プレイヤーの目

2008年4月より10月まで掲載されたインタビュー「プレイヤーの目」です。

第三回「見留知弘 × 『大太鼓』」

鼓童の公演において、圧倒的な迫力と緊張感で会場の空気を一つにする演目、『大太鼓』。ツアーで初めて、この『大太鼓』という演目を担当したときの思い出を聞かせてください。

一般公演ツアーでの初演奏は約10年前、1997年でした。やはり『大太鼓』は鼓童公演の看板演目ですから、プレッシャーがかなり大きかったですね。公演日ではなくても、移動日とかオフでも大太鼓のバチだけは持っていたのを覚えています。(笑)

強靭な精神力と体力を使う演目だと思いますが、私生活ではどんなことに気をつけていますか。

まずは、体調管理ですね。2ヶ月弱のツアーですが、2ヶ月ともなれば季節も変わりますし、公演地も転々としていきますので、気温も環境も変わっていきます。ですので、特に風邪をひかないように、気を張っています。

ツアー中だけでなくツアー前も、佐渡での限られた稽古期間を最大限に活用し、新しい公演の内容を固め完成させ、そして旅に出る鼓童のプレイヤーにとっては、常に健康でいるというのは、それもまた鍛錬なのかもしれませんね。とはいえ、生身の身体。これまでに、体調が悪い中で舞台に上がったという経験はありますか。

以前、アメリカツアーで、不覚にも風邪を引いてしまったことがあります。体調が良くないと、やはり気持ちも身体も負けそうになるので、演奏前に裏打ちを担当していた洋介(小田洋介)に、最後の追い込みで煽るようにお願いして乗り切ったことがありました。あ、それから、坂東玉三郎さん演出のワン・アース・ツアー・スペシャルの時に、大太鼓の出番の前に首を回していたら、首筋が攣ってしまい、それでも代役を立てる時間もなく、『大太鼓〜屋台囃子』までやって、休憩時間に針を打ってもらい、後半の舞台を務めた事もありました。

体の不調は本人の精神力で乗り切ると同時に、仲間同士で助け合うことも重要なのですね。演奏中の怪我についてはいかがですか。

怪我というか、ちょっとしたハプニングみたいなものですが、打ち込んでいる途中でバチを飛ばした事は、何度かあります(笑)。それから、たまにですが、演奏中にバチで自分の頭を叩いたり、耳を叩いたりしてしまうこともあって、そういう時は、叩くしんどさよりも痛みのほうが勝るくらいの激痛に耐えながらも演奏を続けます。

今回のツアーは全25回の一般公演に加え、ワークショップの開催も予定されているようですが、怪我や事故などありませんように。次に、大太鼓を打っていて、一番気持ちよいと思う瞬間、叩き手、あるいは知弘さんにしか感じられない感覚などがあれば、教えてください。

大太鼓は、自分の顔の前に打面があるので、太鼓の響きが良く聞こえて、気持ちよいですね。これは打たなければ分からないでしょうね。大きい太鼓ほど、余韻が長いですから、一発の音を充分に楽しめます。

叩いた音が空気の振動となって身体に伝わる大太鼓。客席にいても、繊細な響きの変化が身体で感じらます。最後に、今回のツアーの意気込みや、メッセージをファンの皆様にお願いします。

公演を見て頂いて、会場にいらっしゃる皆様が感じ取るものが私が太鼓で皆様に伝えたいこと。ですので、お客様にそういった、大太鼓の響きを通じて心から心に直接伝わるメッセージを感じて頂けるように、叩きたいと思います。

春ツアーもついに幕を開け、鼓童の屋台に乗った国産の欅大太鼓の重厚な音が、知弘さんのバチの先から全国の皆様に届いていきます。貴重なお話、どうもありがとうございました。

Top