Photograph: Jacques Moatti
現代作曲家・石井眞木氏の組曲「輝夜姫」(1984年初演)を、来年2010年6~7月、パリ・オペラ座バスチーユに於いて新演出で上演することになりました。現代バレエ界最高峰の振付家イリ・キリアンによる振付けで、オペラ座バレエ団、西洋打楽器奏者、雅楽奏者と共に、鼓童からは7名の演奏者が出演します。和太鼓グループとしては初めてパリ・オペラ座の舞台を踏むことになります。
組曲「輝夜姫」は創作当初から、日本の打楽器群、西洋打楽器群、バレエ、パントマイム、語りなどによる総合的な舞台作品として構想されたもので、数多くある石井眞木作品の中でも特別な編成によるものです。
初演は1984年ベルリン・オペラハウスに於いて、鼓童とベルリン・オペラ打楽器奏者によって上演されました。バレエを含む舞台作品としての初演は1985年、東京に於いて、鼓童、スターダンサーズ・バレエ団、岡田知之合奏団によって行われました。
1988年には石井眞木氏とイリ・キリアンとの出会いから独特な東西両芸術による幻想的な舞台が創造され(オランダ ハーグ・フェスティバル)、以降、劇的な成功を収めています。(鼓童からは近藤克次が出演)
※近藤克次氏は現在、ソロ奏者として活動中
パリ・オペラ座バスチーユ
「輝夜姫」は東洋と西洋の打楽器にバレエを組み合わせた作品ですが、石井眞木さんが鼓童のために書いてくださった作品とも言えます。この曲には、それまでの鼓童との作品「モノクローム」や「入破」、鼓童の舞台で演奏されていた「三宅」「屋台囃子」「下山囃子」などの演奏テクニックがすべて盛り込まれていました。当時、石井眞木さんは「次の鼓童の作品は考えられないと思えるほど、アイデアを出し尽くした」と話していました。
1984年の初演時は組曲として演奏しましたが、物語りを音楽だけでなく視覚的にも表現するために、打楽器の演奏にも演出がなされていました。たとえば、かぐや姫をめぐり貴族と村人が争う場面があったのですが、鼓童が西洋打楽器を、西洋打楽器奏者が和太鼓を叩き、争いを表現する演出があったことを覚えています。
1985年にバレエが加わり、鼓童がバレエと組んだ最初の曲となりました。現在のバレエ界でも、このような楽曲は珍しいと思います。こうした作品がオペラ座で演じられることも非常に稀なことではないでしょうか。また、今回は新演出になるとのことです。そうした意味でも、鼓童がオペラ座バレエ団とともに「Kaguyahime」でパリ・オペラ座の舞台に立てるというのは大変光栄なことです。
山口幹文