鼓童特別公演2015「道」/松浦充長
鼓童特別公演2015「道」
KAAT神奈川芸術劇場で公演を行った「道」。1990年代の演目を中心に構成したこの舞台には、自分が初めて鼓童の舞台を見て「鼓童に行くんだ!」と決めた頃の演目が並びました。当初は懐かしさで取り組んでおりましたが、スタッフとしてこの舞台の壁の高さを痛感いたしました。
稽古を進めていくうちに心の奥から湧いてくる感情…
(懐かしいと思うだけではだめなのでは)(その先に伝わるものがなければ次の世代に渡せられない)。
伝統とは、ありのままの姿を伝えていくことではないと自分は思います。その時、その瞬間に、生きている人間の息吹が加わってこそ引き継がれ継承されていくのだと。
「道」の公演をご覧になられたお客様より「坂東玉三郎さんの演出を経て、音が綺麗になった」というご感想や、「(演奏のレベルの高さを目の当たりにして)太鼓をやめたくなりました」という衝撃的な感想をいただきました。
「伝統と革新」どちらかに偏り過ぎては舞台の進化は得られません。自分が鼓童の公演を見て人生が変わったように、これからも人の道標となるような舞台をお客様にお届けするんだと強く感じました。