鼓童ブログ Kodo Blog

作品紹介

「道」新曲紹介その4 ~かにmoon~/石塚充


「道」新曲紹介その4
〜かにmoon〜

とても静かな、真夜中の佐渡の海辺。
聞こえてくるのは波の音ばかり…と思いきや、
よーく耳をすますと、そこかしこで小さな小さな大騒ぎが…。

Photo: Narumi Matsuda

さてさて何が起きているのでしょう?
みなさんもそっと耳を傾けてみてください!

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演出

石塚充

出演(予定)

山口幹文齊藤栄一見留知弘船橋裕一郎石塚充中込健太前田剛史蓑輪真弥小松崎正吾三浦康暉三浦友恵米山水木


「道」新曲紹介その3 ~黄ポポ~/石塚充


「道」新曲紹介その3
ポポ~

紫雲しうん」とともにこちらも、真弥が今回のためにつくってくれた新曲。真弥らしい強めの太鼓アンサンブルに明るく軽快なメロディーが乗っかった、ハッピーな曲です。

Photo: Narumi Matsuda

謎の言葉「黄ポポ」とは何でしょうか?

この曲を聴いて、どんな景色が見えてくるでしょうか?? ぜひ劇場で体感して下さい!

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演出

石塚充

出演(予定)

山口幹文齊藤栄一見留知弘船橋裕一郎石塚充中込健太前田剛史蓑輪真弥小松崎正吾三浦康暉三浦友恵米山水木


「道」新曲紹介その2 ~群青~/石塚充


「道」新曲紹介その2
群青ぐんじょう

厳密には新曲ではないのですが、アース・セレブレーションで2度ほど演奏したのみで、佐渡島外では初披露となります。

Photo: Narumi Matsuda

目の前に広がる、群青に輝く夏の海。海をめがけて駆け出していく気分の高揚と疾走感をイメージした曲です。

3月なのに、真夏の佐渡を味わえるお得感! お楽しみに!

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演出

石塚充

出演(予定)

山口幹文齊藤栄一見留知弘船橋裕一郎石塚充中込健太前田剛史蓑輪真弥小松崎正吾三浦康暉三浦友恵米山水木

【鼓童の稽古場】只今、夜稽古タイムです!基礎稽古、打ち込み、作曲など人それぞれ。9時間稽古後も元気にまだまだ太鼓を打つようです。

鼓童 Kodoさんの投稿 2017年2月24日


「道」新曲紹介その1~紫雲~/石塚充


「道」新曲紹介その1
紫雲しうん

今回の「道」では、鼓童の定番演目をがっつり演奏する他に、いまのメンバーたちの中から生まれてきた新曲をいくつか発表する予定です。

Photo: Mariko Sumiyoshi

紫雲しうんは、小柄なパワーヒッター蓑輪真弥が作曲。これまでの鼓童に根強くあった優しく華やかな女性像を突き抜けて、凛々しく力強く、気力と身体力を振り絞った女性の太鼓を聴いてみたいなと相談したところから始まりました。

“ファイター蓑輪”が己の細胞をフル稼動して作ってくれ、それを真弥水木友恵の、期待の若手女性メンバー3名が全力で打ち込んでいきます。どんな作品に仕上がっているのかは観てのお楽しみ!

乞うご期待!

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演出

石塚充

出演(予定)

山口幹文齊藤栄一見留知弘船橋裕一郎石塚充中込健太前田剛史蓑輪真弥小松崎正吾三浦康暉三浦友恵米山水木


「道」公演 演目ご紹介/松田菜瑠美


「道」公演 演目ご紹介

鼓童の歩みと共に、引き継がれてきた多くの曲の中から、特に大切にしてきた代表曲を余すことなく演奏いたします。生の迫力を劇場で感じてください!

<予定演目>三宅、モノクローム、峰の風、族、彩、大太鼓、屋台囃子、ほか

いくつかの曲をご紹介します。

Photo: Takashi Okamoto

[三宅] 編曲:鼓童

伊豆七島の一つ、三宅島神着地区のお祭りの太鼓を基に作られました。低い姿勢のまま、腰だけを移動させて打ち込んでいく独特の打ち方をします。太平洋の荒波に乗り出して行く男達の勢いに満ちた太鼓です。

Photo: Takashi Okamoto

[モノクローム] 作曲:石井眞木

モノクロームとは「単色」という意味で、七丁の附締つけしめ太鼓と三台の宮太鼓、ドラから打ちだされる音が、交錯し揺れ動きながら展開していきます。この曲は「単色」ゆえ、聴く人に様々な色彩を放ち、自由なイメージを脳裏に投射してくれます。

Photo: Takashi Okamoto

[大太鼓]編曲:鼓童

直径三尺八寸、一本の木をくり抜いて作った大太鼓から生み出される音には、激しい中にも懐かしさや安心感が感じられます。数百年生き抜いてきた木の持つ力と打ち手のストレートな想いが一体となる大太鼓の響きを身体全体で感じてください。

Photo: Takashi Okamoto

[屋台囃子]編曲:鼓童

毎年12月に行われる埼玉県秩父市の夜祭りには、各町から山車(屋台)が繰り出されます。夜祭りでの屋台囃子は十数トンもの重さの屋台を引っ張るき子達の息を合わせ、鼓舞するために屋台の中で演奏されました。私達の演奏は、現地の「屋台囃子」とは地打ちのニュアンスが若干異なり、テンポも速くなっています。

演出

石塚充

出演(予定)

山口幹文齊藤栄一見留知弘船橋裕一郎石塚充中込健太前田剛史蓑輪真弥小松崎正吾三浦康暉三浦友恵米山水木


弾け続ける「玉三郎・鼓童」 ─鼓童と玉三郎の十六年─/文・伊達なつめ


弾け続ける「玉三郎・鼓童」
─鼓童と玉三郎の十六年─

文●伊達なつめ

ー鼓童創立35周年記念コンサートパンフレットより

Photo: Takashi Okamoto

玉三郎と鼓童の出会いは16年前。青木代表から鼓童との共演の申し出を受け、まずは演出という形でかかわることを引き受けた玉三郎は、機会を見つけては佐渡の稽古場を訪れ、グループの体制やメンバーひとりひとりの個性を把握しながら、約2年後に『ワン・アース・ツアー スペシャル』(’03)を創り上げた。

Photo: Takashi Okamoto

鼓童のダイナミックな打法に、繊細で柔和な表現力が加わった舞台は好評を博し、続く’06年の鼓童結成25周年には、ついに青木の念願だった両者の共演『アマテラス』が実現。

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’09年には、佐渡の稽古場で自主稽古するメンバーたちの姿を見て玉三郎が思いついたという、小編成でスタイリッシュな演出の『打男 DADAN』が評判となるなど、玉三郎は着実に、鼓童のポテンシャルを引き出していった。

’12年、その手腕に鼓童のさらなる進化を託されて、玉三郎が芸術監督に就任( ※2012年より4年間)。演出家として作品単位で芸術的クオリティの責任を負うだけでなく、鼓童という集団を基盤から整備し、方向性を定めて総体的にプロフェッショナルとして向上させていく立場をも担うこととなった。こうして、本格的な玉三郎による新体制がスタートした。

Photo: Takashi Okamoto

食事等の体調管理や稽古場の空調といった環境面まで、実際の玉三郎の指導は多岐に及ぶが、舞台表現の姿勢においてもっとも強く表れているのは、「演奏技術の向上」と「自由な発想」による、バリエーションの広がりだ。たとえば前者については、就任時にこう語っている。

「技術がなければニュアンスを出すことはできないので、芸術監督になることが決まってから、太い撥を持つ前に、細いドラムスティックで太鼓を叩くことを取り入れました。太い撥で叩いていると、太鼓の面に撥が触れている時間が長くなるけれど、細いスティックだと、一瞬、面に触れることで強い音が出たり、叩いた弾みを利用して叩くことができる。面に長くいるのと一瞬しかいないのとの音色の違いを、打ち手には自分でわかるようになってほしかったですし、実際に細い撥で大きい太鼓を叩くと、最初は違和感があっても、そのうちどんどん音が出るようになって、太い撥がいらなくなるほどになるんです。打ち方のバリエーションもグッと増えるのですよ」

その成果がいかほどかは、本日の舞台に響く音色を耳にすれば、説明不要だと思う。

Photo: Takashi Okamoto

後者の「自由な発想」を求める点においては、撥を鈴に替えてみたり、北米を中心に練習用の太鼓として代替的に使われていることが多い自動車のタイヤを、敢えて持ち出したり、奏法も構造も似て非なる西洋のドラムについて基礎から学び、和太鼓奏者のプロにしかできない、独自のソロ演奏に昇華させたり……。あらゆる常識や固定観念から解き放たれた、遊び心と自由な精神を、何よりも尊ぶ。それが幅広く斬新な表現の開拓につながっているわけだけれど、玉三郎の意識の根底には、柔軟であるべき鼓童が、必要以上にスタイルを硬直化させたり、権威付けを行おうとする傾向への危惧があった。

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「それまでの鼓童には、『大太鼓は神聖なものだから滅多に打ってはいけない』といった雰囲気ができ上がっていたんです。鼓童が誕生して、たかだか数十年しか経っていないというのにね。僕はそんなことぜんぜん気にする必要はないと思うから、『(大太鼓を)縦じゃなく横向きにしましょう』と躊躇せず言いましたし、年功序列もなくしました。『伝統が』とか、『先代が』とかいう話は、まだ若い鼓童では言わないでほしい、という気持ちですね」

伝統や様式、権威の功罪というものを、身をもって知る歌舞伎俳優だけに、説得力は抜群。これは内側からは是正しづらい硬直状態を、玉三郎という外からの刺激で打開してもらえれば、という青木代表の思惑とも一致する。

Photo: Takashi Okamoto

敢えて「伝統」になりかけていた鼓童のスタイルに執着しないことを選択した玉三郎は、鼓童のトレードマークとしてファンにもメンバーにも親しまれてきた鉢巻きと半纏の衣装を用いず、汗まみれ・力まかせの荒削りな演奏スタイルも封印。短い曲が多かったレパートリーを見直し、20分前後の長尺の新曲を次々に発表して、鑑賞する側へも意識の変革を促した。素朴で力強い太鼓打ちによる祝祭空間から、一編のドラマのように緩急と緊張感に満ちた芸術的世界へ。劇的な変化を遂げた主軸の「ワン・アース・ツアー」シリーズは、玉三郎の美意識に共鳴する観客には熱烈に歓迎され、往年の鼓童のスタイルを愛する観客には、少なからずショックを与えた。

第1弾の’12年初演『伝説』では、喧しいほどの賛否両論の嵐が起こり、「変革には痛みを伴う」ことを実感した気がした。それでも、『神秘』(’13)、『永遠』(’14)、『混沌』(’15)と、回を重ねるごとに、演じ手側にも受け手側にも戸惑いが消え、現在は新しい鼓童の世界を、積極的に享受する土壌が調いつつあるようだ。

Photo: Takashi Okamoto

周到な準備期間を設けて稽古に励み、自由度と完成度の高い、攻めの姿勢を貫く玉三郎・鼓童。まだまだ弾け続けて、世界のショービジネスの先頭に立って欲しいと思う。

ー鼓童創立35周年記念コンサートパンフレットより

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「螺旋」公演紹介
http://www.kodo.or.jp/news/20160900oet_ja.html

12月17日、18日 大阪公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161217-18a_ja.html

12月21日〜25日 東京・文京公演
http://www.kodo.or.jp/oet/20161221-25a_ja.html


若い鼓童が目ざす原点/「若い夏」美術・挾土秀平


4年目を迎える浅草公演。今回は前田剛史の演出でお届けいたします。公演の題字は左官職人として個人住宅や伝統的な土蔵や茶室、近代建築まで伝統の技術に基づいた独自の世界の塗り壁づくりで幅広い活動を展開している挾土秀平氏によるもの。今回、美術もご担当いただく挾土氏と鼓童の若いエネルギーのぶつかり合いで、鼓童の新たな作品が生まれます。

挾土氏より「若い夏」に向けたコメントをいただきましたので、ご紹介いたします。

若い鼓童が目ざす原点

寄稿・挾土秀平 (美術・題字)

太鼓芸能集団鼓童の一糸乱れぬ演奏は、以前から知っていた。その音は、連綿と続いてきた風土と、素朴な強さ、懐かしさと哀愁を想わせ、何より感じるのは、我々は日本である、日本人なんだという、原点の血が呼び覚まされるような。その呼び覚まされたものは、誇り高い独自性を感じさせたり、なぜか、自然な涙が溢れてくる。

あの飾りなく無心に太鼓を打つ姿、限界まで打ち続ける姿は、やがて人を超えて自然の化身を見るような世界に私達を引き込んでゆく、まさに、これこそが鼓童でしか味わえない魅力だと思っている。

昨年、そんなひとりの若い鼓童の演奏者が、自分の元(飛騨)にやって来た。若い演奏者は、特に何かを聞くふうなこともなかったが、内に秘めた強い眼をして是非また立ち寄らせて下さいと言って佐渡へ戻って行った。

それから一ヶ月程が経って、再び八人の若い鼓童がやって来た。

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その日は、土のこと、自然のこと 自然から受けとったデザインのこと、伝統と自分をどの様に考えて今に至っているかを話したり、飛騨の原風景を見せて歩いた。皆は、一様に寡黙で礼儀正しく話を聞いていた。

その夜、寡黙だった若い鼓童達が私に向かって堰を切ったように話し出した。

自分がなぜ鼓童が好きなのか
自分達から伝わる太鼓の魅力とは何か
自分がやりたい鼓童への想い

そのうちに話は、この七月の公演「若い夏」に向けて自分達はどうするのか? という骨子の話に変わっていった。

自分達はどうするのか

それぞれの想いは深夜まで続き、皆が一致した結果は、やはり鼓童はひたすら無心に太鼓を打つ姿を見てもらうことにあり、それにはまず自分達が太鼓を打つ幸せ感をもう一度考え、佐渡の風土をあらためて感じ、鼓童が歩んできた歴史を知り、その濃密な姿を伝えることを第一義とすることで、その中に盛り込む、新しいチャレンジの余白が生まれ、受け入れられてゆくのではないだろうか。つまり原点に帰りながら新しい独自性を生み出してゆきたいというものだった。

そして私に今回の浅草公会堂における「若い夏」公演の一部を一緒に考え、その舞台の背景を手がけて欲しいと言うのだった。どこまで手伝えるかわからないが自分にとっても新しいチャレンジが始まることとなった。

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挾土秀平(はさど・しゅうへい)
職人社秀平組を主宰。近代的な建設物や個人住宅の壁塗り、土蔵や茶室。独自の塗り壁作りは、モダンかつ斬新で、他に類がない。その他、自由な発想から新しい空間や作品、デザイン、著作など多数。2016年、NHK大河ドラマ「真田丸」の題字を担当。


▼【残席わずか】鼓童浅草特別公演「若い夏」チケット好評発売中!
news20160701wakainatsu鼓童浅草特別公演「若い夏」
2016年7月1日(金)〜3日(日)東京都台東区 台東区立 浅草公会堂
http://www.kodo.or.jp/news/20160701asakusa_ja.html

【問】チケットスペース Tel. 03-3234-9999
(月〜土、10:00〜12:00、13:00〜18:00)


新しい挑戦/西村信之


新しい挑戦

昨年、ツアー中に前田剛史と話し合った。

自分たちが真の意味でどこまで「鼓童」であるのか。どうすれば「鼓童」になれるのか。自分たちは「鼓童」を追いかけているに過ぎないのではないか。現状についての憂いや不安も含め包み隠すことなくお互いに言い合った。そこで初めて自分がスタッフとして感じていたことと、前田が演奏者として感じていたことが同じであることに気づき、驚いた。

一つ至った答えは、自分たちで新しく何かを創り上げることが必要だということだった。その新しく創るという行為を通してでなければ、これまで鼓童を創り上げてきた人たちが切り開いてきた景色は見ることができない、言い換えれば、その行為を経て初めて創設者達の想いが理解できるのではと思った。

挾土秀平IMG_0945-fそんなことを考えている最中、大河ドラマ「真田丸」の題字を書いている挾土秀平さんの姿を見た。赤土の巨大な壁に、鏝で土をえぐりとる様に描くその姿はあまりにも衝撃的だった。途端に、この方と一緒に舞台を創りたいという激しい衝動に駆られ、何の伝手もない中すぐに連絡をし、気がつけば挾土さんの本拠地である飛騨高山まで来ていた。

極度の緊張のもと対峙した挾土さんは、すぐにその様子を察してくださったのだろう「僕に西村さんが探すものがあるかどうかわかりませんが、是非僕の世界をみてください。」と答えてくださった。その日は正午から真夜中まで挾土さんのアトリエや迎賓館をご案内いただき、じっくりと語りあう時間をいただいた。挾土さんが感じられる鼓童の印象やこれからの可能性から、前田と話し合ったことまで真剣に語り合った。左官としての経験とその視点から発せられる言葉一つ一つから、まさに自分が求めていた「何か」があった。これまで言葉にできなかったけれど、感じ欲していた「何か」を挾土さんは持っていらしたのだ。

「若い夏」は、芸術監督からの学びを生かし、改めて鼓童としての表現に挑戦する舞台である。その背景に、挾土さんの力が加わる。太鼓と左官、伝統と革新に挑戦する両者が生み出す舞台、その第一歩を踏み出した。

【チケット本日発売!】KODO_16summer_B1poster

鼓童浅草特別公演「若い夏」
2016年7月1日~3日 東京・台東区
http://www.kodo.or.jp/news/20160701asakusa_ja.html

【チケット本日発売!】
チケットスペース Tel. 03-3234-9999
(月~土、10:00~12:00、13:00~18:00)


【作品紹介映像】鼓童ワン・アース・ツアー〜永遠


鼓童ワン・アース・ツアー〜永遠|作品紹介映像

鼓童ワン・アース・ツアー〜永遠|作品紹介映像をYouTubeで公開しました。是非ご覧ください。

▶YouTubeで再生 https://youtu.be/UExUU9LEBmQ

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「永遠」6〜7月、9〜10月国内ツアー
http://www.kodo.or.jp/news/20150606oet_ja.html

【6〜7月】新潟・神奈川・埼玉・群馬・千葉・大阪・長野・京都・愛媛・広島
【9〜10月】千葉・茨城・宮城・山形・岩手・秋田・静岡・愛知・兵庫・鳥取・山口・福岡・鹿児島


太鼓音楽にいざなわれ、垣間みる「永遠」。/芸術監督・坂東玉三郎


太鼓音楽にいざなわれ、垣間みる「永遠」。
芸術監督・坂東玉三郎

2014年公演パンフレットより
撮影:岡本隆史

太鼓芸能集団「鼓童」の芸術監督に就任してから早くも2年が過ぎ、3年目となりました。第1作目の「伝説」に続き2作目は「神秘」を、そして3作目として、今年は「永遠」をお届けいたします。また2014年の7月には、ヨーロッパツアーの為に「打男 DADAN」を新しく改訂して上演致しました。新しいツアー作品が4作とも考えられるのです。

Photo: Takashi Okamoto

今回の「永遠」では、全てを新曲で演出しました。このテーマを太鼓の公演で感じて頂くのは大変に難しいことですが、そこを楽しく創ることが出来たら、かえって面白い作品が出来るのではないかという感覚もありました。永遠とは、森羅万象の移り変わり、地球の回転、宇宙の広がり、人生の輪廻や、物事が螺旋状に回って行く 〝風〟のようなものを感じられたら永遠を表現出来るのではないかとも考えたのです。

Photo: Takashi Okamoto

稽古中「永遠」について皆で話し合っていたのですが、永遠とは「望み」であったり「夢」であったり「叶わぬ」ことであったり、現実には無いことだということに気が付きました。人間の思考の中だけに存在する観念なのでしょう。それだからこそ、永遠を求めて「ピラミッド」を作ったり「スフィンクス」に思いを込めたりしてきたのです。しかし現実に存在する物質的な物には限りがあります。「魂」だけが永遠なのかも知れませんが、魂は「存在」ではなく、ただ「有」るだけのようにも思うのです。観念的な考えではありますが「永遠」とは「有」と「無」の繰り返しなのではないでしょうか。

新曲としては「夜霧」「カタライ」「青天」「午睡」「魅惑」「直線」などが有り、様々な雰囲気を醸し出すことも出来ました。

Photo: Takashi OkamotoPhoto: Takashi Okamoto

「青天」は「神秘」の「霹靂」に続く、坂本雅幸君の新曲です。前田剛史君の作曲も数曲有ります。

Photo: Takashi OkamotoPhoto: Takashi Okamoto

また自分の新曲としては「午睡」と「魅惑」です。「魅惑」は、これまで鼓童に有った様々な金物の演奏で作曲してみました。振付も曲に似合うように振り付けました。「午睡」では木製の楽器を使ったのです。すると午後ののんびりした雰囲気が出て来て「午睡」と名付けたのです。

Photo: Takashi Okamoto

芸術監督として今日に至るまでに、太鼓を打つことと、音楽を奏でることの意味を様々な角度から考えていました。「大太鼓」や「三宅」などは、打ち手が自分の寸時の即興で構成をしながら体力の続く限り打ち続けて最終の盛り上がりまで持って行きます。その神秘的な風情が見る人に感動を与えてきました。その太鼓の打法は、全て太鼓の打ち手に委ねられるのです。しかし私は、将来に向かって音楽性を重視した太鼓というものが何であろうかと考えていたのです。それは打ち手が、作曲家の意図に忠実に、速度や強弱等が十分に制御され、そして抑制されていなければならないということでした。自由な表現というものは、それらの事柄が制覇され、打ち手が客観性を持って初めて成し得ることだと気が付いたのです。そして何よりも、太鼓で奏でる音楽を聴衆が「長い時間聞いていても心地良いと感じてくれること」に最大の目的を持っていかなければならないと考えたのです。

Photo: Takashi Okamoto

考えてみますと、70年代後半から各地に大変多くの太鼓グループが生まれました。これからの太鼓演奏というものを考えた時に、今日までの太鼓の打法と、太鼓の音楽性というものが僅かに別の意味を持っているということを、佐渡に通って十数年経った今になってやっと理解出来るようになったのです。そして今後は、新しく作られたものと、古くから伝わっているものが交互に往復し繰り返され、回転しながら螺旋状に成長して行くことが出来たら素晴らしいことに成るという考えに至ったのです。

Photo: Takashi Okamoto

毎年良い作品創りを…と考えながら、一生懸命演出に明け暮れしているうちに、あっと言う間に月日が経ってしまいました。団員の皆も、稽古の進め方、作品の作り方などを順調に進めていけるようになったのも嬉しいことです。これからも鼓童の皆と最大の力を尽くして未来に向って参ります。

今後ともに皆様の御支援を賜りますようお願い申し上げます。

坂東玉三郎

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「永遠」6〜7月、9〜10月国内ツアー
http://www.kodo.or.jp/news/20150606oet_ja.html

【6〜7月】新潟・神奈川・埼玉・群馬・千葉・大阪・長野・京都・愛媛・広島
【9〜10月】千葉・茨城・宮城・山形・岩手・秋田・静岡・愛知・兵庫・鳥取・山口・福岡・鹿児島


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