和太鼓の響きの中に、きらびやかなドラムの夢が通り過ぎる… 芸術監督・坂東玉三郎演出の最新作は、次々と現れるイマジネーションの旅。
緊張とリラックス、静けさと喧騒、そして混沌と融合。叩き奏でる音色が織りなす心地よい時間をお届けします。
この数年間に鼓童のツアー作品を3本新作を作ってきました。そして今回は「混沌」というタイトルで、さらに振幅の広い作品をと思って作りました。
鼓童というグループと一番初めに発表したのが2003年の「鼓童ワン・アース・ツアー スペシャル」のための作品でした。その後「アマテラス」、「打男」、「伝説」、「神秘」、「永遠」となります。この次にはどのような音楽的な広がりのある作品を創ろうかと考えていたのですが、今回は思い切って、ドラムセットを入れてみたのです。既に「伝説」ではティンパニを入れましたが、思いのほか和太鼓との音の馴染みが良く、今ではほとんどの作品で太鼓の響きの後の余韻として、自分にはなくてはならないものとなっています。
このようにして、さまざまな打楽器を使っていくうちに、ティンパニ、ドラムセットはもちろんのこと、和太鼓も西洋打楽器も含めて、すべて打楽器であることにはまったく変わりがないということに改めて気が付くのです。演奏者が打楽器奏者として芸術的で音楽的な演奏さえ実行出来れば、西も東も、また古代も現代も未来もすべての音が融合して、心地よく聴くことが出来ると思いました。
芸術は、継承と発展を繰り返しながら未来へと進んで行きます。人間は常に過去を懐かしみ、未来に不安を抱くのは当然のことですが、思いきって新しい試みをしてみることで、また更に新鮮な雰囲気が醸し出されて行くのでしょう。
「混沌」という言葉を辞書で調べると「全てが入りまじって区別がつかず、はっきりしないさま」とあります。
混沌から融合へ、それは宇宙の成り立ちを考えれば当然のことですし、人間の心自体が混沌とした中に浮遊しながら存在するのかも知れません。混沌とした中から融合が見出され、そしてまた混沌として散らばって行く…。
言葉や、思想や、観念では説明の出来ない世界であるにも関わらず、心地よく清々とした時間を共有していただけましたら幸いでございます。
坂東玉三郎
坂東玉三郎
梶原徹也
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