鼓童発のカセットレーベル「0on(ゼロオン)」始動!

鼓童発のカセットレーベル「0on(ゼロオン)」始動!

この度、「0on」ゼロオンという、鼓童発のカセットレーベルを立ち上げました。
普段の鼓童の音楽とは違った、前衛的な実験音楽をベースに、ソロや少人数での作品を取り上げていく予定です。

数年前、初めて新譜カセットのミュージックシーンの存在を知り、そこからどんどんのめり込んでいきました。
そこには多種多様な音楽表現があり、尚且つ、大量生産大量消費の音楽ではなく、カセットというメディアを使った、限定的な発信のスタイルが、とても新鮮に思えました。

カセットの音色にも、とても可能性を感じています。
再生環境によって変わってこそしまいますが、そこも魅力の1つであり、やはり重低音の弾力はテープでしか味わえないものだと思っています。

「0on」ゼロオンというレーベル名は「0音」という意味から名付けました。
1音目が出る前、1音目になる前。
数学史上で、初めて「0」が発見されたときのように
有り触れた音世界を、今一度見つめ直し
まだ見ぬ音の可能性を追求したい。

そんな思いが込められています。

音楽は聞き流すこともできれば、集中し、没頭することもできます。
どうか私たちの音世界に歩み寄って、一緒に旅をしてみませんか。

ロゴデザイン:前田順康

 

9/7 ケンタタクユウタタク、住吉佑太ソロ 2作品をリリース!

「001 零音ゼロオン

ケンタタクユウタタク3rd Album
0onレーベル第1号
楽器を使わない多人数アンサンブル作品や、物音系コラージュ作品
即興演奏など全4曲を収録。
ケンタタクユウタタクの、また新しいサウンドが詰め込まれた意欲作。

オンラインストアで購入

あるとき、
コンクリートポエトリーという表現があるということを知った。

文字や言葉の持つ意味を排除し、解体し
物質としての言葉の可能性を模索する。
まるで絵のように、ならべられた
形としての文字の羅列から感じられるさまざまな
イメージを楽しむ詩があることを知った。

この時
これを音で行うことができないかと考えた。

音をバラバラに解体し
奏でる、というよりは
現象のような音の、断片を
紡いでいったとき
聴衆に各々に
さまざまなイメージを喚起させることができるのではないかと考えた。

そう考えが至るにあたったのは
皆川まゆむとのセッションの体験にある。

アスファルトを引っ掻く音、
土を叩く音、滝の音、
さまざまな音の中からうまれるおどりをみて
音を聴く人の中にどれほど
豊かなイメージがひろがっているのだろうと
見渡すことのできない、想像力を
感じた。

住吉佑太と、鼓童研修所で研修生とともに
楽器を使わずに、
さまざまなイマジネーションで
音を生み出し、
その断片を録音するという試みをした。

単なる手拍子が雨の降る音にも、
天プラを揚げる油がはぜる音にも
聴こえる。
息をする音が、風のようにも波のようにも聴こえた。
あるときには霧がかる山の情景が脳裏に喚起された。
この音たちは、楽曲と呼ぶより
余白をたくさんのこし、紡がれた
一編の詩のようにおもえた。

一心不乱に、たたく行為を探求してきたが
あらためて、
【聴く】立場に立ったときに
見えた世界は新しく、感動があった。

この時、録音された音と
後日、皆川まゆむのダンス作品のために、皆川と共同作業で録られた音を
住吉佑太がコラージュした作品が
「零音」というアルバムになった。

【聴く】という事から生み出されるもの。
喚起されるもの。

一音の響きから人の心にどんな景色が
生まれ、消えていくのか。

波打っていない湖面に石を投げ入れるように
静寂にどのような一音を、我々は鳴らすか。
その音は、聴衆に何をもたらすか。

みみをすませ【聴く】力にゆだね
時を忘れて
消え行く音の行方を追ってほしい。

中込 健太

「002 Mogari」

全編完全自宅録音による、篠笛だけを使った、住吉佑太初のソロ作品。
ドローン、物音、ミニマル、様々な音楽形態を形取りながら、篠笛の音表現の可能性を追求した1枚。全6曲収録。

→鼓童オンラインストアで購入

切りっぱなしの無数の竹に、海風が当たる。
1本1本の切り口で、空気の渦が音に変わる。

風の強さに変化する音色は
様々な倍音を発生させながら
互いに干渉し合い
無限の事象を生み出していく。

原初の音楽がそこにあるように思う。

倍音を辿って、偶然発せられる旋律は
モンゴルやアイヌのそれにも近く感じられる。

西洋音楽的な和音ではなく、無作為で自然的な音の重なり。
本当の意味での無調。

そんな宇宙的な音世界から
完全協和音を手がかりに
長い年月をかけて形作られてきた
人間の生み出す音楽たち。

自然、人間、音楽。

篠笛という楽器で、7畳半の自室から
それらについて表現したいと思った。

住吉 佑太

 

研修所講師ご紹介〜ヴォイストレーナー 野上結美先生〜 『全身を楽器のように…』/ 三浦 友恵

ヴォイストレーナー 野上結美 先生

 

 

 

 

 

 

 

2014年より鼓童研修所講師。

〈プロフィール〉
武蔵野音楽大学声楽科を総代にて卒業。

二期会オペラ研修所を修了後、岡村喬生演出NPOみんなのオペラ「魔笛」にて夜の女王役でオペラデビュー。その他多数のコンサートに出演。

イタリア、アメリカ留学を経て近年では、箏やダンサー、DJとのコラボレーション、CMなどの挿入歌などオペラをはじめ、ジャズ、ソウル、ゴスペル、シャンソン等を取り入れながら独創的なステージワークにも取り組んでいる。

ヴォイストレーナーとしても定評があり、アイドルグループやJ-popグループ、数々の劇団、舞台、ミュージカルの発声指導を担当。
二期会会員、二期会ロシア東欧オペラ研究会。

近年は鼓童のメンバーにも唄の指導を行う。また、鼓童名誉団員・山口幹文、小島千絵子と共演。

 

「自身が発声にとても悩んできた人生でした。 発声基礎を教えるボイストレーナーとしても活動しています。」

 

『鼓童との出会いは?』

 

友人に誘われて、アース・セレブレーション2008に遊びに行きました。

城山コンサートでの野外での音に興奮したのを覚えています。

Earth Celebration2008「城山コンサート」(撮影:宮川舞子)

 

『研修生への指導の内容は?』

 

歌い手として、全身を楽器のように使えるようにするための体づくり。

歌の呼吸、響き、滑舌、楽譜の読み書き、歌詞の解釈、表現力など…

歌はメンタルもとても大事なので、メンタルの向き合い方、整え方などもお話します。

立ち方から意識しながら、発声の基礎を行う

 

『最初に指導に来られた時の印象や記憶に残っていることはありますか?』

 

とても良い環境で研修ができて羨ましいと思いました。

研修所での全てのこと、人間の根本的な生活を大切にすることで、生み出す音がとても現実的で嘘のない音に繋がっていくんだなと感じました。

苦労はとても多いと思いますが、全てが音楽表現の糧となる貴重な環境だと思いました。

体の様々なところを意識しながらの、唄の実践

 

『研修生へ指導を通して思うこと、伝えたいことは?』

 

たくさんの学びを通じて、迷い、悩み、気づくことが多い中で自分こそが進んでいける道だと信じ、自分を応援しながら頑張って欲しいです。その姿勢は歳をとってもずっと通じていく道です。

何度でも基礎に立ち返り、自分を磨き続けられるプレーヤーになって欲しいです。

5月、研修所にて(前列中央は一緒に稽古に来てくださっている京矢先生。右隣が野上先生)

次回は「ボディトレーナー  京矢彩希先生」をご紹介いたします。

 

講師のお二人に鼓童ハートビートラヂオへご出演頂きました。
こちらでは、発声と身体づくりついてより詳しくお話して頂いております!

Noism×鼓童「鬼」/平田裕貴

Photo: Erika Ueda

音を鳴らす
空気が震える
身体が弾ける

Photo: Erika Ueda

身体を揺らす
風が吹く
音が導かれる

Photo: Erika Ueda

“タタク“と”オドル”

タタクからオドルのか
オドルからタタクのか

Photo: Erika Ueda

お互いに影響し合って
ぶつけ合って
混ざり合って
渦巻いていく

Photo: Erika Ueda

そんな作品に仕上がっています。

今回の作品「鬼」で
タタクとオドルは
お互いに影響し合いながらも
根本的には、共通する震源のエネルギーから
同時発生している感じがする。

全て事前に決まっている楽曲や振付
それを表現する身体は
常に即興状態。
今回の公演の醍醐味。

タタクに触発されるオドル
オドルに触発されるタタク
同時に発生するタタクとオドル

Photo: Erika Ueda

生音やライブの意義は常々感じているけど
今回はさらにそれが毎回面白くて
ワクワクする。
ドキドキする。

 

Noism×鼓童『鬼』
いよいよ明日初演です。

Photo: Ryu Endo

2022年7月1日(金)〜30日(土)Noism × 鼓童『鬼』(国内ツアー)

 

研修所講師ご紹介 〜水口囃子 野村和仁さん /三浦友恵 

鼓童研修所講師の方をご紹介致します。

 

これまでも研修所でお世話になっている講師の方々を機関誌やホームページ内でご紹介していましたが、ここ数年できていませんでした。

鼓童の舞台が日々進化し続ける中、研修所の内容も進化しています。

 

鼓童の舞台を目指して研修に取り組んでいる研修生。

太鼓の稽古はもちろんですが、各地の芸能や太鼓以外の様々な事も学んでいます。鼓童研修所だからこそ学べるものです。

今回は、滋賀県に伝わる水口囃子みなくちばやし「水口囃舎代表の野村和仁さん」についてご紹介致します。

           

 

 

水口ばやし水口囃舎 代表 野村和仁さん

2015年より研修所講師。

滋賀県甲賀市こうかし水口町出身の生粋の水口っ子。水口ばやし大好き!

(野村家は約三百年、水口に住んでいる)

甲賀市、あの甲賀忍者で有名なところ。水口は、その甲賀の中心として中世より栄えてきた。その甲賀地方最大の祭りが、三百年の歴史がある水口曳山祭り。滋賀県の無形民俗文化財に指定され、祭りの中で曳き廻される曳山の中で演奏されるお囃子が、水口囃子。

 

『私は、この三百年の歴史がある水口囃子が、幼少の頃から大好きで、父親や近所のおじさん、おじいさんはもとより、他の曳山町の古老などから教わり、ついには、水口囃子好きが、こうじて「水口ばやし水口囃舎(みなくちそうしゃ)」という団体まで作ってしまった「お囃子バカ」です。(笑)

この水口囃子、三百年も前のお囃子にも関わらず、音楽センスの良さから、全国的に有名なお囃子となっています。それ故、ほんものの水口囃子から逸脱したかなりアレンジされた水口囃子が、全国、全世界に広がってしまってます。その間違った水口囃子を何とかしたいとの思いで、活動しています。

「水口内部への正確な伝承と水口外部への正確な伝播」を活動の柱にして、頑張っています。』

 

『鼓童とは、奇跡的な出会いでした。』

 

2011年、東日本大震災の被害を考慮し、水口祭りが中止になりました。2012年度に私の町、天神町の曳山が出番山だったのですが、前年奉納出来なかった出番山からの順送りになった為、私の町は、2013年に繰り越しになったのです。

 

ちょうどその年の4月20日、水口祭り前後に鼓童メンバーも休暇を頂いたらしく、内田依利さん(当時メンバー)が、実家の愛知県に帰った時に知り合いに電話をして『明日水口祭りに行くんだけど、一緒に行く?』と誘われ、水口祭りに来られたそうです。その方は私の知り合いでもあり、祭り見学と私に出会う為に水口まで来た人でした。そして依利さんを紹介され、それから交流が始まりました。この偶然が、重ならなかったら鼓童さんとの出会いはなかったとおもいます。

それから翌2014年には、初めて佐渡に渡り、鼓童村と研修所にて水口囃子の稽古をして頂きました。

それから毎年、研修所に伺い講師をさせていただく栄を賜っています。

その出会いがきっかけで、アース・セレブレーションにて鼓童メンバーと水口囃子の演奏もさせて頂きました。

研修生に指導される野村さん。黒板には口唱歌。

Earth Celebration2016「特別フリンジ」にて

      

『水口囃子は口唱歌が大切』

 

私の指導は、三百年前から地元水口に伝わる口伝にて指導をしています。

西洋音楽が、日本に伝わる前から日本人が伝承する方法として磨いて来た方法にて、指導する・伝える事が、最も重要だと考えています。

 

水口囃子は、全国に残っている様々なお囃子の中でも、使用する全ての楽器の口唱歌が、完全に残っている非常に稀なお囃子であると、研究者の先生方から聞いた事があります。

お囃子で使用する、大太鼓、小太鼓、摺り鉦、篠笛の4つの楽器全てが水口囃子のメロディーラインを全て口唱歌で歌い表せます。口唱歌だけで、水口囃子が奏でられる事になります。

この事は、水口囃子の伝承にとって最も大切な事で、口唱歌通りの音をそれぞれの楽器を通じて奏でる事こそ水口囃子の本懐であると確信しています。

 

それ故、私の指導の大半は、水口に三百年伝わって来た口唱歌を学ぶ事から始め、口唱歌通りの音を各楽器で奏でる事に終止します。

その上で、各楽器の奏でる音、一つ一つがどの楽器のどの音と、関係性があり、どの様に噛み合うと良いかと言う様に指導しています。

三百年前のお囃子の設計図を理解してもらいながら、『生き物であるお囃子』を理解してもらう工夫をしています。

研修所での稽古風景(野村さんご一家と鼓童メンバー)

          

『様々な日本の音楽文化と接してほしい』

 

水口囃子を知らずに初めて研修所にて習う研修生の大半は、やはり、まず西洋音階で頭の中で換算してしまう事が多く、一つ一つの音が単に一つの音と理解して、奏でようとする研修生が多い様に思います。

日本の音楽、特にお囃子は、けっこう曖昧なところが多くあることも事実ですが、ポイントポイントでは、ものすごく集中して、合わせなければならない箇所があります。

例えば、水口囃子の場合、太鼓や鉦は、「地打ち」と呼ばれるベースとなる音に「玉打ち」と呼ばれる『間(ま)』を入れるのですが、地打ち自体が西洋音階で表しにくい(拍で割れない)拍子の為に、そこに乗せていく玉打ちも、その難しい拍子の地打ちに合わせた設計をされています。

昔の日本人の音楽センスの良いところだと思っています。

音楽とは、ドレミの五線譜で表されるものという固定観念を失くして、今後関わっていくであろう様々な日本の音楽文化と接してほしいと思います。

研修生の皆さんは、将来鼓童メンバーとして、日本全国、全世界での演奏活動をしていくわけですが、この水口囃子や説明の難しい日本の伝統的な文化を全世界の人達に伝えていってほしいと思います。

2022年3月研修所での稽古後、野村さんご一家・研修生・鼓童スタッフとメンバー

 

       

 

次回は『発声の講師 野上結美 先生』をご紹介します。


リズムのないリズム/住吉佑太

今回初めて、ケンタタクユウタタクとして劇中音楽を担当させていただいた「Liebestraum」の本番現場に、中込健太と2人で立ち会ってきました。

写真:大洞博靖

照明の山口明子さん、美術の多田さやかさん、そして踊りの皆川まゆむさん。
それぞれの個性がぶつかり合い、融合しあって、今までに観たことがない舞台空間が出来上がっていました。

写真:大洞博靖

そんな世界の一端を、音楽で担えたことがとても嬉しく、自分たちの作った音から、世界が広がっていくその過程は、とても面白く、勉強になるものでした。

今回、お声がけいただいた、皆川まゆむさんとの出会いは、2020年の秋、香川県は栗林公園でのパフォーマンスがきっかけでした。

写真:大洞博靖

ショーの合間を縫って、一緒に公園でセッションをして遊んだとき、自分たちの出すリズムが、いつもと違う存在感であることに気付かされました。音楽的な条件だけで進行すると、踊りとぶつかってしまうような感覚がありました。

写真:大洞博靖写真:大洞博靖今回の音作りにおいても、そういった踊り手のもつリズムと、私たちの発するリズムが、お互いに同じ存在感で舞台空間にあるということを常に意識しました。

例えば、音は変化しないドローン系のものであったとしても、まゆむさんが周期的に体を動かしたり、緩急をつけたりすれば、そこにはある種のリズムが生まれます。  ※音高の変化なしに長く持続される音

音楽がその隙間を埋めてしまわないように。

でも時には、お互いに拮抗しあったり、それぞれ関係なく進行したりしながら音と踊りの世界が交錯することで、そこに大きなうねりが生まれていきました。

写真:大洞博靖

そしてさらに、照明や美術の効果も加わって、これまで辿り着いたことがないような舞台世界が作られていく。
こうした作曲体験は、自分の音楽観にも大きく影響を与えてくれました。

「律動は人類のアイデンティティである」という伊福部昭さんの言葉があります。自然界にありふれた「パルス」と、人為的に生み出される「リズム」の違いを認識できるのは人間だけだというお話です。

ですが、その境目とはなんでしょう。

パルスとリズム、物音と音楽。

動作と踊り。

この作品作りを通して、次なる探求への扉が開かれたような気がしています。

写真:大洞博靖

今回は少人数でのコラボレーションでしたが、少しずつ規模を大きくしていきながら、また新たな作品を一緒に作っていけたら、とても嬉しく思います。

ご来場いただいたお客様はもちろん、この作品に関わってくださったすべての皆様へ今一度感謝をお伝えします。本当にありがとうございました。

温かくもアツく、鋭い作品でした!!

またやりましょう!

写真:大洞博靖

写真:大洞博靖

公演概要:
https://www.kodo.or.jp/performance/performance_solo/37358