲﨑拓郎さん

鼓童をいかに鳴らすかはオーディオの一大テーマ

5月上旬のある日、オンキヨー&パイオニア イノベーションズがデジタル・オーディオ・プレーヤーDP-X1の「鼓童」創立35周年記念モデルをつくることを聞いた。素晴らしいと思った。というのも、鼓童こそはハイレゾにふさわしいと心から思っているからで、ハイレゾに対応するDP-X1にとって、この上なく魅力的な共演者になることは間違いないと思ったのだ。

我々オーディオ・マニアにとって、鼓童は昔から特別な存在で、鼓童を満足に鳴らすことは、大げさに言えばオーディオ人生の大きなテーマともいえるほどだ。というのも、鼓童のメイン楽器である太鼓は、耳をそばだてないと聴こえないほどの微細な音から耳をつんざく大きな音まで、またステージいっぱいに並んだ巨大な太鼓から小さな太鼓まで、それぞれの固有の音色を鳴らし分けないとオーディオ的には満足できないからだ。ステレオ装置で、まさにそこで鼓童が演じているような再生ができたら、それだけでクラシックやジャズなどあらゆるジャンルの音楽をも満足に再生できると言われているほどだ。

再生が難しいとはいえ、鼓童はこれまでレコードやCDでも十分に魅力的だった。それでも時代が進み、鼓童の音こそハイレゾという大容量の器に収めるべきだと、ハイレゾ音楽通信サイトe-onkyoで配信されている『永遠』や『神秘』といった鼓童の作品を聴いて、そう思った人は少なくないだろう。

今回の鼓童モデルには、そのハイレゾ音源がプリインストール(付属のSDカードに保存)される。記念モデルのDP-X1を手にすると、すぐに鼓童のハイレゾが、しかも未発表音源が聴けるというのだから、これはすごい。そんなことがあっていいのだろうかと、かつてないコラボレーションに興奮する。まさにハイレゾ時代ならではの嬉しい組み合わせといえる。

鼓童のいつの舞台のどの演目がDP-X1記念モデルにインストールされるのか興味深いが、ちょうどその音源をマスタリング中とのことで、東京・乃木坂にあるソニー・ミュージックスタジオを訪問し、レコーディング&マスタリング・エンジニアの鈴木浩二氏と鼓童の洲﨑拓郎氏に取材した。

とても落ち着いた雰囲気の鈴木浩二さんが使用するMastering1ブース。平面を避け、反射と吸音を上手くバランスさせることで、自然な音響が得られるという

とても落ち着いた雰囲気の鈴木浩二さんが使用するMastering1ブース。平面を避け、反射と吸音を上手くバランスさせることで、自然な音響が得られるという

プリインストールされる1985年「大太鼓」のライブ音源

DP-X1「鼓童」記念モデルにプリインストールされるのは、アナログ時代に録音された貴重なライブ音源で、1985年12月13日に上演された「鼓童十二月公演」からの「大太鼓」。この楽曲の演者・藤本吉利は鼓童創設メンバーの一人で、現在は名誉団員に選ばれている。かつて新宿コマ劇場の地下にあったシアターアプルでの公演で、アナログ・オープンリール・テープに記録されていた、今から30年前の音源である。

1975年に初演された「大太鼓」は鼓童の最も古くからある演目であり、また象徴ともいえる演目である。同年のパリ公演以来、六尺褌の締込み姿で演奏されるようになったそうだ。面の直径は3尺8寸(約1.15m)、重さ400kgの大太鼓を締込み姿の男が己の肉体と2本のバチだけで打ち込んでいく。掛け声が掛かり、中頃から実に美しい笛が入り、後半はチャッパ(シンバル系の楽器)や鉦(かね)などが加わる。そうした音がホール全体を埋め尽くす勇壮な演目で、眼前に浮かび上がるのはやはり、65歳を過ぎて今なお現役である藤本吉利の若き頃の姿だ。勇姿という言葉がぴったりな氏は、「大太鼓を打つとき、自分が太鼓の神様への捧げ物みたいに思えてくるのです」と語り、「なんとか打たせてください」と祈りながら打つとも話している。(出典:出版文化社『いのちもやして、たたけよ。−鼓童30年の軌跡−』)

では、今回の未発表音源のマスタリングに携わるお二人に、この音源が選ばれた経緯や聴きどころなどを伺ってみよう。

良好な状態で発見された1/4アナログ・テープに録音されていた1985年の「鼓童十二月公演」。今回のプリインストール音源は、その中の「大太鼓」が選ばれた

良好な状態で発見された1/4アナログ・テープに録音されていた1985年の「鼓童十二月公演」。今回のプリインストール音源は、その中の「大太鼓」が選ばれた

−−鼓童の本拠地で30年間眠っていたアナログ・テープだそうですね。なにゆえこの音源を選んだのですか。

洲﨑 それには二つ理由があります。一つは今年、鼓童が35周年を迎えまして、自分たちの歴史を振り返ろうと古いものを掘り起こしていたときに、その一環として、このテープも発見されたということです。もう一つは今回のオンキヨー&パイオニア イノベーションズさんとのコラボレーションに際して、何か未発表でハイレゾにふさわしいものをというご提案を受け、ちょうどタイミング良く見つかったこの音源がいいと決めました。この公演で主に使用しているのは、1本の木をくり貫いて作られた胴を持つ「長胴太鼓」と呼ばれるものですが、なかなか30年前の太鼓の演奏をベストな音質で聴く機会はないでしょうから、ぜひその響きを楽しんでいただきたいと思います。

−−鈴木さんから見て、テープの保存状態はいかがでしたか。

鈴木 テープは録音されてからかなりの年月が経っていますから、湿気でベタ付いてしまっているなどの問題はありました。そこで、専用の乾燥用オーブンに入れて湿気を飛ばすなど下準備を完璧にして、今回は録音されている音をほぼ完全に引き出すことができました。

−−昔のアナログ・テープの音をハイレゾにマスタリングする良さはどこにあるのでしょうか。

鈴木 色々な考え方はあるでしょうが、ハイレゾというのは、マスター音源に記録されたパフォーマンスを、より忠実に再現してくれることが一番の特長です。今回の音源は、楽器の数だけマイクを立てるような録音ではなく、舞台全体を2本のマイクで録っていたようなのですが、それでもここまで生々しく録音されているということが伝わればいいなと思います。

−−実際にテープをお聴きになった印象は?

鈴木 非常に純粋に、素直に録ったという感じですね。演奏がそのまま実況的に録音されていますから、公演当時の雰囲気を強く感じます。

−−今回のマスタリングは、どのような点に留意して行おうとお考えですか。

鈴木 やはり、30年前の当時の想いというか、雰囲気が出せればいいなと思っています。そのあたりは、これから洲﨑さんと煮詰めていきます。

洲﨑 例えば古い建物があるとして、それを今の技術でピッカピカにすることもできるのでしょうけれど、あえてピッカピカではなく、30年経った良さというものを鈴木さんには出してもらえるのではと思っています。

−−そうした方向性は、お二人とも一致するものなのでしょうか。想いが違って、喧嘩になるなんてことは?

鈴木 エンジニアとプロデューサーの立場で、それぞれの想いが違うことはあります。でもそれで争いにはなりません。反対に意見をもらうと、ありがたいと思います。コミュニケーションを取りながら、お互いに上がっていくという感じですね。

洲﨑 お互いに色々な発言をしますが、引っ張り合う感じはないですね。自分が気付かなかったことを鈴木さんが感じ取られていたりして驚きます。私はずっと太鼓の世界にいますから、太鼓と劇場空間の感覚といったところを鈴木さんにお伝えしています。

鈴木 僕らエンジニアはマイクを通した音を聴くわけですけど、洲﨑さんは日頃から一番近くで生の音を聴いていらっしゃるわけです。つまり、異なる立場にいるから面白いのです。

−−鼓童のマスタリングで難しいのはどんな点ですか。

鈴木 ダイナミックレンジが広いことですね。音を電気化してまとめるときに、収める容量に制限があることです。限られた中で、より自然に聴こえるようにすることもマスタリングの大事な作業といえます。

−−今回のコラボは、非常に有意義なものになりそうですね。

洲﨑 70年代、80年代には鼓童の前身である鬼太鼓座のレコードをステレオ装置の音質を確認するためのソース(音源)として聴いていただいた方も多いと思いますが、時代が進んだ今、ハイレゾ時代でもこの音をぜひ楽しんでいただければと思います。

ソニー・ミュージックスタジオでチーフ・エンジニアを務める鈴木浩二さん。「今回の音源は2チャンネルでダイレクトに録られているようですので、会場の響きや演奏者の感情がそのまま伝わってきます。リスナーの皆さんには、音楽と会場の雰囲気を感じながら聴いていただければと思います」

鼓童グループ内のレコード・レーベル「音大工」代表の洲﨑拓郎さん。「e-onkyo musicでは鈴木さんに録音もご担当いただいた『永遠』も配信されていますが、ハイレゾは鈴木さんのお力もあり、舞台の音にかなり近づいているなと感じます。すごく生々しくて、我々も驚いています」

今回のハイレゾ・マスタリングで使用されたAD/DAコンバーターはAntelope Audio Eclipse384(上から3段目)

24bit/192kHzのハイレゾから見えてくるもの

洲﨑さんによれば太鼓の面白さとは、「打ち手の状態がそのまま音に現れる」ことだと言う。「すごくいっぱい体を使わなければならないので(笑)、体調が悪いときは体調の悪い音、調子のいいときは調子のいい音が出るんです」。そんな太鼓を洲﨑さんは「人間のすぐ横にいてくれる楽器」と表現する。さらに今回の音源については、「30年前のこの舞台の人たちの調子はどうだったか。そんなことまで感じ取れるような音になっていればいいですね」とも。

マスタリングが始まったばかりのときに取材させてもらい、最終的に鼓童コラボ・モデルのDP-X1にインストールされた「大太鼓」を聴いたのは後日だった。24bit/192kHzのハイレゾでインストールされた「大太鼓」は、もちろん素晴らしいとしか言いようがない。まったく月並みなことを言って笑われそうだが、それは仕方ない。というのも、全作品を所有しているわけではないけれど、これまで個人的に聴いてきた鼓童はLPからCD、SACDまですべてのメディアで、素晴らしいと感じなかった作品がないからだ。

インストールされた「大太鼓」は新宿シアターアプルのステージを彷彿として蘇らせる。舞台から遠い方のS席でステージを見ている感じで、これは自分のヘッドフォンで聴いたときの印象。鼓童コラボ・モデルのDP-X1と同時に発売されるインイヤー・ヘッドフォンE700Mの鼓童モデルでは、もう少しステージに近い席で見ている感じとなる。この「大太鼓」は音を聴くというよりも音(太鼓)を見るような感覚で聴いて欲しい。

打ち手の体調までは残念ながら分からなかったが、藤本吉利の気迫あふれる勇姿、ほとばしる汗、張り詰めた様は見えた。さて、皆さんはどうお感じになるだろうか。

新宿シアターアプルの音源を収録したマスター・テープをSTUDER A820で再生する鈴木さん

取材後記

鼓童の洲﨑さんに、どうしても訊きたいことがあった。「私のような太っちょは鼓童には入れないのですか?」−−すると、洲﨑さんは笑いながら「応募には18歳から25歳という年齢制限はありますが、学歴も国籍もまったく問いません」と。しかし、鼓童のメンバーは誰もがスリムで筋骨隆々ではないか。「今は研修所で2年間研修するのですが、皆やせますね。太っていられないんです」。うーむ、誰もが2年間であんな体つきになるのか。これはすごい。スリムな洲﨑さんも、脱げばすごいんだろうなぁ。

迫力ある大太鼓のシルエットは当時のパンフレットより。こちらは板を組み合わせた「桶」状の胴を持つ「桶胴太鼓」

迫力ある大太鼓のシルエットは当時のパンフレットより。こちらは板を組み合わせた「桶」状の胴を持つ「桶胴太鼓」


「鼓童コラボレーション・モデル」レビュー

Text by Sadaharu Nagahama

■ハイレゾ・プレーヤーDP-X1で聴く「大太鼓」

DP-X1はちょうど手のひらサイズのポータブルなハイレゾ・プレーヤーで、薄く四角い金属の塊なのだが、まぁ実に美しい。とてもきれいに磨かれているから、ツルっとすべりそうになってしまうのではないかと思ったが、心配は無用だった。鼓童のシンボルである巴の紋章をあしらった付属の専用ケースが付属するので、実際の使用にはこれが重宝するだろう。

そして、肝心の中身だが、ハイレゾに強いオンキヨーならではの、こだわり抜かれた内容で、最高峰のESS社のDAC(デジタル信号をアナログ信号に変換する回路素子)が贅沢にも2個使われている。機能や操作の詳しい解説は省くが、ヘッドフォンだけではなく、アンプへと接続してスピーカーを鳴らすこともお薦めだ。

DP-X1鼓童モデルにプリインストールされている「大太鼓」の演奏時間は約8分で、アナログ・テープに録音された音源が24bit/192kHzのハイレゾでマスタリングされている。DP-X1で聴く「大太鼓」は何度でも聴きたくなるのが特徴で、聴くたびに新しい発見をする。あれっ、人が動いてる、おっ、ここにも音がある、後半はどうやら、太鼓のまわりを楽器を手にした人が踊っているようだ、などなど。それも演奏の腕や音がいいからで、そうした発見をぜひ楽しんで欲しい。

デジタル・オーディオ・プレーヤーDP-X1のコラボレーション・モデル

デジタル・オーディオ・プレーヤーDP-X1のコラボレーション・モデル

 

DP-X1のパッケージ

DP-X1のパッケージ

巴の紋章をあしらった専用ケースも付属

巴の紋章をあしらった専用ケースも付属

■インイヤー・ヘッドフォンE700M鼓童モデル

鼓童モデルにはハイレゾ・プレーヤーDP-X1の他にヘッドフォンもある。オンキヨーのE700Mがベースになったインイヤー型で、耳に差し込むタイプのヘッドフォン。鼓童モデルにはハウジングの部分に巴の紋章と“KODO”のロゴが入る。

DP-X1はあらゆるヘッドフォンに対応しているが、せっかくだからと考えるなら「ハイレゾ対応」と謳うE700M鼓童モデルはお薦めだ。わずか2ccの空間(耳の容積)に音を強制的に放射するインイヤー型のヘッドフォンは、ややもすると装着感が悪いとか耳が疲れるなどの問題がある。その点、E700Mは圧迫感が少ないデザインを採用していて、耳が疲れない。かといって高域が出ないわけではない。実測データではなんと40kHzまで伸びている。質がいいのだ。劇場の空気感は超高域にあり。だからこそ高域再生に有利なハイレゾが有効なのだが、E700Mの高域は本当に素晴らしい。

では低域は? こちらは自分次第だろう。というのも、低域はチップ(耳に挿入する部分)で大きく変化するからで、そのためにもE700Mには3種類のサイズの異なるシリコンチップと、もう一つcomplyチップという、何というかジワっとした感触の、耳の穴に超ぴったり押し込めるチップの4種類が付属していて、それらを好きに選べる。各種チップを試して好みに合った低音を選ぼう(メーカーの狙いではないかもしれないけれど)。

E700Mの音の印象はクリアさと、ポンと浮かび上がる楽器や人の声といった感じで、私用のヘッドフォンに較べると新鮮というか瑞々しさを感じさせる。「大太鼓」を聴くのに不満のない再生をしてくれた。

こちらはインナーイヤー・ヘッドフォンE700Mのコラボレーション・モデル

こちらはインナーイヤー・ヘッドフォンE700Mのコラボレーション・モデル

撮影:岡本隆史

サントリーホールで3日間の特別公演!「鼓童 創立35周年記念コンサート」
2016年8月18日(木)・19日(金)・20日(土) 18:30開演◎詳細はこちらをご参照ください。[撮影:岡本隆史]

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