鼓童叢書

2003年8月

鼓童文化財団では、私たちが佐渡をベースに活動する中で出会った事柄を「鼓童叢書」としてまとめるべく準備を進めてきました。そしてこの度、その第一巻が佐渡のたらい舟をテーマとして刊行の運びとなりました。今後もこの鼓童叢書を通じて、私達が未来に向けて携えていくべき思想、智恵、技術、メソッドなどを身の丈サイズで考え、現代に提案してゆきたいと考えています。

既刊

  1. 佐渡のたらい舟 —職人の技法—

鼓童叢書発刊に際して

1981年に生まれた「鼓童」の活動には、「佐渡の國鬼太鼓座(1971年創設)」が掲げた「伝統文化のルネッサンス」の旗印が継承されている。そして、民俗・古典芸能や民族・現代音楽の幅広い教えと刺激を受けて創作した演目を通して、新たな舞台芸術の分野を切り拓いてきた。その成果は国境を越え、普遍性を持った同時代の表現として世界に受け入れられている。

現在、時代は21世紀を経て大きな転換点に差し掛かっている。それは、科学技術の力を頼りに自然と対峙しようとしていた人類が、自然との共棲が必要であることを知り、伝統的・民俗的な人類の知恵を必要とし始めたことである。そして、風土と調和した地域循環型の価値観を再構築する作業が今求められている。

そのような時代にあって、新たな地域・地球文化の創造を目指し1997年に設立された鼓童文化財団では、鼓童の活動を通して少しずつ貯えてきた経験や知識を、自分達の資産としてとどめることなく、広く社会に還元できる方法を模索してきた。

鼓童叢書は、そのような流れの一つとして生まれた。この叢書は、単なる研究や実践の記録ではなく、現代そして未来に生かすことのできる具体的な提案を多く含んだものでありたいと考えている。そして、この本の読者がその内容を活用し、生活や創作の場に生かすことによって、さらに有効な知恵として高められていく端緒としたい。その意味でこの叢書は、舞台が観客によって創られていくように、読者によって育てられて行く、豊かな未来を示唆するものとなることを願っている。

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