プレイヤーの目

2008年4月より10月まで掲載されたインタビュー「プレイヤーの目」です。

第六回「中込健太 × 『三宅』」

メンバーになってまだ一年半というキャリアで『三宅』ソロを務め、また、今年の春のワン・アース・ツアーでは『三宅』の他にも、『大太鼓』の裏打ちという大役に抜擢された健太さん。健太さんにとって『三宅』とはどんな演目ですか?

『三宅』は自分の中で特に思い入れの強い曲です。準メンバーになった時、とにかくこれをやりたくて『三宅』ばかりを練習していました。

この演目は、演奏者の気迫や緊張感がとてもリアルに伝わってきて、物凄いエネルギーが波のように押し寄せてくる印象がありますが、演奏中は何を思いながら太鼓に向かっていますか?

自分が演奏する時に大切にしていることは、“気持ち”をどれだけ込められるか、ということです。なので、集中して曲に入り込んでいくようにしています。とてもシンプルなリズムなので、一発一発に強い意志とか感情が爆発していないと、聞いていてぜんぜん足りない感じがしてしまうのです。

「シンプル=単純」、ということではなくて、きっと余計なものがすべて削ぎ落とされ、必要最低限の素材で構成されている。なので、演奏する側の気持ち一つで、曲の重みが変わってきてしまうのかもしれませんね。では実際、“気持ちを入れる”演奏というのはどのように生まれるものなのですか。

写真: 岡本隆史

初めて『三宅』のメンバーに入れたとき、個人稽古をつけてもらっていたのですが、最初の一発目の「ドン」がなかなかうまく打てず、「ドン!」と打っては「だめ、もう一回」のくり返しで、延々それだけ一時間以上繰り返していました。だんだん体力もなくなって、フラフラになり気持ちも折れてくるころにも「もっともっと気持ちを入れて打て!!!」と怒鳴られたりして、もうどうしようもなく追い詰められてヤケクソで一発打ったら、やっと「最初からそれを出してよ!!」と言われました。

一つの演目に限られたことではないですが、特に『三宅』ソロを務める演奏者の手。以前、豆がつぶれて痛々しい状態になっているところを見せてもらったことがありますが、健太さんの話を聞いて、『三宅』の稽古が技術を鍛えるだけでないことが伺えます。

そうですね。そういう追い込んだ稽古で気力と体力をつけていったのが、後からの自分の自信になったのだと思います。あのキツイ稽古があったから“プレッシャーに押しつぶされないぞ”と思えたり、しんどい時にもやけくそになれたりしますし(笑)。

健太さんも特に思い入れの強い、この『三宅』という演目。ずばり、その魅力は何でしょう?

今年のECの祝祭(アース・セレブレーションの最終日に行われる野外コンサート)で、ベテランメンバーが『三宅』をやっていたのを、自分は舞台袖から見ていたのですが、それが物凄い演奏で鳥肌が立ちました。技術はもちろん確実ですごいし、気迫も真剣勝負の緊張感があって。自分がやると力任せに「ワーッ」っとなってしまうけれど、ドカスカやるだけではない「ドシッ」としたものを感じて、“これが本物かー”と圧倒されました。お客さんの反応も“これを待っていた!”という感じがしましたね。知弘さん(見留知弘)のソロの時には大興奮で歓声を上げている人などもいて、曲が終わったときの拍手も凄まじく、あらためて『三宅』のすごさを思い知りました。

先日、健太さんの出身地、町田(東京)で行われた公演中には、三宅ソロを打ち込む健太さんに、地元の方の声援で会場が熱気に包まれたのも、とても印象的でした。現在は秋の国内ツアーの真っ只中ですが、そのすぐ後には、南米公演も予定されていますが、最後に一言、健太さんが目指す自分像を教えてください。

自分もいつかは、「あの人のソロが見たい!」と言われるような、三宅ファンの血を騒がすような打ち手になりたいです。

今後も、健太さんならではの『三宅』、楽しみにしています。ありがとうございました。

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