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鼓童村での春/小池将也


鼓童村での春

佐渡も少しずつ暖かくなり、桜が咲き始めています。佐渡の半年近くある長い冬も過ぎ、「これからやっと春だぞ!」と吹く風に言われている気がします。祭りのシーズンでもあるため、島中で太鼓の音が聞こえてとても賑やかになってまいりました。4月からの鼓童村は欧州ツアー、南米ツアーを終えた団員や日本各地のでの公演を終えた大ベテラン、そして新しい準団員が一同に集結し、「35周年記念コンサート」に向けた作品作りや、「佐渡宿根木公演」、夏のEC、秋からの作品づくりなど様々な稽古に励んでいます。

話は変わりますが、若手メンバーが住む住居棟の裏に、何年も手の施されていない畑があります。

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その畑でこの春から何かを植えようと思い、賛同してくれた三浦康暉、鶴見龍馬、渡辺健吾と私の4人で「チーム畑」を結成いたしました。4月はバジルやローズマリーなどのハーブ類。5月はサツマイモなどの芋類を植えようと計画中です。

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まずは畑を再生させるところから。土を掘り返して土に空気を入れ、乾燥させて、また掘り返す。それの繰り返しをした後、いよいよ種を植える! と、現在はそんなところです。畑に必要な肥料や道具類はまだまだ不十分なので、これから少しずつ手に入れて楽しく頑張ります。

ここ最近は鼓童が大切にしている「くらす・まなぶ・つくる」の “つくる” についてもう一度見つめなおそうと思っています。

佐渡でくらし
太鼓にまなび
野菜をつくる

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この春の生活を自分なりに当てはめただけですが、鼓童がずっと大切にしている “なにか” を肌で感じて、舞台にいつか活かせることができたらなと思っています。そして、これから様々な活動をしていく鼓童でも、大切なものは大切なまま受け継いで行けるように頑張っていきます。

ブラジルから持ち帰ってきたパワーを存分に発揮し、今よりもっとパワーアップして、また舞台でみなさまにお会いできるのを楽しみにしています!

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「八海の宴」稽古/松浦充長


「八海の宴」稽古

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里アンナさんを佐渡にお迎えし、4月1日新潟LOTSでの公演に向け稽古をいたしました。

IMG_8290-fsPhoto: Mitsunaga Matsuura

歌声で稽古場の空気が震えるのを感じました。精霊が宿る奄美の歌声と言われている所以を肌で感じて欲しいです。

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太鼓の響き、篠笛の音色に歌声が加わると聞こえてくる音が光り輝きます。このひと時を多くのお客様に感じていただけたらと思います。

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2016年4月1日(金)新潟・新潟市
鼓童出演「八海山 presents『鼓童×里アンナ 八海の宴』」
http://www.kodo.or.jp/news/20160401hakkaisan_ja.html


今週末、桐生市にて石見神楽温泉津舞子連中との共演/見留知弘


今週末、桐生市にて石見神楽温泉津舞子連中との共演

3月20日(日)群馬県桐生市にある、桐生有鄰館 味噌醤油蔵にて、石見神楽温泉津舞子連中の皆様と共演する公演が、間もなく行われます!

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▲稽古の様子

これは今年から始まった文化庁支援事業アートフェスで、桐生の歴史や文化にちなんだ創造的舞台芸術を、桐生の伝統的建造物群を会場に上演されるイベントです。桐生には日本一のスケールを誇る祗園屋台があり、その鉾には古事記の神話を題材にした江戸期の人形師松本喜三郎作の生人形が残っています。そのつながりから、石見神楽の大蛇退治を取り入れた作品を、とのリクエストを頂き、今回の公演が実現しました。

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「神秘」でも大変お世話になりました、石見神楽温泉津舞子連中の小林泰三様に相談し、「鼓童の音楽で大蛇を!」というご提案をいただき、なんと、モノクロームで大蛇退治の作品を仕上げました!

島根と佐渡では移動距離も遠いため、なんども連絡を取り合い、段取りや間合いをすり合わせ、モノクロームの曲調にあった動きを考えてくださり、とてもいい作品になっています。

公演全体は、3部構成になっており、石見神楽・鼓童・そして共演と、歴史的建造物の中で行われる、特別な1日限りの公演です。1日2公演あり、11時開演、16時開演とございます。ご来場、お待ちいたしております。

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▶︎公演詳細 http://www.kodo.or.jp/news/20160320kamiasobu_ja.html

桐生文化芸術発信事業 歴史的建造物 × パフォーミングアーツ「鼓童×石見神楽『神遊ぶ』」

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群馬県内の歴史的建造物を舞台に、創造的舞台芸術3公演が繰り広げられる「歴史的建造物 × パフォーミングアーツ」。鼓童は第三弾の公演にて、石見神楽温泉津舞子連中と共演いたします。「鼓童ワン・アース・ツアー~神秘」での蛇舞は、この石見神楽温泉津舞子連中の皆さまにご指導いただきました。一日限りのスペシャルステージ、どうぞお楽しみ下さいませ!

2016年3月20日(日)群馬県桐生市 桐生有鄰館 味噌醤油蔵

出演
太鼓芸能集団 鼓童(藤本吉利山口幹文見留知弘米山水木、 井戸こはる、小平一誠、宮城紘司(予定))、石見神楽温泉津舞子連中
開演
11:00/16:00
料金
4,000円(枚数制限:1人4枚まで)
プレイガイド
桐生市市民文化会館プレイガイド Tel. 0277-22-9999
桐生音協 Tel. 0277-53-3133
SAP Tel. 03-5226‐8537
ローソンチケット Tel. 0570-084-008 [Lコード:36757]
イープラス(ファミリーマート) http://eplus.jp
CNプレイガイド http://www.cnplayguide.com/
お問い合わせ
桐生音協 Tel. 0277-53-3133
桐生文化芸術発信事業実行委員会 (桐生市 教育委員会 生涯学習課) Tel. 0277-46-1111

倉敷にてお待ちしております!/岩本涼子


「日本縦断和太鼓コンサート」稽古

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今日の稽古場は、まもなく出発する岡山県倉敷市で行われる「日本縦断和太鼓コンサート」の通し稽古でした。

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ポスターを飾る藤本吉利をはじめ、名誉団員全員参加でお伺いします。皆さまと会場でお会いできるのを、楽しみにしております!

2016年3月13日(日)
鼓童出演「倉敷音楽祭~30周年記念~第八回 日本縦断和太鼓コンサート」
(岡山・倉敷市)

http://www.kodo.or.jp/news/20160313wadaikoconcert_ja.html


南米「打男」ツアー班出発!/中川由貴


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春の気配を感じる穏やかな朝の8時前、南米に向け「打男」メンバーが鼓童村を出発いたしました! ベテランメンバーに混ざり、海外公演が初めての顔も何名か。

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ついこの間、研修所過程を修了した新準団員のふたり。研修所所長も笑顔で激励を送ります!

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8年ぶりの南米ツアーで、初の打男!地球の反対側、みなさん気をつけていってらっしゃい!

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2016年3月
鼓童「打男 DADAN 2016」ブラジルツアー
http://www.kodo.or.jp/news/20160317dadan_ja.html


8年ぶりに鼓童が南米に行きますよ!/河本唯


鼓童が最後に南米でツアーを行ったのは2008年。あれから何倍にもパワーアップした鼓童はついにまたブラジルの地を踏みます。

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男性演奏者11名による情熱的な「打男」は南米初登場!ベテランから最若手までこのツアーの為に沢山稽古をして参りました。

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劇場でブラジルの皆さまにお会いできることをメンバー全員、心待ちにしております。Tchau!


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2016年3月
鼓童「打男 DADAN 2016」ブラジルツアー
http://www.kodo.or.jp/news/20160317dadan_ja.html


本日の稽古場/川村真悟


本日の稽古場

ヨーロッパツアー班の『神秘』公演も大変に好評を頂いているという声が鼓童村にも届き、佐渡に残ったメンバー達も負けてられぬ! と稽古に取り組んでいます。

新人達の演奏の前でじっくり見守る大先輩から同期たち。演奏する目前で、見る側が一列に整列した状態です。自分たちの演奏をじっくりと見られるこのような稽古の光景もなかなか珍しいと思います。見られる側は緊張して仕方ないでしょう(笑)

Photo: Shingo Kawamura
演奏の良し悪しについては、見留知弘や小田洋介らをはじめ同期の若手メンバー達からも矢継早に指摘を受けます。立ち居振る舞い、表現、間合い、空間…などなど、先輩達から指摘された事については書ききれない程の要素がたくさんありますが、音質やリズムだけではない他の要素がどれだけ大事にされているかで見え方聞こえ方も随分と変わってきます。

彼らもまだまだ新人。全部の指摘を即消化して即改善というわけには中々いかないものですが、回を重ねるごとに間違いなく良くなっていく演奏の様子を見ていると、なんとも心地良いものです。

本番は一回!
それが絶対条件である厳しい世界に立ち向かっていく彼らが、応援して下さる皆様からの声援を糧に成長してくれる事に期待したいものです。

ちなみに…
この楽器構成、一体何の演目を稽古しているのでしょう? 川村調べによると、一部の在島スタッフによる正解率は0%でした。正解は後日のブログにしれっと掲載していきたいと思います。


鼓童村稽古場の様子/川村真悟


「よし!今日も鼓童ブログに投稿だ!」と張り切って稽古場に突入したところ、
テケテケテケテケテケテケテケテケ…
見留知弘から若手メンバーへ、モノクローム基礎稽古の指導中でした。

Photo: Shingo Kawamura

稽古場内がシャッター音を許されない空間になっているのをいち早く察知して扉のガラス越しにパシャり。息が止まるような緊張感がヒシヒシと伝わってきます。


好きな光景/小見麻梨子


好きな光景

他に自分の作業をしていても
つい見入ってしまうこの場面。
「大太鼓降ろし」

各世代がそれぞれのポジションについて
息を合わせて行うこの光景が私は好きです。
その前の雰囲気がどんなに和やかでも、
この瞬間は皆真剣な眼差しになります。

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太鼓への敬いの気持ち
前もって準備する道具の手順
身体の踏ん張り方
自分のポジション取り
息を合わせる事

この作業を経て大切な事が綿々と
受け継がれている様にも感じます。

間もなくこの大太鼓を使った公演が大分で行われます。通し稽古を見学しましたがとてもかっこいい舞台なので皆さま、お楽しみに!

2016年1月29日(金)大分・大分市
鼓童×源流 日本太鼓PREMIUM CONCERT 2016「打つ」
鼓童出演者:藤本吉利、小島千絵子、藤本容子、山口幹文、見留知弘、船橋裕一郎、石塚充、中込健太、前田剛史、蓑輪真弥、神谷俊一郎、大塚勇渡
http://www.kodo.or.jp/news/20160129premiumconcert_ja.html

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『タイヤ、揚琴、ドラム、そして太鼓』2015 真夏の「混沌」稽古場レポート/伊達なつめ


タイヤ、揚琴、ドラム、そして太鼓
2015 真夏の「混沌」稽古場レポート

文●伊達なつめ 写真●岡本隆史

Photo: Takashi Okamoto

「まだ、まとまらないんですけど」
「いいの、〝混沌〟だから」

「ちょっと、ごちゃごちゃしちゃって」
「まさに〝混沌〟じゃないか」

2015年8月上旬に訪ねた佐渡の稽古場では、何かにつけて今回のワン・アース・ツアーの新作タイトルが連呼されて、場をなごませていた。

Photo: Takashi Okamoto

〝混沌〟は、辞書には『ものごとが整っていないさま』とあるけれど、本来、世の中ってそういうものでしょう。システム化されて国だの政治だのになってはいても、人間は、整理整頓などされていませんからね。これまで『伝説』では各時代の作曲家の作品を並べ、『神秘』で闇というものに向き合い、『永遠』では曖昧な雰囲気が繰り返されるものを表現してきたので、今回は〝グチャグチャで楽しめる〟感じでいこうと思います。とにかく、いろいろな楽器が出てくることにしたいんです。ドラムも、タイヤも、揚琴も」

と、玉三郎芸術監督。そんなわけで今回は、つねにも増してユニークな楽器が登場している。まず、目を引くのは、冒頭にコロコロと転がってきて、その後、楽器と化すタイヤ。これは小田洋介さんのアイデアで取り入れられた。

Photo: Takashi Okamoto

「アメリカ・ツアーに演出補佐で参加していた際にワークショップをやったんですが、そこで、アメリカの人たちがタイヤを叩いているのを見たんです。あくまでも、高価で太鼓が買えないための代用品なんですが、タイヤを楽器として使ったら喜ばれるんじゃないかと、フッと玉三郎さんのことが頭に浮かびまして。提案したら『音が聞きたい』ということだったので、いくつか曲を作ってみたら、けっこう音が出たんです。皮の代わりに張ってあるのはビニールテープなので、耐久性を心配したんですけど、フルパワーで2時間叩いても、大丈夫だったんですよ。大きなバット撥で叩くと、意外といい音が出ます

これを実際に舞台で叩くのは、主に三人の女性たち。そのうちのひとり内田依利さんは、カナダに留学していた学生時代にも、タイヤを楽器として叩いた経験があるそう。

「わりと、日本より海外の方が多いかもしれないですね。タイヤとか、水道のパイプみたいなものにテープや皮を貼って、人前で演奏していました。そうやってふつうにやってはいましたけど、タイヤは、打ってもぜんぜん撥が跳ね返ってこないので、意外ときついんですよ。振動がまったくなくて、ニュアンスが出ないので、とにかくウワーッと力を込めて叩きます。ビート感はわりと出るので、細かいことはあまり考えずに、どんどんとノリをよくしながら、ただただ振り回す感じです(笑)」

女性たち3人は、第一幕は太鼓のコミュニティーにドラムやタイヤという異物を持ち込み混沌をもたらす、アウトサイダー的存在として登場。 バット撥を力任せに振り下ろす姿は、かなり迫力があってコワい。

Photo: Takashi Okamoto

荒っぽいタイヤに比べて、より繊細さが強調されるのが、中国の打弦楽器、揚琴(ようきん)。船橋裕一郎さんが、メロディアスな音色に挑戦している。

Photo: Takashi Okamoto「こういう音を入れてみたいという話は、最初から聞いていたんですけど、まさか自分がやることになるとは。たまたま、ほかのメンバーがほぼ全員出ているシーンを眺めていたら、玉三郎さんと目が合ってしまったんです(笑)。先日、揚琴の演奏家の先生に来ていただいたんですが、あまりにもすご過ぎて、汗が出ました。一弦叩くと、ひとつの音に三〜四本のワイヤーが触れて和音になるんですが、メロディー楽器をあまりしていなかったので、間違いなく決まった音階のある細い弦を叩くのが難しいです。叩くといっても打ち付けるのではなく、一瞬のタッチでないと鳴らないし。とはいえ、同じ打楽器の仲間ではありますから、共通点はあるはず。いちばんいいタッチのしかたを、見つけられればと思います

さて、混沌をもたらす3つ目の楽器は、ドラムだ。スネア(スタンドで腰の高さに設置したドラム)やタムタム(ドラムセットでは上部に設置される2つ並んだドラム)といった単体で使用されるほか、今回はドラムセットによる三人のソロ演奏まで披露される。そのうちのひとり坂本雅幸さんは、かつてプロのドラマーを目指した経験者。

Photo: Takashi Okamoto「学生のころずっとやっていたので、太鼓を始めたころは、『打ち方がドラムっぽい』と散々言われていました。ドラムは手首を使うんですが、和太鼓は肩と全身を使って打つものなので、同じ太鼓でもぜんぜん違うんですよ。昔から感じていたことですが、ドラムと和太鼓を合わせるのは、すごく難しいものなんです。まず、響きのタイミングが違う。ドラムはヒットした瞬間の音がすべてですけど、和太鼓は打った後の響きの方が、大きくなります。それから音色自体も、ドラムはガシャガシャしているように聞こえますが、実はかなり豊かで、洗練されている。これと比べると和太鼓は、だいぶ原始的なんです。
今までもいろいろな楽器を使ってきましたけど、ドラムは、和太鼓に対してもっとも違和感があって、手をつけにくかったんです。今回は、それに敢えて挑戦する、ということになるので、今は和太鼓の打ち方を変えて、合わせていこうとしています。いつものようにドスンと打ち込むと、深く響き過ぎてしまうので、表面の音を出そうと、探っている最中です。和太鼓とドラムのセッションはよくありますけど、想像できるようなものになってしまうと意味がないので、ぶっ飛ぶようなものにしたいんですよね。僕はドラマーとしては技術屋の方だったんですけど、小手先のドラマーって、あまりおもしろくないじゃないですか。すごいドラマーというのは、技術ではない、もっと別の次元のものを持っています。鼓童には〝別のもの〟だけはあるので(笑)、それが出せるようにならないと

住吉佑太さんは、作曲で大忙しのなか、ドラムにも挑戦して、坂本さんの言う「別のもの」ぶりを遺憾なく発揮している。

Photo: Takashi Okamoto「玉三郎さんは、『ドラムを力いっぱいぶっ叩け。クレイジーになりなさい』とおっしゃるんです。これは僕の認識ですけど、大太鼓を叩く場合は、その行為は音楽的な部分を超えて、精神的な部分が重要になってくるんですよ。手先でできるものではないので、体力をめっちゃ使って打ち込んで、しんど過ぎて何も考えられなくなってきて、若干トランス気味になるくらい。そんな状態であるために、叩く際にウォーッっという底力が自然と沸いてきて、太鼓に打ち付ける感じなんですけど、『それと同じことを、ドラムでやってみなさい』と言われている気がするんです。太鼓とドラムの、外側ではなく、内側にある共通項を見つける作業なんじゃないかと。だから、今はとにかく思いっきり叩いています。立ち上がって叩くは、シンバルのネジは飛ぶは、もうすごいです(笑)

楽器としてのドラムと和太鼓の違いも、強く感じます。そもそもドラムセットは、人数が足りないからひとりで叩けるようにという、利便性でつくったものじゃないですか。すごく合理的なんですよね。それに引き替え和太鼓は、なんでこんな打ち方しなきゃいけないんだというほど、不合理で理不尽。屋台囃子なんて、腹筋しながら(無理な体勢で)打つわけですからね。この相反する二つをどう合わせていくかは、ただいま模索中です。ドラムの基礎は習ったんですが、ぜんぜんできてなくて、マイナスからのスタートですけど、『太鼓打ちのドラムを』と玉三郎さんに言われているので、なんとか新しい音を見つけたいと思っています」

Photo: Takashi Okamoto

ドラムのソロを披露する小田さん、坂本さん、住吉さんの三人は、三年前から元ザ・ブルーハーツのパワフルなドラマー、梶原徹也さんの指導を受けてきた。『混沌』における三人三様のまったく異なるソロは、タイトルにふさわしい見どころ・聴きどころのひとつとなっているが、そこには時間をかけて彼らと向き合ってきた、梶原さんの尽力がある。

Photo: Takashi Okamoto

「坂本雅幸くんは、プロのドラマー志望だっただけあって、最初からわりと何でもできたので、速いパンクなども含めたいわゆるロック・ドラムを。小田洋介さんは、僕と同じ猪突猛進型なので、『ブルーハーツ仕込みの伝家の宝刀を君に伝えよう!』と、まっすぐなエイトビートを伝授しました。住吉佑太くんは、エイトビートがうまくいかない代わりに、ワールドミュージック系のなまった感じのビートを出すのが得意なので、足を省略して手のニュアンスで攻めるようにしたら、いきなり伸び始めました。ふつうのロック・ドラムとはぜんぜん違う彼の持ち味が、そのままドラムに反映されています。彼らはみな超一流の打楽器奏者ですから、爆発していくシーンで、自分のエネルギーを楽器に託して表現する術を、知っているんですよね。先日の練習でそれが確認できたので、もう何も心配する必要はないと思っています。バッチリです!」

こうした新たな楽器へのチャレンジが続くなかにあって、中込健太さんは、ワン・アース・ツアーとしては久しぶりとなる大太鼓(※)に向き合っている。
※平桶大太鼓による「大太鼓」スタイルの演奏

Photo: Takashi Okamoto「これまで鼓童がやってきた、屋台の上に載せて打つ大太鼓のスタイルでは、ある形式ができあがっていて、先輩たちが創り上げたものに自分が乗っかっていき、そこから外れないようにしつつ、自分ならではの個性を出す、ということが求められていたんです。今回は、そうした今までの鼓童の大太鼓とは違う役割で、単にひとつの楽器として存在すればいいのかな、と思っています。でも、大太鼓には、どうしても楽器ではない存在感を感じてしまうんですよ。〝樹齢何百年という木に、生きていた牛の皮を張ったすごいもの〟に対峙するためには、それなりに自分の気持ちをととのえて向かわなければいけないので、音楽をやっているという意識が持てないんです。音楽として構成されているものの中に、そういう気分を持ち込んだら、どうなるのか。もしくは何か違うものが出てくるのか。そこがとても楽しみですね」

未知の楽器へのチャレンジと、西洋楽器ドラムの鼓童的解釈、そして、築かれた伝統を問い直す姿勢。どこまでもアグレッシブなアプローチが、〝混沌〟を生み出そうとしている。

Photo: Takashi Okamoto


【佐渡へ初演を観にいこう!】
23日、新作「混沌」佐渡初演!
http://www.kodo.or.jp/oet/20151123a_ja.html
11/22 17時まで受付:アミューズメント佐渡 Tel. 0259-52-2001、蔦谷書店佐渡佐和田店(窓口へ)
(鼓童チケットサービスでの受付は終了しました)
<当日券>23日14時より劇場で販売

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「混沌」作品紹介

スケジュール(2015年11月佐渡初演〜12月)

「混沌」ブログ


伊達なつめ(だて・なつめ)
演劇ジャーナリスト 演劇、ダンス、ミュージカルなど、国内外のパフォーミングアーツを追いかけ、女性誌『InRed』、『CREA』、新聞”The Japan Times” などへ寄稿。”The Japan Times” に英訳掲載された日本語のオリジナル原稿は http://natsumedate.at.webry.info/ で公開中。著書『歌舞伎にアクセス』(淡交社)ほか。


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